
第3回:同性愛、愛する人もいて幸せ、だけど将来が不安…【前編】
7月発売予定の書籍「恋愛迷子に贈る しあわせのコンパス」に先駆けての特別短期連載。
多くの女性からの恋愛相談を受けてきた恋愛研究者・ANNAさんが、読者のお悩みにズバッとお答えします。容赦のない、しかし愛に溢れたアドバイスは、あなた自身にも当てはまる、かも…!
人気漫画家・はるな檸檬さんの描く臨場感あふれる相談の模様もお楽しみに。
今回は、同性愛者の女性にお話を聞きます。ヨウコさん(仮名・45歳)には、一緒に暮らす大切な女性の恋人がいます。いつどのように同性愛に目覚めたのか、男性とはつきあったことがあるのかなど、多くの質問にまっすぐに答えてくれたヨウコさん。LGBTがメディアに取り上げられる機会も増え、性的少数者への理解も深まっているように感じられる現代ですが、漠然とした不安も感じているのだとか……。
LGBTとは。
女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者など(トランスジェンダー、Transgender)の人々を意味する頭字語。
(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/LGBT)
自覚したきっかけは、好きな女性からの告白
ANNA 恋愛対象はずっと女性なんですか?
ヨウコ いえ、昔は男性とつきあったりもしてたんです。はっきり気づいたのは大学生のとき。女性から告白されたのをきっかけに、その子のことが忘れられなくなって。これが強い恋愛感情なんだ、と思ったのが最初ですね。でも小さい頃から、幼稚園の先生とか学校の先生とか好きになるのは女性でした。
ANNA 男性とのおつきあいもあったんですか?
ヨウコ ありました。大学の時に、男性とつきあうのが当たり前だと思っていましたし。結構長く、7年くらいつきあってた男性がいました。でも女性のことが気になるし、好きになったりもするので、みんな男性も女性も好きになれるものだと思ってた。そうしたら自分が特殊だったみたいで。女性が好きなのって変なんだ……、自分がおかしいのかな、異常なのかなと思って、告白してくれた女の子にもビックリしちゃって。すごい好きだったのに、女性を好きになっちゃいけないという気持ちがあって、つきあえないって言っちゃったんです。
ANNA 好きなのに、断っちゃったんですか?
ヨウコ そう。どうつきあうのかわかんないし、手を握るのか、何をすればいいのかって。女性とつきあったことがなかったので。でも、女性と手をつなぐとかキスしたりっていう夢はちょいちょい見てましたね。相手は男性じゃなくて。
ANNA その告白してきてくれた人は、ヨウコさんが同性愛者だとは言ってないのに告白したんですね。勇気がありますよね。
ヨウコ うん、でも私にかなり好意を持たれてるっていうのは気づいてたと思う。好きとは言わないけど、優しくしたりとか、誘ったりとかしてたんですよね。踏み込んだことはしないけど、帰る時にいつも待ってたりとか。で、何となくそういう感じになって向こうから告白されたんですけど、言われた瞬間に「わ、どうしよう」と思っちゃって。
ANNA その相手の方は、女性を好きな方なんですか?
ヨウコ いえ、今は男性と結婚してるし、その時も男性とつきあってて、「彼氏と別れるからつきあって」て言われました。でもそういう女性って結構いるんですよ。男の人を好きなんだけどレズビアンに会って、男性にはない、自分を解放してくれる存在だって感じて好きになる。そっちに行く人もいれば、また男性に戻る人もいるけど。
ANNA ちょっと気持ちはわかります。私は男性としかつきあったことはないんですけど……でも、昔、綺麗で憧れている女の先輩がいて、いつも目で追ってました。話をするときはドキドキして、その後は一日中うっとりして。当時、もしその人から二人で会おうって言われて、手をつながれたりチューされたりしたら、ポーッとなっちゃって絶対断れませんでしたね。それで先輩と関係を持ったら、私はバイセクシャルってことになるんですかね? だとしたら、私にはたまたまそういう機会がなかっただけかも。だって男とか女とかじゃなくて「その人」が好きなんだから。男でも好きになれない人はいっぱいいるし、女でも素敵な人はいっぱいいる。素敵な人に迫られたら嬉しいし、断れないだろうなと思います。
ヨウコ あーそういう想像ができるってことは素質があるんだと思う(笑)。本当にダメな人は想像もできないんですって。キスとか絶対想像できないって言うんですよね。
ANNA でもね、すっごい無理な、生理的に受け付けない男性と好みの女性だったら、絶対女性の方がいいですよね(笑)。それはみんなそうじゃない? 普通の女の子だって、よく女性芸能人に憧れたりしてるじゃないですか。それでも無理だ、好みじゃなくても男性がいいって言う人が本当にダメな人なんでしょうね。
ヨウコ あはは(笑)。私は好みじゃない女性と、好みじゃない男性なら、好みじゃない女性の方がいいですけどね。
ANNA ああ、さすがですね(笑)。男性の方が、どんなに綺麗な顔してようが男は絶対ムリ!っていう人が多いんですよね。女性は結構、嫌いな男性より好みの女性の方がいいっていう人が多い。ちなみにカズレーザーは人類皆バイセクシャルだって断言してましたけど、それは真実だろうと思ってます(笑)。みんな、たまたま機会がないから気づかないだけで。
男性ともつきあったけれど、執着するのは女性だけ
ANNA これまでの恋愛遍歴っていうか、歴史をお聞きしたいんですけど、男性と7年おつきあいされてたんですよね。その方にときめきはなかったんですか?
