「捨て変態 ゆるりまい」×「ミニマリスト 佐々木典士」対談<br />第3回「モノが少ない暮らしは今後どうなる? ミニマリストの結婚観まで」

「捨て変態 ゆるりまい」×「ミニマリスト 佐々木典士」対談
第3回「モノが少ない暮らしは今後どうなる? ミニマリストの結婚観まで」


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撮影・文/佐々木  典士
 

ミニマリスト対談2

ゆるりまい×佐々木典士の対談もいよいよ最終回!

・モノが少ない暮らしで変わったこと、そして今後の予測は?

・ミニマリストってミニマリスト同士で結婚するの?

などなど様々な疑問にお答えします!

 

住環境から、人は変わる!

 佐々木 モノを減らすことは、前回ゆるりさんが「ジムに通って体脂肪を削っていくようなものでもある」もあるとおっしゃっていましたが、まさに部屋のモノを減らし終わって、ヨガや瞑想、ランニング始めたりするミニマリストって多いんですよね。何かを減らしたり、変わっていくことはやっぱりおもしろいので、自分の外側にある部屋や環境の問題が解決すると、自分の体や内面が変わっていくことに課題が移っていくというか。

ゆるり 私の場合は、ちゃんと生きようって思うようになりましたね。夜はちゃんと寝て、朝は早く起きようとか。ちゃんと生きてる人からしたら、当たり前のことだと思うんですけど(笑)。朝早く起きようと思えたのは、この暮らしのおかげかなって思えます。

佐々木 モノを整えることから始まって、やっぱりいろんな面に及んでいきますよね。

ゆるり 言葉遣いを、もう少し真面目にしようと思ったりとか(笑)。それが住環境から始まって、変わっていくのがすごいなって思っていて。

佐々木 よく「禅」的なイメージで捉えられたりするんですけど、そこまで大げさではないにしろ、何かを整えたり、律したりすると、他のことにも影響が及んでいきますね。ゆるりさんは以前、掃除はお嫌いでしたか?

ゆるり そうですね、やってもやっても終わらない気がして、好きじゃなかったですね。

佐々木 ぼくもそうです。掃除って終わりがないし、永遠にやらなきゃいけない。だからあまり意味がないような気がして、一週間に一度でいいんじゃないかとか。でも物理的な汚れじゃなく、毎日自分の気持ちを整えていくことなんだと思えて、ようやく価値があることだと思えました。「ちゃんと生きたくなる」というのは本当にわかります。

 シンプルライフとショッキングピンク

ゆるり ちゃんとできないことも多いですけど、でもやっぱりこの家は自分に合ってると思うんです。そしてこの家のおかげで、自分も変わったし、この空間に似合うような生活をしたいと思ったんですよね。できるだけシンプルに暮らしたいと思うようになったんですよ。でも最近の悩みがあって、服でもシンプルなものがすごい好きなのに、反面ショッキングピンクのものに惹かれることもあって。

佐々木 確かに、それは意外です(笑)。

ゆるり 私が理想としているシンプルな像はしっかりあるんですよ。でもその像とは別の、「その柄なんなの?」みたいなビビッドなものを選んでしまったりする自分もいて、そのギャップにクラクラするときはありますね。

佐々木 でもミニマリストでもいますね。「好き」ということでいうと、カラフルな北欧系とか、ガーリーなものだったりするんだけど、実際には無印良品の利便性を選んでいるとか。

ゆるり クローゼットを全部モノトーンにしたら、自分が見ていて気持ちがいいだろうなぁって思って憧れるんです。でも、めっちゃ花柄のコートも持っていて、それが好きでどうしても捨てられない。でも目立つし、イライラもするんですよ(笑)。そのコート問題はずっと解決しない。

佐々木 それは何年も置いてるんですか?

ゆるり そうですね。でも友達に相談したら、「相談の意味がわからない、持ってたらいいじゃん!」って言われる(笑)。夫に相談したら、「それがまいちゃんなんだから、仕方ないんじゃない?」って言われました。

佐々木 そういうスパッと割り切れないものは、どこまでいってもあるんでしょうね。ぼくも去年は、「そうだ、これからは一生白いTシャツを着ればいいんだ! 便利!」って思ったんですけど、今年はグレーのTシャツが着たくなって、それも着てみたり(笑)。

ゆるり 私も一緒です。私も白いシャツ、超かっこいいと思ってそればかり着てた時期もあったんですけど、段々グレーが着たくなって、黒もいいなと思って、じゃあモノトーンはOKということにしようかなとか(笑)。でもどんどん増えていくのも違うので、どこかで統一したくもなるんですよね。

佐々木 ミニマリストの男性で「彼女が毎日同じ服を着ていたらどう思うか?」って話題にしたことがあるんです。想像の話ですけど、「あれ……ちょっと嫌かも」っていう話になって。「おいおい、自分たちがやっていることを、恋人がしたら嫌っていうのはどうなの?」って盛り上がりました。でも特に女性の場合は、服の数自体は少なくても、柄物もちゃんとあったり、少ない枚数だけど、中身はシーズンごとにいろいろ変わっていくよ、っていう方もいて、そういうのもいいなぁって思ったり。

ミニマリストの結婚相手は、ミニマリスト?

