花と誕生日

花と誕生日


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季節ごとの小さな幸せ、家族と楽しむ年中行事。
杉浦さやかさんがスケッチする折々の暮らし。
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春のはじめに生まれた娘・ふき。
蕗の薹(ふきのとう)の“蕗”と書きます。
お腹の子が女の子とわかってから、春にちなんだ名前をあれこれ考えたんだけど、どれもいまいちピンとこない。
実家に帰っていたとき、「ヒントになるかも」と、母が俳句の季語辞典を引っ張り出してきてくれました。
「うらら、梅見、花衣」
うっとりするようなきれいな言葉がいっぱい。
そんな中、母が「蕗の薹の”蕗”っていいんじゃない?」

―――それだ!

もう、即決でした。

蕗、ふき、フキ。
春らしくて古風で、キリッとしていて。
その昔、旅行先の春の十和田で、雪の中から顔を出していたふきのとうの愛らしさを鮮やかに思い出しました。
春を告げる、力強さに溢れた、可憐なお花。

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この春4歳になった娘も、
自分が花の名前であることが誇らしいらしく、
「ふきってお花もさくし、たべられるんだよね~」と何度も口にします。

ネットの画像は見せられるけど、本物は去年の春に見たっきり。そのときはまだよくわからなかったみたい。
今年見せたら、意外と地味でがっかりするかな。
私にとっては、今や大好きで特別な花だけれど。

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生誕記念に梅の木の苗を植えよう、とか、
庭にふきのとうを植えよう、とか計画は立てたのに、忙しさにかまけて結局実現できなかった。
すぐ近くのアパートの茂みには、毎年花が咲くんだけどな。
そう、ふきのとうって、地味すぎてあまり気づかないのだけど、都会の片隅にもけっこう咲いているのです。
東京での花の盛りは、 3月はじめから半ばの、まさに今。
0歳の生まれたてのとき、買い物に出た母が、空き地に咲いていたのを摘んできてくれたっけ。
来年こそ、庭にふきのとうコーナーを作るのが目標。
植え付けは2~4月か秋なので、そろそろ株を手に入れないと!

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誕生日が近づくと街に梅の花が目立つようになり、
当日には冬の終わりを告げる沈丁花の香りが漂い、どんどん花が咲いてゆく。
娘の誕生日がいつも花の香りとともにあるのが、とてもうれしい。

 

*次回は3月24日(金)更新予定です。

Written by sugiura sayaka
sugiura sayaka

杉浦さやか(すぎうら・さやか)/1971年生まれ。日本大学藝術学部美術学科卒。大学在学中の1993年よりフリーのイラストレーター。 独自のタッチと視点で描くイラストエッセイが人気を博し、街歩き、旅、映画、おしゃれなど様々なテーマで執筆。『週末ジャパンツアー』『上海を歩こう』『はじめてのハワイ』(小社)、『スクラップ帖のつくりかた』(KKベストセラーズ)、『レンアイ滝修行』(祥伝社)、『うれしいおくりもの』(池田書店)、『おきにいりと暮らす ABC』(白泉社)など著書多数。最新刊は『マーマリング・トーク おしゃべりなつぶやき』(二見書房)。

»https://twitter.com/saa_aya

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