【試し読み】2度目のビンクリスチン『愛猫が余命20日と宣告されました』(4)


猫の健康には人一倍気を付けていたはずなのに…。5匹の猫と暮らす著者が、ある日愛猫の「余命20日」という宣告を受けてから、病気と全力で向き合い、闘った全記録。今まで誰も書けなかった、触れられなかったことまで徹底的に詳しく、そしてリアルに書き残しました。

2025年9月27日に発売される『愛猫が余命20日と宣告されました』(著:響介)より、第4章「2度目のビンクリスチン」を公開します。

【試し読み】第3章「無慈悲な寿命とリンパ腫の怖さ」はこちら

 

6月30日

思い立った猫マスター

 調子が良かったり悪かったりを繰り返しつつ、ビンクリスチン2度目を打ちに病院へ!
 この日から、なぜか「病院の前には一緒に写真を撮ろう」という謎の意志が芽生え、記念撮影を始めるようにした。

 ポーチーもスマホを見てちゃんと写り確認してるな~えらい。君はいつだってイケメンさ。
 僕は自分の顔が写るのが嫌すぎるので(ドブスなので)、基本は僕視点の猫の写真しかないのです。でも一緒に戦ってるんだから、写真くらい残したいじゃないか! と思い立った次第です。
 その勢いのまま、デュフデュフ言いながら車に乗り込み、レッツラ病院!

猫マスター大事件を起こす

 診察台にキャリーを乗せ、いざ診察!

響介「さあ! 今週のポーチーはいかがでしょうか!? たくさん運動もしてきたから幸せフェイスですからね、ぐふふ!」

 と、先生にポーチーの可愛さを自慢しようとしたのだが・・・カバンに! ポポロンが! いない!

響介「え!? いない!?」
先生「・・・・・・」

 ポーチー、一体・・・どこへ行っちゃったの・・・?

 記憶を辿(たど)ること数分・・・ああ・・・ポーチー・・・置いてきたわ・・・家に。
 そう、あろうことか猫キャリーだけ持って、ポポロンを入れ忘れたまま丁寧にチャックまで閉めて、病院まで来てしまったのであった。
 ということはだね。

 「お散歩楽しかったねえ〜」「病院怖いでちゅねえ〜」「スンスンスン(匂いでポポロンを感じる)、今日も健康体ですっ!」などとキャリーに向かってずっと話しかけていたわけで。
 治療が必要なの、ポーチーじゃなくて猫マスターの方だな。

先生「余程お疲れなんですね・・・」

 ガチ心配される始末。
 ということで、急いでポポロンを迎えに帰って、出直しです。

 

7月1日

血液検査の結果は・・・?

 「響介さ~ん」
 診察室に戻ると、先生が笑顔で一言。

先生「なんの問題もないどころか、これまでの抗がん剤の中で一番数値がいいです笑」

 今回の血液検査は、とにかく大事だった。なぜならこれでCOPプロトコールに必要な抗がん剤を一通り打ち終えたことになる。
 アスパラギナーゼ→問題なし。ビンクリスチン→問題なし。シクロホスファミド→問題なし。

 つまるところ、あとはこの3週間をひたすら繰り返していくのみ! 他の猫たちもこの生活に慣れてきたし、僕もルーティンに慣れてきた。
 無事に2度目のビンクリスチンを打ち、帰宅する。

 

7月2日

希望と、不穏な予感

 希望に満ちてスタートした2回目のビンクリスチンだったが、様子がどうもおかしい。食欲がガクンと落ち、食べても一口、二口(カリカリ2〜4粒)。人間でいえば、ご飯をお箸で1回つまんだ程度だろうか。
 とはいえ、1週目も食欲が落ちる日はあったので、不安になりつつもとにかく平常心!
 「今食べなくても、夜食べればいい。もし1日食べなくても、次の日食べればいい」と自分に言い聞かせる。焦りすぎてはいけない。

 猫は毛づくろいでストレス値が測れる。
 一部分しか舐めない、舐め忘れがある、過剰に舐めすぎる、毛づくろいが雑になる、といった時はストレスや異常があるサインだ。人間も心が疲れていると部屋が散らかったり、お風呂に入るのが億劫になったりする。まさにあれだ。
 今のポーチーは日向ぼっこもするし、毛づくろいの余裕もある。だから大丈夫。安易な考えだけど、あながち間違いではないはず。抗がん剤を打っているのだから、食欲が落ちるのはある意味当然だ。

 猫は調子が悪いと毛づくろいをしなくなる他に「暗いところに行きたがる」という性質もある。
 日向ぼっこが大好きなポーチー。それなのに抗がん剤が始まってから、副作用の強く出る日はやはり暗がりで「放っておいて・・・」というムード満載で寝ている。
 しかし、これも以前書いた通り“死期云々(うんぬん)”という話とは違くて!
 あくまで身体がだるい時には、そうなる、という話。

