【試し読み】抗がん剤治療『愛猫が余命20日と宣告されました』(3)
6月20日
抗がん剤初日から数日は、ケージから出たがることなんてないくらい、ただただぼーっとしてたのに、今は尋常じゃないくらい元気! すごく鳴く!
じつはあんまり仲良いわけじゃないポーチーとソラ
さて、今日は我が家の姫、ソラが登場する。ソラは突然ポーチーを叩いたりするため笑、微妙に仲がいいかわからない2匹。
しかしこの生活が始まってから明らかにソラが変わった。
ケージから飛び出してきたポポロンにスッと近づき、
ソラ「ちゃんと食べてるの? 元気なら元気感ちゃんと出しなさいよ」
とでも言っているかのような表情だ。いや、もしかしたら本当はこうかもしれない。
ソラ「あんたが元気じゃないと響介がうるさいから早く元気になって。めんどくさい」
なんにせよ、なぜか仲良く過ごしてくれて嬉しい。
一喜一憂の毎日
闘病生活がスタートしてから、みんなと暮らせる幸せを改めて痛感している。名前を呼んで返事がなければ、「あれ、元気ない?」と凹み、返事があれば「元気だ!!」と喜び。
ご飯を食べた。水を飲んだ。トイレをした。猫圧。ちゃんと寝てる。毛づくろいしてる。爪を研いでる。
その全部が奇跡で、全部が幸せ。
当たり前だと思ってた日常が、どれだけ尊いものだったか。わかっているようで、わかっていなかったんだな。
仕事中、ふと見守りカメラで様子を見たら・・・リュックと共にベッドで寝そべり散らかすポーチーの姿。
寝てるだけ。ただ寝てるだけ。これが幸せなんです。これをずっと続けてほしい。そのために、頑張るんだ。
明日、いよいよCOPプロトコールの1発目。ビンクリスチン(オンコビン)を打つ。一つ目の抗がん剤L-アスパラギナーゼは、ちょっと副作用があったけど、想像の何倍も調子が良かった!!!
ポーチーは、ほんとに強い子。だから、きっと大丈夫。
僕も頑張るからね。
6月21日
L-アスパラギナーゼを打ってからというもの、もうリンパ腫なんてないかのように元気になったポポロン。
本音では、「先生! もう治ったんで、病院行かなくていいです!」と言いたいところだが、もちろんダメなのはわかっている・・・。最後まできちんと治療を続けてこそ、プロトコールの意味があるのだ。
いざ病院へ。まずは血液検査を行い、数値を見てもらう。
白血球数や血小板数、その他の数値に異常が出ていると、次の抗がん剤を打つことができず、中断となってしまう。これが怖いところで、見た目は元気でも、何か異常があると、数値が回復するまで待たなければならないのだ。
プロトコールは「1週間に一度打つ」から成り立つ。間が空きすぎると、その間にリンパ腫が復活したり、転移したりしてしまう可能性がある。
気になる血液検査の結果は・・・
まっっっっっっっっっっったく問題なし!!!
喜びのあまり、「っっ・・・ファイヤー!」と叫びました。動物病院で。意味はわかりません。
とにもかくにも、今日また、抗がん剤を打てる。治療が続けられます。
抗がん剤治療って具体的に何するの?と思う方も多いだろうが、僕も無知の身からすると「めっちゃすんごい機械とかマシンとか道具とかアイテムを使って、いろんなことをめっちゃしたりしなかったりしながらすごいことをやる怖いやつ」となんとなく想像していたのですが、それはどちらかというと放射線治療の方で・・・。
L-アスパラギナーゼの注射自体は、ワクチンの注射とほぼ同じくらいの所要時間で終了する。
先生「は~い、ちくっとしますよ~、は~い終わり~」
たったこれだけ!
抗がん剤の種類によって点滴で入れるタイプ、血管注射、皮下注射などありますが、基本的にはサクッと終わります。そしてまた大量のお薬をいただき、お会計を済ませて帰るだけ!