 ゆるり 聞いてみたかったんですけど、彼女とか結婚相手はミニマリストのほうがいいんですか?

佐々木 それ、ものすごいみんなに心配されるんですよね(笑)。でも知り合い達を見ていると、ミニマリスト同士じゃない組み合わせが多いような気がしますね。そこから相手が影響を受けてだんだん歩み寄っていくということはあるようですけど。個人的には、相手に同じ価値観を求めるなら1人でいるのと変わらないかな、と思ったりします。

ゆるり うちの夫は「こだわりがないことが、こだわり」って言ってるぐらいなので、こだわりがある人同士の結婚って、どうなるんだろうなって興味はありますね。捨てるモノの基準や、大事にしたいものの基準が違ったらどうなるのかなって。

佐々木 でも相手のモノを自分の基準で測っちゃいけないっていうのは、結構みんなわかってますね。ミニマリストって言っても、みんな趣味も職業もファッションも、バラバラなんです。みんなが白シャツ着て、Mac持って、「どうも、ミニマリストです」って言ってたらぼくもすごい嫌だったと思うんですけど(笑)。そういう風に人によっても違うし、ぼくも今後はライフスタイルの変化に合わせて、モノを減らしたり増やしていくと思います。それこそ、ゆるりさんのように結婚したり、子どもが生まれれば当然モノは増やすでしょうし。住む場所や、選ぶ仕事によってもモノは増やすと思います。でもそれぞれの家族構成や環境で自分にとっての「最小限」はどこなんだろうとは、ずっと考えると思いますけど。

ゆるり たとえばうちは、子どもが生まれる前に猫も4匹いるから、アレルギーになったらかわいそうだと思って、空気清浄機を買ったんですよ。で、空気は確かにキレイになったかもしれないけど、メンテンナンスに割く時間が面倒だったり、本当にモノがあること/ないこと、のメリットってトントンだなって思いました。

佐々木 それをその時々で選択していくだけですよね。モノがある/ないということのメリットはどちらかが100:0とかじゃなくて、60:40や49:51のなかでどちらを自分を良しとするかということだと思うんです。

 一億総「捨て変態&ミニマリスト」時代?

ゆるり 今後どうなっていくと思いますか? モノが少ない暮らしや、ミニマリストは?

佐々木 ぼくはどんどん当たり前になっていくと思いますね。ぼくは、血液型でA型、B型、O型しかないと思われてたところに、AB型が発見されたようなものだと思ってます。数は少ないかもしれないけど、「そういう人もまあいるよね」みたいな。でも、たまに心配されるんですよね「みんなこんな風になったら世の中どうなるんだ!」って。

ゆるり されますね!

佐々木 大丈夫、ならない。

ゆるり ならないですよ。「モノが売れなくなって、経済がどうなるんだ!」とかも言われますね。

佐々木 ぼくは旅にとてもお金をかけてるし、ゆるりさんはむしろモノにしっかりお金かけてますよね。よく例えで言うんですけど、ものすごいサッカー選手が出てきたからって、みんなサッカー部に入るわけじゃない、柔道部に入る人も、アイススケートやる人もいるじゃないですか。

ゆるり 今はモノが少ないのがある種のブームになっていると思うんです。この間も若い女性に、「私もなれますか?」って聞かれたんですよ。だから「なれると思いますけど、ならなきゃいけないものではないと思います」って言ったんです。

佐々木 ぼくもミニマリストの本を出した時、まず実家に「別にモノは捨てなくてもいい」ということを伝えました。実家はモノが多いですけど、母親はしっかりそれを管理できているし、モノが多いことで困っている様子もない。だから誰にでも布教したいわけではなくて、「モノが少ない生活に興味があるんです」「モノが多くて困ってます」という人にコッソリ「結構いいんですよ」っておすすめする感じです。

ゆるり 「こういう生活をしたほうがいいよ!」ってみんなに言うようなことではないなって思いますね。モノの適正量は人によって違うから。もしこういう生活が気になったら一旦減らしてみてもいいと思いますし、そこでやっぱり合わないと思う人も出てくると思います。モノが少ない生活が、本当に自分にあった人だけがこれからもこういう生活を続けていくのかなって思いますね。

 

【PROFILE】
ゆるり まい
1985年生まれ。仙台市在住。漫画家、イラストレーター。母、夫、息子の家族4人+猫4匹暮らし。「わたしのウチには、なんにもない。」シリーズは累計20万部を突破! NHK‐BSにてドラマ化もされる。汚屋敷で育った反動から、3度の飯よりモノを捨てることが好きな、捨て変態に! 現在cakesにて「ゆるりまいにち猫日和」「赤すぐみんなの体験記」にて連載中。ブログ「なんにもないぶろぐ」も更新中。

佐々木 典士(sasaki fumio)
1979年生まれ。東京都在住。編集者、中道ミニマリスト。初の著書「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」は16万部突破、海外12カ国でも翻訳される。ワニブックスで手がけたミニマリストシリーズは累計26万部突破。クリエイティブ・ディレクターの沼畑直樹氏と、ブログ「minimal&ism」を運営。