 

7月3日

 食べない。ほぼ全くと言っていいほど、食べない。どうしよう。

 こういう時のために、総合栄養食のペーストタイプのご飯は常備してある。少ない量でもカロリーや栄養をできるだけたくさん摂れるからだ。
 しかし、それも朝方に4ペロくらい舐めただけ。そのあとは、ご飯を差し出しても「プイッ」と顔を背けてしまう。

 嫌だ! とはっきり逃げる。そしてそのまま足音も立てずスルスルッとどこかへ行ってしまった。
 追跡を試みると・・・、ライオン型のベッドの奥の奥、普通にしてると見えないくらいの場所にいる。
 新しい場所を見つけるの上手! 天才!
 でも、なんで見えないところに・・・暗いところに・・・。

 

7月6日

幸い、お水はなんとか飲んでいた

 しかしそんな矢先・・・「ポーーーー」「ポーーーー」とポーチーの鳴き声が。
 暗くて人目につかない場所に隠れたがるポーチーのために設置した、テレビ裏の給水器の方からだ。静かに水を飲める場所をポーチーも気に入ってくれていたようなのだが・・・。
 様子を見に行くと、そこには衝撃の光景があった。

 なぜか給水器に手を突っ込み、手をびしょびしょにしながら、水をじっと見つめるポーチー。
 「何してるの?」としばらく見守っていたが、一向に飲まない。水をかくように手を動かしては、ため息をつく。
 カシャカシャカシャ・・・フーーーっ・・・はあ・・・。

ポポロン「これが、飲みたいのに、飲めないよ」

 そんなふうに見える。ポポロンは普段、ご飯や水がなくなるとお皿をかいて音を立てる子だ。
 完全にその仕草。でも、水は入っている。それはポーチーも絶対にわかってるはず。今までご飯は食べなくても水だけは飲んでいたのに、なぜ。

病院へ電話すると

先生「副作用で気持ち悪くて飲めないんだと思います。明日朝まで変わらなければ来てください」

 「テントテスト」で脱水の症状もチェックしてみたところ、今のところ大丈夫そう。
 僕はこのテントテストを一つの指標にしています。

◎テントテスト
自宅でできる簡易的な脱水症状チェック法(テントテスト)がある。背中の皮膚を引っ張り、元に戻るまでの時間を見る。健康な猫ならすぐに戻りますが、半脱水していると戻りが遅くなり、1秒以上停滞します。さらに脱水症状が進むと、引っ張った皮膚が戻りません。

翌朝イチで病院へ

 あまりにも飲まず食わずなので皮下点滴と、吐き気が強く出ているため吐き気止めを注射してもらう。
 ひとまず今日明日くらいは、食べられなくても問題ないとのこと。猫は生命力が強いから、そこまで不安視しなくても平気だそう。

 そして先生の一言が、妙に心強かった。

先生「これが、抗がん剤治療です」

 最も気になったのは体重。元が5.3kg で、前回が4.68kg だったのだが、4.4kg に。さらにマイナス200g。
 うーん。大分軽くなっちゃったなあ。

 

7月8日

ポポロン、復活の兆し!

 帰宅後も少し気持ち悪そうだったポーチー。
 しかし翌朝、ケージから出すと・・・勢いよく飛び出して、家で一番高い場所で毛づくろい!! 薬すげえええ! 何より、目がはっきりしている!

ご飯をあげてみることに

 まずは慎重に1粒、2粒、そっと置いてみる。
 ・・・食ったああああああああ!!!
 やばいやばい、めっちゃ食う。泣いちゃう。(泣かない)
 すぐにペロリ。すぐに追加。それでもさらに食う。

ポポロン「見ててください! 皆様お待ちかね! ポポロン! 食べます!」

 と言わんばかりに鳴いてから食ってくれる。もはや完治したのかな?と思ってしまうレベル。
 ちょっと首をかしげながら食べる様子は満足気だ。

 これが吐き気止めのおかげで調子が向上したのか、はたまた副作用がちょうどいいタイミングで落ち着いてきたのか、その両方なのか・・・本当は明確にした方がいいのだが、とにかく、今、調子が良さそう。

 しかし、この時、すでに異常は始まっていたんです。僕は、あとから気が付きました。(いや、気が付いていたのに、喜びのあまり冷静さを失っていました)
 あなたは、闘病中にこの変化にすぐに気が付けますか?
 僕は、ただ手放しで喜んでいるだけでした。

(次のページへつづく)

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愛猫が余命20日と宣告されました
著:響介 監修:服部幸


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