早く日常に戻りたいので、すぐにポーチーを連れて帰る!
ビンクリスチンの主な副作用
ビンクリスチン(オンコビン)の腫瘍代謝部位は、肝臓分解の抗がん剤になるので、主にうんちから抗がん剤が排出される。つまり、「トイレを他の子と一緒にしない」という点は必須。
また、他にも注意点をいくつか先生から説明されたので、備忘録として、そして誰かのためになればと、ここに書き留める。
◎食欲不振、体重減少
食欲不振からの体重減少や、たとえしっかり食べていても、抗がん剤の副作用で体重が落ちてしまうらしい。
◎消化器障害
抗がん剤が腸の働きに作用するため、便秘や下痢などの消化器機能の障害が出ることがある。シンプルに吐き気からくる嘔吐や、便秘が悪化して腸閉塞(へいそく)のリスク、下痢になると肛門からの細菌感染リスクなど。どれもあってはならないので、整腸剤を出してもらった。
◎神経障害
特に怖いのがこれだ。ビンクリスチンは神経に障害を与えやすい特性があるらしく、手足のしびれ、皮膚の異常、特に重症化した場合は歩行困難や筋まひが起きてしまい、治療の中断を余儀なくされることもあるという。
とはいえ、そもそもそういう重い副作用が出ないように調整されており、先生が診てきた患者さんの中でもほぼほぼ出た子はいないらしい。
今回も、ステロイド、抗生物質、吐き気止め、整腸剤を処方されて、これを1週間あげ続けることになります!
6月23日
ビンクリスチンを打ってからの数日間のことをまとめて書こうと思います。
初日~3日目
抗がん剤初日からしばらくは意外と元気! ほんの少し気持ち悪そうに見えなくもないが、膝にも乗ってくるし、猫圧もする。ご飯も、帰るやいなやすぐ食べ出してくれて、感激。
いっときお腹を気にして舐める様子もあったので、舐め防止のエリザベスカラーをつけたが、それも時間と共に落ち着いてきた。
この調子で進んでくれればもはや最高である。
4日目~5日目の日中
抗がん剤は3~4日目以降からキツく出ることが多いらしいが、本当だった。明らかに気持ち悪そうで、ぼーっとしている。
それでも、調子自体は悪くなく、膝にも乗るし、猫圧もする! 手を出して握手会もしてくれます。ただ、食欲は少し落ちた。普段を10とするなら、5とか6くらいしか食べません。
5日目の夜
ここで突然変化が! じつは4日目の夜あたりからムニョムニョけっこう動き出しており、5日目夜からはソファでリラックスしてお腹を見せるようになった!
この数日間で、ポポロンの抗がん剤のサイクルが見えてきた。
初日は割と元気、3~4日目が少し調子が落ちて、5日目あたりから復活傾向。そして6日目をめちゃ元気で迎え、7日目でまた次の抗がん剤へ・・・。
副作用出るじゃねーか! 話と違う!とむかついていたが、よくよく考えてみれば、ゲーゲー吐くとか、手足が痙攣(けいれん)するとか、そういったやばいことが起きたのではなく、目立たない暗がりで「めちゃくちゃ安静にしている」という感じだった。
これは「副作用」云々(うんぬん)というより、ポポロン自身が体内の異変を察知して動きや食事をセーブしていただけなのでは?
確かに副作用の影響も多少はあると思うのだが、普通の猫ちゃんなら無視できるくらいの気持ち悪さなのに、ポーチーはけっこう神経質なタイプだから、ちょっとでも気持ち悪いならしっかり休む!というスーパー社会人的スキルなのかもしれない。
完全に僕に似てしまったな~。何を隠そうこの猫マスター自身、滅多に熱を出さないマンだが、微熱がちょっとでも出ようものならしっかり休むマンなので。
これは、闘病している当猫の最善ムーブだ! えらいぞポーチー!
