
「いいデート」のためのジャスミン革命
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ここは夜更けの隠れ家的カフェ
「イチルノノゾミ」。
今夜も普通の恋ができなくてジタバタしてる女が、恋愛マスターのサブカルママ「めだかちゃん」に助けを求めに来ました。
めだかちゃんは自分のことを“恋愛の救世主”だと言うのですが…
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クールなJAPAN
「日本は終わりよ」
「自分を抱いてくれる男がいないのは、国のせいじゃないわよ」
「そんな話じゃないです。デートする事になったし!」
「相手は人間?」
「かろうじてね。つか問題はそこじゃなくて、男がさー常にノープランなのよね。僕は何でもいいよってそればっか!」
「そんなの普通じゃない」
「えーー! デートって、どこ行って何食べてって、男が決めてくれるもんじゃないの?せっかくのデートなのに、何でもいいの?男って」
「そんなもん日本の男はずっとそうよ」
「マジで?いつから?」
「ファーストガンダム放送の頃から」
「出たよガンダム」
「父さんにもぶたれた事ないから」
「そのセリフ、おっさん達は死ぬまで言い続けるの?」
「40代の男はそうね」
「30代の男は?」
「逃げちゃだめだ…」
「…50代は?」
「や、ヤマト発進…」
「…ちなみに20代は?」
「…行け、ピカチュウ…」
「日本の男って…」
「これがJAPANよ」
男はいつも怯えてる
「でも何で男ってデートプランも決められないの?」
「そんなもの女がダメ出しするから、怯えてるだけよ。いつものやつよ」
「つか、女に怯えすぎじゃない?」
「ダサい所連れて行ったら、あんたたち影でボロクソに言ってバカにするでしょ?」
「……」
「セックスの話までネタにするでしょ?」
「……」
「ツイートして伝説にするでしょ?」
「だって、期待してデートに行くんだから、クソダサい店とか連れて行かれて、あげくにワリカンだったりしたら、せめてネタにでもしないと収まらないじゃん」
「この圧」
「うっ」
「こうして男は深夜アニメに。女はパワースポット巡りへ…」
「…何か寒いわ」
「クールJAPANね」
「……」
理想のデートとは?
「だったらまず『メニュー画面』を作るべきね」
「メニュー画面?」
「2人のデートのメニュー画面よ」
「デートのメニューってどうやって作るの?」
「自分にとっての『理想のデート』ってどんなのかを言い合うわけ」
「おお」
「本当はこんな事したり、こんなの食べたいとか言い合うの。予算とか時間とかの制限は抜きでね」
「なるほど。じゃあ『ニースの海辺でシャンパン飲む』とかでもいいの?」
「そう。それで、『出来そうな事』をメニューに入れていくわけ。その中には1部分を変えたら可能になる事もあるでしょ?」
「『ニース』を『お台場海浜公園』にする、とか?」
「そう。そのメニューを使って、今日はどんなデートをするか2人で選んだらいいってこと」
「可能かつ、理想に近いデートになるかも・・」
「2人で『選択肢を増やす』ってことよ」
「…これって『夜のメニュー』も入れていいの?」
「別にいいんじゃない?相手が変態でも平気だって覚悟しないとダメだけど」
「多分大丈夫」
「ならまず男の『秘めたる欲望』を聞いてみて、女からは……」
「女からは?」
「男にプレッシャーをかけない程度のメニューが無難」
「プレッシャー…」
「日本男児に圧をかけたらどうなる?」
「深夜アニメに…」
「ジーニー作戦」という選択肢
「で?あんたはどんなデートしたいの?」
「別に普通でいいんだけどね。映画見て食事でも全然いいし、のんびり公園とか散歩するだけでもいいし」
「それを彼に言えば?」
「えーでもーせっかくだから、何かちょっと1人ではできない事したいっていうのもあるし、行ったことないとこ行ってみたいしー」
「めんどくさい女」
「それくらいいいじゃん。女ってそういうものじゃん!そもそも男から何の提案(プレゼン)もないって酷くない?」
「それが上手い男は他の女にもプレゼンしてるけどね」
「う…」
「他に女がいない男がよければ、自分でなんとかするしかないわね」
「自分で?」
「そう。2人でメニュー作れなかったり、いま1つのプランしか出てこない場合もあるじゃない」
「うん。すっごいありそう、それ」
「ジーニー作戦しかないわね」
「ジーニー作戦?」
「『お呼びですかご主人様~』ってランプから出てくるヤツいるでしょ。ジーニー。あれになるって方法があるわ」
「あの~私に『ヒゲの生えた恰幅のいい魔神』になれって?」
