【後編】宝塚歌劇団 演出家  上田久美子さんインタビュー

【後編】宝塚歌劇団 演出家 上田久美子さんインタビュー


日常を離れ別世界を楽しむ
それが宝塚の醍醐味だからこそ
誰もが楽しめる舞台にしたい

そして「どんな作品を描いていきたいか?」質問したときに続いたのが上田さんらしいこんな言葉。

「一人の演出家しかいないほとんどの劇団とは異なり、宝塚歌劇団には複数の演出家がいます。ゆえに、私は自分自身を大きい複合ビルの中の個人営業店だと考えているんです。
“うちはフレンチ”“うちはイタリアン”“うちは和食”おのおのの演出家がひとつの店であると。
美味しい店が集まれば、誰もが行きたいビルになる。私自身が寿司屋なら寿司の技能を磨きたい。

例えば悲劇なら悲劇、作風は一つでいいのかもしれません。
あれもこれも出来ますよと技能を披露する必要はないのかなと。

私は寿司職人だけどたまにはフレンチの腕も見せますよ、って寿司屋でフレンチを出されても、フレンチレストランにはかなわないでしょう?そのために、たくさんの演出家の異なった店があり、生徒という“素材”が、それぞれの店の一番得意な方法で美味しく料理される、それが宝塚なのかなと」

取材中、こんな印象的な言葉もあった。

「私が演出した舞台を人から“良かった”と言ってもらえるのは心から嬉しい。でも、私自身は自分の脚本演出が良いなんてまだまだ思えない。自分に才能があると思ったことも一度もないです。だからこそ、何度も推敲し“どうしたら面白い舞台になるか?”一生懸命考える」

「大変な現実から離れ、ひとときの間、別世界を楽しむ。それが宝塚の舞台の素晴らしさだと私は感じていて。
だからこそ“誰が見ても楽しめるものを”という気持ちも自分の中に強くあるんです。

そこで基準になるのが、前の職場で出会った人達。今はある意味、特殊な世界にいるので、自分の感覚というギアをニュートラルに入れておく意味でも、会社員時代に知り合った人たちとの繋がりは有り難いし、ずっと大切にしたい」

どんな高評価を受けようとも、舞い上がることなく冷静に「宝塚のために自分には何ができるのか?」客観的に俯瞰で考える。自分の主観で突っ走ることなく観客の目線で舞台を見ることができる。

その視点があるからこそ、上田さんの舞台は多くの人の心を動かすのだろう。
上田さんがどんな物語を宝塚の劇場に紡いでいくのか、これからも楽しみだ。

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【PROFILE】
上田久美子(うえだ・くみこ)
宝塚歌劇団 演出家
2006年宝塚歌劇団入団。2013年『月雲の皇子―衣通姫伝説より―』、2014年『翼ある人びと―ブラームスとクララ・シューマン―』で高い評価を得る。2015年『星逢一夜』で宝塚大劇場デビュー。同作品で読売演劇大賞、優秀演出家賞を受賞。

宝塚歌劇 オフィシャルサイト
https://kageki.hankyu.co.jp/

上田久美子さん次回作品

宝塚歌劇 花組公演
宝塚舞踊詩
『雪華抄(せっかしょう)』
作・演出/原田 諒
 
トラジェディ・アラベスク
『金色(こんじき)の砂漠』
作・演出/上田 久美子
 
・宝塚大劇場  2016年11月11日(金)~ 12月13日(火)
・東京宝塚劇場 2017年1月~2月(予定)
 
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