黒木啓司/初主演映画『クロスロード』の撮影を振り返る

黒木啓司/初主演映画『クロスロード』の撮影を振り返る


11月28日(土)公開の『クロスロード』で映画初主演を果たした黒木啓司。彼は、青年海外協力隊としてフィリピンにやってきた青年・沢田樹役を演じる。長期の海外ロケや、今作のテーマでもあるボランティアについてなど、撮影当時の様子と一緒に振り返ってもらった。

撮影/辻内真理 文/渡邊美樹

 

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-最初に台本を読まれた時、どう感じられましたか?

 「等身大で演じることが出来る役だなと思いました。男だったらみんな、こうやって成長していくのかな? っていうのが、台本を読みながら感じられました。親への反抗心や夢を持っている若者の葛藤であったり、もどかしさ、自分自身でそれをどうしていのか…っていう心情があったり。でも、成長することにより色んなことが見えて、親の言っている意味や社会の事を理解していく沢田の成長物語だなって感じましたね。そういう風に自分も成長させる気持ちで作り上げた作品ですね」

-今回の作品は、ボランティアや青年海外協力隊とか、近そうで遠いようなテーマのお話だったんですが、黒木さんご自身、共感出来る部分がかったのでしょうか?

 「この作品が青年海外協力隊50周年の記念の作品としてやらせて頂いたんですが、青年海外協力隊ってなんだろう? っていう部分は、最初、僕も感じました。ボランティアに関しては、EXILEの一員としてとして震災以降、日本を元気にというテーマで、震災の活動もしてきたし、それ以外でも手足の不自由な子ども達だったり、そういう人達と触れ合ってきて、ボランティア活動は身近に感じてきたんですけど。でも、実際に、個人としてのレベルではなかなか、そういう形じゃないとボランティアもそこまで身近に感じられないのかな? とか思ったりしました。その中で、この作品を通してメッセージを伝えていきたいなっていうのはあります。協力隊が何をしているのかっていうのは、全てこの作品だけでわかるわけではないですけど、こういうインタビューとかを通じて僕が発信できることを世の中の人に伝えていきたいなって思います」

-今作は、ドキュメンタリーのよさと劇映画のよさがある作品だと思うんですが、撮影はどんな風に行なわれていったのでしょうか? アドリブもあったとお伺いしました。

 「現地の人と一緒に歌って踊るシーンですね。実は、現地の人達に歌ったり踊る文化があるというのは、よく分からないまま日本を発ったんです。なので、撮影の前日に、監督と『どうしようか?』『歌うのも良いんじゃないですか?』って話をしまして。そこで、何を歌うか決める時に、日本を代表する曲というと、“上を向いて歩こう”じゃないかと。それで、あのシーンが出来ました。でも、現地の人が、この曲を全員知っていたんです。それくらい有名な曲らしくて。そして、現地の方、みなさん歌が上手くて、俺が音を外したりすると笑ったりしてました」

 -なるほど、そういうことだったんですね。

 「僕、歌は普段歌わないので貴重なシーンです(笑)」

 -そうですよね、なかなか見れない姿かも知れませんね。

 「辛いシーンです…(笑)」

 -撮影の時は、緊張や照れはありましたか?

 「沢田が大きい声で歌っていれば良いんじゃないかな? って思ってました」

-役者として演じるという意識を土台にやっていった訳ですね。

 「そうですね、沢田って、きっとこうやって打ち解けて行くんじゃないかな?って思って」

 

黒木2

 

 -そういうシーンを含めて、現地の方との共演が見どころでもありますよね。出演されている現地の方は、みなさん役者さんという訳では無いですよね?

 「役者じゃない方もいました。ノエル役の子は、役者ではないんですよ。実際に、現地でオーディションをして決まったのですが、彼自身もノエルのような経験があると聞きました」

 -凄いですね! これは、演技なの? っていシーンが凄く散りばめられていて、見ていて本当にドキュメンタリーを一瞬見ているような感覚になりました。

 「でも、彼も彼でセリフとか、動きとかお芝居について『僕はこうやりたいんだよね』って、言ってました」

 -えぇ!? 

 「監督に言ったりとかして」

 -ノエル役の子はお幾つなんですか?

 「10歳くらいだったと思います」

-10歳で、それが出来るって凄いです。

「でも、向こうの子は結構はっきり主張するので。『僕はこんなんじゃ、この感情にならないので、ちょっと待って下さい』って」

-10歳の子とは思えませんね。

「感性が違うんじゃないですかね? 僕も彼の演技には凄く引き込まれました。普段は凄く素朴な子で、一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったりしてましたけど」

-海外の人と一緒に演技をするとか、これまで経験はありましたか?

