【猫の日に読みたい本】いざという時、あなたのペットはどうなる? 飼い主の“もしも”に備える「ペット後見」というしくみ
日本はいま、人口の約1/3が65歳以上という高齢者社会。いまは元気に過ごしていても、病気やケガでの長期入院や、もしもの時を考え、人生のパートナーとして犬や猫を迎えることを、諦めてしまう方は少なくありません。また、医療の発展とともに、ペットの長寿化も進み、今後どこまで面倒をみれるだろうかと漠然とした不安を抱えたまま、悩んでいる方も多いはず。
さて、今週は「猫の日に読みたい本」と題して“選りすぐりの猫本”をお届けしています。第3回は、そうした課題に対する解決策のひとつである「ペット後見」について、『ニュースONE』(東海テレビ)『女性セブン』(小学館)など多数のメディアに出演し発信されている獣医師・奥田順之先生による、『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』をご紹介します。
※本記事は、奥田順之:著『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
高齢者は飼うべきではない?
「最後まで飼えないなら飼うべきではない」という意見は、行政や動物愛護関係者から繰り返し発信されている、動物愛護の基本理念ともいえる考え方です。日常的に引き取り依頼の相談を受ける保護団体では、その気持ちは一層強いことでしょう。
動物の命を守る、動物たちの生活を守るという立場からすれば、「最後まで責任を持てないなら飼わない」というのは基本的な姿勢ともいえます。そして誰も反論できない強さがあります。
一方で、ペットと暮らしたいと願っていても、将来的に飼育を続けられなくなる不安から、飼育を諦めている高齢者がたくさんいます。
飼育をためらう理由としては、「最後まで世話ができないかもしれない」「経済的に不安がある」「体力や健康に自信がない」といった内容の項目が上位に挙げられています。動物と暮らしたいという思いを抱きながらも、自分にはそれが許されない。そんな高齢者の思いが感じられます。
命に向き合う以上、「安易に飼うべきではない」は正論です。終生飼育の責任を果たせないと考えた人が飼育を断念するのは「責任ある行動」といえます。

(イメージ:写真AC)
現在、多くの行政機関では犬や猫の譲渡にあたって年齢制限を設けており、「65歳以上には譲渡しない」もしくは「保証人を求める」とする施設が多数を占めています。
これは、再び飼い主を失うリスクや、飼育困難のリスクを防ぐための措置であり、その趣旨は、動物愛護の観点から正当であり、理解できるものです。保護団体においても、同様に年齢制限を設けているところが多くあります。
しかし、すでに4分の1の世帯が「65歳以上のみの世帯」である日本。保証人を立てられない世帯も多いでしょうが、こうした世帯に譲渡を認めない方針は、動物たちの譲渡先を大きく狭めてしまいます。確かにリスクはありますが、必ず飼えなくなるわけではありません。
健康に長生きする人が増えている中で、まして60代であれば、大人の保護犬猫(5歳〜10歳)を迎え入れても、最後まで飼いきれる可能性の方が高いといえます。
また、保護団体や保健所、愛護センターで年齢を理由に譲渡を断られた高齢者が、ペットショップで子犬や子猫を購入するというのはよくある話です。子犬や子猫は当然ながら成犬や成猫よりも寿命が長く、高齢の飼い主が飼育放棄に至るリスクは高まります。
つまり、65歳以上・保証人を立てられないという理由だけで一律に譲渡を断ることは、保護犬猫の譲渡の選択肢を狭めるだけでなく、高齢者が年齢の見合わない子犬・子猫購入してしまうことを助長しかねません。

