【INTERVIEW】清水崇監督のもと現代に甦った『八つ墓村』で“血の呪いが呼ぶ禍々しい連続殺人事件に巻き込まれる大学生・辰弥役に抜擢された奥智哉。

【INTERVIEW】清水崇監督のもと現代に甦った『八つ墓村』で“血の呪いが呼ぶ禍々しい連続殺人事件に巻き込まれる大学生・辰弥役に抜擢された奥智哉。


ミステリー界の巨匠・横溝正史の金字塔ベストセラー『八つ墓村』。歴代の名優が演じてきた名探偵・金田一耕助を託された尾上松也とともに、この現代版“八つ墓村”の物語の核となる青年・辰弥を任された奥智哉。疎遠になっていた母の死をきっかけに、村の権力者である旧家・田治見家の後継者に指名されたことで、血の呪いに巻き込まれていくこの大役をどう受け止め、向き合っていたのか? 清水監督が描く八つ墓村の恐怖とは、尾上松也、堀田真由、滝藤賢一ら、実力派俳優たちと芝居を交わす日々とは? 奥にとって大いなる経験となった今作をたっぷりと振り返ってもらった。

撮影/浦田大作 スタイリスト/村留利弘 ヘアメイク/八十島優吾 文/米川里代

―『八つ墓村』の原作、映像化作品についてはご存知でしたか?

「今回のお話をいただくまでは、きちんと作品に触れたことはなかったのですが、“八つ墓村”というタイトルやキービジュアル(頭に蝋燭姿の要蔵)は、かなり強く印象に残っていて、以前から知っていました。僕の世代でも知っている人はいると思いますし、それだけ有名な作品ですよね」

―今回のオファーをどう受け止めたんでしょう?

「『八つ墓村』はいろんなシリーズ(映像化作品)で何作もありますし、長い日本映画の歴史の中でも、本当に伝統的な作品なんだろうなと思っていたので、プレッシャーはすごかったです。辰弥という役もこれまでいろんな方が演じてきていますし、最初はこんな若造の自分に務まるのか? という不安はあったんですけど、台本を読んでみたら“あ、これまでとは違うんだな”と思って。これはもう、しっかりと自分がやれることをやろうと。今までの作品だったり、辰弥だったりというのはもちろんリスペクトしつつ、自分の辰弥を作っていけば大丈夫かなというふうに思えて、ちょっと肩の荷がおりてクランクインできた気がします」

―現代劇だというだけでも、ちょっと安心できますよね。

「そうです、安心できて。野村芳太郎監督でショーケン(萩原健一)さんと渥美清さんが出演されている1977年版を観た時に、それぞれの時代に合わせた作りになっていると感じたんです。その時代その時代に合った“八つ墓村”なんだなと。今回の辰弥は大学生で、今の若い子にも普通にいるような、ちょっと無気力な部分のある役設定になっていますし、辰弥視点で物語が進んでいくので、今の若い人たちにも見やすいんじゃないかなと。気軽に見てもらえたら嬉しいですね」



―辰弥に降りかかる、この“血の呪い”の物語についてはどんな印象、イメージを持たれましたか?

「冷たくて、おどろおどろした歪さ、不気味さはすごく新鮮でしたし、ワクワクもしました。八つ墓村の面白さ、醍醐味のひとつですよね。清水監督の演出とも相性が良さそうだなと思いました。実際に完成した作品を観ても、撮影していた時に想像していた完成像とはまた違って、いい意味で裏切られたような」

―いい意味で裏切られました、ほんとに。横溝作品、八つ墓村という題材を、清水監督が調理するとこうなるのか! とワクワクしました。

「ですよね! 監督らしいちょっとビクッとなるような恐怖表現もありつつ、八つ墓村の田治見家とか双子杉とか御神楽の謎だったりがしっかりとミステリー、オカルトで。何より、辰弥の成長物語でもあるなと感じたので、そこが今回の八つ墓村の面白みでもあるのかなと思いました。辰弥の人としての成長が見られるものにというのは、クランクイン前に監督からお話をいただいたところでしたし、ただただ巻き込まれて終わりにはしたくないというのは、僕もずっとあったので。そこは最初に共有させてもらって。みんなが目指したゴールのひとつというか、辰弥をちゃんと成長させていくっていうところは意識しましたね」

―撮影中も、辰弥として成長を感じながら演じられた感覚ですか?

「個人的には、金田一さんとのやり取り、美也子さんとのやり取りもそうだし、小竹小梅さんたちのような鮮烈なクセの強いキャラクターたちとの出会いが、無気力な辰弥にとってすごく刺激、起爆剤になったんじゃないかなと思うんです。感情をあまり表に出さないタイプなので、パワーの強いキャラクターたちと出会っていく中で、事件が起きていく中で、自分の中に眠っていた感情というのがどんどん呼び覚まされていってるんだろうなと、撮影しながら思っていました。段階を踏みながら、このシーンは感情としてはこれぐらい出して、まだ隠しているとかっていうのは考えながらやってましたね」

―その塩梅、バランスは監督と話しながら。

「そうですね。ローテンションになり過ぎず、金田一さんのちょっかいにも反応はするけど、そこまで感情は出さずとか。ローテンションすぎるとなんとなく観ている人もローテンションになってしまうんじゃないかというのは撮影しながら思っていたので、そういう人としての反射的なお芝居はしっかりやっていました。監督ともディスカッションしながら作っていけたなという感覚はあります」

―そういう中で印象深い監督の言葉や演出ってどんなものがあります?

