【子どもの新学期】子育て雑誌元編集長が教える“友だち100人”に潜むワナとは?


新学期――。入学や進級など、新しい環境を迎えた子どもを前に「できるだけ、楽しく過ごしてほしい」「たくさんの友だちに恵まれてほしい」と願い、日々、その様子を注視している親御さんも多いのでは?

かつて「友だち100人できるかな♪」と歌った親たちは、友だちはできるだけ多い方がいい、みんなと仲良くできなければいけない、と思いがち。
ところが、数々の教育の専門家に話を聞いてきた「AERA with Kids」元編集長・江口祐子さんは、「『みんなと仲良くしなければならない』『友だちは多い方がいい』という学校教育で刷り込まれたプレッシャーは逆に“危険”」だと、警鐘を鳴らします。

ここでは上梓されたばかりの『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』より、子どもの新学期に“親が押さえておきたい心構え”について、書籍を一部抜粋しながらご紹介していきます。

 

「みんなと仲良く!」が子どもを追い込むワケ

子どもにとっての「世間」とは、ほぼ学校の友だちですよね。毎日、かならず会う友だちだからこそ、距離のとり方や付き合い方に戸惑う子どもも多いんです。それにも関わらず、「友だちできた?」「仲良くできてる?」と、親から、矢継ぎ早に問いただされたら……?

江口氏に「私自身、中高時代に読んだらもっと友達関係がラクになれたはず」と言わしめるのは、2008年に発売され、数々のメディアに取り上げられたロングセラー本『友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える』。宮城教育大学教授だった著者が、人間関係に悩む中・高生向けに書かれたものですが、執筆の動機は友人関係に悩む小学生の娘さんの存在だったとか。

「基本的に発想として、共同体的な凝縮された親しさという関係から離れて、もう少し人と人との距離感を丁寧に見つめ直したり、気の合わない人とでも一緒にいる作法というものをきちんと考えたほうがよいと思うのです」(『友だち幻想』より抜粋

そう、私たち親が陥りがちな「みんなと仲良くしなさい」という価値観は、ときに、我が子を孤独の闇へと追い込むことにもなりかねません。まずは「みんなと仲良く」という呪縛から、親自身が解き放たれる必要がありそうですね!

『友だち幻想』では、そうしたプレッシャーから解放されることを提言したうえで、SNS上のコミュニケーション、人との距離感の取り方なども教えてくれるので、新学期を迎えた親子にとって、心強い一冊となるはずです。

友だち幻想
著:菅野 仁
発行:筑摩書房

 

「みんなと一緒」から離れる“勇気”を持つ!

そして、新しい環境に身を置く子どもに対して「必要以上に“同調圧力”に屈しない精神も教えてあげたい」と語る江口氏は、「子どもに個性を求めるなら、まずは親が『みんなと一緒』であることの安心感から離れる勇気が必要」だと続けます。

入学や進級を機に、新しい習い事などをスタートさせるご家庭も多いかもしれませんが、「みんながやっているから」「ママ友がいいと言っていたから」……。そんな理由(=親の安心感)から、子どもを駆り出していませんか?

ドキッとした方におすすめしたいのは“同調圧力”について長年観察をし、関連書籍も多く発表している鴻上尚史氏の『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』です。

「『世間』には、『みんなと同じことをしないといけない。みんなと同じ格好をしないといけない、みんなと同じことをいわないといけない』というプレッシャーという圧力があります。少し難しい言葉で『同調圧力』と言います」(『「空気」を読んでも従わない』より抜粋

 ここで言う「世間」とは、子どもにとっての学校の友だちであり、親にとってのママ友、近所の人に他なりません。もし、「新学期だからこそ、みんなと同じことをやらせてやりたい!」「他のお子さんと同じようにできるようにさせなければ!」……そんな強迫観念に囚われているのなら、まずは親が「みんなと一緒」から離れる“勇気”を持ってみてはいかがでしょう。

「空気」を読んでも従わない
著:鴻上尚史
発行:岩波書店

 

このほかにも、「AERA with Kids」元編集長・江口氏が、幼児・小学生を持つ親に向けた子育て本のベストセラー&名作の中から100冊を厳選!
絶対に押さえておきたい「子育ての基本」や「新しい教育観」を23のキーワードに沿って紹介した『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』は、しっかり甘えさせる、失敗を認めてあげる、「嫌」の感情も大事にする……など、まさに100冊分の“子育て・教育のプロ”のエッセンスが惜しみなく紹介されています。

「どんな時代になっても変わらない、多くの子育て本で書かれていること。そして、これからの時代を生きる子どもを育てるために変えていきたい、今までの常識や価値観。『変わらないもの』と『変えていきたいもの』、この2つの視点から、『これスゴイ!』と思ったメッセージを皆さんにお届けします」
――「AERA with Kids」元編集長・江口祐子

子育て本ベストセラー100冊の
「これスゴイ」を1冊にまとめた本

江口裕子
編集者/「AERA with Kids」元編集長

1970年、埼玉県生まれ。浦和第一女子高等学校、日本女子大学文学部卒業。「自分の興味と仕事をリンクさせる」をモットーに、株式会社オレンジページで生活実用誌、転職した株式会社アスコムでは学習・健康系の雑誌、書籍などを数多く担当。2007年に娘が生まれたことにより、子育てや教育にいっそう興味が湧き、2009年から「AERA with Kids」(朝日新聞出版)の編集にフリーランスとして携わる。2018年から編集長を務め、誌面だけでなく、イベントやインスタグラムを通じたファン拡大につなげる。取材した教育者、経営者、起業家などの数は700人以上。2021年に独立し、エディットプラン合同会社を設立。企業のPR活動、出版プロデュースなども行っている。
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Twitter @eguchi0728_yuko