【試し読み】抗がん剤治療『愛猫が余命20日と宣告されました』(3)


猫の健康には人一倍気を付けていたはずなのに…。5匹の猫と暮らす著者が、ある日愛猫の「余命20日」という宣告を受けてから、病気と全力で向き合い、闘った全記録。今まで誰も書けなかった、触れられなかったことまで徹底的に詳しく、そしてリアルに書き残しました。

2025年9月27日に発売される『愛猫が余命20日と宣告されました』(著:響介)より、第3章「抗がん剤治療」を公開します。

【試し読み】第2章「無慈悲な寿命とリンパ腫の怖さ」はこちら

 

6月16日

現状、ポポロンはご飯を食べられない

 ポポロンは鼻血が出て病院に連れて行った段階で、ご飯は食べられなくなってしまっていた。このまま何もしなければ、余命は「20日以内」とまで言われている。この事実は、変わらないのだ。
 もし、L-アスパラギナーゼが効かなければ、このまま食欲が戻らない可能性だってある。そうなれば、命の危険のある肝臓の病気「肝リピドーシス」や、他の病気の併発のリスクも出てくる。
 緊張状態は変わらない。

帰宅後、いい意味で裏切りが

 副作用なのか、元気はない様子。しかし、ご飯を出してみると・・・かなりの量を食べた。ステロイドの食欲増進効果によるものだろうか。
 病院に連れていく前、1日半ほど何も食べていなかったし、その前からも食欲はかなり落ちていた。だから、薬のおかげだったとしてもとても嬉しい。同時に水もたっぷり飲んでいるので、脱水や肝リピドーシスの心配もなくなった。
 そしてなんと、頭を触れば、ポポロンお得意の頭グイーン!が返ってきた。

 ただし、やはり副作用なのか気持ち悪さもあるようで、ケージから出ようとせず、動く気配もない。とはいっても不思議なもので「ぐったり」ではなく、「回復のために休んでいる」という感じに見えた。
 ポポロン本猫がそうすべきと判断しているなら様子を見よう。

 気が付けば、ご飯のお皿はすぐ空っぽに。普段は1日2食だが、今はとにかく食べてほしいから、常にご飯を置いて、カメラでチェック。僕が寝ている間に食べた分も含め、グラム単位でしっかり管理する。
 投薬の方は、なぜか割と上手なので、サッと口に入れて、シリンジでお水をあげて、はいおしまい!
 ちなみに、なぜシリンジ? と思った方。錠剤は喉や食道に引っかかると、適切な効果が出ないだけでなく、食道炎や別の病気になることも。だから、しっかり水で流してあげましょう! シリンジは投薬時の絶対的必需品ですよ!

想像の500倍、楽な闘病

 少しずつでも確実に、良くなっている。実際、食べて、飲んで、うんちをしている。これが、抗がん剤。すごい。
 一気に希望が湧いた。

 

6月17日

突如問題は起きた

 朝昼晩と薬をあげていたら、ポポロンが薬を拒否し、スムーズにいかなくなってきた。3日目の夜からは、薬を見るや否や舌をペロペロ、口をパクパク。挙げ句、手まで使って「意地でも飲まん!」という鉄の意志を感じる。

 でも、嫌だからやめようというわけにはいかない。
 半ば無理矢理にでも投薬する。猫の負担にならないよう、普段は抱っこすらあまりしない僕にとって、逃げないように押さえつけたり、猫が嫌がることをしなければならないのはかなりの苦痛です・・・。
 力ずくではなく、どうにか優しく優しく、そしてうまくうまく、と頑張っていたが、ふと見ると、僕の手に赤いものが。ポポロンの・・・血。
 ポポロンの顔を見たら、なんと血を吐いていました。

 焦って病院の先生に診てもらうと、薬が嫌で舌を動かしまくっている間に自分の舌を噛んでしまったらしい。抗がん剤治療中は免疫が落ちているので、ちょっとした怪我も感染症リスクが高まる。そんな状況で、口の中に怪我。
 僕はなんて最低な飼い主なんだ・・・。ごめん、ごめんよ、痛いよね、辛いよね、ごめん・・・ごめん・・・。唱えるように謝った。

 とりあえず現状は、傷さえ治れば問題ないとのこと。抗生物質も出ているし、大丈夫なはず。
 それからは、今まで以上に気を付けて投薬を行う。ステロイドはかなり苦いらしく、少しでも口に滞在してしまうと「そんな量出る?」ってくらいのよだれが出る。床がびしょびしょになります。

力強く抵抗するということは元気な証拠!

