【INTERVIEW】連続ドラマ『スカム』に出演中の水間ロン。オレオレ詐欺グループのひとりとして、どのように自分の役柄を構築したのか。

【INTERVIEW】連続ドラマ『スカム』に出演中の水間ロン。オレオレ詐欺グループのひとりとして、どのように自分の役柄を構築したのか。


連続ドラマ『スカム』で杉野遥亮演じる草野誠実が率いるオレオレ詐欺グループの仲間、杜洋平を演じている水間ロン。若手俳優達が個性をぶつけ合い、火花を散らす作品の舞台裏には思いもかけない仕掛けがあったという。昨今の出演作に『パラレルワールド・ラブストーリー』等と順風満帆、様々な作品で爪痕を残しつつある水間だが、実は現在、北京に在住。今この時期、どうしても海を渡りたかった思いも明かす。

撮影/中根佑子 ヘアメイク/渕直志(kief) 文/髙山亜紀


——『スカム』、面白そうな作品ですね。

「オレオレ詐欺がテーマなので悪の世界ですが、そこを若者目線で角度を変えて描いているので、伝わりやすくなっていると思います。実際に身近にあることだと実感して、よりリアルに感じると思いますし、演じていて自分でも“気を付けよう”とか“親がだまされたら嫌だな”と思うこともありました」

——詐欺を仕掛ける側を演じる気持ちはどうでしたか?

「正直、楽しかったです(笑)。もちろん、芝居だからというのもありますが、同世代5人でひとつのことを成し遂げる。犯罪なので、もちろんダメなことなんですけど、どこか青春なんです。それにひとつ成功すると、報酬の額が大きいんですよ。ひとりが200万円振り込んだとすると、“かけ子”という電話をかける人はその10%ももらえるんです。ひとつ成功したら、20万円。一日5件、成功すれば100万円。そういう金額になると感覚が薄れて、罪悪感とか吹っ飛んでしまうだろうなと思いました」

——小林(勇貴)監督の作品だけにテンポもよさそうですね。

「テンポ感は凄くあると思います。監督が好んでハイスピードカメラをよく使っていました。お芝居は自由にやらせてもらえたので、それぞれ5人がキャラクターを構築していきました」

——水間さんの演じる杜洋平はどういったキャラクターですか?

「最初に台本を読んだ時に仲間の5人の中でひとりだけ、異質だと思ったんです。ヤンキーや不良上がりのキャラクターもいて、そういう人はいかにも悪いことをやってそうでわかりやすいのですが、僕の場合はそうじゃない。見た目は明らかに(詐欺を)やりそうにないタイプです。出来るだけ普通でいようと思ったので、仕事に対しての恐怖感、罪悪感はほかのみんなより持とうと思っていました。だけど、話が進むにつれ没頭していく。自分の給料が増えていくにつれ、もともとあった感覚が薄れていく様子をちゃんと、ドラマを見て頂く人に対して届くよう意識していました」

——みなさん、詐欺師なのにスーツ姿で会社員のようですね。

「ちゃんとスーツを着て、朝8時から夕方17時まで出勤するんです。ルールが厳しくて、ドラマ上では10か条があるんですよ。女遊び、アルコール、銀行口座を作るのも、仲間と友達になるのもダメ。私用携帯の番号の交換禁止など。一人捕まった後、芋づる式になるのを防ぐため、リスクを抑えるためにそうなっています。怖い世の中です(笑)」

——スーツでいても、それぞれに個性がありますね。

「杜は髪型も前髪ぱっつんで、きのこみたいな頭にして、一見普通そうなんです。“そういう子も(詐欺を)やってるの?”と警戒を促すようなキャラクターでもあるのかなと思ったので、そこは意識しました」

——髪型は自分でそうしたんですか?

