【INTERVIEW】『おじさんはカワイイものがお好き。』で鳴戸渡役を演じる桐山漣に話を聞いた。

【INTERVIEW】『おじさんはカワイイものがお好き。』で鳴戸渡役を演じる桐山漣に話を聞いた。


夏ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』で主人公をライバル視する嫌味な課長という、これまでにない役どころに挑戦する桐山漣。クランクイン前の6月中旬、役をどう見せようかと思い巡らせる桐山に話を聞いた。

撮影/小松陽祐 スタイリスト/吉田ナオキ ヘアメイク/江夏智也 文/佐藤ちほ

——『おじさんはカワイイものがお好き。』で演じる鳴戸役ですが、どうアプローチをしようと?

「今まさにそこを考えていまして。どうアプローチしていこうかと色々と作戦を練っています。ただ、その作戦はまだ秘密です(笑)。今のところの作戦と、これから撮影が始まり、実際に現場で僕がやっていることとが全然違うものになったら困るので。ただ、一点これは変わらないだろうと思います。鳴戸のあの友達がいない感じは強く出していきたいなと。人も寄ってこなければ、鳴戸が愛する猫も寄ってこないという(笑)、圧倒的なとっつきにくさをちゃんと出していきたいと思います」

——鳴戸は会社の同僚である主人公の小路(眞島秀和)に対し、一方的に対抗心を燃やすという役どころでもあります。

「そうですね。僕にとっては今までにないタイプの役なので、演じるのが凄く楽しみです。まあ簡単に言うと、嫌味な課長なんです(笑)。多分鳴戸にとって小路さんは自分に持っていないものを持っている人、という感じなんだと思います。小路さんにきつく当たりながらも、あの気さくさやダンディな感じ、笑顔に実は圧倒されているし、羨ましくも思っているのかなと。多分鳴戸も本心では小路のように部下から慕われてみたいとか、友達が欲しいとか思っていると思うんです。人の優しさや笑顔にも憧れを持っているんだろうな……と、これもまた深読みだったらすみません(笑)」

——いやいや(笑)、実際台本を読んだらそう感じるところはありました。

「そうですよね。友達がいることに憧れているのだけど、どう人に接したらいいのかわからないという。だから理屈やプライドで自分自身を固めてから人に接していっているような印象が今のところあります」

——先日衣裳合わせをされたそうですが、そこで何か演技のヒントになるものは得られましたか?

「ありました。ドラマの中で地方出張するんですが、設定としては一泊二日ぐらいのものなんですよ。でも、鳴戸のスーツケースはこんなに大きくて(大きな四角のスーツケースの形を手で作ってみせる)。またそれがお洒落なスーツケースではなくて、機能重視という感じのスーツケースで。普段持っているバッグも同じで、お洒落なものではなく機能的なものになると思います。クッションが入っていて、サイドポケットとかもついているものになるんだろうと。そして多分、バッグのサイドポケットには猫じゃらしを潜ませているんだろうと(笑)。実はバッグは色んなタイプを持ってみたのですが、一番役としてしっくりきたのはそういう機能性重視のものでした。鳴戸はレザーのトートバッグとかリュックとかではないなと。鳴戸は色んな意味でカチッとした人間だと思います。そんな人間だからこそ機能というものを物凄く愛しているんじゃないかと考えています」

——また一泊二日の出張でそのスーツケースの大きさとしたら、相当な心配性か、または用意周到な人なんでしょうね。

「多分そうですよね。そういう部分が見ている人達に伝わり、“なんか憎めないな”と思ってもらえたりするといいですね。ただの嫌味な課長に終わらせず、そういう見ている人に愛してもらえるようなポイントも大事にしていけたらと思っています。ある意味二面性というか、鳴戸のかわいいところも出していけたらなと」

——アイテムで言うと、メガネも大事かと思いますが。

「はい。部下達に“ワンレンメガネ”というあだ名を付けられるぐらいですから(笑)。衣裳合わせの時にはメガネも何個もかけました。結果、原作のマンガの画の雰囲気に近いメガネになりそうです。くすんだシルバーの、わりと肌にも馴染む色のフレームのメガネですね。決してお洒落なメガネという訳ではありません(笑)」

——ところでこのドラマは、おじさん達がかわいいもの好きを必死に隠すという設定が第一に面白いのですが、台本を読み進める程に設定のユニークさだけではない、深いテーマがある作品だとも感じます。