(イメージ:写真AC)
そもそも、「絶対に最後まで飼う保証がないなら飼うべきでない」という考え方を厳密に適用するならば、誰もペットを飼う資格はないということになってしまいます。
人生は思いどおりにはなりません。終生飼育を目指していても、さまざまな事情によりそれが実現できないことがあります。若者であっても事故や病気、生活環境の急変など、ペットを飼い続けられなくなるリスクは誰もが抱えているものです。
年齢に比例してリスクが高くなるのは事実でしょう。しかし、健康寿命には大きな個人差があります。「〇歳以下はOK、○歳以上はNG」と年齢で線引きできるものでしょうか。年齢で一律に高齢者を排除し、「飼いたくても飼えない」「飼いにくい」状況を作るのは果たして正しいことなのでしょうか。
飼い主1人が最後まで飼いきることが「終生飼育」ですが、すべての飼い主が終生飼育することは現実的には不可能です。超高齢社会が進む中、飼育できなくなるリスクの高い飼い主は増え続けています。
一方で、個人個人がペットを飼育して幸せになりたいと願うことを止めることはできません。ペットを愛する人だからこそ、人生の最後までペットとともに暮らしたいと強く願っています。
リスクがあるからといって、その願いを一律に否定することはできないと、私は思います。
ペット後見とは?
もしも自分が飼えなくなっても、この子に対する責任は果たしたい――。そうした飼い主さんの思いに応える取り組みが「ペット後見」です。
ペット後見とは、最後まで飼育の責任を果たす取り組みの総称です。飼い主が入院や死亡などにより、ペットを飼えなくなる事態に備え、飼育費用、飼育場所、支援者をあらかじめコーディネートしておくことを指します。 これは当団体による造語ですが、最近では行政機関をはじめ、広く一般にもこの名称が使われはじめています。
ペット後見を支援する組織は全国にあり、支援の形はさまざまですが、次の3つは共通しています。
①飼育場所(引き受け手)を決める
②飼育費用を残す方法を決める
③急な入院時のサポートなど万が一の見守り体制を決める
この3つが揃って初めて、飼い主の身に何かあってもペットが行き場を失わずに健やかに過ごすことができるのです。

(イメージ:写真AC)
当団体が運営する「ペット後見互助会とものわ」は、これまでに約40件の終生飼育契約を結んできました。とりわけ昨今は相談件数も契約数も増加傾向にあり、2024年以降は月に1〜2件のペースで新たな終生飼育契約が締結されています。
とものわの大きな強みは、飼育費用の残し方、動物の引き受け手の確保、見守り・緊急対応の三要素をワンストップで提供できることです。
さらに問題行動へのケアや、生活困窮者向けのペット支援といった普段の活動を通じて蓄積したノウハウを活用できること。また、これまで構築してきた弁護士や行政書士のネットワークから必要な専門家を紹介するなど法律面でもサポートできることが挙げられます。
本書では他にも、「一人暮らしの自分が入院したらどうしよう……の前にすべきこと」「もしもの時に信頼できる協力者、団体の選び方」「動物たちに「遺産」を遺したいと考えている方へ」など、実例を交えて詳しく解説しています。
“もしも”に備える「ペット後見」というしくみをこの一冊を通して学んでいきましょう。
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『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』
著:奥田順之
奥田 順之(おくだ よりゆき)
獣医行動診療科認定医
岐阜大学獣医学課程卒獣医師
鹿児島大学共同獣医学部講師(動物行動学)
岐阜大学在学時、殺処分問題解決を目的とした学生団体を設立し活動。卒業後、社会的合意形成を支援するパブリック・ハーツ株式会社入社。社会教育プログラムの開発に携わる。NPOを起業するにあたり、社会的企業支援プログラムに参加。 ソーシャルビジネストライアル2011年度優秀賞受賞、東海若手起業塾第4期5期。
2012年NPO法人人と動物の共生センターを設立。飼育放棄の主な原因となっている、問題行動の予防・改善を目的に、犬のしつけ教室ONELife 開業、2014年ぎふ動物行動クリニック開業。2017年に獣医行動診療科認定医取得。現在、同クリニックでは、年間150症例以上の新規相談が寄せられ、解決のサポートを行っている。
2017年「ペット後見互助会とものわ」を設立し、ペット後見のサポートを開始。2025年までに約40件のペット後見契約を締結。ペットと自分の将来に悩む飼い主への支援を行っている。 動物行動学・動物福祉学の専門家として、各行政検討会等の委員を務め、ペット産業の適正化に取り組んでいる。ペット防災活動にも取り組み、2021年NPO法人全国動物避難所協会設立。
人と動物の共生センター https://human-animal.jp/
Instagram @tomoikiofficial
X(旧Twitter) @okuoku_tamitami








