【INTERVIEW】立石晴香/『動物戦隊ジュウオウジャー』出演の女優・立石晴香。初めての特撮の難しさ、女優として生きていく決心について。

【INTERVIEW】立石晴香/『動物戦隊ジュウオウジャー』出演の女優・立石晴香。初めての特撮の難しさ、女優として生きていく決心について。


『動物戦隊ジュウオウジャー』アム/ジュウオウタイガー役で出演中の立石晴香。8月6日からは『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』も公開された。女優として初めての演技に挑戦した立石は、撮影の日々をどう感じていたのか。『ジュウオウジャー』アムを演じることでの悩み、役者への熱い想いなどを語ってもらった。

撮影/浦田大作  文/池上愛

 

 

「(プラスアクトを見ながら)まだこれは読んでないやつですね」

――雑誌はよく読むんですか?

「モデルをやっていたのでファッション雑誌は一通り目を通します。あとは俳優さんが出ている雑誌も読ませて頂いてて、みなさんがどう考えているのかがわかるのでチェックすることが多いですね。もちろんプラスアクトも(笑)」

――ありがとうございます!

「俳優さんが作品について、お芝居について語っている雑誌は意識して読んでいるんです。自分も今のようにインタビューを受ける機会も多いので、しっかりと言語化出来るようにしたいなと思っていて」

――おぉ、それではたっぷりとお話し聞かせて下さい。『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』拝見しました。テレビシリーズも観たのですが、人間の動物学者と異世界ジューランドに住むジューマン達の組み合わせが面白いですね。

「そうですね。動物の力を持ったジューマンという人間とは違う生き物と、人間である大和の組み合わせが新しいかも。でも『天装戦隊ゴセイジャー』は天使だったり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』も宇宙人だったりして。意外と人間じゃない戦隊モノも多いですね」

――スラスラと出てきますけど、戦隊モノは詳しかったりします?

「『ジュウオウジャー』をやるにあたって、観た作品が多いです。全話観たのは『手裏剣戦隊ニンニンジャー』と『侍戦隊シンケンジャー』。ほかにも『特命戦隊ゴーバスターズ』『烈車戦隊トッキュウジャー』『獣電戦隊キョウリュウジャー』なども観ました。スタッフさんが『この回がよかったよ』とか『この人のシーンは勉強になるよ』と教えて下さるので、その回をピックアップして観ました」

――クランクインしてから8カ月程経ちましたが、振り返っていかがですか?

「撮影を通して季節を感じています(笑)。最初は凄く寒くて、ジューランドのシーンを撮影している時なんて、地面の草が凍っていたんです! もう寒くて寒くてしょうがなかったけれど、今の撮影は汗だく(笑)。時が過ぎるのは早いですね、あっという間です。自分的にはまだまだですが、最初は全然出来ていなかったことが少しずつですが出来るようになったかなとは思います」

――例えばどんなことですか?

「最初は何もかもわからないことだらけでした。フレームインした時にセリフを言い始めてこの場所で止まる、という一連のシーンがあるとすれば、インする前から喋りだしてしまったり。あとはみんなで並んで立つことが多いので、ちょっとでも立ち位置がずれると誰かの顔が隠れてしまいます。その立ち位置も間違えてしまって、何十回とやり直ししていました。最初は基本的なことが全然出来なくて。演技を含めすべてが初体験。アムちゃんを演じるために気持ちを入れるぞ! ということ以前に、スタッフさんの指示通りに動くことで精いっぱいでした」

――今、ちょっとずつ芽が出だしたところでしょうか。

「う~ん……まだ波があります(笑)。もちろん前よりは安定しましたけど試行錯誤の毎日です」

――お芝居だけでなく、アフレコやアクションなど様々なことは初体験だと思いますが、これは驚いた! というものはありましたか?

