【INTERVIEW】現在開催中の第39回東京国際映画祭で、初めてレッドカーペットを歩いた樫尾篤紀。参加直後、プラスアクトのインタビューに答えてくれた。
国内外合わせて約270人ものゲストが登場した今年の東京国際映画祭オープニングセレモニー。あいにくの雨模様だったが、レッドカーペットを歩いたばかりの樫尾篤紀が興奮冷めやらぬまま、出演映画『KEFI』への思いを語る。
撮影/浦田大作 文/髙山亜紀
――東京国際映画祭の現場の雰囲気、レッドカーペットを歩いた感触はどうでしたか。
「思っていた以上に海外の作品が多くて、さまざまな役者さんがいらっしゃり、さすが国際的な映画祭といった印象を受けました。日本の作品は、2〜3人、多くても5〜6人だったので、僕らのチームは参列率が高いほうだったのではないかと思います。とても楽しかったです。観覧の方々も雨の中来て下さり、とても嬉しかったです。レッドカーペットは以前から歩いてみたいと思っていたので、今回『KEFI』で体験できてよかったです。また歩けるように頑張りたいです」
――『KEFI』はユニークな感触の作品ですね。ジャンルもどこにもあてはまらないような。
「出演者の僕らもあまり理解できていないです(笑)。齋藤喜進監督の脳内に広がっている世界観を映像化した感じで、僕らはそれを体現するような形だったのかなと思っています」
――台本にはどこまで具体的に書いてあったのでしょうか。
「今回に関しては、ト書きやセリフも台本に書いてありましたが、監督は、演技に関しては僕らにある程度任せてくれるので、撮影が始まると、カットがかかるまで自由にやらせてもらえることが多いんです。それこそ『POTOF』には台本がなく、企画書しかなくて。現場に入った時、『あとは自由にどうぞ』みたいな感じだったんです。“どうしよう。これがスクリーンで流れるのか”と思ったら、もう怖かったです。何を言っていいのか悪いのかもわからず、とりあえず流れに身を任せて、台本も結末もない、その場の成り行きに従うという状況でした。その時に斬新な、とてもいい経験をさせていただきました。今回のお話をいただいた時、“今回もまた台本がなかったらどうしよう。多分、無理だ…”と思っていたんですが、セリフがちゃんと書いてあったのでホッとしました(笑)。台本をいただいてから監督と打ち合わせをしたのですが、『前回、やったことがあるから、自由にしていいよ。なんならずっとエチュード(即興劇)でもいいよ』と言われました。監督自身、役者達に委ねているというか、信頼してくれているのだと思います」

――『KEFI』の台本を読んだ感想は?
「僕の出番は少しだけだったのですが、デリバリーのような感覚でホテルにいる女性に薬を持って行き、その薬を飲むと、男女が入れ替わるという、ちょっと想像もつかないような設定です。僕としては、言葉を丁寧にして規律よく、ロボットに近いようなイメージで役づくりをしていったんですが、監督から『もっと砕けて、等身大で。若いキャラクター設定だから、樫尾君が喋っているぐらいでもいい』と言われました。いろいろ考えて臨んだんですが、現場では考えてきたことは全部捨てました。相手役は事務所の先輩でもある入来(茉里)さんで、何度も共演経験があるので、自分にとって安心感がありました。入来さんじゃなかったら、ちょっと怖かったと思います。“ここはとにかく自然に会話をしよう”という意識で撮影に臨みました。この役に関しては、役づくりをしたのかしていないのか、自分でもわからないです。キャラクターと僕のちょうど中間、真ん中にいるような感覚です。自分じゃなくて役だけど、僕が思い描いているものでもない。少しだけ自分に近いような、そんなちょっと変わった感覚のまま撮影させていただきました。今、まさに出会った人と対面して、探り合いのような、相手が何を言ってくるかわからないような感覚で会話をしている状態です。本当に特殊でした」
――どの程度、台本通りなのでしょうか。
「一応、全部台本通りにやりました。 やったんですが、 間合いや空気感は入来さんと共演したことがあったからこそ、つくり出せたのかなと思います」
――男女が入れ替わりますが、その点について入来さんと何か話しましたか。
「いえ、全くしていないです。監督から『この薬を飲んだら、男女が入れ替わる』と言われたのですが、僕らもよくわかっていなかったです。僕のキャラクターは過去にトラウマがあって、だから女性になってみたい気持ちがあるとは聞いていたのですが、そもそも過去しか教えてもらっていないので、あとはもう自分でつくるしかなくて」

