【日本〇〇ブス図鑑】2次元科/信仰型ブス
累計25万部を突破した「オトナ女子シリーズ」のイラストレーター・つぼゆりさんの連載がスタート!
「ブスが美人に勝るもの、それは推しへの愛」をテーマに、自身のオタク道から導き出した、「好きをこじらせてしまう、ブスの熱量」をアツく語ります!
生誕祭を祝う、信仰型ブス
「◯◯くん、存在してくださって有難う御座います」
一年に一度、キャラには生誕祭というものがあります。
3次元でいうところの誕生日、推しが誕生した非常に大事な日。
その生誕祭を盛大に祝い、「◯◯くんおたんじょうびおめでとう」のチョコプレートつきのホールケーキを買い、自分の部屋のバッジやタペストリーだらけの◯◯くん祭壇に飾り、写真をとったりするのが一年で一番大事な行事となっているブスの熱量を紐解いてみましょう。
なぜ彼女らは神のようにキャラを崇めるのか?
それはきっと悲しいかな、ブス故に現実でやるせない想いを抱えているからなのです。「辛い、苦しい、誰か救って…」その悲しみの反動で、キラキラ輝く推しのグッズの購買意欲が高まり、推しへの愛もとい、神への悲痛な祈りともとれる行動を生み出してしまう……。
また、神のようにキャラを崇めていれば現実の支えになるし、パートナーのいないブスはそのほうが精神的に生きやすいのも理由のひとつ。
こうして自分の感情を浄化してくれるマイナスイオンスポットをつくることによって、醜く「あいつ死ねよ」と罵る言葉が「あぁ今日も推しが尊い」に変わるのです。
なぜそのように浄化しなければいけないのか。
それは、ブスは何を言っても言い訳にとらえられてしまう特性を持っているから。
うかつに友達に愚痴ると「そうなんだ、大変だね…」という言葉の裏で、「ブスのくせに言い訳してんじゃねぇよ」と思われてしまうのです。
特に女子はその辺はシビアに見ているので、かなり仲の良い友達でも頻繁には愚痴ってしまうとせっかく良い関係を築けている友人の心に闇を生んでしまうのです。ギルティ。
そんな2次元信仰ブスは依存体質なので、オタクを卒業してもまた何らかのジャンルにハマりやすく、その理由は総じて「おまもりが欲しいから」なのです。
自分を支える何かがないと、胸の内がスカスカするようで落ち着かなくなってしまうんですね、ブスは不器用だから。
「おまもり」になる何かを選ぶときは常にそのジャンルに付随する「色」「数字」「マーク」で決めます。
そうして自分の「おまもり」を持ち歩くことで、ずっと心にマイナスイオンスポットをつくり続けているのです。
しかし、次第に「おまもり」がある環境でなくては落ち着かなくなり、シャブのように定期的にその「色」や「数字」を欲しがるようになり、一見自分で自分をコントロールできているようにみえますが、裏を返せば重度のメンヘラという一面も。
確実に「あんたやばいよ」と言われそうなブスですが、仲良くなってみると自らを浄化する清浄機として生きているので、同じブスから見ても学ぶ点はとても多く、いろいろと難はありますが本来は心の清らかな、戦いを望まない優しいブスなのです。
とはいえ、戦いを望まない故に得るものも最小。
「推しとあわよくば付き合いたい」
「推しに気に入られたい」
「いや、むしろ私こそ推しの彼女だし」
という強めのグリッターのように光る妄想ブスの前では、このブスの優しい輝きはかき消されてしまうんです。
「お前らが◯◯の彼女だなんてこの世も終わりだな!」
という喉まででかけた言葉を
「今日は◯◯くんを好きな人が多くて、◯◯くんの色がいっぱいで私、幸せ」
と浄化する。
信仰ブスは今日も優しい心のマイナスイオンスポットに、吐き出したい暴言を打ち込むのです。全ては自らの心の平和のため、癒しの空間を戦場へ変えないため。強く「おまもり」を握りしめて。