【書評】愛猫の「余命宣告」と闘った、圧倒的リアルな全記録『愛猫が余命20日と宣告されました』…猫と音楽家が奏でる「別れの曲」を聴く


借金1000万の状態から、愛猫たちのためにマンション、ついにはこだわりの注文住宅を購入するなど、そのドラマティックなストーリーがテレビでも話題。ブログ「変顔リュックと愉快な仲間たち」や、『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』をはじめとする書籍も好評を博す “猫マスター”で作曲家の、響介さん。

そんな響介さんが、「僕たちが過ごしてきた、闘ってきた日々が誰かの救いになることを願って」書籍化された、愛猫ポポロンとの奇跡の闘病記『愛猫が余命20日と宣告されました』(響介著/服部幸医療監修、ワニブックス刊)が話題です。

もしも明日、うちの子が余命宣告を受けたら……?
動物と暮らすすべての人に届けたい、闘病、看取りのすべてが詰まった一冊をどうぞ。

書籍の試し読みはこちら
【試し読み】その時は突然にやってくる『愛猫が余命20日と宣告されました』(1)

 

文 国実マヤコ

「今は20匹の保護猫のためにピアノを弾くの」……。

ピアニストのフジコ・ヘミングが、晩年のインタビューでそう語るのを、目にしたことがある。大変な愛猫家で、その波乱に満ちた生涯を、亡き母から受け継いだピアノと、たくさんの猫たちに囲まれて過ごし、その言葉通り——コンサートで得たお金のほとんどを、動物愛護協会(あるいは児童福祉施設など)に“ごっそりと”寄付していたそうだ。

そんな彼女は、これも晩年のインタビューで「最近は人間が死ぬよりも猫が死ぬ方が悲しい」とも語っていた。わたし自身も、かつて1匹の猫と暮らし別れた経験があるから、「猫」と「人間」の生き死にについて、ひとしい感情を抱くことに異存はない。

猫の瞳を見つめると「ああ、すべてお見通しなのだ」と、直感的に思う。人間が猫を守っているようで、実のところ、私たち人間こそが彼らに“見守られる存在”なのではないだろうか。

たとえば、出先で泣きたいような出来事があったとき、あるいは、仕事帰りの満員電車でパニック発作を起こして這々の体で帰宅するようなとき、玄関の扉を開けると、そこにはかならず、わたしの猫がいた。いつもは玄関でお出迎え、なんてしないおっとりした猫だったが、わたしに何かあったときだけは、不思議と、かならず、心配そうな瞳でそこにいた。

どうしてわかるのか、なんて今もわからない。わからないまま、わたしの猫は最期まで人間を思いやって、死んだ。危ない日々がつづき、人間もヘトヘトだったあの日「少し眠って9時には起きるからね、それまで待っていてね」と話しかけると、本当に翌朝9時ちょうど、それはそれは大きな声で鳴き、しっかりと別れの時間を設けてから、旅立ったのである。わたしは最期までポンコツだったが、わたしの猫はじつに見事で、立派だった。

作曲家の響介さんが、ともに過ごす猫たちのために奮起し、笑い、悩み、苦しみ、生きる姿は、いつだって美しい。


ブログ「リュックと愉快な仲間たち」 
https://rikkusora.com/rikku/poporin0

なかでも、今回の“ポポロンとの闘病生活”は、ただ文字を追うだけで、それがいかに愛に溢れた美しい時間であったか、手に取るようにわかる。響介さんが綴る、飾らず純粋で、なにより誠実な言葉から、ふたりの、そして家族との絆が溢れ出る。その奇跡のような“闘病生活・終活記”に、読者は祈りにも似た崇高さと希望を感じることだろう。

ときに涙が頬をつたうような場面もあるが、けっして悲しみの涙ではない。たとえば、広大な草原でひとり風を感じるような、満天の星に圧倒されるような、そんな“果てなき世界”を感じたときに頬を濡らす、そういう種類の涙である。

そして今、ふたりの間に生まれた愛は、SNSを通じてさらに大きな渦となり、猫だけでなく、あらゆる動物と暮らす人間のための、大切なバイブルとなった。

『愛猫が余命20日と宣告されました』は、わたし自身、じぶんの猫と暮らしたあの日々に読んでいたら……とため息ができるようなリアリティと知識が満載で——卒倒するほどの不安や闘病のなかで、毎日、その様子を文字に綴るなんて、きっと「猫マスター」にしかできない“偉業”である!——きっと、これからたくさんの人間と猫、動物を、その愛と経験と知識で救う、稀有な一冊となるだろう。

20匹の保護猫のためにピアノを弾くフジコ・ヘミングに、ポポロンをはじめ、リュック、ソラ、ニック、ピーボという家族のためにギターを弾き、作曲する響介さんの姿が重なる。

音楽家たちは、彼らを想い、それぞれの「別れの曲」を奏でる。
わたしは彼らの音楽を聴き、響介さんと同じように「ずっと家族だから」「また会おう」と約束したわたしの猫を、思い出す。

書籍の試し読みはこちら
【試し読み】その時は突然にやってくる『愛猫が余命20日と宣告されました』(1)

\好評発売中!/
愛猫が余命20日と宣告されました
著:響介 監修:服部幸

\響介家のマンガも発売中!/
借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話
原作:響介
漫画:ちとせ

お知らせ

オンデマンドプリントモール「pTa.shop(ピーティーエー・ショップ)」にて、『愛猫が余命20日と宣告されました』オリジナルアパレルも登場!

詳細はこちらから
https://www.wanibookout.com/139398/

響介
本業:猫マスター
副業:作編曲家、サウンドプロデューサー、ギタリスト、音楽大学非常勤講師
保有資格:【猫健康管理士】【猫疾病予防管理士】【猫のシニア生活健康アドバイザー】

猫と追いかけっこがしたくてマンション購入。猫ともっと本気で追いかけっこしたいがために注文住宅を建築。曲の締切、猫のご飯の締切、住宅ローン(残り30年)に日々追われながら猫たちとのおにごっこの必勝法を模索する日々を過ごす。おにごっこで勝つために次は山か島を買うらしい。
著書に『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』(ワニブックス)、『猫を飼うのをすすめない11の理由』(サンマーク出版)、『下僕の恩返し』(ビジネス社)がある。

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