【INTERVIEW】映画『うちの執事が言うことには』で、ハウスキーパーを演じた神尾楓珠。のめり込んでいるという芝居の面白さを聞く。

【INTERVIEW】映画『うちの執事が言うことには』で、ハウスキーパーを演じた神尾楓珠。のめり込んでいるという芝居の面白さを聞く。


映画『うちの執事が言うことには』では、主人公の烏丸花穎(永瀬廉)が27代目当主を務める烏丸家のハウスキーパー代理・雪倉峻を演じる神尾楓珠。『アンナチュラル』や『シグナル 長期未解決事件捜査班』など注目のドラマに次々と出演。今年の話題作となった菅田将暉主演のドラマ『3年A組―今から皆さんは人質です―』では挫折を味わった水泳部のヘタレキャラのマネージャー・真壁翔を演じ、反響を呼んだ俳優・神尾楓珠の“今”に迫る。

撮影/京介 文/高本亜紀

——まず台本を読んだ際、今回演じた峻についてどんなことを感じましたか。

「最近の大学生は家族想いな人が多いと思うので、家族との絆をどうやって表現しようかなと、ずっと考えていました。家族は距離感が近いので、その空気感が画面から伝わるように、普段も妹・美優役の(優希)美青ちゃんや、母親役の原(日出子)さんとあまり離れないようにして。特に美青ちゃんとの関係性は、空き時間に妹のような感覚で接していたので、その関係が作品の中に出ていたんじゃないかなと思います。原さんは……聖母みたいで本当の母親のように僕の未熟なところも受け止めて下さったので、安心してぶつかっていけました。あと、今回はひとつのテーマとして、存在感を如何に消すかというのを掲げていて。峻は普通の大学生なので存在感のある人物にしてしまうと違う感じになってしまうので、なるべく目立たないように意識していました」

—— “普通”っていう定義が人それぞれ違う人物を演じるって一番難しいことじゃないですか。そういう中で、神尾さんは何を選んだんですか。

「人生で上流階級の暮らしに飛び込む機会はそんなにない中で、峻は(屋敷の中に)どういうものがあるんだろうとか何で出来ているんだろうとか、興味が先に来るタイプなので、そこは意識しました。セリフを話す時はどうしても何かしらの引っ掛かりを持ってしまうんですが、どの発言にも闇がない、裏がない役なので、引っ掛かりを持たせないように話すのが大変でした。あと、妹の美優が強気な子で、兄妹どちらとも強気だったらうるさいかもなと思ったので、バランスを見て強気な妹を抑える兄という控えめな役割を持たせたんです。その辺の距離感も、空き時間に話していた感覚が上手く活かせたなと思います」

——今作にも同世代が多く出ていましたが、先に話題となったドラマ『3年A組~』も同世代が多い現場でしたよね。

「めっちゃ刺激でっ……あ、噛んじゃいました」

——(笑)。当時の興奮が蘇りましたか。

「はい。毎シーン毎シーン、刺激があって楽しかったです。前室から緊張感が凄くあって……でも僕はそういうのがあまり得意ではないので、とにかく周囲を意識し過ぎたり、ほかの人の目を気にし過ぎたりして硬くなることだけはしないように言うことだけ気をつけて、いい緊張感だけを持って挑むようにしていました」

——今までのお話から思うに、神尾さんは主体的ではなく俯瞰的というか客観的に物事を見てますよね。

「そうですね。萩原利久君にも『10年選手みたいだな』って言われましたし、クランクアップの挨拶でボケを入れてたら菅田さんからもそういったことを言われてツッコまれました。どんな時でも、周りとのバランスとかその場の雰囲気を感じてしまうんです」

——その視点、お芝居に凄く役立ちそうですね。

「だいぶ役に立っていると思います。美青ちゃんとコミュニケーションを取ったこともそうですし、『3年A組~』で言えば里見(鈴木仁)や花恋(堀田真由)みたいに気が強い役が周りに多かったこともあり、演じた真壁を敢えてヘタレキャラに変えたところがありました。最初はスクールカーストとか関係なく、里見と同じくらい強気なキャラクターだったんです。けど、そうなると花恋が活きないから、監督に提案してあのようなキャラにしました」

——そういう提案って、思うことがあれば積極的に監督へ伝えるんですか?

「いえ、今までの現場はベテランの方が多かったので、そんなことを考える余裕はありませんでした。『3年A組~』は学園ものなので。クラスには色んな人がいて、グループの中でも色んな立ち位置があるので、自然と意識するようになったのかもしれないです。やっぱり30人もクラスメイトがいると、キャラが薄い人物もいるんです。真壁も最初、景山(上白石萌歌)に恋をしているだけでキャラが薄くて、どうしたらいいかなと考える中でヘタレというキャラクターを見つけたんです」

——今の発言からも、お芝居に対して凄く前向きにアグレッシブに取り組んでいることがわかりましたが、芝居の楽しさはどんなところに感じていますか?

「僕は単純に芝居をするのがとにかく好きなんです。自分自身にはこういう感性があるけど、現場に行くと違うものが出てきたりする。そういう、色んな人の異なる感性がうまく合わさることが面白いなと思っています。こんなふうに考えられるようになったのは、経験を経て色んなことが少しずつ出来るようになったから。以前は出来ることが少なかったので楽しいっていう気持ちもわかりませんでしたが、色んな役を演じていく中でこの役だったらこうかな、と考えている時間が楽しくなりました」

——そう思うようになったのは、いつくらいからですか?