「そもそもスーツアクターさんがいること自体も知りませんでした……(笑)。全部を自分が演じるんだと思っていましたし、声を入れるアフレコがあることも予想していなくて、全部に驚きました」

――特撮にはスーツアクターさんのファンという視聴者も数多くいらっしゃいますよね。

「そうなんですよね。アムちゃんを演じているスーツアクターの下園愛弓さんは、この作品が初レギュラーなんだそうです。1話は、人間の姿ではなくジューマンとして登場したので、私が演じるよりも先にアクターさんがお芝居をされました。普段の戦隊モノだったら、アクターさんの戦っている動きしかないと思うんですが、今回はジューマンの日常生活もアクターさんが演じているので、下園さんの動きと私の演じる動きがリンクしないと別人のアムちゃんになってしまう。最初は下園さんの動きを見て、アムちゃんを作っていきました」

――下園さんの動きとは、どういうものだったんですか?

「私が考えていた仕草よりも、もっとかわいらしい動きでした。実際に下園さんの動きを見学させてもらって、アムちゃんってこういう感じなんだなと落とし込んでいった感じです。物語が進むにつれてアムちゃんの大人っぽい一面が出てきたので、今では動きも変わってきていますが、テレビシリーズの最初は、かなりキャピキャピなアムちゃんです(笑)」

――アムというキャラクターは、アクターさんと二人三脚で作り上げていっているんですね。

「そうですね。下園さんとはアムちゃんのお話ししかしていないかも、というくらい話し合っています。下園さんはお芝居経験がとても豊富な方ので、『私はこう解釈したよ』とか『こう演じたよ』とアドバイスを頂いたり、アクションシーンに立ち会えない時は『こういう動きのアドリブ入れたよ』という情報交換をしています」

―― 一人の人物をふたりで演じることって、なかなかないですよね。

「本当に貴重な経験です! 下園さんと一緒にアムちゃんを作っているこの感覚が。下園さんは私の動きに寄せてくれたり台本に沿って演じるだけでなく、プラスαのかわいさを入れて下さるんです。私は運動神経がないので、素面でのアクションは正直全然動けていないんですが(苦笑)、アクションシーンのアムちゃんはとてもかわいい動きをするので、下園さんの動きでよりアムちゃんのかわいらしさが印象付けられていると思います。凄くありがたい存在です」

――立石さんは、アクション苦手ですか?

「はい……。素面でもアクションは結構あって。怪人からの攻撃を受けて転がったりすることが多いんですが、もう……本当に私の動きはヤバいです(苦笑)。受け身の練習をやっている時も、地面に顔を思い切りぶつけたりしています。実は映画でもやっちゃっていまして(笑)。タスク(ジュウオウエレファント/渡邉剣)の足につまづいて、思い切りこけています……」

――ええ!? 

「あれは周りのみんなもビックリしていました(笑)。転がるのは本当に難しいです。転がる動作にはそれぞれルートがあって、本番前にルートを確認するんです。こう転がってここで顔を上げる。この人は立ち上がる。この人はうつ伏せのまま、というような。それで動きを練習するんですけど、なかなかその動作についていけず、いつも謝っています。それでもなかなか上達しないので、最近のアムちゃんは、最初から立ち位置が決まっています。爆発のシーンとか、みんなは爆弾をよけながらフレームアウトするんですが、私は爆発とともに飛んで画面から消えます(笑)」

――あはは! すぐ消えるんですか(笑)。

「すぐ消えます(笑)! 銀行強盗の回で、カウンターをピョンと飛び越えて中に入っていくシーンがあったんですが、私は全然その動きが出来なくて、本番では人を逃がす誘導係に変わりました(笑)。本当にいつも申し訳ないので、フレームアウトするまでの時間を長く保てるように頑張ります!」

――ジュウオウジャーのみなさんとは毎日一緒なんですよね。

「そうですね。朝ご飯とお昼ご飯はみんな一緒で仲良くやっています。さっきの銀行強盗のシーンも、私のアクションがなくなったので、リハーサルでみんなからイジられたり…(笑)」