「そうですね。例えば、大人だからこそ趣味を人に言えなかったりすること。小路さんみたいな人には言えない趣味を持っている人って、実は今の時代結構多くいると思います。小路さんはケンタ(今井翼)という同志を見つけますが、見つける前まではひた隠しにするばかりで、ある意味で孤独だったと思うんです。鳴戸も鳴戸で、猫が好きという設定なんですが、やっぱり彼も猫好きだということは人に隠していますし。そんな、大人になっても子供のころからの趣味嗜好を持ち続けてきた人達が、ついに同志を見つけ、友情を築いていく。僕が演じる鳴戸にも、仲良くなりたい人が出てくるんです。またこの大人になってからの友情の描き方も共感出来るところが凄くあります。30歳を超えてから出会った人と仲良くなれる確率は、10代、20代で出会う人と仲良くなれる確率よりもどうしても低くなってしまうものだと思います。仕事を通じて出会った人だと尚更、乗り越えなければいけない壁が多くなるような気がしていて。例えば、何気ないことで連絡することが難しかったりします」

——よくわかります。桐山さんご自身もそういった経験はあるんですか?

「あります。やっぱり僕も30歳超えてから出会った共演者の方とは、10代、20代で出会った共演者の方に比べ、プライベートで仲良くなっていける確率が低くなっていると身をもって感じていますから。僕でもそうなので、僕より年上の小路さんやケンタ、鳴戸はなおのことそうだと思います」

——何が壁になっているんでしょうね。

「多分、社会に出ていくと本当の自分の姿の周りに、色んなものがつくからなのかなと思います。例えば、役職だったり。役職上の顔があり、その役職にあるからこそ取っている行動があり、またプライドもある。そういうもの全部を飛び越え、どうやったら同志と仲良くなれるのかと思い悩む登場人物達を見てかわいいと思ってもらえたり、面白いなと思ってもらえたらいいなと。そんなことを考えながら今クランクインに備えているところです」

——鳴戸の一番多いセリフだろう『ネコチャァン』を桐山さんがどう処理されるのかも、楽しみにしています(笑)。

「ぜひ楽しみにしていて下さい。あの『ネコチャァン』にこそ、鳴戸の表には出さない本当の自分が表れると思いますので」

——また、部下世代の視聴者の方にとって本作は“お堅い上司”とのいいコミュニケーションツールになるかもしれません。

「確かに“あの部長にもこんな一面があるかも…”と思えたら、ぐっと距離が近づきますね。日本は特に役職重視の社会で、課長、部長、社長と肩書がつくと凄く偉い人に感じ、身構えてしまったりする。でもそういう役職にある以前にひとりの人間だし、もしかしたらその人には隠したい趣味のひとつやふたつもあるのかもしれない。そう思えたらちょっと笑えるし、なんかかわいいですよね。自分より随分年上に見える上司も、誰もが10代、20代、30代と過ごしてきて、今ここにいるということ。ドラマを見てそんなことを感じてもらえたら嬉しいです。またこのドラマを見て、上司に対して親しみを持ってもらえたらいいなと。そういうきっかけになるドラマになったらと思います」

 

衣裳協力:フードブルゾン¥110,000、ジャケット¥93,500、パンツ¥41,800(ランバン コレクション/ジョイックスコーポレーション 03-5213-2510)、カットソー¥5,500、シューズ¥22,000(ランバン オン ブルー/ジョイックスコーポレーション 03-5213-2510)、リング・バングル(ガルニ/blue in green PR  03-6434-9929)

 


  ●プロフィール
桐山漣/きりやま・れん
1985年2月2日、神奈川県出身。近年の主なドラマに『コードネームミラージュ』(2017)、『探偵が早すぎる』(18)、『これは経費で落ちません!』『偽装不倫』『CHEAT チート~詐欺師の皆さん、ご注意ください~』(19)、『いいね!光源氏くん』(20)、主な映画に『曇天に笑う』『劇場版 ドルメンX』(18)、『貞子』(19)などがある。8月13日よりドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』がスタートする。


  ●作品紹介


『おじさんはカワイイものがお好き。』
原作/ツトム「おじさんはカワイイものがお好き。」(『COMICポラリス』連載中)
脚本/坪田文
監督/熊坂出
出演/眞島秀和 今井翼 桐山漣 藤原大祐 ほか

渋いイケオジで仕事も出来る43歳の小路三貴(眞島秀和)には秘密があった。それはかわいいものが好きなこと。小路を一方的にライバル視する鳴戸渡(桐山漣)ら会社の同僚や、小路の家に居候する大学生の甥・仁井真純(藤原大祐)にひた隠しにしながらも、心の底ではかわいいものが好きな気持ちを誰かと共有したいと思っていた。そんなある日、取り引き先のデザイン会社に勤める河合ケンタ(今井翼)がかわいいもの好きと知り…。
8月13日より読売テレビ・日本テレビ系にて毎週木曜よる11:59~放送