「いえ、ないですね」

-しかも、現地に行って演じるっていうのは、スタジオとかで演技をするのとはまた空気感が違うのかなと思ったのですが。

「そうですね、僕も最初はどうなるんだろうとか思って行ったんですけど、運よく、フィリピンについて、そのまま撮影じゃなくて、ちょっとマニラに1日、2日いることができて。その中で、協力隊の宿舎に行かせて頂いたりして、スラム街を見たりとか、色んなところを歩いてマニラの現状を見ることが出来ました。色んな衝撃も受けましたね。実際にお金を下さいって言っている子達に会ったり。普通に歩いていたら、『お金くれ、お金くれ』って、言ってくる子はたくさんいました。今まで見たことのない衝撃的な光景を撮影の前に見て、現地の姿をリアルに感じれたから役にもすんなり入れたなって。その経験がなかったら、僕も実感の無いままに演技してたかもしれないです」

 

黒木3

 

-映画でも、大変な現地の様子が描かれていたのが印象的でした。撮影自体は、2週間程度だとお伺いしました。

「そうですね、2週間フィリピンにいて、日本に戻ってきて数日撮影をしました」

-海外での撮影を実際に経験してみていかがでしたか?

「ドラマとは違うところがありますよね。基本的には合宿みたいな感じですし。みんなで2週間ずっと一緒にご飯を食べてました」

-そうすると、監督ともずっと一緒だったと思うんですが、どんなことをお話されましたか?

「監督とプロデューサーの方と、演技のこととか話をしましたね。かと言って、この作品に関しての演技については、監督は全く言わなかったですけど…」

-それは、何か意図があって言わなかったのでしょうか?

「いやー、監督が何を思っていたのかわからないです。未だに聞いてないので」

-それは明かされないままなんですね。

「監督がどう思っていたのかわからないですね。教えて下さいって言ったら、『君はドMなの?』って言われて、そうじゃないんだけどなーって思って(笑)」

-監督のスタイルなのでしょうか。

「逆に気になりますよね。監督からは、昔の役者さんについて教えて頂いたりしました」

-では、それを参考にされたのですか?

「そうですね。あと、日本の演技の仕方だったり、海外の演技の仕方だったり、日本と海外の違いも教えて頂きました。監督自身も向こうにいらっしゃることも多いので」

-長塚さんとの共演シーンも印象的でしたが、共演されてみていかがでしたか?

「本当にどっしりとした方で、軸がぶれない演技をされて、凄い勉強になりました。出演シーンとしては、そんなに多くはないんですが、長塚さんがいることによって、作品の重みもでるし。本当にありがたいです」

-この作品は、青年海外協力隊という題材を扱ってますが、実際に何か調べたり考えたりされましたか?

「僕が演じる沢田は、協力隊という存在をそこまで理解していないところから始まるので、そんなに意識はしませんでした。ある程度は調べましたが、調べるっていうよりは、OBの方に話を聞いて、どういう活動をしていたっていうほうが、実際にこういうパンフレットを見るよりも、そういう活動をするんだなって理解出来ました。だから、それをリアルに僕が伝えて行くほうが良いのかな? って。紙の上だけだとわかりにくい、目に見えない事がたくさんあるんだって思いましたし」

-ボランティアに興味が無い沢田が、一番視聴者の目線に近いなと感じながら観ていたので、そこは凄く展開として受け入れがたいことも、映画になったことで見えました。最後に、この作品の見どころを教えて下さい。

「世界の今の姿をリアルに描いていたり、ひとりの男の成長物語であったりというところに注目して頂きたいです。男っていうのはこうやって成長するものだという事と、協力隊の素晴らしさが伝わればいいなって思います」

 

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(プロフィール)

黒木 啓司 (EXILE) /くろきけいじ

宮崎県出身。2007年、二代目J Soul Brothersのメンバーに抜擢。2008年EXILE初のドームツアー「EXILE PERFECT LIVE 2008」に出演し、2009年3月1日にEXILE新メンバーとして加入。2011年からTHE SECOND from EXILEとしても活動中。また、2011年には『名前をなくした女神』でドラマデビューを果たし、以後『残念な夫』『ワイル ドヒーローズ』に出演。ドラマ、舞台等で主演を務めるなど役者として活動の場を広げている。

 

(作品紹介)

『クロスロード』

クロスロード

監督/すずきじゅんいち
脚本監修・脚本/福間正浩
脚本/佐藤あい子
主題歌/中島みゆき「ヘッドライト・テールライト」 《ヤマハミュージックコミュニケーションズ》
出演/黒木啓司(EXILE)  渡辺大  TAO  長塚京三
アローディア  飯伏幸太(DDTプロレス/新日本プロレス)  山本未來  榊原るみ  加藤雅也(友情出演) ほか
配給/フレッシュハーツ
http://crossroads.toeiad.co.jp/

カメラマンを目指す青年・沢田樹(黒木啓司)は、何か飛躍するきっかけがつかめるかもしれないと、青年海外協力隊へ参加する。だが、ボランティアに対して否定的な沢田は、訓練所で仲間たちと対立してしまう。その後、同期の志穂(TAO)と羽村(渡辺大)と共に、フィリピンに派遣された沢田は、現地の観光局で働くことに。そんなある日、沢田は貧しい少年・ノエルと出会い、ノエルとその姉・アンジェラと交流を深めていくうちに、気持ちが変化していく。だが、この国が抱える問題も痛感することになる。

11月28日(土)全国公開

©2015「クロスロード」製作委員会