――大先輩でもある寺島進(森真理夫役)さんも出演されています。

「毎回勉強させて頂いています。撮影が一緒になる日は限られているので、お会い出来る日にはコミュニケーションとりたい! と誰もが思っていて。カットがかかった瞬間、“誰が一番に話しかけるか”みたいな感じで狙っているんです(笑)。最初はもちろん緊張してなかなか話しかけられなかったんですが、最近は色々とお話しさせて頂くようになりました。寺島さんが加わると現場の空気が変わるんです。引き締まるというか、背筋が伸びるというか。キャストもスタッフさんも、いい意味でピリッとした緊張感が生まれています」

――劇場版では、平成ノブシコブシの吉村崇(宇宙サーカス団の団長・ドミドル)さんも登場されましたね。

「吉村さんは、本当にプロの方だなと感じました。高い場所から登場するシーンでは、本番前まで『怖い怖い!』と大声で仰ってたんですけど(笑)、スタートとなった瞬間にドミドルになっていてビックリしました。集中力がとにかく凄くて、パンッと切り替わったらエネルギーを放出するような。そのスイッチの瞬間を見させて頂いた気がします」

――劇場版ということで舞台挨拶にも立たれましたが、ファンのみなさんと間近に対面した感想は?

「普段撮影している時は、正直実感が湧いてないんです。もちろん『ジュウオウジャー』のアムちゃんを演じているんだ、という意識はあるんですけどファンの方と接する機会がないので意識も薄かったというか。でも舞台挨拶で子供達に会って、みんながアムちゃんと呼んでくれたり、ダンスを踊ってくれたりする姿を見たら、もっともっと頑張らなきゃと思いました」

――今まさに実感しているところなんですね。ところで以前はモデル業をされていたそうですが、元々お芝居に興味はあったんですか?

「ありました。いつかお芝居をやってみたいと思っていましたが、以前はずっと関西に住んでいたので環境的に難しい部分もあって。学生ということもあったので、地方に住んでいるとなかなかスケジュール的にも難しかったです」

――モデルはいつから?

「中学生の時からなので10年近くはやっていました」

――そこから女優を決心されたのは……。

「芸能界ってみんながやりたくてたまらないお仕事で、そこで頂点をつかむためには物凄い意思と努力が必要。でも私は気持ちの面でも環境の面でもそこまでではありませんでした。『Seventeen』のモデルを終えて、2年程この世界から離れていましたが、またやりたいという思いはずっとあって。その気持ちと向き合うために、まずは環境を整えてもう一度このお仕事をしようと決意して、今この場所に居ます。ありがたいご縁で、こんな早くから演技のお仕事をさせて頂いているので凄く恵まれているなと感じています」

――21歳で、これでやっていきたい! と思える意思があるのも凄いと思いますよ。

「モデル時代は後悔の繰り返しでした。その後悔の理由は、何事にも全力でやれていなかったから。その後悔があったから、今があると思います。今は、一秒足りとも時間は無駄に出来ないぞ! という気持ちなんです。私、問題を時間で捉えることを意識していて……」

――というと?

「『ジュウオウジャー』が決まった時、私は東京に住んでいたものの、撮影所までは片道1時間半~2時間かかる場所に住んでいました。往復で4時間を1年に換算すると何週間分にもなるんです。この通勤時間を、台本を読んだり、映画を観たりする時間に充てたらどれだけの知識になるんだろう! と。そう思ったら引っ越さないと無駄だなと思い、すぐに決断しました。物事はなるべくロジカルに考えて行動するように心がけています。台本もそう。全部可視化するんです」

――台本を可視化?

「ストーリー通りに撮影する訳ではないので、シーンの繋がりがわかるように、台本を細かく区切って“ここで話が変わる”“このセリフはこのシーンに繋がっている”というようなメモを書いて、パッと見た時に物語の流れを視覚で捉えるようにしています」

――見てみたいです、その台本(笑)。

「物凄く区切ってますよ(笑)」

――日常生活ではどんな考えになるんでしょう?

「1週間を何時間と考えます。撮影スケジュールが出たら、月曜は何時に帰宅出来るから、この時間は台本読みにあてようとか考えますね」

――凄い! そう思っても、なかなか実行出来ないことってありませんか?