「辰弥と美也子が田治見家の中庭で話しているシーンがあるんですが、辰弥にとってターニングポイントにもなるような言葉を美也子さんからかけられるんです。今まであまり愛を受けずに育ってきた辰弥にとって、美也子さんという存在がどこかちょっと母に重なるじゃないですけど、そういう部分もあるんじゃないかと。監督が大事に考えている気持ちも伝わってきました」

―辰弥が最もお芝居で対峙する金田一さんを演じられた尾上松也さんとご一緒して感じたこと、得たものとは?

「本当にすごく可愛がってくださって。年は離れているけど、お兄ちゃんのような存在でいてくれて。辰弥にとっても、金田一さんは信頼できる、肩を預けられる唯一の人間だったので、そういう意味でも松也さんにすごく助けられました。あと、主演としての器の大きさが半端なかったです。現場の居方とか、スタッフさん、他のキャストさんとのコミュニケーションの取り方……見ていてすごく勉強になりました」


―松也さん演じた金田一も、これまでの金田一とは風貌・ファッション含め“新しい”金田一でしたよね。

「見ていて飽きないし、あまり感情を出さない辰弥でも思わず突っ込みたくなるようなつい喋っちゃう空気を持っているんですよね。辰弥も金田一さんと話して、たぶん久しぶりに人間の温かさを感じたんだろうなあと思ったりして。金田一さんをきっかけにちょっとずつ感情を表に出すようになった気がします。松也さん、突拍子もない動きをアドリブで入れてくださるんです(笑)。小竹小梅さんが鍾乳洞から出てきて、階段を降りてくるシーンがあるんですけど」

―金田一&辰弥が木の裏に隠れてやり過ごすところ。

「そうです。木の裏に隠れたのは、松也さんが出してくださったアイディアで。もとの撮り方とちょっと違うものになっていて、監督も『面白いかも』となって採用されていたので、どんな画になるのかが頭の中で見えているのはすごいな、流石だなって思いました。自分には全然思いつかなかった発想でしたし、本当にクリエイティブな方だなぁと。歌舞伎もご自身でプロデュースされていて、そういう発想力や引き出しが多いんでしょうね」

―田治見家当主2人(久弥と要蔵)をお一人で演じ分けられた滝藤賢一さん。現当主の久弥(辰弥の兄にあたる)とは病床で対峙して、その鬼気迫るお芝居を間近で感じられたかと思います。あの場面によって、辰弥の“血の呪い”が色濃く感じられたというか。

「あのシーンは素の奥智哉がびっくりしているようにしか見えなくて(笑)。本当に怖かったですし、圧倒されました。滝藤さんはリスペクトしている役者さんのひとりでもあるので、よりリアルに圧倒されていたんじゃないかと思います。目を合わせるのもちょっと怖いくらい……」

―スクリーンから飛び出してくるかと思うような迫力でした。

「ぜひIMAXで観たいですよね(笑)。画面いっぱいで滝藤さんの迫力を感じてほしいです。滝藤さんとお芝居できるっていうことがまず嬉しかったですし、毎秒毎秒、一瞬一瞬が、幸せで特別な時間になりました」


―実際に岡山で撮影できたこと、あのお屋敷の持つ力。

「実際にああいうお屋敷で撮影できるのもなかなかない経験でしたね」

―ずっと岡山に滞在して撮影できたんですか?

「そうですね。お屋敷の中にも特別に入らせていただけたので、田治見家、八つ墓村の世界観にすごく入り込めました。あの場所で撮影できて本当によかったです。役者として大変ありがたかったなと思います。集中もしやすいですし、あそこの記憶を京都の撮影所に持っていくこともできました」

―京都ではどんな撮影を?

「基本は、お家の中でしたね。田治見家のお屋敷の中のシーンを京都の松竹撮影所でセットを建てて撮影しました」

―ひとつの作品の中でも盛りだくさんでしたね。撮影の仕方も、ご一緒する方々も。

「もうほんとにそうなんですよ。岡山ロケ、京都ロケ、それぞれにもりだくさんで」

―アクションに近いような動きもありましたし。

「はい、確かに。受け身とかは、これまでのアクション経験でやっておいてよかったなと思いました」

―現場でも手応えを感じていたと思いますが、完成した作品を観ての第一声は?

「『おおおぉ…!』となりました(笑)。まず、映画が始まって、オープニングで“奥智哉”って出てきた瞬間に、感動と嬉しさで、映画のスクリーンで自分の名前が観られるのも感慨深かったです。観終わったあとの余韻も……実は僕、ラストシーンがクランクインだったので」

―え?