――完成した作品を観た感想を聞かせて下さい。
「自分を見ているような感覚になりました。“何を見ているんだろう”って感覚になるんです。 自分が出ている作品を改めて観ると、口調や雰囲気など、自分ではないと思うんです。でも、今回の役に関しては、自分が普段喋っているところを誰かが動画で撮った感覚に近いように見えました。役をつくっていないからというのがあるのかもしれないですけど」
――現場で監督から何か言われましたか。
「特にないです。『POTOF』の撮影ではエチュードも自由すぎて、“本当にこれでOKなのかな”と、撮影中もずっと思っていました。「スタート」から始まって、僕らは探りながら、“どちらが喋り出すんだろう。ドッキリかな”って思うぐらい、何も決まっていなくて。ある程度進むと、カメラを止めて、「もう1回、同じところをやりましょう」と、なぞる感じになるんです。インタビューで何を話したらいいのかわからないくらいです。ですが、画はとても綺麗で、“このあと何が起きるんだろう”と考えてみても、予想がつくような展開にはなりません。“いったい、どこに進んでいくんだろう。物語の結末はどこになるんだろう”という感覚になります。以前、監督の好きな映画を教えていただいたので、作品に入る前に観てみたんです。『ロブスター』と『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』なんですが、本当になんのこっちゃ、理解できませんでした(笑)。ただ、そういう映画の色にしたいというのはすごくわかりました。だから、今回の『KEFI』の撮影では、日常会話のように持っていったほうがいいのかなと思い、テンションを上げて奇天烈なことをするのは他の方に任せました。僕と入来さんのシーンは、わりと普通のシーンだったのかなと思います」
――たしかに、他のシーンと比べるとリアリティがあります。
「冒頭の石川(古都)ちゃんが野獣みたいに唸っているところから始まり、“これから何が始まるんだろう”と思っていたら、双子が同じ服を着て出てきて、なんと言語化したらいいのかわからない作品です。それが国際映画祭のNippon Cinema Now部門で正式招待されるというのは、それほど引き付ける何かがあるんだなと思います」
――演じてみて、監督の頭の中が少しわかりましたか?
「わからないですね。次はどんな作品をつくるんだろうって楽しみですし、ぜひ、また呼んでいただきたいです。もし次回作がエチュードだったとしても結末さえわかっていれば、また挑戦したいです(笑)。最初から最後までフルエチュードってあまりしたことがないので、自分の力試しじゃないですけど、自分の幅を広げる経験として、今後もやらせていただきたいです」
――監督はどんな方ですか。
「すごくフランクな方です。ずっとキャップをかぶっていて、眼鏡をかけているせいか、年齢が近いのかと思っていたら、離れていました(笑)。少年の心を持ち続けている青年といったイメージです。とても大好きな監督です」

――話は変わりますが、11月24日放送のスペシャルドラマ『日の丸ブラザーズ~日米貿易を切り拓いた兄弟~』では、実在の人物、ノリタケ初代社長の大倉和親役を演じています。原作など、取っ掛かりが多いほうが演じやすいですか。
「ある程度あったほうがつくりやすいです。人物像や文字などの資料があったり、話を聞いたりするとイメージがわきやすく、寄せることもできます。ただ、BL作品(『やたらやらしい深見くん』)の時は、原作があって、アニメもあったのですが、そこに近づけすぎるのはどうなのかなと思ったりもしました。監督によっては、『全然、意識しなくていいよ』とおっしゃる方もいますし、基本的にそういう方が多いですけど、原作ファンや作品を知っている人からすれば、近づけて欲しい、声優さんに声を似せて欲しいといった気持ちになるのもわかります。 そこのバランスが難しいなと思います。気持ち的に寄せはしますが、寄せすぎないようにしています。せっかく自分を選んでいただいたのなら、自分である意味を考えたいんです。2.5次元の舞台『灼熱カバディ』の時にそれをすごく感じて。キャラクターに寄せることも大切だなと思う反面、真似事で終わってしまう恐れもあります。近づけるけど、自分として演じたい。自分ならどうするのか、自分だから選んでくれたんだという気持ちを大切にしたいと思っています」
――『日の丸ブラザーズ~』では、『KEFI』とは全く違う樫尾さんが見られそうですね。
「激動の時代を戦い抜いた偉人達がみんなでひとつのものをつくり上げる、今でも存在する大きな会社を舞台にした物語です。実話をもとにしているのですが、いろんな試行錯誤があって、たくさんの会社が派生していきます。今があるのはその人達がいたからこそなんだなと思うと、感慨深いです。大先輩である役者さん達と共演させていただいて、会話ひとつにもユーモアがあって勉強になりました。現代ならまだしも、当時はSNSや携帯電話もない中、みんなでコミュニケーションをとっていかなければなりません。会議をするだけでもいろんな思いの人がいて、それをひとつにまとめるって、めちゃくちゃ難しいことなので。いろいろと感じることが多かったです」
●プロフィール
かしお・あつき
1996年7月13日生まれ、高知県出身。高知県観光特使、高知県香美市観光大使で、高知県を舞台にしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演。ドラマ『ももの唄』『やたらやらしい深見くん』に主演した他、出演映画に『SOUND of LOVE』『ホーム スイート ホーム』などがある。スペシャルドラマ『日の丸ブラザーズ〜日米貿易を切り拓いた兄弟〜』は、テレビ愛知にて11月24日放送予定。
●作品紹介
『KEFI』(ケフィ)
監督・脚本/齋藤喜進
エグゼクティブ・プロデューサー/巖本博
企画・プロデューサー/関谷奈美
出演/高田里穂 海谷遠音 入来茉里 加藤小夏 武井壮 ニキータ&ダニル 樫尾篤紀 石川古都 三村和敬
配給/KÜMA STUDIO Inc.
父を亡くした3姉妹(高田里穂、入来茉里、加藤小夏)とその彼氏(海谷遠音)、宇宙人(ニキータ&ダニル)と手下(石川古都)、変質者(武井壮)、女心の分からない阿呆(樫尾篤紀)。さまざまな人間関係が微妙に交錯する福井県での奇妙な1日。監督が自身の父親の死と向き合う中で生まれた不思議なブラック・ラヴ・コメディ。2027年公開予定。








