【紅茶が歯周病・口臭予防に?】ヌン活で注目が集まる紅茶が口内トラブルを解決
昨今話題の「ヌン活(アフタヌーンティー活動)」。2022年の流行語大賞にノミネートされて以降、ヌン活ブームは衰えるどころか、TV番組で特集されるほど、「紅茶」への注目がますます高まっています。
バリエーション豊かで飽きないことや、季節によってフレーバーの違いを楽しめることも人気の理由になっていますが、中にはコーヒーより口臭が気にならないことから、紅茶を飲むという人も。
実は、紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールやフッ素が、口臭だけではなく、虫歯・歯周病などのお口トラブルの予防にも役立っているんです。
そこで今回は、「ブルックボンドハウス」副支配人、「ユニリーバ」マーケティング、「リプトン」PRを経て、現在は紅茶専門店&紅茶スクールオーナーである英国紅茶研究家の斉藤由美さんのロングセラー書籍『紅茶セラピー ~世界で愛される自然の万能薬~』(ワニブックス刊)より、紅茶ポリフェノールのもたらす「お口の健康」への効果と、歯周病を予防するための正しい取り入れ方について、内容を抜粋してご紹介します。
関心が高まる口内の健康管理
日本人の1日平均の歯みがき回数は、2.7回だそう。これを365日で計算してみると、年間合計1,000回近くの歯みがきを行っていることになります。口の中の健康への関心度は、20年ほど前から大きく変化してきているようです。
オーラルケア製品を取り扱うメーカーのデータによると、以前は歯みがきの目的の筆頭は「虫歯予防」でしたが、今は「歯周病予防」がダントツです。
オーラルケア用品も、歯みがき粉、歯ブラシ以外に、液体マウスウォッシュ、歯間ブラシやデンタルフロスといった商品も、特別なものではなくなりました。
(イメージ:写真AC)
歯科医にかかっている患者の意識もずいぶんと高まっているとのこと。以前は、痛みを感じてから治療のために歯科医を訪れることが多かったのが、近年は、予防のために訪れる患者の増加が目立つのだそうです。
歯石除去のために定期的に通院する患者が増えていることは、厚生労働省のデータでも明らかになっています。
オーラルケア製品も、以前は家族で同じものを使用していたのが、家族それぞれの年齢や症状に伴う異なったニーズによって、自分に合った製品を各自が選ぶ時代に変化しているようです。
私は、長年勤務した紅茶メーカーを退職したあと、2年ほど流通専門誌の編集記者をしていました。そこで、オーラルケア市場の特集記事を担当した際、大手メーカーや販売店、歯科医師のもとに足を運び、直接取材して回ったことがありました。
そのとき聞いた情報で、もっともニーズが高かった症状が「歯周病」でした。ドラッグストアの売場などを見ていても、いちばん多く目にするワードは、歯周病ではないでしょうか。
実はこの歯周病に、紅茶が有効に働くという報告があるのです。歯周病と紅茶の関係に、迫ってみましょう。
歯周病ケアに紅茶が有効な理由
歯周病とは、歯垢に含まれている歯周病菌によって引き起こされる、細菌感染症のことです。感染すると、歯ぐきや、歯槽骨(しそうこつ)という歯のまわりの組織に炎症が起こります。
つまり、口の中に細菌が発生して、歯ぐきが腫れたり、出血したり、最終的には歯が抜けてしまったりという症状のことで、歯を失うもっとも大きな原因の病気の総称が、歯周病なのです。
歯周病は、自覚症状がないまま進行してしまうという怖さがあり、なんと日本人の約80%が歯周病にかかっているとさえいわれています。
痛みがないので大丈夫と思い、そのまま放置しておくと、あとでたいへんなことになってしまうというのが歯周病の怖さ。でもその一方で、日々のケアを心がけていると、進行を防ぐことができるという、予防しやすい病気でもあります。
(イメージ:写真AC)
この歯周病予防に、紅茶が活躍するという報告がありました。ここでもまた、「紅茶ポリフェノール」が力を発揮するのです。
紅茶ポリフェノールには、抗菌作用があるため、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑えてくれます。ある研究では、緑茶よりも紅茶のほうがそのパワーが強いと報告されました。
食事のあと、歯みがきをする環境にない場合などは、紅茶を飲んだり、または紅茶で軽く口をゆすぐことで、歯周病菌を抑えることができます。
ただこの場合、紅茶は無糖であることが必須となります。糖分が含まれていると、虫歯菌が増殖しやすくなるため、逆効果になってしまうからです。
そして、レモンティーも避けたほうがよいでしょう。それはなぜかというと、口の中が酸性になってしまうから。口の中が酸性状態になることで、虫歯、歯周病に次ぐ第三の口腔疾患を引き起こす危険があるためです。
食後の1杯が、口臭の不安を解消
以前、イギリス人女性が来日した際、数日間、同行したときのことです。昼食後にハンドバッグの中から何やら誇らしげに携帯用の歯みがきセットを取り出して、こんなことを言ったのを思い出しました。
