【試し読み】無慈悲な寿命とリンパ腫の怖さ『愛猫が余命20日と宣告されました』(2)


6月15日

 1週間に一度注射と血液検査の合計30分~1時間くらいだけ外に出れば、後は普通の生活を送れる。こう聞くと本当に希望を持って、前向きに、愛を持って、治療を進めることがいかに大事かわかります。
 が・・・問題があるのです。多頭飼いだと。

抗がん剤は体外に排出される

 抗がん剤は化学物質。自然界のものではないので、体内で消化されて消えてなくなって~なんてことはない。投与後しばらくは、おしっこ、うんち、唾液、体液といった形で体外に排出される。
 厳密にいうと、シクロフホファミドは腎臓系なのでおしっこに混ざる、オンコビンはうんちに混ざるなど、抗がん剤ごとに気を付けるべき対象が存在する。科学的にさらに厳密にいえば、呼吸しているだけでも気化され空気中に散っているとか。つまり多頭飼いの場合、完全隔離をしないと「危険」はあるわけで・・・。

 ただ、僕の信頼する先生はこう言ってくれた。

先生「お医者さんによっては完全隔離しろ、という方もいるでしょうが、実際は身体から出たものでどこまで影響があるかはわかりません。

細かく気にしすぎても、飼い主さんが精神的に耐えきれなくなりますし、猫にも結局ストレスになってしまい本末転倒です。最低限のラインだけはしっかり守って、あとは無理なく過ごせる範囲で大丈夫ですよ」

 というわけで、我が家で決めたルールがこちら。

◎トイレは完全に分ける
これは絶対だった。他の猫がポポロンの排泄物に触れたら、そのあとの毛づくろいで舐めてしまうリスクがある。おしっこしそうなムーブを感じたらポポロン専用のおトイレを出してそこにしてもらう。夜はケージの中で寝てもらい、ケージの中に専用トイレを設置。
正直なかなかハードだが、全員の安全のためには徹底すべき。

◎トイレ掃除は手袋装備
抗がん剤の含まれたうんちやおしっこは人間にもよくないので、しっかり手袋装備で対応。そして処理したゴミ袋も二重にして密閉。

◎僕が見ていない時間はケージに
これが大変心苦しい・・・。しかし、僕が寝ている間にみんなと同じトイレを使ってしまったら管理ができないので、物理的に対応の難しいところはケージで過ごしてもらう。

◎毛づくろい対策(抗がん剤3~4日目まで)
みんながポポロンの身体を舐めないように注意する。毛づくろいはそこまで神経質にならなくていいらしいけど、念の念の念のため。

◎トイレ後は換気!
そこまでする必要はないと言われていますが、シンプルになんとなく換気をしたいというだけっちゃだけ。気休めみたいなものです。

◎逆に4日目以降はフィーバータイム
抗がん剤が抜けきったであろう日数を越えたあとは、みんなで楽しく過ごす! トイレだけは引き続き気を付けていこうと思う。

­ きっとそれぞれの家庭ごとに、いい塩梅(あんばい)の間があると僕は思っています。
 抗がん剤についての話が長くなってしまったが、それらの説明を受けたのち、いよいよ1本目の注射、L-アスパラギナーゼを打つこととなった。

 え?
 いきなり知らん抗がん剤出てくるやんけ。

L -アスパラギナーゼとは

 このL-アスパラギナーゼという薬、COPには入っていない抗がん剤なのだが、近年の抗がん剤治療ではCOPの最初の段階で打つと効果が上がるとされていて、併用されることが多いらしい。
 簡単に言うと、めちゃくちゃ即効性があり、相性が良ければ大きい腫瘍も1~2日で小さくなる子もいる。でも効果の持続性がない。(5日~1週間で元の大きさに戻ってしまう)
 じゃああまり意味がないのではと思ったのだが、つまりは、大きい腫瘍を一度小さくしておくことで、あたかも元々腫瘍が小さかったかのごとく治療のスタートラインが切れる、というイメージ。

 確かに腫瘍が一瞬でも一気に小さくなったところでプロトコールを開始! 毎週ゴリゴリ抗がん剤を打っていったら効果強そう。素人目に見ても。
 グッシャグシャシワシワのワイシャツをアイロン掛けするより、その前にビシッと干してそもそものシワが少なくなってればアイロン掛け楽だよね!的なね!(例え下手すぎ)
 あ! 洗い物の時一旦お水につけておいたらいいよ!的な感じだね!!!(なぜ例え続けたい)

 というわけで。いよいよ、ポポロンの抗がん剤治療、始まります。

 

つづきはこちら(2025/9/25公開) 
【試し読み】抗がん剤治療『愛猫が余命20日と宣告されました』(3)

­本書の内容は、飼い主である著者による実体験に基づく記録です。ただし治療内容については全ての背景を網羅しておらず、また、医学的・専門的な表現をわかりやすくするために言い換えている場合もあります。あくまで一例としてお読みください。猫の病状は個体ごとに異なりますので、必ずかかりつけの獣医師の診察を受けたうえで、適切な治療を行ってください。

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愛猫が余命20日と宣告されました
著:響介 監修:服部幸

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原作:響介
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響介
本業:猫マスター
副業:作編曲家、サウンドプロデューサー、ギタリスト、音楽大学非常勤講師
保有資格:【猫健康管理士】【猫疾病予防管理士】【猫のシニア生活健康アドバイザー】

猫と追いかけっこがしたくてマンション購入。猫ともっと本気で追いかけっこしたいがために注文住宅を建築。曲の締切、猫のご飯の締切、住宅ローン(残り30年)に日々追われながら猫たちとのおにごっこの必勝法を模索する日々を過ごす。おにごっこで勝つために次は山か島を買うらしい。
著書に『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』(ワニブックス)、『猫を飼うのをすすめない11の理由』(サンマーク出版)、『下僕の恩返し』(ビジネス社)がある。

ブログ「リュックと愉快な仲間たち」 https://rikkusora.com/rikku/
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