【INTERVIEW】芳根京子/初主演ドラマ『表参道高校合唱部!』を振り返る

【INTERVIEW】芳根京子/初主演ドラマ『表参道高校合唱部!』を振り返る


2015年の芳根京子の快進撃は目を見張るものがあった。映画のほか舞台化もされた『幕が上がる』、映画『向日葵の丘-1983年夏』、ドラマ『探偵の探偵』のほか、映画『先輩と彼女』ではヒロインを務めた。何より一番記憶に新しいのは、ドラマ『表参道高校合唱部!』で演じた、どこまでも真っ直ぐな女の子・香川真琴役の姿だろう。その真琴役にどう挑んでいたのか。撮影当時の様子を振り返ってもらったほか、今、自分自身の発信場所として大切にしているSNSを通じて“書くこと”について聞いた。

 撮影/中根佑子 文/今津三奈

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――『表参道高校合唱部!』は、1話放送が終わるごとに人気が広がりました。反響はどのように届いていましたか?

「ブログもツイッターもインスタグラムもやっているので、SNSからダイレクトに声が届きました。街中で『見てます』『いつも感動してます』と声をかけて頂くこともありましたし、お手紙は幼稚園に通う子供のお母さんが代筆して送って下さったり、私の母よりも上の世代の方からも頂いたりして。放送は夜10時という遅い時間だったのに、こんなに幅広い世代の方々が見て下さっているんだと実感していました」

――ドラマの主演は『表参道~』が初めて。合唱がテーマで、普段のドラマよりもより団結力が求められたと思います。今までの現場とは居方が違いましたか?

「確かに違うんですが、そんなに変えなくてもいいかなと思っていました。ただ、主役だから誰よりもこの作品を愛していたい、誰よりも役の事を考えていたという思いはありました。現場での立ち位置は、引っ張って行く立場だと理解しながらも、みんなに背中を押してもらっていた感じで。思いつめてプレッシャーになってしまったら怖いとも思ったので、程よくプレッシャーや緊張を感じながらも今までの自分を変えずに、でもこの作品を一番愛すぞ! と」

――監督からはどんなアドバイスがありましたか?

「『抱え込まないで、言いたいことは全部言っていい。ちゃんとぶつかっていこう』と仰って頂いて。その言葉の通り、監督は全て受け止めて下さり、『ここはこうしよう』と色々とアドバイスして下さいました。1話、2話の時は、その時の監督の石井(康晴)さんが、『ここはどういう風に思ってやった?』と声をかけてくれたのですが、少し間があいて5話でまた石井さんになった時に何も言われなくなってしまったんです。何も言われないことが不安になって、自分の芝居がいいのか悪いのかわからなくなって、『私、大丈夫ですか?』と聞いたんです。そしたら『1話2話から凄く成長しているから、何も言うことがないだけ』とおっしゃって下さって、『ああ、よかったーーー』って。そういうことも言ってよかったと思いました」

――どんなことで迷っていたんですか?

「1話のオンエアを見てからちょっと迷走しちゃった時期があって。実際に演じている真琴と、私がやっている真琴、映像になった時の真琴に差を感じてしまって。1話から悪い意味で慣れちゃっていないかな? と思ってしまったんです。でも監督に相談した結果、『大丈夫だよ!』と言われて、信じて頑張ろう! と思いました」

――今回、演技面だけではなく、合唱を聞かせなければなりませんでした。歌は元々得意だったんですか?

「得意ではありませんでした。合唱は好きでしたが、授業でやる程度でしたし、聞くことが好きだったので、得意なのか不得意なのかもわからないぐらいで。これまでのオーディションでも歌ったこともあったけど、『表参道~』はガッツリ歌う作品じゃないですか。まさかこんなに人前で歌う日が来るなんて…(笑)」

――合唱の発声はポップスを歌う時やカラオケとも違いますね。

「合唱は高校1年の授業ぶりだったので、3年ぶり。合唱はひとりだけでは出来ないし、また合唱が出来る喜びもあったんですけど、いざ人前で歌うとなるとちょっと話が違うぞ! となって、そのプレッシャーもありました」

――学生時代は吹奏楽部に所属していたんですよね。音を出してみんなと合せて表現していたぶん、感覚的にはやりやすいところはあったのではないでしょうか。

「そうですね。ゼロから始まった感じはしませんでした。楽譜も読めましたし、ピアノもやっていたので、そこはまだ強いなと」

――実際のレッスンはどんな感じで?

