東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【前編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。

東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【前編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。


典型的な少女漫画ヒロインタイプは危険!
○○って言っちゃダメや!

東村:なんかさ、男の子にすぐ「好き!」とか言っちゃって失敗する女の子っているじゃん。

-そこまで関係があたたまってないのに告白してしまう女の子のことですか?

東村:そうそう。そういう猪突猛進型ヒロインが98年~01年くらいの少女漫画に結構あったと思うんだけど、あれをマネするのは絶対に危険だよ。

ヒロイン「私好きになっちゃったんだよね!」

ヒーロー「ぶはっ!お前って……やっべーな(笑)」

……とか言いながら結局上手くいく、っていう漫画があったんや!あれは悪影響や!現実の男の子は引いちゃうからね。ある程度惹かれ合ってるならいいんだけど、そうじゃないのに告っちゃう事故が多発してた気がするんだよな。

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山田:そこでダメージを食らわないのであれば、告ること自体はいいと思うよ。だって男の子たちはみんな告白を待ってるんだもん。でもこのやり方じゃ上手くいくわけないよね。ちなみにアキコは自分から言うの?それとも待ってるの?

東村:自分から「好きになっちゃった!」って言うとかは……ないかな……うん、ないない。そんなにないね。私の場合は、まず、非常に好意がありますよ、っていうのは態度に出して、「カッコいいいよね」とか褒めちぎりまくって、向こうが「いやいや」とか言いながら、だんだん照れなくなってきたら、ごはんに誘ったりして。褒めて褒めていい気分になってきたところで付き合うってのがほとんどだね。

山田:告白は?

東村 うーん、向こうからだね、最終的には。「こんなに一緒にいて楽しいんだし、明日も会いたいって思うから、今もし彼氏いないんだったら、僕と付き合いません?」みたいに言ってくるまでは、もう練って練って!
まるで陶芸のように!なんかさ、自分から告っても上手くいかないと思うんだよ。

男の人ってさ、女が連れてった店は美味しくても美味しいって言わないくせに、自分が連れてった店は美味しくなくても美味しいって言うでしょ?そういう経験があるから「俺が最終決断をした」っていう気持ちになることが、必要な気がしちゃうんだよね、私としては。

山田:あくまでも主導権は男の人に渡す、っていう。

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東村:そうね、一応ね。「俺が選んだ女」「俺が付き合いたいと思った女」と思えることが大事っていうか。まあ、結婚に失敗しまくってる私に言われたくないだろうけど(笑)。女の人にあれよあれよとリードされ告られて上手くいく男の人は、相当おとなしい人だと思うよ、マジで。

-すっごい勉強になります…!!やっぱり「自分が選んだ!」って自慢したい生き物なんですよね。
(男性スタッフ)

東村:そうだと思うよ。

山田:男はとにかく女の人に「すごいね」って言ってもらいたいのよ。

東村:それ、先生の『モテ罪』(モテない女は罪である)にも書いてあったよね。あれは本当に名著!
名著すぎる! 『モテ罪』読んでおけばみんなモテるんじゃないかってぐらい。

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山田:あれは男の暴露本だからね(笑)。「こうすれば俺たち落ちるよ」っていう。「すごいね」って言ってくれた女はいい女にみえちゃうし、優しくしたいし。賛美されたら賛美しちゃうし。まあ、子どもなんだよね。でも、そのことをわかってるだけですごく得なんじゃないかな。

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これが理想や!漫画みたいな夢のデートプラン

-「この漫画みたいなデートがしたい」という憧れのシチュエーションはありますか?

東村:少女漫画的なやつ?ありますよ!カンペキなやつが!
ピクニックデートなんだけど、まず藤で編んだバスケットがないとダメ。
内側の布は赤のギンガムチェックね。オリーブ世代だから、藤のバスケットは絶対! それと、サンドイッチ用のパンは、ライ麦の丸いパンを薄く切ったやつ。そこは普通の食パンじゃダメですよ! それとパンの間にはさむハムとか飲み物とかをバスケットに入れるわけです。

で、それを持って、麦わら帽子と白いワンピースでデートに行く、っていうのが理想なんだけど、26歳くらいで「日本の土地はすべて国有地か私有地である」ってことに気がついたんだよね。
要するに、ここは県民の森、あっちは運動公園、ここには野っぱらがあるけど、開発予定地だから立ち入り禁止、みたいな。本当は彼とふたりでお花がぼこぼこ咲いてるところに行きたいんだけど、「あれ、おかしいな?私が言ってる野っぱらねーぞ?」っていう。だから、このデートはさ、したことないんだよね。野っぱらに生えてるちっちゃいお花でブーケを作って、サンドウィッチの横に置いたりとか、野イチゴを……まあヘビイチゴなんだけど、それを摘んで散らしたり、とかいうのをしたいのよ!したいよね?

山田:そーね(笑)。でもなんで公園じゃダメなの?

東村:公園じゃダメです。他人は絶対介在しちゃダメなの。ひとっこひとりいちゃダメなのよ。見渡す限り二人っきりで、お花が咲いてて、春で、蚊とかもいちゃダメなのよ!蚊がいないって時点で期間がすごい狭まるんだけどさ。ああ、一回やってみたいと思ってたけど……ないわ〜。

山田:ピクニックではワインとか飲んじゃうの?

東村:ワインじゃなくて、サングリアですよサングリア。
『ぶ~け』であったんです!
『ぶ~け』であったんです!!
『ぶ~け』であったんです!!!

