【試し読み】その時は突然にやってくる『愛猫が余命20日と宣告されました』(1)


猫の健康には人一倍気を付けていたはずなのに…。5匹の猫と暮らす著者が、ある日愛猫の「余命20日」という宣告を受けてから、病気と全力で向き合い、闘った全記録。今まで誰も書けなかった、触れられなかったことまで徹底的に詳しく、そしてリアルに書き残しました。

2025年9月27日に発売される『愛猫が余命20日と宣告されました』(著:響介)より、第1章「その時は突然にやってくる」を公開します。

 

6月3日

 普通に生活していました。いつも通りの“猫圧”。いつも通りのご飯。そして、いつも通り僕のギターを特等席で聴いてくれていました。
 最近ちょっと鼻が鳴ることがあるなあ。イビキも少し出てきたなあ。
 そう思ってはいたのです。
 普通、猫はイビキをかきません。
 「鼻が鳴ってる笑」と面白がる方もいますが、猫のイビキは基本的に異常と疑った方がいい。
 それでも、猫マスターを自負する僕が意外にものほほんとしていられたのには理由があります。

うちのポポロンは元々鼻炎持ち

 慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー(花粉など)を持っています。路上に捨てられていたのを迎え入れた時から咳をしていて、ついでにカリシウイルス※1のキャリア※2でもある。

(※1)­いわゆる猫風邪の原因の一つで、くしゃみ、鼻水、発熱などの症状が現れる。ヘルペスウイルスも同じく猫風邪の原因となる。
(※2)­症状がおさまったあとも体内にウイルスを保有している状態のことで、免疫が低下した時などに再び症状が現れる。

 だからこそ、イビキや鼻水は季節の変わり目に猫風邪っぽくなると出てくるのが日常になっていました。軽度であれば様子見、ひどければ病院へ、というのがルーティン。
 花粉の時期になると僕がくしゃみをして、ポポロンも一緒にくしゃみ。

「お揃いでちゅね、デュフフ」とか言いながら、アレルギーのお揃いという恐怖のお揃いストーカーみたいなテンションで日々を送っていたのですが──その日は、少し様子が違いました。

ありえない量の鼻水

 くしゃみをした瞬間、鼻水が飛び散り、漫画に出てくる鼻垂れ坊主レベルの鼻水が、たらーんと垂れていたのです。

響介「うわ~・・・今年花粉すごいから、症状ひどいな。明日病院で診てもらおうかな・・・」

 そんなふうに思ってはいたけど、無意識に「いつものこと」として大して問題視していなかった。今思えば、そんな軽視してはいけなかった。

 でも、出会った時からそうだったから。鼻水も、咳も、出会ったその日から、していた。だからそれが日常だった。鼻水を拭いてあげれば、あら、元通り。可愛いポーチーのできあがり。

 僕にとって、それは幸せのルーティンの一つになっていました。でも、その日の夜は違いました。
 ポポロンの鼻から、突然、血が出たのです。

 

6月4日

 過去にも副鼻腔炎が悪化して鼻血が出たことがあるポポロン。
 「きっとまたそれだろう、いや、それであってくれ・・・」と願いながら、すぐに病院へ向かう。
 イビキも強くなっていたのでそのことも伝えると、先生の表情がいつもと少し違う。少し嫌な予感。

先生「一応、鼻の細胞診とレントゲンをしてみましょう」

 ドキッとした。もし腫瘍系だったらどうしよう・・・。

先生「響介さんはご存じだと思いますが、猫は基本的に鼻血を出しません。つまり、鼻血が出る、イコールほぼ何かしらの異常があると考えるべきです。たとえば『リンパ腫』『鼻腔内腺がん』『扁平上皮がん』『ポリープ』などです」

 先生の表情が突然キュッと引き締まる時は、徹底した検査をする合図だ。(もちろん、いつも真剣なんですが)
 以前、我が家の大黒柱的な存在、リュックに小さなしこりができて細胞診をした時は心拍数が90倍くらい上がったものだ。

待つこと1時間弱

 診察室に呼ばれた僕に、先生はこう言った。

先生「レントゲンには何も写っていません。きれいに見えます。しかし、リンパ腫というほどではないのですが、リンパ球が少し多いです。微妙なんですが、一応、専門の検査機関に検体を送って詳しく診てもらいましょう」

 顕微鏡で見てもわかるくらいウジャウジャとリンパ球が増えていれば病院内でも断定できるそうだが、今回は「ちょっと多いかも?」くらい、らしい。
 「少しでも多いならリンパ腫じゃ・・・?」と思ったのだが、炎症があると一時的にリンパ球が増えることはあるので、一概には言えないとのことだった。
 つまり、リンパ腫ではないかもしれないけど、そうじゃないとも言いきれない雰囲気。一番お腹痛くなるやつ。はっきりして・・・。

 リンパ腫は、怖い。それは素人の僕にもわかるし、動物のリンパ腫は基本的には治せないというのも知っていた。怖かった。

先生「猫の鼻は検査が最もしづらい部位です。うまく組織が取れないことも多いので、陰性でも100%安心というわけではありません。本格的に調べるには全身麻酔でのCTが必要で、費用も時間も、猫への負担も大きいんです」

 ひとまずは、検査機関からの結果を待つことに。検査機関で陰性が出てくれれば、100%ではないものの、確率は一気に下がる。
 陰性であってくれ・・・ただの鼻炎で、ちょっとお薬飲めばまた元通り。おにごっこしよう、筋トレもしとくからね。
 そんなふうに思いながら、帰宅した。

 

6月5日

 数日後、鼻の検査結果が届きました。
 専門機関からの診断は──陰性。「確かにリンパ球は多めだけど、炎症による一時的な増殖だと思われるぽよ」的なことが記されていた。(※もっとちゃんとした表現で書かれています)

 よかった・・・!
 レントゲンにも写っていない、検査機関の結果も陰性。これならセーフじゃないか・・・?
 安堵した。肩の骨が抜け落ちるくらい安心した。
 でも、先生はなぜか、

先生「リンパ腫じゃなかったとしてもポリープがあるかもしれないし、腫瘍がある場所の組織が取りきれなかった可能性もあります。検査棒が届かない位置に、リンパ腫があるかもしれない。その可能性もゼロじゃありません」

 やたら不安なこと言ってくる・・・精神衛生上よろしくないよ・・・。

 帰宅すると、うっすらではあるが、また鼻血が出ていた。しかし、うっすらでも鼻血はダメだ。
 これは流石に心配で、すぐに病院に電話。

先生「なるほど、そうしたら、一度CTの予約を取りましょう。うちではできないので大学病院の予約になります。かなり混んでいるので、数週間~1ヶ月先になるかもしれませんが、今日中に予約しておきますね」

 即座にCTの予約をしてくれた。

(次のページへつづく)

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愛猫が余命20日と宣告されました
著:響介 監修:服部幸


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