
【夏の水分補給にも!】茶葉を使ってないのにお茶と呼ばれる、綺麗になれちゃう?台湾のお茶。
優美でおいしい台湾茶。
淹れ方やお作法のハードルが高そうだけど、実は自由に楽しめるもの。好きなところをつまみながら自分の茶道を探す、台湾在住コーディネーター・青木由香さんのお茶ごとエッセイ。
茶葉で淹れるものだけがお茶ではない。例えば、日本でも、黒豆茶、蕎麦茶、十穀茶と穀類や豆から抽出したものも「茶」と呼ぶように、台湾にも花を茶葉のように湯に浸けて抽出した飲み物から何かの粉末を溶いたものまでその類いはたくさんあります。抽出行為が入っているから「茶」の字を使ってもいいよ! と世の中が大目に見ているのかと思っていたら、抽出もしてないのに「茶」と呼ばれるものもあるし。これは、一体なんなんだ。
△左:杏仁粉。これを溶いてお茶にする。右:菊花茶の素となる乾燥花。
軽くずっと気になっていたので、これについて重い腰を上げて調べてみた。すると中国の長い歴史の中では、お茶も漢方薬のように薬として飲まれていたと出てくる。昔はお茶の定義がめっちゃ広かったんです。粉を溶いたものまでって変! と思っている私が変だった。時を経て、茶の木から採れた茶葉のものを、今は主に「茶」と呼ぶようになったのです。茶葉以外のお茶に今まで大変な失礼をしていました。
△朝から道端で飲める杏仁茶。
この茶葉以外の「茶」は、適当に「茶」を名付けているのではなさそう。昔の流れを汲んで、漢方だったり、薬膳だったりと体に良さげと思われる液体に「茶」と名付けているようなのです。その辺のお茶が体に良いことはふんわりと知っているものの、実は私もよくはわかっていない。この際、気候も暑いので、台湾の日常で夏に好んで飲まれる“綺麗になれる系”、調べてみました。
杏仁茶(シンレンチャー)
杏仁は、杏(あんず)の種の芯にある白い部分をわざわざ取って擦り潰した粉、それを湯に溶いたもの。杏仁豆腐の杏仁と同じ。漢方では、喉や肌を潤し美白美肌効果があると言われるもので、日差しもエアコンも強い夏には、お肌のためにぜひ飲んでおきたい。
杏仁を寒天やでんぷん系で固め、かき氷と一緒に食べるレトロスイーツになると、途端に女子っぽいイメージが強い。アッツアツの杏仁茶にして、生卵を落として油條(ヨウテャオ:揚げ麩)に付けて食べるタイプは、伝統的な朝ごはん。こっちになるとおっさんたちも好む。
△おじさんもいただく朝ごはん系の杏仁茶。生卵入り、油條添え。
ちなみに杏仁粉は、漢方薬剤店で見つけられます。本来のほんのりした甘さはありますが、好みでさらに砂糖を足して、お湯でなくミルクで伸ばしたり。すでに甘さとトロミをつけてある、飲みやすい杏仁茶の素(杏仁霜:シンレンスァン)も台湾ではスーパーによく並んでいます。杏仁には、南杏仁と北杏仁とがあり、南杏仁は甘みがあり杏仁茶に使われますが、北杏仁は苦く、薬効が強いので自分で適当に飲まないほうがいいみたいです。
△街中でも杏仁茶が飲める。左:シンプルに杏仁を湯で溶いたもの。右:甘さととろみのあるコンビニのもの。
菊花茶(ジューホァーチャー)
乾燥させた食用の菊の花をお湯で抽出したもの。バラやジャスミンのような華やかさはないけど、「花、湯に浸けたね。」と言う味はする。花より草っぽいかもしれない。はちみつで甘さを付けて飲まれることが多い。
△台湾では、甘菊花(ガンジュウホァー)か小白菊(ガンジュウホァー)の白い小ぶりな菊が一般的。
菊花茶は、漢方では「涼性」になるので、体にこもった熱を冷ます作用があり、夏向きのお茶。冷やしても美味しいんです。しかし冷え性の方や妊婦さんは、冷えは大敵。やめておきましょう。漢方の「涼性」は温度の問題ではなく、あったかくして飲んでも体の熱が奪われてしまいます。
だからか! 台湾人に「ビール(麦)は体を冷やす(涼性)から生理中は飲むな」と止められた時、ぬるいビールならいいか聞いたら、バッサリ切り捨てられたのは!