ヨウコ んー、どうなんだろうな。気がついたらいっつも自分の側にいて、気がついたらつきあってた感じでした。告白されたつもりもなく、スーッとつきあっちゃってて。でもその子がすごい美形だったんですよ。女の子よりもキレイな感じの子で、そういうのはあったかも。男性っぽさが薄いっていうか。
ANNA 男性ホルモンが濃そうな人は苦手ですか?
ヨウコ うん、それはあると思います。小さい時から……生まれつきかな。お父さんが抱っこしようとするのを嫌がってたらしいから。でも小学生になっても自覚はなかった。大学まではサッカー部の先輩が好き!とか言う同級生の気持ちが全然わからなかった。多分好きな女の子には執着してて……ずっと目で追ったりとか一生懸命話しかけたりとか、気に留めて欲しくて物をわざと落として注意を引いたりとかはしてたんですけど、それを恋愛だとは思ってなかった。友達になりたい感情と区別がついてなくて。ハッキリしたのはやっぱり告白されてからで、そこで初めて鮮烈に好きだと気付かされました。
ANNA でも断っちゃったんですよね。
ヨウコ そう、つきあい方がわかんないから。でもその後、その子と外見がソックリな子とつきあったんですよ。それが初めての彼女です。その子と4年、次が10年近く、で今はまだ1年ちょっとですけど。ちゃんとつきあった女性はその3人です。
ANNA 男性と関係を持つのは嫌ではなかったんですか?
ヨウコ 最初は男性としかつきあったことなかったので、そういうもんかと思ってて。嫌ではなかったです。人としても好きだったし。でも自分から積極的にしたいとは思わないな。
ANNA 男性はもういいやって感じですか?
ヨウコ うーん、別に男性に拒絶反応があるわけではないんだけど、気持ちが続かないんですよね。執着がないし、ときめかないし、テンションが上がらない。興味もわかない。女性だったらそこまで好みじゃなくても興味を持てたりするんですけど。
ANNA 最初に女性とつきあう時って、0が1になるような決定的な変化があると思うんですけど、どんな感じだったんですか?
ヨウコ 最初は、初恋の人に似てるからという理由で好きになって、でも全然振り向いてくれなくて、半年くらい頑張った。新宿2丁目で出会ったんですけど、彼女はバイセクシャルで、私より小さい時から女性を好きだという自覚のある人でした。女性とのつきあいがなってないって随分怒られましたね(笑)。
ANNA え、特有の作法みたいなものがあるんですか?
