はじめての「お弁当男子」

はじめての「お弁当男子」


――――――――――――――――――――――――――

これは、いろんなものを手放し、身も心も身軽になったミニマリストが、「やりたいこと」に挑戦していくお話。

ぼくは明日死んでしまうかもしれない。

だから「やりたいことはやった」という手応えをいつも持っていたい。

いざ、心の思うままに。

――――――――――――――――――――――――――–

 

お弁当男子には興味津々だったのだが、いざやろうと思うとなかなかハードルが高いものである。こじんまりとしたお弁当を女子が持参していると「今まで気づかなかったけどあの娘、……いい子なんじゃないか?とかよくわからんバイアスが働くものだが、独り身のおっさんが弁当をモグモグする背中には「哀愁」が漂っているというか。

 

 

しかし、もうそんなことも言ってられなくなった。図書館で仕事をしているのだが、以前はお腹空いた、私もう帰る!というスタイルだった。本の締め切りが迫ってきて、さすがにもう少し粘って働かなくてはいけない。そこでお弁当の出番だというわけだ。

 

 

お弁当箱は、曲げわっぱとかをさんざん撫で回しながら探した。

結局、スウェーデンのトランギアというメーカーのメスティン にした。

img_2224-1

 

基本的に、アウトドアで美味しいご飯を炊くためのもの。これがお弁当箱のサイズにもピッタリ。ミニマリストなら多用途に使えるものを、ということで選択。

しかしメスティン

なんという大仰なネーミング。

「失われし大陸トランギア。聖なる槍メスティンは、誰も知らない森の奥で勇者の到来を待っていた……」

 

みたいな。ちがうよ、オラの弁当箱の名前だよ!

 

 

お弁当を作るといっても、時間はかけたくない。

ということでメインは卵焼きで決まり!

毎日作るとはいえ、卵焼き器をわざわざ買うのもなと思って、フライパンでチャレンジ。

Processed with Rookie Cam

 

……節子、お兄ちゃんがんばってみたんやけど、やっぱオムレツでけたわ。

 

 

そしてオムレツを切ると、あたりにカオスが立ち込めた。

Processed with Rookie Cam

いやいや、卵焼きだと思うから、この姿が見苦しいのだ。

そこでこの料理を卵の「五月雨焼き」と名付けることにした。失敗したのではない! 卵は勇敢にも散った。我々のためにさみだれたのだ!!

 

とはいっても試行錯誤は続く。もう少し四角くなるように心がけると……

Processed with Rookie Cam

 

見て見て~。なんかハムカツに似ているものができたよ~!

Processed with Rookie Cam

 

恐ろしいもので、人間はなければないで工夫をする。続けていれば「フライパンで卵焼きを焼く」というスキルすらなぜか上達していくのだ。

 

そうしたある日…

Processed with Rookie Cam

これは……

Processed with Rookie Cam

なんと……

Processed with Rookie Cam

これ、あれじゃね!? ANAの「おべんとうの時間」の取材きちゃうやつじゃね!? 今気づいたけど、写真の撮り方がすでに「おべんとうの時間」を意識しとる!!

 

しかし、恐ろしく質素な弁当である。

卵×2個で50円。そしていつものぬか漬けと干し野菜の味噌汁。

どう見積もっても100円いってないな、このお弁当。

 

 

でも気に入っているんですよ。この質素なお弁当が。

そしてスープジャーで保温したうちの味噌汁……。

img_2221

 

もうね、干し野菜はこのためにあったのかと。

君たち干し野菜せずして、これだけの野菜一度に取れんのかよと言いたい。

 

img_2398

 

スープジャーで熟成されるのか、とんでもなく旨い出汁がでて、なんというか「これヤバイ何か入ってない?」 と思いながら毎日すすっている。第一回 「うちの味噌汁が最高ですけぇ in京都大会」があったら、参加すると思う。そして一回戦は勝ち抜けると思うの。

 

お弁当の内容はほぼ毎日同じ。でも食べ飽きない。

簡単すぎるから数分で作れて、負担にもならない。

そしてお弁当を作るということは、自分で適正な量を決めるということである。

さすがに痩せてきましたよ、いい感じに!

 

 

弁当箱の裏についた水蒸気。

冷めたご飯に少ししなったふりかけ。

お弁当にしかない味わいってあるよねぇ。

 

 

弁当があまりにお気に入りになったので、このスタイルを「愛妻弁当の自給」と呼ぶことにした。

 

 

「誰も愛してくれないなら、」

 

ミニマリスト佐々木は言った。

 

「自分で自分を愛してしまえばいい」

 

ひゅー、かっこいい。

そこに痺れる、モノ捨てるゥ!!

Written by sasaki fumio
sasaki fumio

作家/編集者/ミニマリスト 1979年生まれ。香川県出身。出版社3社を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに、『Minimal&Ism』を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(小社刊)は、国内16万部突破、22ヶ国語に翻訳される。新刊「ぼくたちは習慣で、できている。」が発売中。

»http://minimalism.jp/

»この連載の記事を見る