「そうです。5人のうち、前野(朋哉)さんはキャラクターが強く、ほかのみんなはイケメンで、その中でどう自分を出していくか考えました。鞄の持ち方もそう。最初に美術部さんに渡された鞄は革のブリーフケースでしたが、ヤンキー役の子に取り替えてほしいと提案しました。取り替えた鞄には紐がついていなかったので、メイク部さんのメイクバッグの肩紐を借りて、そのストラップを本番の時だけ貸して下さいと奪って(笑)。みんなはスーツの上着を脱いだりしていますが、僕は一度もボタンさえ開けず、ネクタイも緩めず、どんなアクションがあってもきっちりしているようにして。それから、基本は事務所作業なんですけど、僕のデスクには常に青汁を置いておくようにしました。そういうのも自由でしたね。アイデアは自分達でどんどん出していって、ダメならダメと言われますが、自由にやらせてもらえる半面、自分で考えていかないといけない現場でした」

——刺激的な現場ですね。

「それぞれ面白いものを持ってくるんです。みんな爪痕を残そうと何かしていました。打ち合わせも何もなく本番でやるので、映像には色んなことがいっぱい入っていると思います。みんなが“何かやらないと”みたいな気持ちにさせられていました(笑)。やりがいを感じましたね」

——水間さんはそういう時、どういうタイプですか。みんなの様子を見るとか? 

「様子は見てないです。自分がいけると思ったら、段取りで一回バンとやってみました。杜は台本上、ほとんどセリフがないんです。でもその場にはいる。喋って何かをするというよりは、何もしてないけど気になる存在にしたかった。そこで青汁だったんです」

——5人の空気感はどうでしたか?

「詐欺はチームワークが大事ですから、誰が仕切ってやるとかではなく、僕らにも一体感はあったんじゃないかと思います。特に最初のころは5人のシーンばかりで、世代も近いですし、ずっと一緒にいたので自然にそうなっていったと思います。電話をかける“かけ子”にも3役の持ち回りがあるんです。ひとりが息子だったりする“泣き役”。泣きながら『お母さん。おばあちゃん。こんな大変なことになっちゃった』と電話する。その後に“切れ役”が『お前、どうしてくれるんだ』と切れる。最後に出てくるのは“クローザー”と呼ばれる警官や弁護士を名乗って落ち着いて話を聞いてあげる人。相手を混乱させて、払わないとヤバいと思わせておいて、『お金払えば、この状況は解決出来ますよ』と教えてあげる。まるで役者みたいなんです」

——劇中劇みたいですね。

「杜は普通なら泣き役にするところを監督がギャップを面白いと思ってくれたのか、切れ役を何度かやらせてもらいました。そこも自分なりにどう切れようかと考えて、ヒステリックというか、何を言ってるかわからない、言葉にならないワーワーキーキー言ってるようなヤバい切れ方をしてみました。小学生の時、クラスにおとなしい子がいて、授業中にうるさい子達にいじられているうちに突然、切れたんです。普段、静かな子が切れるとこうなるんだとショックでしたが、その子のことをふと思い出してやってみました」

——アドリブもあったんですか?

「アドリブも多くて、特に電話のシーンは決められたセリフはもちろん言いますが、それ以外は自由だったんです。逆に自由にやり過ぎていて、物語の筋がちゃんと通っているのか怖い部分もあります(笑)。みんなで『こういうのやりたい』『こういうのやろうよ』って監督に提案して、ダメと言われることもあれば、『いいよ。面白そうだね』と言われることもあって楽しかった。あまり経験したことのない現場でした。台本も所々変わっていきました。最終話のシーンもそう。実は台本には3人の結末は描かれていたんですが、杜と剛力だけ描かれていなかったんです。そこを監督がちゃんと5人とも描きたいと提案してくれて、ほぼ当日に決まりました。杜と剛力には最終的に対照的な道がわかれている。ですが、セリフはもらえず、全部アドリブです。自由に考えてやりました。監督自身、俳優から出てくる面白いものを見たかったんだと思います。もちろん、僕と剛力はどういうことをやろうかという話し合いなどはまるでしていません。暴力的な剛力が暴走して、感情が極まって出る一言が凄いんです。それももちろん台本にあったものではなく、アドリブです。その彼と向き合って否定することで、僕も杜にこうあってほしいという思いが出てきた。いいシーンになっているんだろうなという感触があります。荒い青い感じになってると思います」

