【試し読み】無慈悲な寿命とリンパ腫の怖さ『愛猫が余命20日と宣告されました』(2)
猫の健康には人一倍気を付けていたはずなのに…。5匹の猫と暮らす著者が、ある日愛猫の「余命20日」という宣告を受けてから、病気と全力で向き合い、闘った全記録。今まで誰も書けなかった、触れられなかったことまで徹底的に詳しく、そしてリアルに書き残しました。
2025年9月27日に発売される『愛猫が余命20日と宣告されました』(著:響介)より、第2章「無慈悲な寿命とリンパ腫の怖さ」を公開します。
【試し読み】第1章「その時は突然にやってくる」はこちら。
6月10日
この闘病生活では、もう二度と泣かないと誓った猫マスター。僕には、ポポロンだけでなく、リュック、ソラ、ニック、ピーボ――全猫を守る義務がある。
だって猫は、自分で住む家を選べない。人間が勝手に連れてきて、勝手に愛しているに過ぎない。だからこそ、猫たちが最高の幸せを得られるように、最大の努力をする責任があるんだ。
・・・この言葉、ブログで何度も書いてきたけど、今こそ改めて、自分に投げかける。もう泣かない。もう負けない。
ウイルス騒動の時も、もうダメだと思った。あの時はリュックの肥満細胞腫の手術をきっかけに、5匹全員がウイルス感染してしまって、ひっきりなしに吐く、ご飯を食べない、全く動かない・・・というまさに地獄のような状況だった。
でも、何度もダメだと思うたびに立ち上がって、戦ってきた。
その結果が今だ。みんな元気。みんなのために家まで建てた。毎日“猫圧”して、楽しく暮らしている!
だから、今回も絶対大丈夫。いつだって、僕ら家族が勝つんだ。今世紀最大の大号泣をかましつつ、そう誓いながら、
未来のポポロンへ2通の手紙を書いた
2通。
一つは、治療がうまくいって、また猫圧の先陣を切ってるポポロンへ。もう一つは、治療がうまくいかなかった、余命が来てしまった未来のポポロンへ。
僕はこの手紙を、これから自分が本当にその未来を通ってきたかのように、何時間も何時間もかけて、妄想して想像して、「どちらかの未来」にいるポポロンへ、書いた。
投薬なのか、入院なのか、食事やトイレの補助が必要になっているのか、全て調べられるだけ調べて、それらを終えたポーチーを未来から俯瞰(ふかん)するイメージで書いた。
薬、辛くなかった? 多分僕●●するの下手だよね、ごめんね・・・でも僕のことだからこれはこうしてるでしょ? キモい? とか。まだ起こってもいないことを勝手に妄想して、勝手に泣いて。
それだけじゃない。出会った日からの思い出、好きなところ、楽しかったこと・・・たくさん詰め込んだ。こんなの、意味なんてないかもしれない。いや、正直意味ない。全く。
でも手紙を書いてる間にマジで5000万リットルくらい涙が出た。
しかしこれで僕は・・・
タイムリーパー
「誰かを救いたくて」タイムリープをしてきた猫マスター、爆誕!である。ポポロンを救うために未来からやってきたぜ!
手紙を通して未来を疑似体験してきた男は、もう迷わない。
是非読者の皆様も、覚悟を決める意味でも、心を落ち着ける意味でも、そして前向きに歩くためにも、このお手紙戦法、やってみてください。
いざ病院へ向かう
病院から電話が鳴った。1コールも待たず出た。
先生「検査は無事に終わってゆっくり休んでますよ~!」
・・・よかった、本当によかった。
数値が悪くて即入院になって、そのまま会えなかったら・・・なんて展開まで考えてしまっていた。
でも、どうやらそれは乗り越えた。
さあ、ポポロン。泣き尽くした僕の目玉は今、2ミリくらいしか開いてないけど、もう泣かないって決めた猫マスターは、強いぜ? 大船に乗った気持ちで任せてくれ。
大丈夫。手紙も書いた。調べ尽くした。猫たちにも状況説明済み。闘病の準備も、心の準備も、手紙の準備も、全部整ってる。
6月11日
病院に到着し、詳しい説明を聞くことに。
ところでこの病院にはドアが二つあり、重い話の時は右側のドアから呼ばれるという恐怖のローカルルールが存在する。(機材の関係らしい)
案の定、右のドアから入室。
先生「とても残念ですが、やはりリンパ腫であることは確定です」
・・・改めて、最悪だった。先生は続けた。
先生「一つラッキーだったのは、エコーで確認する限り他の臓器には飛んでいないようなので、とにかく腎臓と、おそらく・・・この感じだと鼻にもいるので、そこを潰すことを目指しましょう!」
リンパ腫の治療法は?