「あの交差点の……」

―あの“ラスト”シーンでインしたんですか(笑)。

「そうなんです、あの撮影がクランクインでした。ここからどうなるんだろうと、その段階では完成図が全然想像できなかったんですけど、実際に完成した作品を観て、自分が思っていた作品とはいい意味で違ったし、その違いがすごく良くて。撮影期間は恐怖描写の撮影が色濃く記憶に残っていたから、怖さの印象が占めていたけど、しっかりと重厚感のある横溝作品のミステリーだったので嬉しかったです」

―殺人事件の“殺人”描写が、まさに清水節! という恐ろしさで素晴らしかったですね。

「すごかったですよね。ここが“あれ”に繋がるんだ!? っていうところも含めて」

ー「完全新作」と謳われていますが、まさに今までとは一味違う新鮮な『八つ墓村』でした。

「そうですね。最後のほうまで、なかなか尻尾を掴ませてくれないミステリーになっていると思います。まだ触れたことがない人にもうってつけの『八つ墓村』になっていますので、フラットに映画館で、作品を体感していただけたら嬉しいです。実は今回、スペシャルサンクスで綾辻行人先生が参加されているんです」

―そうなんですよね! エンドロールのクレジットでお名前を見て「そうなんだ!」とニヤニヤしました。そうか、綾辻先生原作の『十角舘の殺人』『時計館の殺人』のドラマ化で主演されてますもんね。

「そうなんです。そのご縁で、監督と先生と僕の3人でお話しする機会が当時あって」

―そうなんですか! 今作についてのお話を?

「それもありましたし、基本的におふたりはすごい方々なので……先生はホラーやスプラッタが大好きですし、監督とふたりでかなりマニアックな話をずーっとされていました。僕は全然ついていけない話で、それをただ横で『そうだったんですね』『そうなんですね』と相槌をうっていたという(笑)」

―そこに一緒にいられた時間も良かったですね。

「なかなか貴重な時間でした。僕にとっては、全てが濃い“八つ墓村”になりました」

―奥さんは、このお仕事を初めて今年で7年目。

「事務所に入ってからだと、9年なのかな。15歳で蜷川実花監督の『Followers』(Netflix)に出演させていただいたのがデビュー作なので、そこからは6年半です」

―これまでたくさんの作品と経験を通して感じている成長や変化、この『八つ墓村』でもきっと成長、変化していると思いますし、今感じているお芝居の楽しさ、魅力というのは変わってきていますか?

「当時はまだお芝居の楽しさをちゃんと理解できていなかったなと思います。今は、お芝居はお芝居だけど普段の生活の中にあるものなんだなと思っていて。人との会話、人とのつながりみたいなものが、結局はお芝居する上で見えるというか、僕は大事にしたいと感じている部分です。当時は変に“役として”を考えすぎていたと思うんですよね」

―色々と頭でっかちに考えてしまっていた?

「そうです。でも、結局は人と人との対話、コミュニケーションだなと。もちろん役にもよりますが、そこまで難しいことは考えずに、ただ目の前の人と対話できていたらいいんじゃないかなと、最近は思っています」


●プロフィール
おく・ともや
2004年7月18日生まれ、神奈川県出身。2020年、Neflix『Followers』で俳優デビュー。2024年Huluオリジナル『十角館の殺人』でドラマ初主演を務める。近年の主な作品に、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』Hulu『時計館の殺人』ドラマ『君は夏のなか』など、映画は『ラーゲリより愛を込めて』『映画ラストマンーFIRST LOVEー』などがある。10月期ドラマ『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ)にレギュラー出演。


●作品紹介
『八つ墓村』
原作/横溝正史『八つ墓村 金田一耕助ファイル1』(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督/清水崇 脚本/尾ヶ井慎太郎・清水崇
出演/尾上松也 奥智哉 堀田真由 高島礼子 滝藤賢一
配給/松竹/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

虚無な日々を送っていた大学生・井川辰弥のもとに、15年前に自分を捨てた母の訃報が舞い込んだ。母が死んだという岡山県の山奥に潜む「八つ墓村」を訪れた辰弥は、そこで奇妙な探偵・金田一耕助に出会う。村では、名家・田治見家の莫大な遺産の相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように不可解な殺人事件が発生。美しき未亡人・森美也子、双子の大叔母、不気味な村人たち……金田一とともに、自分のルーツに隠された“血の呪い”に巻き込まれていく。
9月18日(金)より全国ロードショー
(C)2026「八つ墓村」製作委員会 (C)Yokomizo Seishi/KADOKAWA

衣裳協力:シャツ ¥59400(meagratia/TEENY RANCH 03-6812-9341)、靴 ¥39600(EARLE/TEENY RANCH 03-6812-9341)、リング ¥30800、バングル ¥82500(ともにScat/scat.official.info @gmail.com)その他スタイリスト私物