【後編】映画『サブイボマスク』ファンキー加藤&一雫ライオン

【後編】映画『サブイボマスク』ファンキー加藤&一雫ライオン


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知られざる想いを知る―。
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映画『サブイボマスク』は、寂れた田舎町の商店街を歌の力で復活させる青年・春雄の奮闘を描くハートフルなドラマ。
熱いハートを持つ主人公・春雄を演じるのは、ソロアーティスト、ファンキー加藤さん。
この作品で映画初主演を果たします。そして脚本を手掛けるのは、俳優として活動後、35歳から脚本家に転身した気鋭の脚本家・一雫ライオンさん。
俳優として第一歩を歩みだしたばかりのアーティストと、遅咲きの人気脚本家。歩んできた道は違えど“熱い男”という共通項がある両者だけに、対談は大いに盛り上がりました。そんなおふたりのロングインタビューを前後編でお届けします。

 

撮影は1カ月もの期間をかけて、大分県で全編ロケ撮影された。緑広がる田園風景や昭和の面影を残すひなびた商店街……どこか懐かしい田舎町の風景が、突拍子もない展開を迎えるストーリーにリアルな空気感を与えている。ロケ地での撮影の様子はどんなものだったのだろう?

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過酷な撮影で体重が落ちてしまうも
初心に戻るきっかけになった

加藤「春雄って、カロリー消費の高い主人公なんですよ。そこだけは誤算でしたね。体力面がホントに“こんなにもしんどいんだ!”っていう。走るし、叫ぶし、歌うし、戦うし。ある程度、映画に向けて体も絞って行ったんですけど、撮影現場でも体重が2kgぐらい落ちちゃって。食べても食べても全然太らなかったです」

 映画の現場は、加藤にとって役者業の大変さを実感する日々だった。

 加藤「映画の現場で凄く新鮮だったのが、スタッフさんの動き一つひとつを間近で見ることが出来たこと。音楽って、ステージからだとスタッフさんと距離がありますから。どこかステージのど真ん中にひとりポツンといるって感じなんですけど、映画の現場だとスタッフさんの仕事ぶりを間近で見ることが出来て、強いプロ意識を感じました。ワンシーンでも誰ひとりとして手を抜かず。小道具さんもカメラに映るのかなっていう舞台の裏まで作り込んで、演者がその世界にすっと溶け込んでいけるように整えてくれて。自分自身ももっと頑張らなきゃって気持ちにさせてもらいました」

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脚本家のライオンにとって「初心に戻れた」という『サブイボマスク』だが、主演の加藤にとっても「間違いなく原点回帰になった作品」だという。

加藤「間違いなく原点回帰になりました。みかん箱の上に立って歌うシーンも、実際にFUNKY MONKEY BABYSのデビュー当時にやってたことですし。地方のCDショップの駐車場で、僕らはみかん箱じゃなくてビールケースをひっくり返して使ったんですけど。お客さん5、6人の前で3人で歌って……。
映画ではあのシーンはコミカルに描かれてますけど、僕自身は凄い感慨深かったです」 

ライオン「FUNKY MONKEY BABYSもそこからだったんですねぇ」

加藤「さすがに(劇中で春雄が使っている)マメカラではなかったですけど(笑)」

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ライオン「あははは。なんでマメカラになったんだっけ。浮かんじゃって書いちゃったんだな。面白いからって(笑)。今は、この映画のノベライズを書いてるんですが、小説版だと映画に出てこないことも書けるじゃないですか。そこで気づいたんですけど、春雄っていうのは、……僕が加藤さんのライブを見た勝手な印象からすると、もしかしたら加藤さんご自身もそうなのかなと思うんですが、よく“自分探し”って言われますけど、そんな自分探しなんて全く興味のない人間なんだろうなって。

僕がライブで見た拳を上げてる時の加藤さんの顔……俺はこれからひとりで歌っていくんだっていう男としての決意の表情を見て、僕が涙を流したのと同じように、ファンの人も加藤さんから物凄いエネルギーをもらってるんですよね。ライブから帰る時のお客さんも僕は見ていたんですけど、みんな泣くわ、笑うわ、大変な訳ですよ。

要は加藤さんは、歌でみんなを応援してるんですよね。だから、春雄も加藤さんも“全自動応援機”なんだなって。困った人とか、ちょっと元気がない人がいたら、『おっしゃ、俺が歌で元気づけてやる!』っていう。春雄っていうのも、町で何かがあれば自転車ですっ飛んでいくし、走っていくし。だから、常にスニーカーですよね。ブーツなんて気取って履いてられない。汗まみれになりながら飛んでいって、それでも人のためにずっと笑っていて、自分が傷ついていることにも気づかない人間だと思うんですよ。

だけど、春雄も、もしかしたらファンキー加藤さんご自身も、実は一番傷ついてるんですよね。そうなんだけど、結局は人を応援し続けることによって、結果その人が喜んでくれて笑ってくれたら、それでもうその傷は癒やされて。『よし、俺もまた頑張る!』ってなっちゃう。そういう、いいエネルギーの作用があるんじゃないかなって思います。だから、(春雄は)走る、笑う、飛ぶ。それで加藤さんは、大変な目に遭うことに(笑)」

 


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