ビートたけし主演ドラマ『破獄』制作発表で 過酷な撮影エピソードを語る

ビートたけし主演ドラマ『破獄』制作発表で 過酷な撮影エピソードを語る



ビートたけし、山田孝之、吉田羊が、テレビ東京開局記念日に放送されるドラマ特別企画『破獄』(4月12日(水)21:00~放送)の制作発表記者会見に出席した。

この作品は、ビートたけし3年ぶりのドラマ主演作。第二次世界大戦時、殺人の容疑で逮捕され、幾度となく脱獄を繰り返す無期懲役囚・佐久間清太郎(山田)と、彼を脱獄させまいと奮闘する看守・浦田進(ビートたけし)の長きに渡る闘いと、浦田の娘・浦田美代子(吉田羊)や、佐久間の妻・佐久間みつ(満島ひかり)など、それぞれの家族の物語も綴られる重厚な人間ドラマだ。今回、会見でそれぞれ撮影の際のエピソードなど語った。

--ご自身が演じた役柄について教えてください。

ビートたけし「初めての看守役で、今まで(犯罪を)取り締まる方の役はやったことが無くて、凶悪犯とかそんな役ばっかりやってたんで、どうやってやろうかなと思ったけど、たまにはそういうチャレンジをしてやってみようと思いました」

--役作りで大変だったところは?

山田「トレーニングしたり、(肌の)色を焼いたり、津軽弁の練習をしたりとか、いろいろあったんですけども、方言は大変でしたね。(脱いでいるシーンが多いので)網走の-10℃の中、ふんどし1枚はさすがにキレそうでしたね。最初に資料をもらった時に、(佐久間が)どういう人かって聞いた時に、みなさん『超人だ、超人だ』って凄くおっしゃってたんですけど、超人だと思ってしまうと僕は演じられないので、やれば出来ることしかやってない。ただ凄くうまくて効率がよくて、あくまで普通の人間だと僕は捉えて演じていました」

--ビートたけしとの親子役について。

吉田「現場でたけしさんは、休憩時間とか、多くを語る訳ではないんだけども、お話の中に入れて下さったりとかどこかで視界に私のことを入れて下さっていました。わかりやすくない、凄く不器用な気遣いをされるところが、『やっぱりこの役はたけしさんだな』と思いましたし、浦田さんぽいなと思いました。役者同士でちょっと気を遣い合うというか、その微妙な距離感が、この親子の微妙で繊細な親子関係にうまくリンクしたなというのは、不思議な感覚でしたけども、やっぱり演じていてその関係性が凄くしっくりきました」

--印象に残ったエピソードは?

ビートたけし「撮影の前(12月)29日ぐらいに友達とオーストラリアに行って、そこでゴルフをやろうと思ったんだけど、真っ黒になっちゃうなと思った瞬間に、1月から『破獄』があるというのに気が付きまして。3ホールですぐカートに乗って、ホテルへ帰ってしまいました。日に当たったら、とてもじゃないけど雪国の看守はできないということで、1週間ホテルに朝から晩まで、夜食事に出ただけで朝から晩までクリケットの試合を見ていました。こんなにつまんない試合があるのかと。今までかつてない、ホントに破獄のような缶詰状態で(笑)、どうしてスケジュールを考えなかったんだろうと、ずーーーっと反省しました。だからドラマが始まった時にホッとしたんですが、まさかこんな寒い日が続くとは思わないし。今までやった中で、一番思い出に残るドラマだと思います」

山田「長野ロケの時に、凄く遠くから僕が雪の中をずーっと走って来て、それをクレーンでフォローして。最後歩いて行くところまで数分間のカットを撮ったんですけど、その数分間ずっと雪に触れていた状態で、凍傷になって、左手薬指の先っちょがずっと感覚がないんですけど。これからもテレビ東京でやりたいことがまだまだあるので、そういう時にこれを武器として、訴えないかわりに『僕の左手薬指の感覚を奪いましたよね』って言えば、ある程度のことはやらせてもらえるかなと思っております」

--深川栄洋監督の演出で、印象的なエピソードがあればお聞かせ下さい。

ビートたけし「自分が監督をやっている時、『監督、ここはこうしたほうがいいんじゃないんですか』とたまに言ってくる役者がいるんですけど、(自分だったら)そいつは二度と使わない(笑)。全部俺が考えてるんだっていうのもあるんで、今回の監督さんにも一言も言っていないはずなんですけど…。出来るだけその監督が納得できるような演技をしたいと思ってやるんですけども、監督はほとんど満足してないと思いますよ。最近の監督さんはみんな丁寧ですよね。必ず手元も抜くしアップもするし。要するに保険のかけ方がすごいというか。1回撮っておいて、もっといいカットがあればうまく知らないカットがもしかすると撮れちゃうんじゃないかということで、最低もう1回は撮るし。OKカットなんだけど「ベリーグッド・ワンモア」、終わると「エクセレント・ワンモア」「ジーニアス・ワンモア」「インシュアランス・ワンモア」って結局5~6回撮られるので。監督の要望に応えているかどうか全然わからないんで…たぶんそんなによくなかったのかなと思うんだけど…でも一生懸命やる監督でよかったです」

山田「まさに(たけしさんの)今の話と重なって来るんですけど、牢獄の中で殴られ蹴られ暴れたりとかするシーンがあったんですけど、その中で後ろ手錠と足錠を掛けられた状態で感情が高ぶって、自分で壁に頭を打ちつけるっていうシーンで。そこを撮ったあとに、『次に手元を撮ります』って言われた時に『もう一度芝居を返して下さい』って言われて。『手元だよな…手元のために“この芝居を返して”…また俺は壁に頭を叩きつける必要があるのか』と思ったんですけど、その時提案してしまうと途切れてしまうので、『…っのヤロ!』って思いながらやりました。そこに関してはネチネチとまだ怒りがあります。(会場笑)」

吉田「お話の中で足を引きずっているのですが、あれはもともと台本に後遺症が残るような傷を負っているという表記はどこにもなくて、監督のアイデアなんですよね。ただ“あの時彼女は傷を負いました。”ではなくて、目に見える形でああやって足をひきずることで、美代子さんの心の傷が言えるし、あれを見た浦田さんの顔を見れば、彼の後悔や切なさや哀しみが見える、非常に効果的な演出だったなと思っています」

戦中、戦後の日本の刑務所の様子を丁寧に描写しながら、家族の絆、当時の日本の社会で生きることの苦しさを役者の体当たりの演技で表現した今作、是非注目して欲しい。

 

テレビ東京開局記念日 ドラマ特別企画『破獄』
出演/ビートたけし 山田孝之 吉田羊 満島ひかり
橋爪功 勝村政信 池内博之 中村蒼
松重豊 寺島進 渡辺いっけい
原作/吉村昭 『破獄』(新潮文庫刊)
脚本/池端俊策
監督/深川栄洋

昭和17年。東京・小菅刑務所の看守部長・浦田進の耳に、秋田で無期懲役囚が脱獄したとの情報が入る。脱獄した無期懲役囚は、かつて小菅刑務所にいて、情に厚い浦田だけには従順だったが、青森刑務所でも脱獄した経歴を持つ危険人物、佐久間清太郎だった。ところが3か月後、佐久間は浦田の家に突然訪ねて来る。浦田に、人間扱いしない秋田の看守を訴えて欲しいと言う。しかし隙をついて浦田は通報。囚われた佐久間は網走刑務所へ収監される。さらに、浦田も網走の看守長として転任することになる。こうして、浦田と佐久間の長い闘いが始まる…。

2017年4月12日(水)夜9時から、テレビ東京系にて放送