ヨウコ うん。例えば学校とか会社で仲良くなる女の子って女友達なので、すっごい優しいんですよ。相手のことをきちんと気遣うことができる、とても優しい関係。だけど多くの女性は、つきあうってなった瞬間に私に男を求めるんですよね。私はどっちかというと思考回路が男性的なので、女性的な考え方の人に頼られたり好かれたりすることが多いんです。とはいえ、本気で男を求められると、わたしは女性なので、受け止めきれず困ってしまうことが多々あるんです。それで、世の中の男性はこんなに大変なのか、と思い知りました。さらにバイセクシャルはめんどくさいですよ。私が男といても女といても嫉妬するし、男を求める一方でお母さん的な役割も求められて。まあ、その子がワガママだっただけなのかもしれないけど(笑)。
ANNA でも4年も続いたんですね。長いですよね。
ヨウコ うん、頑張りました。で、その次は10年弱……私としては身を固めようというような気持ちでつきあってて。前の人とは真逆の、私をサポートしてくれるタイプのおしとやかな人で。でもだんだんかかあ天下みたいになってきて、家に帰りたくない、みたいな。
ANNA すごい男の人っぽいエピソードですね。
ヨウコ そう、男の人とそういう話になるとめちゃくちゃ気持ちがわかるし盛り上がっちゃうんですよね。その元カノは、元々結婚してたんだけど私とつきあったのをきっかけに離婚したと後で聞きました。彼女もカテゴリ的にはバイセクシャルだと思いますが、今も女性とつきあってるって言ってました。
ANNA 今でも話をするんですか? 女性同士って、別れた後にまったく会わない、ってならないんですね。
ヨウコ 私はならないですね。つきあっている間は傷つけあったりもするけど、4年とか10年とか一緒にいると、もう親友なので。別れてから5年くらいフリーの時期があったんですけど、嫌なことがあった時とかに彼女の家に泊めてもらって、ご飯作ってもらったりして。泊まっても恋人同士的なことは何もしないんですよ。そうやって適度に距離が保てていると優しいんですよね。で、その元カノが新しい彼女作りなよって言ってくれて掲示板にプロフィールを載せてくれたりして、そこで今の彼女とつきあうことになったんです。
ANNA 掲示板で出会うんですね。
ヨウコ すごい成約率が高いっていうか、いいところがあって。やっぱり普通に生活してると誰がレズビアンかバイセクシャルかとかわからないですよね。女性は特にわからない。男性は結構すぐ分かりますけどね。今はそこで出会った彼女と一緒に暮らしてて、この人と添い遂げられればいいなって思ってます。
レズの男性役でも、心はめっちゃ乙女……!?
ANNA 男性の同性愛者から聞いたんですけど、男性の同性愛は、すぐ肉体関係になるんだと。なぜなら性的に能動的でガツガツしている同士だからだと。そのあたり女性ってどうなんですか?
ヨウコ あー。女性の方がやっぱり心を重視してると思う。女性より男性の方が、誰とでもする。10年つきあってる彼氏はすごく大事だけど、肉体的なことは別、って言ってハッテン場に行って誰とでもしちゃう、みたいなのは聞きますよね。
ANNA 男女のカップルの男性の方と行動パターンが似てますね。奥さんがいるけど浮気する、海外に行けば風俗に行く、みたいな。
ヨウコ だってモテるゲイの男の子って大体、今まで相手したの1000人以上って言ってますもん。そういうのが大好きなんですよね、男の人って。女性でも100人斬りとかって自慢してる人もいるんですけど、私はやっぱり相手が男性でも女性でも、そういう心のない関係を持つと自分が傷ついてしまうので……そこは女性なんだと思う、すごく。相手が女性でも関係ないですね。
ANNA ヨウコさんは女性が好きな女性なんですね。肉体は女だけど心は男で生まれてきた、とかじゃなくて、女性として女性を好きなんですね。
ヨウコ そうです。割と女性に接する時に男の気分だったりするんですよ。エスコートとかしますし。でも、よく出る話題なんですけど、究極の話、じゃあ手術を受けてまで男性器つけたいって思う? って言った時に、「やだ!」ていう人は、まあ、女性なんですよ。
ANNA ほう。
ヨウコ そこを越えたら性同一性障害なんだろうけど、大体誰の中にも男の部分と女の部分とあって、ちょっと男っぽい部分が出てるだけだと思うんですよ。そうするとやっぱカテゴリとしては私は女性かなと。見た目が短髪で、女子トイレに入るのに違和感があるくらいの風貌でも、レズビアンの中でも男っぽいって言われる人でも、話してるとすっごい女の子だなー、めっちゃ乙女だなって思う子が多いですね。
【前編まとめ】
・女性に対する恋愛感情を意識したのは大学生のとき
・同性愛に目覚めるかどうかは運や偶然もある
・男性ともつきあえるが執着は持てない
・女性の恋人とは2丁目や掲示板で出会った
~本日のひとこと~
ANNA:
女性の同性愛者にしっかりとインタビューするのは初めてでした。同性愛への関心は若い頃からそれなりにあり、ソープにお客として行かれないか(女性客はNGでした……)とかレズ風俗について調べたことがありましたが、実行するほどの必然性もないまま今に至ります。同性愛者の感覚を身をもって理解できるわけではありませんが、ことさらに特別視する気もなく、そういう人もいるんだな、とそのまま理解したいです。
はるな檸檬:
ヨウコさんはとても感じが良く優しそうで、地に足のついた女性らしさのある方でした。男女関係なくモテるのわかるわー。しかし、彼女を見てレズビアンだとは絶対に気づかないです。わからないものですね。
次回は5月2日(火)更新です。恋愛迷子のみなさん、お楽しみに!
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