【日本〇〇ブス図鑑】2.5次元科/彼女設定ブス
累計25万部を突破した「オトナ女子シリーズ」のイラストレーター・つぼゆりさんの連載がスタート!
「ブスが美人に勝るもの、それは推しへの愛」をテーマに、自身のオタク道から導き出した、「好きをこじらせてしまう、ブスの熱量」をアツく語ります!
2.5次元ブス科/彼女設定ブス
彼女設定するブス
「私、今日◯◯君の彼女だから」
彼女たちは聞いてもいないのに、たいていそう断りを入れる。
なぜ自己申告するのか。それは決して美人ではないからである。
「自分でも痛いのはわかってますよ」
のワンクッションを挟むことによって、どれだけ本気で推しとのデートを妄想しようが、ペアリングを買おうがちょっとしたギャグっぽく振る舞えてしまう。
そもそも、話題にギャグをはさまなくていいのは美人だけだ。スキンケア情報にしろ、最近驚いたことにしろ、全ては美人だから周囲は耳を傾けるのである。
ブスの世界ではオチのない話をすると
「で? それでお前は結局何が言いたかったの?」
という冷めた視線を浴びかねない。
さらに言うと、どれだけ面白くても決してモテる訳ではない。。
男は所詮、エロさがカンストしているちょっと頭の足りない美人が好きなのだ。
私たちだって無駄に頭の回転が早く変に勘ぐってくる男より、色気のあるボーッとした男性が好きなのだから仕方ない。もう、そこは仕方ない。
そこで登場するのが推し。
2次元の推しのいいところは、なにせ次元が違うので
「こちらを拒否らない」
「スキャンダルがない」
「やさしい」
「絶対私のこと好き」
など、まぁ3次元の男性と恋愛をするより本当に揉め事がない。
感情の揺れもなければブスの恐れる単語は1つとして存在しない。
よって、どんなに大胆な行動に出ても許される(という妄想)のである。妄想上で告白され、
「私も…私も◯◯君が好き!フゴッ(豚鼻がなる音)」
というゴールまで、ブスがどの速さで走り出すかの選択肢しかない。
普段は次元が違うためスクリーンを隔てての妄想にしかならないが、2・5次元は違う。推しが次元のデブエットをし、3次元に半歩近づいてくれる、このブスにとっては大変大きなイベントなのだ。
重要なのはどれだけ当日に彼女として振る舞えるか。
2.5次元として舞台やミュージカルで自分の推しキャラが登場すると決まれば、彼女設定型ブスはいつも以上に妄想に拍車がかかる。普段から公式の情報をどれだけくまなくチェックできているかが、ブスポイント(ブスによるブスのための妄想ポイント)だ。
イベントの数週間前から彼女妄想期間は始まる。自分の推しの好きな色、食べ物、ペット、家族構成、過去のトラウマ、部活、学年、全てのデータを再度インプットし、自分とキャラとの接点を探る。
そしてとりあえず推しキャラとの出会いから妄想してみるのである。
例1「これ、お揃いだね」
例2「あっ! あなたあの時の…! なんでここに?」
例3「あなたもウサギ、好きなんですか?(微笑みを添えて)」
例のような少女漫画でよくありがちな設定を考え、推しと初めて会話をする場面を妄想→そのまま自然な流れで恋愛に発展する様を妄想→イベント当日、最高な胸キュンシーンが来るように意識を高めるのだ。
ブスは恋愛の妄想だけは一般人より経験値が高い。
中でも目がマジの「彼女設定型」ブスは当日の服装設定にも細心の注意を払っている。
具体的な例として、一般ファンのように推しキャラの缶バッチやぬいぐるみをぶら下げた通称「痛バ(痛バッグ)」は絶対に持参しない。
なぜなら、ファンではなく彼女だから。
ここでは「彼女設定型」ブスから見る、推しがアイドルの場合の2.5次元イベント当日までの妄想をみていこうと思う。
◯月△日
彼女である某ブス宛にアイドルの彼氏から
「☆日、ライブやるんだ…よかったら観に来てよ」
とLINEが入る。または、普段はプロデューサー設定で裏方から観ていたが、この日は客席から観ることに(※妄想)。
ライブ当日、演出も曲も最高に盛り上がり、アンコールを迎えた彼氏は、彼女(某ブス)がいることに気付き、ジェスチャーで「 」と彼女にしかわからない合図を…(※妄想) 〜ブスの気持ちになってセリフを妄想してみて下さい〜
ブス、最高潮。
あらゆる妄想を抱えて最大限に楽しみ、帰り道に一人こう呟くのである。
「これ以上好きにさせてどうすんのよ…反則っ」