【新連載】そもそも推し活という言葉に違和感がある件

【新連載】そもそも推し活という言葉に違和感がある件



推しのおかげで毎日が楽しい! だなんて綺麗ごとではないのか。時にはお金を払って対象を消費する行為を疑い、自己嫌悪に陥ることもある。
そんな美醜と向き合いながらも、最後は「なんだかんだ言って、オタクって救済だよね」に着地してしまう。
酸いも甘いも噛み分けたオタクなコラムニストが赤裸々に綴るオタクエッセイ。


BOOKOUTをご覧の皆様、こんにちは。ライター/コラムニストの山野萌絵(めりぴょん)です。普段は同人誌を書いたり、noteで勝手に「オタク論」を繰り広げたりしています。この連載は、令和の世になんだかあたかも世の中でポジティブな感じに捉えられている「推し活」なる行為に対して、そもそも「オタクというのは大いなる異常執着行為なのではないか?」という私の知見をもとにした盛大なる持論を展開していくシリーズとなっております。

お声掛けいただき始めることになった連載のタイトルは「オタクって、異常執着行動」。

第一回のテーマは「そもそも推し活という言葉に違和感がある件」である。

筆者は1997年生まれの28歳。簡単にこの連載で初めて私をご存知になる方に説明すると、小学生の頃に国民的アイドルに目覚め、高校生で若手俳優の追っかけに身を投じ、その後2.5次元舞台・ミュージカル、メンズ地下アイドル、女の子の地下アイドル、ソシャゲ、メンズコンカフェ、メイドカフェ、果てはミュージシャンにまで2014年くらいからヘビーなオタク行為を続けているのであるが、そもそも令和の世になってからうっすら思っていたことがある。

 

「推し活」の語源って…?

そもそも、「推し活」って、平成の世には「存在する」けど、「主流ではない」言葉だったような……?

「推し活」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたのは2021年。企業が「推し活」という言葉を使い消費者に対してグッズを売る事例の中でもかなり早かったのがタワーレコード「推し活グッズ」シリーズであると筆者は記憶しているが、そのタワーレコードの担当者もインタビューで「2015年当時は”推し活”という言葉が浸透していなかった」と述べており、販売当初は「推し色グッズ」というネーミングだったのだ。

(※)オリコンニュース「タワレコ、「推し活グッズ」に舵を切り早10年…変遷する渋谷文化と推し活への潮流を紐解く」より(25/2/6 https://www.oricon.co.jp/special/70177/)

個人的にはタワーレコードの「推し活グッズ」シリーズは、私が「推し活」という言葉が嫌いなことを除いてもわりと賞賛している。「持ち手が折りたためるうちわ」は非常に便利だ。タワーレコードはオタクが働いていることが多いこともあって、オタクの気持ちがわかるのであろう。痒いところに手が届くと言える。

そう、私は「推し活」という言葉が基本的に嫌いなのだ。なぜなのか……?

2022年に私がその理由を説明したツイートがバズったことがある。そのまんま引用させていただこう。

「推し活推し活って言われてるけど、こっちがやってる異常行動はもう10年近く同じなのに、急に外からズカズカ入ってきた一般人が推し活って名前つけてジャッジしてくるようになって、あなた今推し活をしてますね!って言われても、知らんがなと思う
急にインディアンと呼ばれ始めたインディアンの気分」

2022年10月26日投稿
https://x.com/_a030/status/1585074914222280705

コロンブスがうっかりアメリカ大陸をインドだとものすごい勘違いをしたせいで、インディアンというありえない名前をつけられてしまったアメリカ先住民たち。インディアンの気持ちが非常によくわかる……インディアンは令和日本のオタクに勝手に共感されているなど夢にも思わないであろうけどな

推し活ブーム以降、数々の雑な企業が「推し活」という語に便乗し、なんだか「そうじゃないんだよな〜」と言いたくなるような「推し活グッズ」を繰り出してきたり、果ては「推される側」である演者サイドまでもが「推し活」という語に便乗したり。はっきり言わせていただくと、なんだか状況全体が薄ら寒いのだ。

 

悔しいけど使い勝手が良すぎる

しかし、「オタク」という語がなんだか使いづらいのもまた事実。「オタク」と言うには明るくポップであり、わりと気軽な対象の消費や応援行為のことを絶妙に指す言葉としての「推し活」。……非常に悔しいが、これ、かなり便利なのである

今や立派に市民権を得てしまった「推し活」。私もその言葉が嫌いなのに、オタクに理解のない一般人に説明する時の「便利ツール」として推し活という語を使ってしまうことがある。まあ、やっていることの実態としては世間一般の皆さんが行っている「推し活」とはかなり乖離しているが、その内容のすごさや変さを包んでしまうオブラートとしても「推し活」は便利なのだ。

「推し活」の便利さには「誰でも気軽に名乗れる・使える」という点も挙げられる。小学館・デジタル大辞泉で「おたく」を引くと、「ある事に過度に熱中し、詳しい知識をもっていること。また、そのような人」とある。日本語の定義として、過度に熱中し、詳しい知識を持っていないと「オタク」とは呼べないし名乗れないのだ。「何らかの対象を消費し愛好するライトな層」に該当する日本語がこれまで「ファン」以外になかったが故に「推し活」はここまで市民権を得たのであろう。

しかし、「推し活」という語があまりにも市民権を得過ぎてしまったがために従来の「オタク」層まで勝手に「推し活している人」と認定されてしまう現状がある。これを嫌悪しているが故に一部オタクの「推し活」に対する反発は生まれているのではないか? と私は考察しているのだ。

 

やっぱり綺麗ごとでは済ませられない

「推し活」という言葉に反発し嫌悪しながらも、時には「推し活」を隠れ蓑にして大衆性を利用する……この複雑なる感情と行動はごく一部のこじれたオタクにしか共感してもらえないであろう。

だが私ははっきりと言いたい。

「推し活」というのは、広告代理店が賛美するような「推しがいれば人生が楽しくなる!」とかそんな一面的なものではない。もっとさまざまな喜怒哀楽を含む、非常に複雑な性質を持つ行為なのだ。そしてヘビーな層の行っている「推し活」はもはや、皆さんの思っている「推し活」でくくってはいけない。「異常執着行為」などの正しい名称に今すぐ変更すべきである。

……と、いうのが本連載の趣旨。つまり、タイトルの「オタクって、異常執着行為」に繋がってくるわけである。

推し活という言葉を入り口にした「オタク」の世界は魑魅魍魎。わりと「対象を消費する行為」が人生にどんな影響をもたらすか? というのはどう転ぶかわからない。「推し活」というライトで気軽に使える言葉、それは隠れた諸刃の剣なのである。

そして今の中高生世代は「推し活」という言葉がメジャーになって以降の世界しか知らない。「推し活」が魔境への入り口であることを知らない可能性も大いに高いのだ。

読者の皆さんに、「オタク行為」の私が勝手に考える「本質」をお伝えする。そんな連載になれば幸いである。

※オタク文化のリアリティを追求する本連載の特性を鑑み、表現の意図を尊重して掲載しております。本文は著者の見解に基づく内容であり、著者及び弊社が読者の皆さまに推奨する行為、意向ではございません。

illust./イラストAC

*次回の更新は3月25日(火)予定です。

山野萌絵(めりぴょん)

ライター/コラムニスト。オタク。はてなブログや文学フリマで好き放題書いていたところ、なぜか2019年に商業連載デビュー。普段はnoteや同人誌で活動中。

X(旧Twitter) @_a030
note https://note.com/13weekslaterep