 でもそれだけ強く抵抗してくれるのは、元気な証拠でもある。いっぱい抵抗してくれて、ありがとう。抵抗していいよ。僕なんて顔面でも腕でも手でも、ガンガン傷つけてくれて問題ないんだよ。
 毎日頑張る。今日も愛してる、今日も大好き。
 明日も明後日も、ずっと愛してる。

 

6月18日

 抗がん剤治療、4日目。
 長い。とても長い。まだ4日しか経ってないのに、毎日が不安で、毎日が怖い。
 でも、ポポロンが目の前にいてくれる。それだけで頑張れる。

 ほとんど眠れるわけのない夜を越え、朝になり、頬をパチンと叩いて自分を奮い立たせる。
 「今日も、みんなのために頑張れ、自分」
 自分の精神が乱れていては、冷静な判断なんてできない。とにかく自分を保つことが大事だと、毎朝言い聞かせる。

早朝からポポロンに異変が

 ものすごいうるさい。
 薬イヤイヤバトルが深夜まで開催されていたので、寝たのは2時くらい。なのに! まだ4時! 早起きすぎやろ!
 もしかして、身体に異変が起きたのか・・・? と心配になり、飛び起きて様子を見てみると・・・ケージから出ようとしている。
 この3日間は、自分から出ようとする姿は一度もなかった。ケージ内のハンモックで寝て過ごすか、突然ちょろっとご飯を食べるか、僕がケージの隙間から触ると、

ポポロン「もっと撫でて~! ありがとぉ~~」

 と鳴いて甘えるくらい。
 それが、今日は違う。

 自分の意思で、ケージから出ようとしている!

 「ポーチー!」「きょーくーん」
 「ポーチー!」「すーきー」
 「ポーチー!」「なーにー」
 って言ってるね? 言ってるよね? キャワワすぎん?

 注射を打ってから4日目で、抗がん剤の影響もそろそろ抜けてくる頃だから、久々にみんなで遊ぼう。元気があったら、僕とも、おにごっこしよう。
 今日も、ポポロンにとっていい1日になるといいな。元気でいてくれてありがとう。鳴いてくれてありがとう。ケージを破壊する勢いで出ようとしてくれてありがとう。
 おにごっこは、全力でやるのが礼儀だもんね。任せてね。
 ポーチーが歩いてる。食べてる。大好き。
 また明日も会おう!!!

 

6月19日

 抗がん剤治療5日目を迎えました。

ついにフィーバータイム突入!

 5日目に突入したので抗がん剤も抜け、ここからは接し方も普段どおりの生活を送れる! 本当は3~4日目で自由にしていいとは言われているのですが、初回はケージに慣れてもらう目的も含めて、少し長めに時間を設けました。
 ということで開催!

 「ポーチー感謝の舞! チキチキ!(ちゅきちゅき) 可愛すぎて大感謝! 世界はポーチーを中心に回っているんだぞフェスティバルseason7」

リビングに出してあげると・・・

 すぐにダッシュ! いやめっちゃ元気!!
 お気に入りの爪とぎでガリガリと爪を研ぎ(いつもの5倍くらい!)、移動してまた別のガリガリ。
 さらに、お得意のおうちパトロールを開始。リビングをぐるぐると練り歩き、ポポロンが(半日)留守だった1階に異常がないか確認している。ソファに傷は増えていないか、トイレは汚れていないか、戸締り、床のお掃除・・・入念にチェックして、満足したら休憩所(つまり僕の膝)へ。
 ゴロゴロ喉を鳴らしながら、膝の乗り心地を確認するように、心なしかいつもより強めにニギニギしてくれてる気がする。
 治療開始前はご飯を食べていなかったので、すごく軽くなっていた。しかしこの数日でものすごく食べているので、膝に乗る重さもズッシリ復活しています。

 いいぞ~もっと太れ~。たくさん食べて、たくさん飲んで、ずっと僕がおにでいいからおにごっこもしよう。だから早く元気になれ~。
 そんなことを考えていたら、あっという間に1日が終わっていた。気が付けば全く働いていない。笑う。

(次のページへつづく)

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愛猫が余命20日と宣告されました
著:響介 監修:服部幸


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