【stand.fm『スタメンっ!!!』連載③例えば炎】中毒性のある『沼沼沼沼』はヤバイ人が聴くラジオ?
音声配信プラットフォームstand.fmにて、1月から吉本興業の若手芸人7組による新番組『スタメンっ!!!』がスタートする。月曜から日曜まで、ネクストブレイクが期待される芸人が曜日ごとにパーソナリティを担当、個性あふれる番組を発信していく。リレー形式で繋いでいく7組の連載、第3回目は芸歴5年目の例えば炎。パワフルさとゆるさを同居させた新しい漫才で2年連続『M-1グランプリ』準決勝に駒を進めたふたりの、独特すぎる番組への向き合い方とは。
取材・文/絹村千紗

――例えば炎さんは1月13日スタート、『スタメンっ!!!』火曜日担当です。もともとstand.fmでやられていた『沼沼沼沼』をそのまま続ける形になるんですね。
タキノルイ(以下タキノ)「そうです。stand.fm 自体は2021年4月、1年目のころから始めていて、当初は自主ラジオでした。今年の4月に社員さんから『本腰を入れてやりましょう』と提案してもらってリニューアルしたのが『沼沼沼沼』。タイトルもその時に変わりました」
田上「(昨年の『M-1』)準決で知られるようになって、慌てて変えた感じですね」
――『沼沼沼沼』は、おふたりの仕事の中で一番下だそうですが。
タキノ「それはそうです。やっぱり僕らにはラジオ関西Podcast『例えば炎のあ、エレガンス』があるので。僕らとしては2個ラジオをすることに消極的ではあるんですけど、stand.fmも頼まれたからにはぜひやりたいという気持ちでした。前のマネージャーさんも異動の時、新しいマネージャーさんに『『沼沼沼沼』は仕事の中で一番下なので、何か仕事が入ったら飛ばしていいです』と引き継ぎしていったらしいです」
田上「今『沼沼沼沼』に関わってる社員さんも『一番下でいいです』って言ってくれてますね。『面倒くさかったら、(編集せずに)このまま上げてもいいです』とか(笑)」
タキノ「まぁ、だからこそ普段通りできるといういい効果は生まれてますね」
――たしかに『あ、エレガンス』と『沼沼沼沼』、おふたりのテンションの差を感じました。
田上「『あ、エレガンス』は、神戸まで電車で行って録ってるんですよ。向かってる時に“今日は何喋ろうかな”と考えたり、気持ちをつくって行ってるんで。『沼沼沼沼』は基本仕事の合間で録ってて、急に(スケジュールに)入って“チッ、『沼沼沼沼』入ってるやん”って(笑)。でも、『沼沼沼沼』のほうが好きっていう人もいるんで、もうこの感じでいいんかなって思ってます」
タキノ「ほんまに楽屋で喋ってるぐらいのテンションですね」
――それは『スタメンっ!!!』になっても変わらずですか?
タキノ「そうですね。変わらずリスナーの方からのレター中心でやる予定です。作家さんを入れる予定もないですし。“どっち聴いたらいいんやろ”となるのはよくないので、『あ、エレガンス』との差別化をはかるために『沼沼沼沼』は今まで通りよくも悪くもゆるくやっていきます」