「日本に来るようになって、いちばん衝撃を受けたのがコレなのよ。若い女性たちが、お昼ご飯を食べたあとに歯みがきをするのを見て、なんていい習慣なのかしらと思って、同じような携帯用歯みがきセットを買ったの。食後の口の中って、気になるものね。これで気にしなくてすむわ」と。
たまたま何度かオフィスで一緒に仕事をしたとき、昼食後に歯みがきセットを持って化粧室に行く女性たちの行動に興味が湧いたらしく、影響を受けたそうです。
(イメージ:写真AC)
オフィスでの食後の歯みがき習慣。これは歯の健康維持というよりは、口臭が気になるため、安心して仕事ができるように、という理由から流行り出したと聞いたことがあります。
オフィスでもしっかり身なりを整えて、清潔に仕事をしようという日本人女性の美意識の高さを感じるひとコマでもあります。
この気になる口臭が、飲み物で抑えることができるとしたら、かなり助かりますよね。仕事場は、いつもオフィスとは限りません。歯みがきできる環境が整わない場所で、食事をしたあとすぐに打ち合わせをするということもあるでしょう。
口臭の原因は、口の中に残った食べかすのタンパク質です。口臭が気になると、自信を持って人と接することができなくなり、人に不快感を与えているのではないかと心配にもなります。
ある実験では、湯を飲んだ場合と紅茶を飲んだ場合とで、その後の口臭成分の量を比較。その結果、湯を飲んだ場合は口臭成分が増えていたのに対し、紅茶を飲んだ場合の口臭成分は、飲む前の6分の1にまで減ったそうです。
(イメージ:写真AC)
実際に、食後に紅茶で口をゆすいだり、うがいをしたりしてみると、口の中がすっきりするのがわかります。この場合もまた、砂糖やレモンなど何も加えていない、ストレートティーであることがポイントです。
歯みがきをする時間がないときや、外出先で急いでいるときなど、紅茶習慣を身につけていれば、助かることが多いことでしょう。紅茶は、暮らしの中のエチケットにも一役買ってくれるというわけですね。
ただ、紅茶でうがいしたから安心というわけではありません。これはあくまでも、歯みがきができない環境でのこと。
紅茶やコーヒーや赤ワインなどの飲料は、歯への色素沈着が、一方では問題となります。自宅にいるときにはきちんと歯みがきをし、定期的に歯科医で検診を受けるなどの配慮が必要です。
そこで私は、保温用ポットに紅茶を入れて携帯することをおすすめしたいと思います。それは、喉の渇きを癒やすためだけではなく、ときに体を温めてくれたり、歯みがきができないときには口の中をよい状態にしてくれたりという、外出先での強い味方。
ぜひ紅茶を身近な相棒として、活躍させましょう。
『紅茶セラピー ~世界で愛される自然の万能薬~』では、紅茶の驚くべき効能のほか、おいしいいれ方やアレンジレシピ、紅茶の基礎知識まで、紅茶のスペシャリストが長年の経験から得た、紅茶の健康効果を高めるための飲み方のコツや、暮らしへの取り入れ方まで、惜しみなくたっぷりお伝えしています。
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『紅茶セラピー - 世界で愛される自然の万能薬 –』
著:斉藤由美
監修:冨田勲
斉藤由美(さいとう・ゆみ)
英国紅茶研究家、ライター。日本紅茶協会認定ティーインストラクター、ティーアドバイザーの資格を持つ。東洋大学文学部卒業後、ブルックボンド紅茶を扱うメーカーに入社、総務部で人事を担当したあと、「ブルックボンドハウス」副支配人として紅茶教室の企画を担当、人気紅茶教室の基礎確立に貢献。その後、ユニリーバに転籍し飲料マーケティングに所属、リプトンのPRを担当した。
現在は、紅茶専門店&紅茶スクール「イギリス時間紅茶時間」(秋田県大館市)のオーナーとして、ティールーム、ショップ、紅茶スクールを運営。秋田市、青森県弘前市のカルチャースクールでも紅茶講座を担当するほか、紅茶セミナーや講演などの活動も行う。自身がプロデュースし、同行する「イギリス紅茶ツアー」なども実施。近著『しあわせ紅茶時間』(日本文芸社)は、台湾・韓国でも翻訳出版された。著書は『紅茶セラピー』(ワニブックス)のほかに、『すてきな紅茶生活』(PHP 研究所)、『英国紅茶の贈り物』(KK ベストセラーズ)、『しあわせ紅茶時間』(三笠書房/知的生きかた文庫)など。
冨田勲(とみた・いさお)
静岡県立大学名誉教授、薬学博士。
1932 年富山県富山市生まれ。大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了(1961)、同大学助手(1962), 米国アイオワ州立大学、ニューヨーク州立大学博士研究員(~ 1964)を経て、静岡薬科大学(1966 ~)、静岡県立大学薬学部および同大学大学院教授(1987 ~ 1998)などを歴任。
定年退職後、静岡産業大学国際情報学部教授、同客員教授などを経て退職(2005)。
現在、日本老化制御研究所(JaICA)顧問、茶学術研究会元会長、世界緑茶協会元理事、日本食品衛生学会(元会長)名誉会員、日本茶業技術協会理事、日本ビタミン学会功労会員、その他。
著書(共著)に『茶の科学』(朝倉書店)、『茶の化学成分と機能』(弘学出版)、『新版 茶の機能』(農文協)、『成人病予防食品の開発』(シーエムシー)、『食品衛生学』(南江堂)、『日本茶のすべてがわかる本』(農文協)など多数。