——聞けば聞くほど、オンエアが楽しみですね。

「僕も楽しみです。北京に在るので、リアルタイムでオンエアを見ることは出来ないんですけど……」

——現在、北京にいらっしゃるそうですね。

「自分のアイデンティティーから、いつかは中国でお仕事をしたいと昔から考えていて、日本で仕事も少しずつ頂けるようになってはいたのですが、今しかないと思いました。たくさんの俳優がいる中、そこからひとつ抜け出したいと考えたんです。中国に渡ることは大変だと思うけど、難しい方がワクワクすると思いました」

——中国語と日本語のセリフの感覚は違うものですか?

「日本語と中国語のセリフは自分で言っていても違いますし、聞いている人にも印象が違うみたいです。一番苦手なのは片言の日本語のセリフ。難しいんですよ。“外国人っぽい日本語で”と演出されることがありますが、成立しているのかなと不安になります。どうしても中川家のコントみたいなのが思い浮かんじゃうんです(笑)。中国語が話せるということを今後もうまく使っていきたいですね」

——今後は中国でも仕事をしていくのですか?

「オーディションを探して、頑張っていこうかなと。やりながらいい道を見つけていけたらなと思っています。具体的にはまだ何もわかりません」

——中国の映画市場はハリウッド作品を製作したり、今凄い活気がありますよね。

「いつかジャ・ジャンクー、ロウ・イエといった好きな監督の作品に出たいです。エンターテインメントも好きですけど、メッセージ性の強い作品に出てみたい。日本だけでなく、中国だけでなく、両方でやりたいというのが自分の思いです。架け橋なんて大それたことは思っていませんが、自分のために挑戦したいと思っています」

——秋には出演映画『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』が公開になりますね。

「北京国際映画祭での上映に参加したのですが、反応もよかったです。色んな国の人が笑っていて、“ここでウケるんだ”と興味深くて。映画祭ではこの作品のほか、『きみの鳥はうたえる』『マスカレード・ホテル』と僕が出た作品が3本もかかって、友達も観に来てくれて嬉しかったです。もっともっと勉強して、活躍していきたい。これからも頑張ります」

 


  ●プロフィール

水間ロン/みずま・ろん
1989年10月28日生まれ。中国・大連生まれ、大阪育ち。主な出演映画に『ビジランテ』『美しい星』(17年)、『嘘を愛する女』『きみの鳥はうたえる』(18年)、『パラレルワールド・ラブストーリー』(19年)など。ドラマは『孤独のグルメ Season5台湾篇』(15年)、『闇金ウシジマくん Season3』(16年)、連続ドラマW『坂の途中の家』(19年)など。出演映画『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』は10月4日公開予定。


  ●作品紹介

ドラマイズム『スカム』
監督/小林勇貴 
脚本/継田淳 原案/鈴木大介
出演/杉野遥亮 前野朋哉 山本舞香 戸塚純貴 福山翔大 水間ロン 若林拓也 華村あすか 
栁俊太郎 山中崇 和田正人 
西田尚美 杉本哲太 大谷亮平

名門大卒で大手企業に就職した草野誠実(杉野遥亮)はリーマンショックのため、入社わずか半年で新卒切りにあう。病気の父親のため、多額の医療費が必要な彼は高額バイトに手を出すがそれはオレオレ詐欺に振り込まれたお金をATMから引き出す“ダシ子”という仕事だった。認められた誠実は詐欺の電話をかける“かけ子”に昇格。続いて地獄の研修が待っていた。水間は研修から誠実の仲間となり、リーダーとなった彼のもとで働く杜洋平役。

https://www.mbs.jp/drama-scams/