6日目はご飯も7〜8割は食べられるようになっていた。この1週間を、また乗り切れた。
6月24日
アスパラギナーゼを含む抗がん剤投与から2週間が経った。
100%ではないが、みるみる調子が良くなるポポロン。もう鼻水も出ないし、鼻のブーブーいう音もなくなってきている。
いよいよ次の抗がん剤へ。今日は病院で血液検査だ。
先生「え、すごく元気ですね! 体重もほとんど落ちてないし・・・だいたい食欲が落ちたり体重減少くらいは副作用が出るんですが、強い子ですね!」
先生からお褒めの言葉をいただいた。さすがポポロン!
しかも朗報。抗がん剤は、最初の1〜2週間が一番強く副作用が出るらしく、初回1、2回で出ない子は、逆にこの先も出にくいらしい!
つまり、そこを乗り越えたってことは、今後も副作用は出にくい可能性が高い! これはなかなか希望がある。
そして血液検査の結果は・・・
全く問題なし。
先生「ええ!? 白血球も血小板もほとんど減っていないですね・・・すごいです! こんなに数値に変化が出ない子は珍しいです!」
流石(さすが)ポーチー。なんてったって9歳。まだまだ若いからね!! それにつよつよポーチーはゴミカスリンパ腫なんかに負けないのさ~!
ということで問題なく次の抗がん剤、シクロホスファミドを打てることに。
シクロホスファミドの主な副作用
シクロホスファミドは腎臓分解の抗がん剤になるので、おしっこから抗がん剤が排出される。投与した抗がん剤が腎臓を通って、膀胱内に溜まっていくため、「出血性膀胱炎」という副作用が出る可能性があるらしい。
出血性膀胱炎とは、名前の通り、膀胱から出血し、おしっこに血が混じる、排尿時に痛みを生じるというもの。
抗がん剤によって免疫力の落ちてしまっている状態で出血性膀胱炎になってしまうと、感染症などが複合的に起こる可能性があり、大変危険なのだ。抗がん剤が体内にまだ残っている状態で、おしっこを我慢してしまったり、水を飲まない状態が続くと膀胱に抗がん剤が滞在し続けてしまうことになるのだが・・・。そうなると膀胱に危険物(抗がん剤)がずっと溜まっている状態になるわけで、膀胱が刺激され、出血につながる・・・ということらしい。
抗がん剤が特に尿から排出されるのは24~48時間の間らしく、その間はおしっこをたくさん出させてあげないといけない。
対策としては、利尿剤を初日に投薬することで、おしっこをバンバン出させて膀胱に溜まらないようにし、未然に防ぐというものだった。「え、せっかく入った抗がん剤もバンバン出てしまうんじゃ?」と思ったが、出すもんは出しても効果は変わらないらしい。医学すげー。
とはいえ、先生の患者さんで、シクロホスファミドで出血性膀胱炎になった子はほとんどいないようなので、本当に念のため、という感じみたい。ただ、打った日と翌日におしっこが出ない場合は危険!ということは覚えておくべきだ。
今回のお薬は、ステロイド、抗生物質、整腸剤、利尿剤(初日のみ)。
ここまでほぼ問題なくクリアしてきたポーチーなら、シクロホスファミドも余裕なんじゃね!? と、最近は僕自身にも心の余裕が生まれ出し、家族全員で強くなっている感覚・・・!
6月25日
アスパラギナーゼ、ビンクリスチンを打って、食欲がうっすら落ちるのと少し気持ち悪そうな感じを除けば、基本的には割と好調なポーチー。
それに加え、先生の「経験上、ビンクリスチンの方がシクロホスファミドより副作用が出やすい」という言葉も背中を押し、謎に強い精神力で過ごせている。
はずだったのに・・・
この日、ポポロンはご飯を一口たりとも食べなかった。
(次のページへつづく)
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『愛猫が余命20日と宣告されました』
著:響介 監修:服部幸