ミニマリスト、車を買う

ミニマリスト、車を買う


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これは、モノを手放し、身も心も身軽になったミニマリストが、「やりたいこと」に挑戦していくお話。

ぼくは明日死んでしまうかもしれない。
だから「やりたいことはやった」という手応えをいつも持っていたい。

いざ、心の思うままに。

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今住んでいる地域は、車移動が前提のような場所で、俺以外はほぼ全員が車に乗っていた。

 

しかし歩くことも自転車も好きなので、生活には何も困っていなかった。坂道はトレーニングと思えばどうということはない。そんな自分がまさか車に手を出すとは以前なら考えられなかった。持ち物の最たるもの、維持費もかかる金食い虫、それが車なのだから。

 

「軽トラキャンパー」とは?

 

しかし、挑戦したいことが見つかってしまった。
それは「軽トラキャンパー」を自作すること。
軽トラの荷台の上に、キャンピングカーを自らの手で作りあげるのだ。

 

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臼井健二さんの「たるたる号」

 

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村上毅さんの屋根が開閉式の「ミミック号」

 

最近は、マルシェでこんなにおしゃれな軽トラも活躍しているんですよ。

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完成した暁にはこれで気ままな旅をしたい。
強者の中には、軽トラキャンパーに住んでいる人もいる。そんな風にいざとなれば、これに住めばいい。それは確かなセーフティネットとなり、俺の新たな挑戦の土台となってくれるはずだ。

 

そしてDIYのこと、太陽電池のこと、電気のこと、車のことこれから俺が知りたいことをまとめて学ぶには、軽トラキャンパーは最適の教材になってくれると思ったのだ。まだ見ぬ自作のキャンパーだが、名前は「最小庵」にしようと決めた。自分にとっての最小限を今度はキャンパーで表現する。この名前に導かれてコンセプトを作るのだ。

 

車ってどうやって買うの?

 

さて、いざ車を買おうと決意は固まり始めていたのだが、何をすべきかよくわからなかった。
車ってどこで買うの? 中古車って何に気をつけたらいいの? フリーランスの人にも売ってくれるの? やっぱりペーパードライバー教習受けてからのほうがいいのかな?

よくわからないまま「カーセンサー」やら「gooネット」やらをぼんやり眺める。そういえば以前、電気自動車に興味を持ったことがあった。日産のリーフには「旅ホーダイ」というプランがあって、月額2000円で急速充電器が使い放題。つまり時間さえあれば、下道を走ってそれだけのお金で日本中を旅することができるのだ。

 

結び付けられた運命

 

ある時、電気自動車の軽トラってないのかな、と何気なく検索したら………それはあった。

三菱の「ミニキャブ・ミーブトラック」。電気自動車の軽トラはこれ1台しか存在しない。

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1回の充電で走れる距離は実質100kmにも満たない。それをデメリットと感じる人が多かったのか、販売台数は1000台ほどで生産終了になってしまったようだ。

 

しかし、俺にとってははじめての車。ガソリン車と比べての不便などわからない。君が俺のはじめての相手なのだ。君が俺のスタンダードを作るのだ。

 

「君が欲しい。君じゃなくちゃだめなんだ。フェラーリもポルシェもいらない、君にしか興味はないんだ」

恋愛でもこんなに確かな気持ちになれたらよかったのにね!

 

そういえば友達の評価はいまいちな彼女だけど、何かもうアレが激しくてスゴイ、みたいなミスチルの曲があったな〜、今の俺もだいたい同じ気持ちやわ〜とスマホをいじりながら思う俺。

 

この車を買おう。そう決心して検索すると、なんと日本中で15台しか売っていない。もはやこの車、ランボルギーニなみに希少なんじゃないかと思えてくる。いちばん近くでは和歌山県で売っていた。そこに勢いで電話をしてみる。

 

「この車を頂こうと思っている。冷やかしではなく確固たる購入の意志があります。しかし車を買うのははじめてで、しかもペーパードライバー。何も……何もわかっておらんのですよ!

となぜかジオングの整備士のような口調になってしまった俺を不憫に思ったのか、店員さんはとても丁寧に対応してくれた。

「まずは車を見てからお決めになられたほうがいい」

と言われた。確かに、俺は見合いもせずに結婚をしようとしていたらしい。至極まっとうな意見だと思ったのでいそいそと和歌山まででかけることにした。

 

いざ未踏の地へ 

 

 

 

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ふ、ふーん、ここが「ディーラー」ね。まさか自分の人生で「ディーラー」に足を踏み入れるとは思わんかったですよ。

そしてついに「ミニキャブ・ミーブトラック」と対面。

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第一印象は「心の底からダサいな」と思っていたけど……
思ったよりかわいいじゃん。

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いや、なんかかわいい。段々かわいく見えてきた。

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「中古車を見るべきポイント」みたいな動画はYouTubeで見たけれど、こちらとらゴールデンペーパードライバー。何をどう見たらいいのか、根本的なところがわかっていない!

意味ありげにドアを開け閉めしたり、タイヤの溝を「ほほぅ、そう来ましたか」と骨董品でも眺めるようなそぶりで見つめた後、間が持たなくなったので「買います」と伝える。

 

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さすがディーラー、コーヒーなんか無料で出してくれるのね。こうやって購入者の心理をくすぐっていくわけですな!

 

複雑怪奇な魔物

 

さて書類の記入です。

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・取引確認書!
・自動車税の申告書!
・自動車保管場所届出書!
・中古車保証申込書!
・注文書へ捺印!

など言われるままに、意識が朦朧としつつも判子を押しサインを書き。
この紙の書類を全部保管されてるんでしょうか、すごいですね。

代金も、なんやかんやある。
・自動車取得税!(これはいらなかった)
・自動車重量税!
・税金は免税の仕組みもいろいろあるよ!
・リサイクル預託金!
・自賠責保険!
・手続き諸費用!
・納車代金!

 

途中で何度も
「あ、もうやっぱ辞めます。今後の人生、徒歩と自転車でいけるところまで……いってみるつもりです
と言いそうになったよ!

 

車離れを収束したいなら、もう少し

いろんな仕組みをミニマリズムすることですな!!

 

納車されてからも、

・窓ガラス用のガラコを買い!
・充電カードを作り!
・任意保険に加入し!
・初心者マークと、停止表示板を買い!
・運転や車の仕組みの本を読み漁り!
・希望ナンバーでは、関係各所をグルグル回され!
・カーナビアプリを試行錯誤し!
・ETCカードを作り、ETCを取り付け!
・ミラー用のガラコを買う!

 

車……はっきり言ってめんどくさい。モノはモノを呼んでくるが、車はその代表格だ。

 

しかし、それでも車は自分にとって刺激的だった。
車が新たな挑戦を、毎日のように作ってくれたのだった。
どうしても嫌になれば、勉強代を払ったと思って手放せばいいのだから。

 

次回「はじめてのドライブ」
母さん……なんというか、てんやわんやです。

 

【はじめての車選び】
・車は星の数ほどある。使用目的を明確にしないと選べません。
・よくわからないことは、恥ずかしがらずに全部聞く
・何事も勉強代と思うこと


Written by sasaki fumio

作家/編集者/ミニマリスト 1979年生まれ。香川県出身。出版社3社を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに、『Minimal&Ism』を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(小社刊)は、国内16万部突破、22ヶ国語に翻訳される。新刊「ぼくたちは習慣で、できている。」が発売中。

»http://minimalism.jp/

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