――田上さんの「ベリーグッドネス」(※『沼沼沼沼』で多用している言葉)は継続ですか?
田上「継続ですね。それこそちょっと前にスタエフフェス(『stand.fm Thanks Fes 2025』)があって、名言キーホルダーみたいなのをもらったんですよ。そこに『沼沼沼沼』での僕らの名言が入ってたんですけど、マジで『ベリーグッドネス』以外は覚えてなかったです。こんなに気持ちを入れてないんやなと思いました」
タキノ「『ベリーグッドネス』は継続するよな?」
田上「はい。でも気持ちがないんで、ちゃんと言い忘れる回もあると思います」
――ちなみに「ベリーグッドネス」がどうして生まれたのか覚えてますか。
タキノ「覚えてないですね」
田上「…あれちゃうか。『すごいやん』が口癖になってますね、みたいなレターが来て」
タキノ「そうや、田上が『すごいやん』ばっかり言うから、俺が『一緒のことだけ言っててもアカンのちゃう?』って言ったら、田上が『じゃあ変えるわ。ベリーグッドネス!』って言いだして、その時に生まれました。生まれはまともなんですけど、育った環境がよくなくて。かなり悪い子になってしまいましたね」
田上「ただ、スタエフフェスの時に舞台上で『ベリーグッドネス』って言った時、ウケこそはしないですけど“わぁ~”みたいな空気になって」
タキノ「“生で聞けた!”みたいな」
田上「俺、人前でめっちゃ恥ずかしいこと言ってたんやなって思いました。『沼沼沼沼』をあんなにたくさんの人が聴いてるとは思ってなかったので」
タキノ「確かに。普段は盗み聴きされてるぐらいの感覚ですね」
――番組内での下ネタも継続ですか?
タキノ「そうですね、注意されたらもちろんやめますけど。最初“stand.fmは下ネタに対して厳しいらしい”って聞いてたんですよ。でもなぜか、僕らの下ネタだけは普通に流れてる。多分程度が低すぎて、フィルターにかかってないんですよね」
――(笑)。エロではないですもんね。
タキノ「はい。ほんまに小学生がふざけて言ってるようなレベルやと思います」
田上「そもそも下ネタも僕ら発信ではなくて、低俗なリスナーが送ってきてるんで」
タキノ「ほんまに便所のラクガキみたいな内容が来たりします。でも、もちろんそれでも全然いいよ、という」
田上「僕らも日々の仕事のストレスをぶつけるんで、皆さんもぶつけていいですよっていう場所が『沼沼沼沼』です。僕は、ファンの中でもヤバイ人が聴くラジオやと思ってます(笑)」
タキノ「『あ、エレガンス』は、僕らのことをちょっと気になってる人や、健やかなファンの人が聴くラジオ」
田上「『沼沼沼沼』は、ダーティーな人が聴くラジオ。それこそ厄年の人とか、最近生活がうまくいってない人とか。そういう人が聴いたら楽しんでもらえると思います」
――じゃあ『スタメンっ!!!』の番組の中でも、かなり変わった立ち位置ですね。
田上「そうです。でも月曜担当のボブのコーラが『かなり健やかラジオ』なので、ちょうどいいかもしれないです」
タキノ「火曜日は結構ダーティーやからな」
田上「土曜日(イノシカチョウ)もダーティーちゃう? それこそ純吉さんは、僕もタキノも一緒にルームシェアしてたので、かなりお世話になってます」
タキノ「純吉さんは言っちゃダメな言葉を普通に言っちゃう人ではあるので、そこも楽しみですね。イノシカさんのYouTube(『イノシカチョウch』)も面白いですし、ラジオも絶対面白いと思います」

――それではここから、前回取材させていただいたボブのコーラさんからの質問です。まずはとあさんから。「単純に僕らのことをどう思ってますか?」。
タキノ「もちろん面白いと思ってるし、見た目が漫画のキャラみたい。大阪で言ったら生姜猫と同期なんかな? 大阪におったら絶対かわいがってたやろなって感じるんで、これを機に仲よくなりたいです」
田上「僕、実はボブのコーラの0年目を見たことがあるんですよ。インディーズ時代に一緒にやってた人らが改めて東京NSCに行って、たまたま大阪にライブで来る時に会って、そこにボブのコーラもいて。正直その時はナメてたんで、去年『M-1』準々のネタを見てびっくりしました。めっちゃおもろいやん! って」
タキノ「ちなみに誰? インディーズで一緒にやってた人らっていうのは」
田上「別に忘れた」
タキノ「え? 名前言ったほうがいいんじゃない? お世話になってんから」
田上「…キイロイゾウサン」
タキノ「誰?」
田上「もうええって! お世話になったやん! 俺らが41期クビになってインディーズの時、ライブめっちゃ呼んでもらったやん!」
――(笑)。本田さんからは「休み欲しいですか?」という質問が来ています。
タキノ「休みはやっぱりあったほうがいいですね。それこそラジオで話すことが何もなくなっちゃうんで」
田上「一応今は週1ぐらいであります。前に60連勤を超えた時、マネジメントがさすがにやばいってなって。タキノが体調不良で点滴打ってNGK(なんばグランド花月)に出たりしてました。僕も学生のころから休みを楽しみに平日乗りきってたんで、休みはないとダメですね」
――次は兄弟さんなので、リレー形式で兄弟さんへの質問を考えていただきたいです。東京と大阪で拠点は違いますが、関わりはありますか?
タキノ「体制とはNSCのアシスタントで一緒でした。木村祐一さんのZoomの授業の時、それこそ体制は木村さんにもエグいぐらいツッコむみたいな。めっちゃ面白い同期やなと思ってました。最近初めてごはんに行ったんですけど、兄弟で割り勘してたんですよ。同期やから、みたいな感じで」
田上「僕、長男なんですけど、兄弟で割り勘してるのが信じられなくて。絶対そんなことあってはならないと思ってます。僕から体制へ、今一度考え直してもらえませんか? って言いたいです」
タキノ「僕からは紅葉に『お兄ちゃんにするんやったら僕と田上どっちがいいですか』、体制に『お父さんにするんやったら僕と田上どっちがいいですか』って聞きたいです。そしたら体制は『なんで俺だけお父さんなんだよ。どっちでもいいよ』って、ズバっとツッコんでくれると思うんで」
【例えば炎から兄弟へ質問】(体制さんへ)兄弟で割り勘しているのが信じられません。今一度考え直してもらえませんか?/(紅葉さんへ)お兄ちゃんにするならタキノと田上どっちがいいですか。/(体制さんへ)お父さんにするならタキノと田上どっちがいいですか。
――おふたりの『スタメンっ!!!』チャートをつくっていただきたいです。
タキノ「ひとつ書く?」
田上「いや、大丈夫」
タキノ「いいの? まず、テンポが2です。声質はかなり似てるって言われるんで1。 コーナーはやってないので0ですね。(素早く空欄を埋めて)…タキノが4でルイが3です」
田上「3文字と2文字やのに!?」