<爆笑> 

東村:もうね「ぶ~け」ワールドなんですよ。文学的な世界観。知的ロマンチック。ボウリングとか行ってるじゃないんです、『ぶ~け』の女の子は。

山田:可愛いなあ。

東村:あとさ『風立ちぬ』って映画あったじゃないですか。あれはよかった。パラソルさして油絵描いてさ。「そうそう!それやりたい!」みたいな。

山田:印象派だね。

東村:そう!印象派!ちなみに、『主に泣いてます』の「ゆっこ」のモデルになった人がいるんだけど、彼女は東京っ子で少女漫画好きであ〜みん派なのね。そのゆっこは「ディスコで踊ってて、なんか目が合う。何回も目が合う。それが理想のやつや!」って言ってた(笑)。

山田:俺は『ホットロード』にやられたわ。MA-1着て、彼女と海をみながら缶コーヒーを飲む、みたいな。あの頃、そういうのがひとつの「型」になってたよね。

東村:そうそう。それでカニ食ってあたったり。

山田:そう!衝撃だった(笑)。

東村:なぜカニを食った!?ていう(笑)。

山田:すごいよね。ホットロードは超傑作だよ。俺さ、あれで学んだことがあるんだよ。女って男をあの角度からみてるのか!って。斜め後ろから肩越しに見てるんだよね。

東村:本当そうやわ!女って斜め後ろから男の佇まいを見てるよね。

山田:あれよく描けてるよねえ!肩越しの男ってほとんどしゃべんなくていい。むしろしゃべっちゃダメ(笑)。ガソリンスタンドで水撒いてるだけで十分なんだって思ったな。

東村:うんうん。私はさ、田舎で育ったから、やっぱ少女漫画に出てくるデートに憧れるじゃん?でもさ、いま自分が漫画描いてるからわかるんだけど、漫画家っていっつも締めきりに追われてるし、デートするシーンの店なんて、アシスタントさんに「その辺のカフェ行って、写真撮って来て!」とか言ってるわけだよ。
なんていうか、忙しいからその日その日をどうにかするだけで、「いつも自分が使っているお気に入りのお店を読者に教えてあげたいから描きました」なんてことはない。

山田:そうだね。

東村:そんなことは重々わかってるはずなのに、いち読者としては、素直に信じちゃうんだよね。「これは先生いきつけのお店なんだ!」みたいな。私が中学生の時に読んでた『山田くんと佐藤さん』っていう松苗あけみ先生の漫画の中で、表参道の「ファーイーストクラブ」ってカフェにデートに行くシーンがあるのね。
そこのパフェが美味しいんだって!とか言って、抹茶とあずきと白玉がのったオリエンタルなんとかパフェみたいなのをカップルで食べるっていうシーンがあって。私、それにすごい憧れてて、大人になって松苗あけみ先生に初めてお会いしたときに「先生、あのファーイーストクラブってまだあるんですか?」って聞いたの。バカでしょ!?

山田:アハハハハ(笑)

東村:そんなのあるわけないのにさ。松苗先生も「えっ?あー……」とか言ってて。「なんだっけそれ?」って感じで。「あの……『山田君と佐藤さん』に載ってた、抹茶とあずきと白玉のオリエンタルパフェの……あれ表参道なんですよね?……でも今ってもうないんですかね?」って訊いたら、「いやわかんない。なんかあれ適当に描いたんだ」って言われて。「あーー!!!!!そりゃそうだよな」って思った。

完全に架空で適当に先生が描いたことを、私25年くらい信じて「いつかそこでデートする!」って思ってたんだよ。漫画家の私でもそう思ってたくらいだから、漫画描いてない人はもっと思っちゃうよね!

 

☆まだまだ盛り上がる対談!
後編には7月8日(金)更新予定です。
どうぞお楽しみに!

 

【PROFILE】
東村アキコ(ひがしむら・あきこ)

漫画家 1975年宮崎県生まれ。「ぶ〜けデラックス」増刊号にて『フルーツこうもり』でデビュー。その後、「Cookie」にて初の連載『きせかえユカちゃん』を開始してからというもの、『ひまわりっ ~健一レジェンド~』、『ママはテンパリスト』、『海月姫』、『主に泣いてます』など次々にヒット作を連発。2015年、自身の半生を描いた『かくかくしかじか』で第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。アラサ―女子たちに衝撃を与え、いま大きな話題となっている『東京タラレバ娘』、上杉謙信女性説を基にした『雪花の虎』とグルメ探偵奇譚『美食探偵 明智五郎』など、数多くの漫画を連載中。
https://twitter.com/higashimura_a

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山田玲司(やまだ・れいじ)
漫画家 1966年東京都生まれ。20歳で漫画家デビューし、恋愛のマニュアル化を風刺した『Bバージン』で一気にブレイク。近年は“モテ”の絶対理論を語った注目作『モテない女は罪である』を発表。大人の恋愛サイト「AM」で様々なケースの恋愛相談を受けるなど、「いったい男は何考えてんの?」の問いに答えられる稀有な存在となる。『おそらく彼は「もう1度話し合おう(涙)」 と来ます。でも実は、「しばらくほっておいたら、 どうにかなるだろ」と思っています。』(小社刊)、著名人との魂の対談漫画『絶望に効く薬』シリーズや、『非属の才能』(本屋大賞、中2賞受賞)といった新書でも知られる。「山田玲司のヤングサンデー」(ニコニコチャンネル)、「スーパースーパーブルーハーツ」(クラブサンデー)連載中。http://yamada-reiji.com/

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