目の疲れ、リラックス効果も期待できます。胃腸が弱い人はあったかい状態で飲んでください。ちなみに、黄色い菊花もありますが、効能も違うのでハーブ的に飲める小白菊がオススメ。
洛神花茶(ロウシェンホァー)
綺麗なワインレッド色の酸味のあるお茶。日本ではハイビスカスティーとかローゼルティーと呼ばれていますが、いわゆる常夏をイメージするあのハイビスカスとは同族別種。
飲むのは、厳密には花弁でなくガク。シーズン中に見かける生のガクは予想以上に肉厚で、お茶となっているのは種を取って乾燥させた状態です。これを台湾では煮出して、砂糖やはちみつで甘くします。クエン酸、ビタミンC、ポリフェノールといった美容に嬉しい成分も含まれていることから、美人茶の別称もあり。利尿作用でむくみ改善、血圧を下げる作用もあると言われています。
温かくしても美味しいですが、夏は大体冷たくして飲んでいます。これも「涼性」なので、生理中の方、妊婦さん、冷え性の方は控えめに。
冬瓜茶(ドングァチャー)
あの巨大なウリ、冬瓜(とうがん)を砂糖や黒糖で煮詰めて煮詰めて茶色くて黒糖みたいに固めた塊(冬瓜糖)。それを煮溶かして薄めて飲むもの。煮て、わざわざ固めといて、また煮溶かして。手が込んでいると言うのか、なんなのか。冬瓜糖は、台湾では「冬瓜磚(ドングァヂュアン)」とも。「磚」=「レンガ」。そう、巨大なブロックの姿で売られています。この扱いにくい点を現代でもどうにかしないのが台湾のワビサビ。
△左:冬瓜磚を無理やり砕いたもの。右:同量の水で煮溶かしたものをさらにカルピスくらいの割合(と言ってもお好みでOK)で、水で割ったもの。
冬瓜茶は、台湾人の好きな昔懐かしい飲み物。時に干瓢(かんぴょう)のような匂いが気になるものもありますが、そうでないものもある。旨味の加わった黒糖水のようです。水で割るか、炭酸で割ってレモンを入れたり、ミルクで割ったり。暑い時期に冷たくしていただきます。冬瓜も漢方的に「涼性」で、体のほてりの解消や利尿作用、むくみが改善すると言われています。
こうして並べると、甘くするものが多いですが、化学的な味付けの飲み物を飲むより体にいいかも。茶葉でないお茶、見逃せません。
しかし茶の木から取った茶葉が、「茶」と呼ばれるメインの存在になったのはなぜか。あと、茶葉のお茶には、ただ飲む以外、文化的な儀式や道具や作法や意味が与えられている。なんでかなー。誰か教えてください。
今日の一杯。枸杞菊花茶(グォーチージューホァーチャー)
台湾では、菊の花のお茶によくクコの実を合わせます。てっきり「白に赤って見目麗しい!」とビジュアル先行でやっているのかと思っていましたが、違いました。
△味は、草花っぽいところに、ほんのりクコの実の甘さが付く。はちみつを入れても。
白菊は、漢方的に「視界が明るくなる」と言われていて、「涼性」です。そこに体を温める性質の「温性」にスーパーフードのクコの実が入ると、バランスが取れて冷え症でも冷えすぎちゃう心配なく目の養生になると言うワケです。台湾人のこうゆう知恵がニクイ。クコの実は、βカロチン、ビタミン類、カルシウム、鉄分、ポリフェノールと良いこと祭り。枸杞菊花茶は、エアコンのドライアイや紫外線で弱るあなたの目の玉を守ってくれます。
※体に良いからと言って大量に飲み続けてはダメ。様子を見ながらでお願いします。
*次回は8月4日(月)に公開予定です。
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