「譜面を渡されてレッスンしたんですけど、メンバーの中だと楽譜は私と部長(相葉廉太郎役/泉澤祐希)が読めるくらいだったので、結構みんな苦戦していました。みのりちゃん(佐々木美子)は同じアルトパートだったので、『ねえ、芳根~助けて~』と言われていて。アルトでも分かれて歌うところは『バイバイ~』と言うと、またみのりちゃんに『芳根~~』って助けを求められたり(笑)。でも、みんなで一緒にやったので、心強かったです」

――テレビ等で見る合唱コンクールはもっと大勢なのでひとりの声がそれほど立つ訳ではありませんが、この高校の人数が少ないぶん合唱部はひとりの声が大事でした。

「5人から始まったので、ひとりの声が責任重大で。学校の授業でそんな風に感じることはなかったから、これは大変だ! と思ってやっていました」

――そんな中、芳根さんは楽譜が読めるし、歌の時もみんなをリードしていたんですね。そのほかにも、表参道の路上で合唱を歌うロケをしていました。それも大変だったのでは?

「表参道で歌うシーンは、とにかく朝早くて。朝一から歌って大変ではありましたけど、今後表参道で歌うこともなかなかないと思うので、凄く貴重な体験でした(笑)」
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――真琴役は、今時こんな子がいるのかと思うくらい真っ直ぐで明るい女の子でした。学校での真琴、家での真琴の演じ分けもありましたが、気を付けたことはありましたか?

『私自身も学校と家では絶対に違うし、お仕事の場所と家でも違うと思います。ドラマでは本当に存在する人になりかたったので、ちゃんと生きている、リアリティーのある人を、いかにナチュラルに存在するように生きられるか心がけました。とても真っ直ぐな女の子ですが、ちゃんとマイナスな部分も持っていて、ポジティブだけじゃない。心の中では不安だし、家族がどうなるか、合唱部がどうなるか、そういうところを出せるのは家なのかな…など考え、リアリティーを求めました』

――ところで、セリフはいつもどうやって憶えていますか?

「家のベッドの上かお風呂。スケジュールがきつくなると、移動中や出番の合間になりますけど、出来るだけ家の中で覚えたくて」

――そのほうが集中出来るんですか?

「それもありますし、一番落ち着くというのがあります」

――セリフ憶えはいいですか?

「よくなったなと思います。『表参道~』を経験して」

――何か覚え方を替えたんですか?

「憶え方を替えた訳ではないんですけど、あまり記憶力がよくなくて(笑)。長ゼリフも結構あったので頑張って憶えましたけど、『表参道~』をやって鍛えられたと思います。そのかわり、終わったらポンと忘れちゃうんですけど、母にも早くなったと言われました」
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――9話の学園祭のシーンはミュージカル調でした。見ごたえありましたが、演じるほうは大変でしたよね。

「あのシーン、クラスメイトは何日も前からダンスの先生がついて練習していたみたいなんです。私達はあのシーンが始まるという段取りの時に、『まず見て下さい』と言われて、クラスメイトのみなさんの芝居を見たんです。それを見ながら『合唱部は今、ここで立ってます。次はここでここに移動します、では、実際に入ってやってみましょう』と突然言われて。その展開は予想外だったし、こんなにガッツリ周りに固められていると思わなかったので、合唱部のみんなで『嘘でしょ!?』とポカーンとしちゃって。しかも、あの曲が結構ギリギリにあがったので、歌詞もあまり自信がないのに、早口でもあったし。『これは大変だよーー』とみんなで焦りました。更に合唱部に関しては、振付も何も言われず、好きなように動いて下さいと言われて。『どうする、どうする?』と言いながら『取り敢えず、ノる??』って感じで始まって。でも、何回も色んなカットを撮るのから繋がりも考えなければならなくて、もうみんながパニックを起こしながらも、誰かが『振りは全部真琴に合わせよう』と言ってくれて。『これはやるしかない、右から絶対に動くから』と言って合せてもらったら、だんだん上手くいくようになって。隣に里奈ちゃん(森川葵)がいたので、『ここはもっとやりたいよね』と、どんどんリード出来るようになったら、周りも乗ってきてくれて。あのシーンの合唱部は、ノリと勢いで乗り越えました」