「あんたもしかして、ヒロインのジャスミンになれるとでも思ってんの?図々しいっ」
「ムカー!魔神はあんたでしょ!オカマ魔神!」
ジャスミンからジーニーへ
「どういう事なの?魔神って。魔法使えっての?無理なんだけど」
「あんた公園の芝生でのんびりワインとか飲みたいんでしょ?」
「うん。そういう『お手軽アウトドア』なのいいじゃん。ワインとチーズで」
「だったらポイントは“絨毯ね”」
「じゅうたん?」
「花見の客が使ってるダッさいブルーシートとか、安いビニールシート敷いてるとそれだけで萎えるじゃない」
「だから絨毯かついで行くの?」
「2畳くらいのなら重くないし、安いの売ってるし、車に積んでおけばどこでも最高のピクニックができるわけ。公園の芝生に絨毯敷いて、木漏れ日の下で、シャンパンに生ハムにオリーブってね」
「それ素敵!!」
「これが提案できる男なんて日本で見たことある?」
「未確認生物よね」
「だったら?」
「こっち(女)が考えて提案していくしかないのね」
「ちょっとしたセンスで、女が魔法使いになるの」
「でもさあ、ずっとこっちがプレゼンしてたら、向こうは付け上がらない?」
「そういう女に出会うと男も変わるもんよ。1年くらいしても何もプレゼンしてこない男なら捨てちゃいなさいよ」
「あ。その手もあったか」
「楽しい時間を過ごしたかったら、文句ばっか言って待ってるより、自分で提案した方が早いってことよ」
「待ってるだけのジャスミン辞めて、ジーニーになれってことか」
「魔法使いの近くにいるとね、普通の人間も魔法を使えるようになるもんなのよ」
<山田玲司の解説>
「何でもいいよ」との戦い方
男は女に対してどんな不満があるか?
という話になると、必ず出てくるのが「女は待ってるだけのくせに、文句を言う」というヤツです。
男が「何食べたい?」と聞くと「何でもいい」と言うので、「じゃあ中華は?」と言うと「えーー中華は嫌」と言い「じゃあイタリアンは?」と返すと「えーーイタリアンは嫌」とか言うわけです。
そうなると男は「じゃあ自分で提案しろよ!」と思いますよね。
男でも女でも、自分が提案した事を否定されるのは嫌だし、できれば相手の提案に乗って楽しい思いをしたいと思っています。
日本の男は基本的に「デート」が苦手です。
女達は男の評価を「デート」でするからです。
デートで素敵な時間を過ごせた女は「その先もアリ」と思ってくれるわけですから、これは重要なイベントです。つきあいの長い2人であっても、良いデートをすると関係も良くなるものです。
そんな大事な問題なのに、なぜか日本ではデートの演出に関してあまり語られなくなりました。
その1つの理由は、「恋愛が最高の消費行動だったバブル時代」が終わって久しく、不景気と連動してデート文化は衰退していったので、「素敵なデートの演出ができるのは40代以上のバブル経験者」のおっさんだけになっていったからでしょう。
そんなバブル経験者のおっさん達も女たちに相手にされなくなり、お金や体力、女に対する幻想が消えてしまうと、デート産業から撤退していきます。
そんなわけで、現在「恋愛市場」に出ている若い男は「デート文化を学んでいない世代」なわけです。
おまけにその大半が「女に否定されるのが怖くて怯えてる男たち」です。
女に積極的な男はいても、そういう人間はワンチャン狙いで、その場の肉体関係が目的ですから、このタイプにも「素敵なデート」は期待できません。
こうなるとそんな男達に期待して嘆いているより「女がやれること」をやるしかないわけです。
大金とか何かの特権がなくても、今回の「絨毯演出」みたいな工夫1つで「素敵なデート」は可能なのです。
これが恋愛を演出する「魔法」です。
「デート」は2人でする「冒険」でもあるので、2人で「映画に出ていたレストラン」を探しに出かけたり、「降りたことのない駅」で降りてみたり、屋形船に乗ったり、競馬場とかの未体験ゾーンなどにに行くのもいいと思います。
そこで何かしらのハプニングや失敗があっても、2人だけの「思い出」を手に入れる事ができるならそれでいいのです。
新しい発見や体験は「何でもいい」と言っていた彼の「人生そのもの」も変わっていくかもしれません。
彼の提案にダメ出ししたり、ノープランを嘆くより、「もっと素敵な何か」を提案する方が、人生は面白くなるものなのです。
『おそらく彼は「もう1度話し合おう(涙)」 と来ます。でも実は、「しばらくほっておいたら、 どうにかなるだろ」と思っています。~男の本音を密告する「恋の男子更衣室」~』
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