【試し読み】抗がん剤治療『愛猫が余命20日と宣告されました』(3)
6月26日
シクロホスファミドを打ち、2日目。
薬をあげようとするとよだれが止まらなくなる。ブンブン首を振り、本気で、全身全霊で身を守ろうとする動きは野生そのものだ。
投薬ストレスって本猫にはもちろんですが、人間側も「嫌がる猫に強制的に何かをしなければいけない」というのが辛い・・・。
投薬に役立つグッズはたくさんあります。
◎ピルガン
噛まれるのが怖い、薬を素手で触りたくない、といった方におすすめです。ちょっとコツは必要ですが、喉の奥にポンと落とすにはとてもいいです。
◎投薬補助おやつ
こっちも、とても便利です。「おやつに混ぜちゃえば気が付かないうちに食うだろ」という猫をめっちゃ馬鹿にした商品! ぶっ飛ばすぞ!!(どこでキレとんねん)
ジャム状、ボール状といろいろあります。
・・・ですが、なぜ我が家では使わないのか。それはね・・・我が家の猫たち、天才なんです。(急に猫自慢)
というのも、過去に試したことはあるのだが、めっちゃきれいに薬だけ吐き出すんですよ。お~~!!! 食べた食べた!と思ったら、10 分後くらいに床に薬だけ落ちてるんですよ。怖くない・・・?
ダイレクトにあげれば飲んだかわかりやすいのだが、逆におやつと一緒にあげちゃうとそれが怖い。ただ、粉状のお薬にはめっちゃ有効です。(あ、もちろん吐き出さない猫ちゃんも多いので、そこはご自宅の猫ちゃんが天才か否かで判断してください)
もう一つの使わない理由
僕が投薬補助系のアイテムをできる限り使わないのには、もう一つ理由があります。補助アイテムを駆使した投薬を長期間続けるとね。猫は覚えてしまうんです。
するとどうなるか? 一番肝心な時に、その補助アイテムが使えない、なんてことになってしまったりするんです。
補助系おやつの味を覚えてしまったら、食べようとしなくなります。補助アイテムを見るだけで逃げるようになってしまったら、今まで以上に暴れます。だからこそ、「絶対に失敗してはいけない状況」でのみ使おうと決めているんです。
今、僕らが行っているのは抗がん剤治療。投薬期間も数ヶ月、半年、長ければ年単位になります。本当に肝心な時に薬を飲めない、なんてことにならないよう、僕の指が、時間がいくら犠牲になろうと、まずは身ひとつで頑張りたい、そんな気持ちでおります。
2日目の様子
ご飯をほとんど食べてくれない。カリカリとパウチ、どれも見向きもしない。やはりご飯を食べないのが一番心配だ。
とはいえ、無理に食べさせたりせず、ある程度自由にさせる。日向ぼっこして、お散歩すればお腹もきっと減ってくれるだろう。そんな期待を持って見守りながら、僕も(久々に)お仕事。
最近ちょっと疎(おろそ)かだった毛づくろいもたくさんしている。偉いぞ! 膝にも乗ってくれて、とても気持ちよさそうにしている。
夜はまた少しだけ、少しだけどパウチを食べてくれました。
絵に描いたような一進一退が続く。不安だ。でも、ポーチーと仲のいい看護師ニックと、野次馬ボコたんが傍で見守ってくれてる。
この数日間、「食べた!」「食べない・・・」「食べ・・・てない!?」「食った・・・!!」をひたすら繰り返している。改めて抗がん剤治療は、飼い主側のメンタルもかなり試されていると感じた。
冷静でいなければいけない。わかっていたはずなのに、目の当たりにするとかなりオドオドする。
でも、感情的になったり感傷的になったりするに決まっているのが抗がん剤治療。今ここにいる最強に可愛い愛猫たちとの時間を大事に、そしてその時間を無限に延ばすために、ひたすら頑張るのである!!!
6月27日
3、4日目はやはりダルそう
アスパラギナーゼ、ビンクリスチン、シクロホスファミドと打ってきた中で、「何日目がきつそうか」がわかってきたのは、対策を立てるうえでも大きい。
ご飯は、いつもの量の5分の1くらい。いや、下手したらそれより少ない。普段はご飯を出してしばらくしたらお皿を片付けるが、闘病中は自分のペースで食べてほしいので、基本的には出しっぱなし。
とにかく一口でもいいから食べてくれ~と、願いながら寝る。(寝れてない)
すると深夜、ケージから「カチャカチャ・・・」と音がする。
おお!!! 食べてる!? これは食べてる音!?!?
飛び起きたい気持ちを抑えながら、スローモーション的ムーブでそ~っと様子を見てみると・・・ボコたんがケージの外から手を伸ばし、めっちゃお皿の中のご飯をほじくり返そうとしている。
「この食い意地はったデb・・・」と一瞬思いつつ、「みんなも、一緒に頑張ってくれてるんや。そりゃ腹も減るよな・・・」と言い聞かせて、目をギラつかせるボコたんを引き剥がす。
「ごめんね。明日、みんなでおやつ食べようね」
その時。
なんとその後ろで・・・
ケージの中のポポロンがご飯を食べ始めた。
ボコたん・・・もしかして「これ、食べたら美味しいよ。食べないなら私が食べちゃうよ?」って、やってくれてたのかな?
