【試し読み】その時は突然にやってくる『愛猫が余命20日と宣告されました』(1)
6月6日
鼻、鼻!!!と鼻のことばかり意識して過ごす日々。鼻血は出ていないか!? イビキはかいていないか?
毎日心配しながら見守っていたが、あれ以来鼻血は出ていない様子。調子は良さそうに見える。
3週間後のCTの予約まで経過観察。焦る気持ち、ドキドキする気持ち、いろいろあるが、それらも少しずつ落ち着いてきている。
しかし、そんな生ぬるい自分の考えが、一瞬にして崩れ落ちることになった。
ポポロンが、トイレに入っていない
朝の日課、トイレ管理アプリの記録をチェックすると、前日から入った形跡がない。翌日も、どうやら使っていない。
猫がトイレをしないのはまずい。猫はおしっこをしなくなると尿毒症といって、排出されるべき毒素が身体に回って、命に関わる重篤な症状に陥る。
そして何より、トイレをしなくなる前日、前々日に、やたらトイレに行っていた(多尿)。多尿は腎臓系の病気の兆候。そのうえ、急にご飯も食べなくなった。
衝撃的だった。給餌器からご飯を出せば頭からツッコみ、お皿に移す僕の手にタックルをかましぶちまけ、誰よりもガッツリ食べていたポポロンが、一口も食べない。
お皿には近づく。匂いは嗅ぐ。でも、食べない。ぐったりしているわけでもなく、吐くわけでもなく、普通に動いているのに──ただただ、食べない。
不安になり、普段はあげないおやつや匂いの強いパウチを出して誘ってみるが、チラッと見て、スッ・・・とどこかへ行ってしまう。
明らかな異常だ。
突然ご飯に飽きて、急に食べなくなるのは猫では稀にあること。ご飯をちょっと食べないだけなのであれば、正直こんなに焦らない。
でも、トイレもしない。食べようともしない。こんなのどう考えてもおかしい。
「もしかしたら寝ている間に食べるかも」そう思ってこの日はご飯を出しっぱなしにして、眠りについた。
翌日も全く食べない
翌朝、多めに出しておいたご飯の皿を見ると・・・空っぽ!
お! 食べた!! よかった・・・と、監視カメラで確認すると、真っ黒い影──ボコたんが全部食ってる。
このデb・・・ボコたんめ・・・。
いや、ふざけてるように聞こえるけど、多頭飼いでは本当にこのご飯やトイレの管理が難しい問題なのです。誰のかわからない、いつしたかわからない。
すぐに病院へ。猫を病院へ連れて行くのは、気が重い。猫へのストレスも大きいし、なにより「怖い宣告」があるかもと思うと不安で仕方ない。しかし、だからといって後手後手に回っては猫のためにならない!
猫は喋れない。だから人間が判断するしかない。即!動く。
病院に着くなり、先生が開口一番。
先生「お腹のエコーをしましょう」
と言い放った。
普段は「検査は猫のストレスになるから、できるかぎり控えて慎重に」というスタンスのはずの先生。ストレスを最優先に考える先生に、なんの確認もなしに検査を打診されるのは初めてのことだった。
6月7日
「待合室でお待ちください」と言われ、数分待つことに。
いつもはこの診察室で「うちの子、いい子だから静かだな~」とか「よく考えたら僕以外のやつに猫触られてるとか腹立ってきたな?」とか、余計なことばかり考えてるのだが、今日は空気が違った。
動物愛が強すぎて、エコーのために仰向けにするのすら「ストレスだからね~」と言うほど猫ファーストな先生が・・・? 先生も何かを感じたから、エコーをやらざるを得なかったのだろう。何があるんだろう。
腎臓? 胃? 腸? 心臓・・・?
それとも精神的な要因?
待ち時間はたかだか数分だったのだが、8時間くらいに感じた。
え、家賃払った方がいいかな? 早く呼ばれたい、でも呼ばれたくない。
「響介さ〜ん」
呼ばれた先にいたのは、ひっくり返されて寝転がるポポロン。可愛い。思わず0.2 秒くらいニヤニヤしてしまったが、リアルタイムでエコーを見せられるってことは、何かあるんだ。
先生が神妙な面持ちで話し出した。
先生「腎臓の周りに腹水が溜まっています」
・・・うん・・・だから何?
響介「ズバリ、どういうことですか」
先生「何かしらの腫瘍がある可能性があります。それと・・・腎臓が片方ぐちゃぐちゃになっていて、あまり機能していません」
この言葉を最後に何一つ、先生の言葉が入ってこなかった。右側の腎臓が破壊されていた。素人目にも異常な形とわかる。左の腎臓も形が悪い。これは、もしかして・・・
最も恐れていた“ アイツ”
腎臓の周りの腹水。それは腎臓に何かしらの不具合が起きることで発生している。代表的な異常、病気は、腎臓病、がん、リンパ腫。
どれも、猫の寿命を最も縮めている、センスのないクソ野郎どもだ。無意識に選択肢から除外していたが、そのどれかかもしれないなんて。
響介「CTの予約日まで数週間ありますけど、それを待たなくてはいけませんか? 一刻を争いますよね?」
先生「腹水のあたりに針を刺して、腹水を抜いてリンパ球の状態を診ます。リンパ腫以外の異常でもある程度原因がわかります」
そうして、即座に腹水の検査が行われた。
頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む、頼む頼む。
どうかリンパ腫じゃありませんように。
薬だって通院だってなんだって頑張るから、ちゃんと完治するものであってくれ。
ただただ「最悪の事態だけは起きるな」と祈ることしかできなかった。
(次のページへつづく)
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『愛猫が余命20日と宣告されました』
著:響介 監修:服部幸