――それでは、ここからは『M-1グランプリ』についてお伺いします(※インタビュー時は準決勝進出者発表後のタイミング)。この記事があがる頃には決勝は終わっていますが、おふたりはどこで準決勝進出を知りましたか?
田上「『ほのか』という同期のユニットライブのリハ後でした。リハ中に僕が気になって発表をつけてたら、『自慢になるからやめろ』とタキノと清川(雄司)くんに言われたので生では見られなくて」
タキノ「僕は(準決勝に)いく自信があったので、『自慢になるやろ』って。でも、リハをしてたら劇場の外でライブの開場を待つお客さんの『えぇー!?』っていう声や、劇場にいた社員さんの『うわー!!』っていう声が聞こえてきて“これ、落ちたんちゃうか”と不安になりましたね。リハが終わって、ちょうど劇場に黒帯のてらうちさんがいらっしゃったんですけど、黒帯さんがいかれたって聞いて『おめでとうございます!』って言って。てらうちさんが『マジでおめでとうございます!』と言われてる中、スタッフさんに『僕らは?』って聞いたら、『(小声で)…あ、いってます』みたいな」
田上「ほんまについでみたいな感じで言われて。黒帯さんがいかれたのはかなり嬉しかったですけど、そこは『例えば炎もいってます!』って言ってくれてもよかったのにって思いました」
タキノ「変にドキドキしました」

――5年目で2年連続準決勝進出は、かなりすごいことですよね。
タキノ「去年準決にいけたことで、初めて1日に寄席が3ステあったり、一日中劇場にいたりするようになって。地方にも行かせてもらったり、寄席の出番をたくさんいただけたことが今年の準決に繋がったと思います」
――ネタにも変化があったんですか?
タキノ「僕ら、寄席では基本的にウケないんです。僕が変に長く喋ってもウケないので、短くスパッとツッコんで終わるほうがウケる。でも『M-1』のお客さんはお笑い大好きな人が多いんで、短いと物足りひん。長いけど長すぎない絶妙なラインにしてます。あとは田上のボケでちゃんとウケるように、ボケ一つひとつを強くしたり。この1年でそのバランス感覚がついたと思います」
――ネタの中身を変えた時は、前もって田上さんに伝えるんですか。
タキノ「いきなり変えてますね。出番前、袖で『このボケ、これに変えてもらっていい?』とか」
田上「直前に言われるんで、僕はその部分を変えて言うだけです。あとネタ中はタキノの顔を見といて、言いきったみたいな顔をしたら次のボケを言います。それでも声がかぶる時はありますけど」
――『M-1』決勝への思いはありますか。
タキノ「僕らは4年目と5年目に準決に行けましたけど、周りから『(決勝は)行きたい時に行けるもんじゃない』って言われるんですよ。流れみたいなものがあるというか。今年はエントリーナンバーが3333で、かなりいい流れを感じました。やっぱり決勝に行きたい気持ちはありますね。行って、大阪のみんなに応援されるような芸人になっていきたいです」
●プロフィール
例えば炎
タキノルイ(1995年10月8日生まれ、兵庫県出身)と田上(1995年5月3日生まれ、兵庫県出身)という中学の同級生でコンビ結成。現在はよしもと漫才劇場に所属している。『M-1グランプリ』2024、2025で準決勝進出。『よしもと漫才リーグ2025』ではキャプテンとしてチームを率いている。
●番組紹介
stand.fm『例えば炎の沼沼沼沼』
1月13日スタート 第1~第4火曜夜11時更新
(第4火曜はメンバーシップ限定配信)
番組URL:https://stand.fm/channels/6077f3fabe8d4428b9047abb