――どのシーンも思い出深いと思いますが、敢えて一番印象に残ったシーンを挙げるならばどのシーンですか?

「一番印象的なのは1話です。小豆島から始まったのもありますし、撮影もそこから始まりました。泥も被ったし、1曲目が『Over Drive』なんだという衝撃もありましたし、1話の衝撃は結構大きかったです」

――この調子でこの物語が始まるのか…と。

「歌のシーンも1日じゃ終わらなかったので、何日もかけて撮りました。これが10話続く訳じゃないですか。となると、今後どうなるんだろうという不安もありました。でも歌うことも撮影することもどんどん楽しくなっていったので、不安は2話からなくなりました」

――これだけ団結した現場だと、終わってみんなと離れるのは寂しかったですね。

「これ以上ない寂しさでした。みんなと離れるのも寂しいんですけど、真琴と別れることが寂しくて。今後このメンバーでお芝居出来ない寂しさも物凄くありましたが、それは卒業式と同じ寂しさ。その感覚とも違うこの寂しさはなんだろう…と考えた時、真琴との別れだと気づいたんです」

――真琴が好きだったんですね。

「大好きです。誰にも負けないくらい大好きですとお手紙を頂いたりするんですけど、“いや、私のほうが負けない!”と思うくらい」

――芳根さん自身のことも聞かせて下さい。スカウトでこの世界に入ったそうですが、文化祭では映画の脚本を書いたとのこと。元々、映像を作ることに興味があったんですか?

「文化祭で脚本を書いたのは成り行きで、特に興味はありませんでした。力がなさそうだから小道具作っておいて…と最初は小道具をひとりでやっていたんです。脚本は仲のいい友達と6人で書いていたのが、気づいたらふたりになっていて…」

――内容はオリジナルで?

「完全のオリジナルは無理だということになって、『ちびまる子ちゃん』をやろうとなって。ただ、普通にやっても面白くないから、ちびまる子ちゃんの20年後をやることにして。元のキャラクターがあるのでオリジナルではないですが、新しいキャラクターも出しました。でもそれがきっかけで、作品を作るということに興味を持ちました」

――それまでドラマや映画を見たり、好きな作品はありましたか?

「部活しかやっていなくて、毎日9時に寝ていたんです。ドラマって9時から始まるから全然見ていなくて。映画館に行くこともなく、行くなら年に1回、動物の感動モノとかを見に行く感じで。ちょうど文化祭の台本を書いているころにスカウトされたのですが、初めのころは勉強のために作品を見るという感じでした」

――きっかけはどこにあるかわからないですね。

「人生何が起こるかわからないと、胸を張って言えます。中学のころから、予定では高校を卒業したら料理の専門学校に行って就職しようと思っていました。行きたい専門学校があって、そこでやりたい方面を見つけて、パティシェなのか、料理なのか…という感じで。人前に立つことが得意な訳でもなかったんです。なのに、まさかこんな仕事に…。幼稚園の時なんて人見知りが激し過ぎて。だから、母が幼稚園のころの友達のお母さんに会うと、『ひとりで現場に行ってるの?』と言われるそうです。昔の私しか知らない人は、衝撃だと思います」

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――デビューから3年。今年は最も激動だったと思います。

「お仕事を始めた1年目はどうしようかな…とふわふわとしていて。2年目はマネージャーさんと話して、『頑張ろう!』と心に決めた年。3年目に入った時に、こうした大きい役を頂けました。実は1年目の始めはオーディションによく受かったんですが、ちょっと油断したところもあって、その後全く受からなくなって。でも負けず嫌いなところもあるので、スイッチが入ってからは変わりました。気持ちは大事なんだと思います」

――縁のない世界に入ってきて、こんな自分があったんだという新しい発見はありましたか?