「もちろんあります。基本は怠け癖なんです。逆に怠け者だから意識するようにしている部分もあります。時間に限りがあるという事実がわかっていると、やらなきゃ! と思える。ぼんやりとしか時間を捉えないでいると“明日でいいや”“まだまだ時間があるからダラダラしよう”となってしまうんです。“20代、残り何日なんだろう”と考えることもあります。具体的な数字にすると、たくさんあるようで実はないことがわかるんです。家族やマネージャーさんとも毎日会う訳ではありません。会う人との時間も数字にすると、その人との一瞬一瞬を大事にしたいって思えます。もちろん全てを実行出来ている訳ではないけれど、その考えを持っていれば、どんなことも大事な時間だなと感じられるというか」

――ライフプランのような、遠い未来のことは考えますか? 

「この仕事ってなかなか難しいですよね。自分が動けばどうにかなる世界ではない。でも中長期的に考えることは大事にしています。私は、誰かのプラスになるようなお仕事をしたいという大きな目標があって、そこだけは絶対にブレません。今は、どんな仕事が来てもいいように吸収する体制でいるぞ! という気持ちです。そのためには色んな知識、好奇心を持つことが大事だと思いますし、自分で動けることはマネージャーさんに相談や提案をしてみたりしています」

――いやぁ…目標に向かっての行動力が物凄いですよ。

「凄くエネルギッシュな人達に囲まれていたので、自分もやらなきゃ! という気持ちにさせられるんですよね。モデル時代に、西内まりやちゃんとご一緒させて頂く機会が多かったんですけど、まりやちゃんは物凄くエネルギッシュな人で、周りのみんなをグイグイ引き込んでいくタイプの人でした。まりやちゃんは、今ではモデルだけでなく歌手としても女優としても大活躍されているじゃないですか。そんなまりやちゃんを間近に見ていたので、彼女にも物凄く影響を受けていると思います」

――行動力だけでなく、人や作品の縁もあって今の自分がある?

「はい。自分だけの力じゃなくて、周りがあるからだと思います。でも自分が行動しないことには結果はついてこないので、ちゃんと意識することは続けたいです」

――お話を聞いていると、立石さんの今後の成長がどうなるんだろう? と凄く楽しみになってきました。

「目先の目標は、アクションをもっと上達させるなんですけどね(笑)」

――そこも見どころですね(笑)。残り半年、『ジュウオウジャー』で立石さんはどう成長していくんでしょうか。

「みなさんの印象に残したいのはもちろんですけど、特撮のベテランスタッフさんからも、いい意味でアムちゃんの話題が出るようになりたいです。スタッフさんは特撮一筋30年! というようなベテランの方々ばかりで、これまでの特撮モノにたくさん携わってらっしゃいます。過去の作品で、これは観ておいたほうがいいよとを教えて下さることも多いんです。何年前の○○がよかったとか、○○の回は凄くいいとか、○○は本当にめちゃくちゃだったけど、凄く記憶に残ってるとか。そういうお話をいつも聞いているので、私も数年後、“アムちゃんの立石晴香は……”と話題になるくらいの印象を残したいなと思います。あとは、アムちゃんの心情がもっともっと表現出来るようになりたい。まだアムちゃんは自分の本音を出さずに壁を作っている部分があるなと感じています。今後のストーリーがどうなるかわかりませんが、もっとアムちゃんの素の部分を表現していきたいです。みんなにアムちゃんのかわいらしさを知ってもらえるよう頑張ります」


 ●プロフィール
立石晴香 (たていし・はるか)

1994年9月28日生まれ、大阪府出身。2007年『ニコラモデルオーディション』でグランプリを受賞し芸能界デビュー。2011年に同誌専属モデルを卒業ののち、『Seventeen』専属モデルとして活躍。2013年に専属モデル卒業し2年間の休業を経て16年2月『動物戦隊ジュウオウジャー』にて活動を再開。Shout it Out『青春のすべて』ミュージックビデオにも出演。


 ●作品紹介

(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映 (C)2016 テレビ朝日・東映AG・東映

『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』
『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』

劇場版「ゴースト・ジュウオウジャー」製作委員会 
全国公開中

 http://ghost-zyuohger.jp/