「『恋のツキ』くらいからです。撮影していた時はそんなことを思ってなかったんですが、終わってからプロデューサーの方に『伊古はお前にしか出来なかったよ』って言ってもらった時、そういう感覚が生まれました。あの言葉は嬉しかったです」

——神尾さんは何か人と違ったことがしたいと思って、この仕事を始められたんですよね。実際やってみる前と今、俳優という仕事の印象は変わりましたか?

「正直、俳優がどんな仕事なのかわかってなかったというか。芝居に対しても先入観がなかったので、ギャップというものは感じてないです。最初は軽い気持ちで始めてみたので、まさかこんなにのめり込むとは思っていませんでしたし」

——でも、今は凄く夢中になっている。俳優をやってみたいと思った自分の直感は間違ってなかったということですよね?

「本当に! あの時、よく今の事務所のオーディションに応募したなあと思います(笑)」

——のめり込んでいくと、新しい課題や、やりたいことなど明確な目標も見えてくるんじゃないですか。

「単純に、もっと芝居が上手くなりたい。今はただ、それだけです。こういう言い方をすると薄っぺらく聞こえてしまうかもしれませんが……やっぱり心にグッとくる芝居が出来るようになりたいですし、表面だけじゃないものを見せられる芝居が出来る俳優になりたいです。現場で学ぶことも凄く多いです。それこそ、(『3年A組~』で主人公・柊)菅田将暉さんは画面から色んなことが伝わってくるんですが、現場ではそれ以上のことをもっとしてるんです。撮影中はとにかく見て、感じて盗むようにしていました。今、菅田さんと共演出来たのは僕にとって大きかった。本当に凄かったですから……」

——『シグナル~』では渡部篤郎さんとも共演されました。その時、盗めたこともあったんじゃないですか?

「もちろんありますが、世代が違うので盗むというより学ぶという意味合いのほうが強かったです。共演は1シーンだけでしたが、家族のことを話す時に『もうちょっと強く言ってみな』と言われたんです。声を張るという意味ではなく、心から強く言ってみろと。実際やってみたらオッケーをもらえたので、やっぱり凄いなあと思いました。答えを教えて頂いたのではなく、ヒントを下さったこともかっこいいなあと」

——先のことより今が大事だと話していましたけど、俳優として10年後のビジョンはありますか。

「20代には20代の神尾楓珠のよさが出せて、30代は30代の神尾楓珠のよさが出せる。年相応に違う顔が出来るように、歳を重ねていきたいなと思っています。だからこそ、今が大切。今に必死です(笑)。若いうちは迷っているからこそ出るよさもあるのかなと思いながら、とにかくやり続ける中で成長していきたいです」

——現在、20歳ですが、何か変化はありましたか?

「考え方もそうだし、責任感の持ち方も変わりました。味覚も変わって、食べられないものが食べられるようになりました。なりませんでした?」

——大人になると、小さいころに食べられなかったものが食べられるようにはなりましたけど、20歳で急に食べられるようになった訳ではなかったような……(笑)。

「僕、なりましたよ。コーヒーが飲めるようになりましたし、炭酸も飲めるようになりました。辛いものも……激辛はまだ食べられないですが、ある程度の辛さだったらイケるようになって。あっ、サラダも食べるようになりました!」

——それは意識の問題のような気がしますが。

「ははは! 完全にそうですね。大人なら食べられなきゃ、みたいな気持ちが働いて食べられるようになったんだと思います」

——(笑)。今後やってみたい役はありますか?

「俺達が世界を変えてやる! みたいに無謀な野望を持っているような、行き切った役をやっていきたいですし、知的な役もやってみたい。意外とまだやったことがなくて……意外って自分で言うのもなんですが(笑)。今は純粋で真っ直ぐな役や学生役が多いので、今後は社会人の役もやってみたい。色んな役を演じて成長していきたいです」

 


  ●プロフィール

神尾楓珠/かみお・ふうじゅ

1999年1月21日生まれ。東京都出身。2015年、『24時間テレビドラマスペシャル「母さん、俺は大丈夫」』で俳優デビュー。その後、『監獄のお姫さま』『アンナチュラル』『シグナル 長期未解決事件捜査班』『恋のツキ』『こんな未来は聞いてない!!』『3年A組―今から皆さんは、人質です―』などに出演。5月より放送スタートのドラマ『都立水商!~令和~』(MBS・TBS)に出演ほか、映画『HiGH&LOW THE WORST』の公開も控えている。


  ●作品紹介
『うちの執事が言うことには』

原作/高里椎奈(『うちの執事が言うことには』角川文庫刊)
監督/久万真路
脚本/青島武
出演/永瀬廉(King & Prince) 清原翔 神宮寺勇太(King & Prince) 優希美青 神尾楓珠 前原滉 田辺桃子 矢柴俊博 村上淳 原日出子 嶋田久作 吹越満 奥田瑛二
配給/東映

留学先から戻った途端、日本有数の名家・烏丸家の27代当主となった花穎(永瀬廉)。呼び鈴を鳴らすと、部屋にやってきたのは、幼少期から絶大な信頼を寄せていた老執事・鳳(奥田瑛二)ではなく、仏頂面の新米執事・衣更月蒼馬(清原翔)だった。さらに、新当主を任された花穎を見守るのは、ハウスキーパー兼料理人の雪倉叶絵(原日出子)、ハウスキーパー代理で叶絵の長男・峻(神尾楓珠)、長女・美優(優希美青)など烏丸家の使用人たち。そんな中、ある事件が起こって——。

5月17日(金)全国公開
Ⓒ2019「うちの執事が言うことには」製作委員会
http://www.uchinoshitsuji.com/