いつも食い意地はったデブとか言ってごめんな。我が家の猫たちはみんな、愛に溢(あふ)れていたんだ。ありがとう。
ご飯を食べたポポロンは、すぐさまおしっこもした。
食べて、排泄して。少しずつでも、やってくれれば健康の証です。
一喜一憂の毎日だけど、今、元気なポポロンが目の前にいる。それだけで前進。ありがとうポポロン~。
6月28日
ぱっと見、元気風になってきた
この日、ケージから出してお散歩タイムを設けてみたところ、久々に日課のパトロール開始! 散々歩き回ったあとは、定位置のベッド型爪とぎへ。
ここは陽がたくさん入る、日向ぼっこ特等席。他のみんなも大好きだけど、不思議なことに誰もポポロンの邪魔をしない。優しいなあ。
強いて言うなら「あたたかい?」「きもちいい?」「さむくない?」とやいやい絡んでくる僕が一番の邪魔者である。
この日向ぼっこを実現させるために、家を建てた時に2400mmサイズの特注の窓をつけたのだ。適度に運動をして、適度に日向ぼっこして、しばらくしたらみんなとくっついて、すやすや寝ている。
ポポロンが幸せな時間を過ごせてるようで、僕まで幸せ。
6月29日
シクロホスファミドの1週間が終わった。抗がん剤治療が始まってからというもの、毎日が長くて、短い。でも長い。と思いきや短い。
おしっこ1回。うんち1回。ご飯を1粒食べた、全く食べない。
ポポロンの1ムーブごとに飛び起きて、喜んで、憂いて、トイレをしたらすかさずゴム手袋装備で掃除。
寝ていても、ポーチーの気配を感じたら反射的に起きてしまう。
それでも、ポーチーばかりに気を取られて、他の子たちに寂しい思いをさせないよう、みんなともたくさん過ごす!
ポーチーとの時間が増える、イコールみんなとの時間も同じくらい増やす! これが猫マスターの流儀!!
つまりポーチーとの時間が3倍になったのなら、みんなとの時間も3倍×4匹分!
よって僕の1日は、24時間から36時間へ自動延長!(支離滅裂)
こうして僕はやがて猫との無限の時間を手に入れることに成功。概念的にはもはや猫と一体になり猫を中心とした法律を生み出しやがて自分自身も猫となり世界中の猫と共に猫の惑星へと移住するのだ。(看病疲れが変な方向に出てしまった残念な例)
仕事をしてても頭の中は猫でいっぱい。(それは元から)
そんな毎日を積み重ねているうちに、とっても大事なことを忘れていました。
ポーチーの余命宣告は20日
そういえばこの闘病が始まる時。「余命20日」と告げられた。
しかし、支離滅裂の謎理論の思考であわあわあわあわ過ごしているうちに「余命20日」を超えることができました。知らないうちに。
いや、ちゃんと数えとけよ・・・。
僕もそう思った。でも、そんな余裕もないくらい毎日が毎日が嵐のように過ぎ去っていきました。
そして今思うのは、「余命」とか「何日」とか、あまり考えない方がいい、ということ。
もちろん、余命を乗り越えたから満足なんてことはなく!!! 目指せ余命8350年なので、僕たちの頑張りが止まることはありません!!! むしろここからが本番だ!
つづきはこちら(2025/9/26公開)
【試し読み】2度目のビンクリスチン『愛猫が余命20日と宣告されました』(4)
本書の内容は、飼い主である著者による実体験に基づく記録です。ただし治療内容については全ての背景を網羅しておらず、また、医学的・専門的な表現をわかりやすくするために言い換えている場合もあります。あくまで一例としてお読みください。猫の病状は個体ごとに異なりますので、必ずかかりつけの獣医師の診察を受けたうえで、適切な治療を行ってください。
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『愛猫が余命20日と宣告されました』
著:響介 監修:服部幸
\響介家のマンガも発売中!/
『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』
原作:響介
漫画:ちとせ
お知らせ
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響介
本業:猫マスター
副業:作編曲家、サウンドプロデューサー、ギタリスト、音楽大学非常勤講師
保有資格:【猫健康管理士】【猫疾病予防管理士】【猫のシニア生活健康アドバイザー】
猫と追いかけっこがしたくてマンション購入。猫ともっと本気で追いかけっこしたいがために注文住宅を建築。曲の締切、猫のご飯の締切、住宅ローン(残り30年)に日々追われながら猫たちとのおにごっこの必勝法を模索する日々を過ごす。おにごっこで勝つために次は山か島を買うらしい。
著書に『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』(ワニブックス)、『猫を飼うのをすすめない11の理由』(サンマーク出版)、『下僕の恩返し』(ビジネス社)がある。
ブログ「リュックと愉快な仲間たち」 https://rikkusora.com/rikku/
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