「(深く考えて)発見だらけです。今年は高校を卒業して仕事一本と決めて始めたので、責任感もついたかなと思いますし、こんな自分がいるんだと思う時が多いです。写真見ていてもそうですし、映像見ていてもそうですし、こういう顔をするんだ…と発見だらけです」

――ブログ、ツイッター、インスタグラムのほか、新聞でも連載を始めますね。映像だけではなく、文字で表現することに興味があるように見えます。文字で表現する楽しさと、各媒体をどう使い分けているのでしょうか。

「実はどう使い分けるか、私も困っているところなんです(笑)。元々、文字にすることはあまり得意じゃなくて、ブログも事務所に入った時にまずはブログから…と始めたことで。こうして喋っているぶんには、付け加えていけるけど、文字にして伝えることは自信がなくて、正直に言うと最初は前向きではなかったんです。だから最初はブログ一本でやっていこうと思っていたんですけど、慣れてきたら“ここは一番自分を出していいところなんだ”と思って。普段はお芝居をする側なので、なかなか自分を出せる場ってないけれど、ここでは自分の言葉でいいんだと気づいて。そうしたら心も軽くなって、友達とメールをしている感覚になり、『凄く親近感がわいて親しみやすい』とか『ここのブログを見ることが楽しみです』と言われることが多くなって。周囲のツイッターを見ていたら、ツイッターのほうが距離が近いと思ってツイッターも始めたくなって、私のほうからマネージャーさんに『やりたい』と言いました。性格的にも楽しいことが好きで、常に楽しいことを求めて生活しているので、それを伝えることは楽しいなと。それを見て楽しいと思って下さるという喜びもあって、今はとても楽しいです」

――自分を出表現出来る楽しさですね。

「役ではない、芳根京子を知ってもらう場。求められる限り続けたいと思います」

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/プロフィール/
よしね・きょうこ
1997年2月28日生まれ。東京都出身。2013年『ラスト♡シンデレラ』で女優デビュー。その後ドラマ『仮面ティーチャー』朝の連続テレビ小説『花子とアン』、映画『幕が上がる』『先輩と彼女』、舞台『幕が上がる』のほか、GReeeeN『イカロス』のPVにも出演している。2016年は映画『ロクヨン』に出演。今、最も期待されている若手女優。

 /作品紹介/

『表参道高校合唱部!』

MAIN①

脚本/櫻井剛
音楽/木村秀彬
主題歌/「好きだ。」Little Glee Monster(ソニー・ミュージックレコーズ)
プロデュース/高成麻畝子 大澤祐樹
演出/石井康晴 池田克彦 吉田秋生
出演/芳根京子 ・ 志尊淳 吉本実憂 森川葵 堀井新太 高杉真宙 萩原みのり 泉澤祐希 川平慈英 堀内敬子 ・ 神田沙也加 デビット伊東 立石涼子 ・ 平泉成 高畑淳子 城田優

 Blu-ray&DVD

2月5日(金)発売
発売元/TBS
販売元/TCエンタテインメント
Blu-ray/25,920円 DVD/20,520円(いずれも税込)

 OMG_3D_DVD

香川県の高校で合唱に夢中になっていた香川真琴(芳根京子)は、東京の合唱の名門校・表参道高校に転校してきた。しかし現在は部員も集まらず廃部寸前。かつて真琴に合唱の楽しさを教えてくれた鈴木有明(城田優)が顧問なのだが、頼りになるのかわからない。しかし、現在離婚騒動の渦中にある両親が青春時代を送った、表参道高校で合唱がしたいと意気込む真琴は、合唱部の立て直しを企て、まずは存続の最低条件である部員8人の確保に奔走。様々なトラブルが真琴に襲いかかるも、乗り越えていくうちに様々なミラクルが起きてゆく。

 

(C)TBS