治療としては、抗がん剤(化学療法)や放射線治療、外科手術が中心となる。しかし、いずれも副作用や麻酔など命がけの治療になることも多く、費用も高額なため選ばない人も多いらしい。
そうなるとステロイドでの緩和治療(効果は数ヶ月らしい)や、出てきた症状だけに薬を処方し、できるだけ苦しまずに最期を迎えさせてあげるという方法も選択肢としてある。
でも僕個人はというと、もう気持ちは決まってた。
抗がん剤でも放射線でも手術でも、寛解率が高いやつでお願いします!!!
先生「放射線治療や外科手術だと全身麻酔を何度も行ったりリスクがあるのと、大学病院の予約待ちになったりするので、今の状態ならすぐに始められる抗がん剤がいいと思います」
抗がん剤治療は、寛解を目指す延命治療。でも、現実は非常に非情。恐るべきはその再発(再燃という)速度で、多くは半年以内に再発する。なんと、治療が終わって翌日に再燃する子もいるらしい。
そうなったらどうするか? もう一度抗がん剤を打ちます。しかし耐性がついてしまっているせいで、再燃後の抗がん剤は効き目がガクッと落ちる。全く効かなかったり、効いても効果が持続しなかったりするらしい。
抗がん剤は1~2回打って終わりじゃない。毎週、毎週、打つ。それを半年間(ワンクール)。抗がん剤を毎週打ち、血液検査や必要に応じてエコーやその他の検査も。
そして、症状が軽減して調子が良くなってきたとしても、計画している治療は最後までやる。途中でやめたりはせず、副作用があっても、身体が持つならガンガン抗がん剤を打っていく。
その間、猫は辛い思いをするわけです。責任重大なんです。
それが、抗がん剤治療。
肝心の余命は
響介「ところで先生? ポーチーって、もし治療をしなかったら、よ、よよ、余命って・・・どのくらいなんでしょうか?」
先生「余命20日以内くらいです」
え?
20日? 20日って・・・1ヶ月も一緒にいられないってこと?
え? ・・・え?
全く意味がわからない。何を言ってるんだこの人は。聞き間違いか? もしかして20年って言った? わ~長生き〜29歳じゃ~ん。って、そんなわけないよね?
僕の頭はパニックだった。
でも、先生はリンパ腫の専門書みたいなものを見せてくれて、そこにははっきりと、「無治療の余命:2日~30日程度」と書かれていた。
ポポロンは早期発見できた方だとは言われた。体表に現れる症状(しこり)などがないのに気が付けたのは、尿や便の状態を記録してくれるスマートトイレのおかげだ。文明の利器に感謝。
それでも余命は20日。「ご飯1日くらい食べないなら様子見でいいかな?」とか「来週でいいや」「次の定期検診で~」とか悠長なことを言っていると一体どうなるか・・・。
しかし、本題はここからだろ?
だって、「無治療の余命」の話なんて、僕には関係ないんだよ。治療、するに決まってるから!!!
聞かせてもらおうじゃねぇの、「寛解後の余命」ってやつをよ!!
抗がん剤治療がうまくいった場合、その後の余命がいかほどに延びるのか。
皆さんもそれが気になるだろう。人間でも「寛解状態が続いています」と言って何年何十年がんが出ない人も多い。
その確率とかデータ、平均、中央値、聞かせてや!!!
(次のページへつづく)
\Amazonにて予約中!/
『愛猫が余命20日と宣告されました』
著:響介 監修:服部幸