
【フランス生活】住むならパリ? 地方都市?
フランスの地方都市ナントで、フランス人パートナーと2人の子と家族4人で暮らしている大畑典子さん。
一級建築士の資格を持ち日本の建築事務所でバリバリと働いていた彼女が渡仏して約8年。
「シンプルな暮らし」を楽しむフランス生活で得たもの、捨てたものを、日々つれづれに綴っていただきます。
ナントの街に恋をして
私はフランスに来てからずっと、ナントという地方都市に住んでいます。パリからTGV(フランスの高速列車)で2時間とちょっとのフランス西部にあるアートで賑わう街です。日本ではあまり聞き馴染みないと思いますが、 働くのにも住むのにもちょうどいい、大好きな街です。
ナントに住むきっかけは、留学先の大学院がナントにあったからでした。フランスには22の建築大学が存在していて、主要な都市には建築大学があるので、私は大学の評判よりも、自分がどの街に住みたいかという基準で大学を選びました。
まず最初に興味をもったのは、やはりパリの大学でした。パリの建築大学に留学した友人がいたので話を聞くと、「たくさんの外国人学生がいてとてもインターナショナルな雰囲気なので、フランス語が話せなくても英語で十分やっていけた」とのことでした。これはこれでいいのですが、私はフランスに住むならフランス語をしっかりとマスターしたかったので、その友人が語るインターナショナルすぎる環境は私の求めているものではありませんでした。
そしてモンペリエやトゥールーズといった南フランスは住む場所としては気候もいいしとても理想的でしたが、バカンス先として人気の街も多く、そこに住んだら自分がだらけてしまう気がしました。住むにも、勉強するにもちょうどいい街はないかなとグーグルマップを眺めていたところ、フランス西部のナントが目につきました。ナントの地図をみてびっくり、私はひと目でナントという街に恋をしたのです。
△ナントの街並み。
日本での大学時代、「地図から街を読み解く」という授業がありました。街の地図を見て、道の成り立ちから街の高低差を読み解いたり、どのあたりが古くから家々が存在している地区なのか、などを読み解くのです。その経験が活きたのでしょう。ナントの地図を見た瞬間、この街は絶対に素敵に違いないと思えたのです。
ナントはロワール川沿いに街が発展しているのですが、その川辺を中心に街が賑やかに輝いている情景が目に浮かびました。
ちなみにこの時点でまだ一度もナントを訪れたことはありませんでしたが、自分の直感を信じてナントに行くことを決めたのです。
どこに住む? 学生なら地方都市、働くならパリがおすすめ
さて、こうして私のナントでの大学院生生活が始まったのですが、留学生としてフランスに住むなら断然地方都市がおすすめです。
街としてある程度の規模があるので住みやすいし、何よりパリに比べて家賃が安いのが魅力です。ちなみにナントの家賃はパリの三分の二から半分くらいでしょうか。ナントよりも規模の小さい都市なら、さらに家賃は安いです。
収入があまり見込めない留学生にとって、家賃をできるだけ抑えることはとても重要です。
学生なら学生寮に入ればパリでもいいじゃないかという意見もありますが、パリはフランス人学生はじめ、留学生も多いので学生寮に入るのはなかなか難しく、ほとんどの学生は自力で安いアパートやコロカシオン(シェアアパート)を探しているのが現状です。
留学生は年間964時間(フルタイムの60パーセント)の範囲内での労働(アルバイト)が認められているものの、やはり学業に専念したいところです。
△歴史的街並みと現代の暮らしが交わる風景。
外国人がフランスで働くなら、やはりパリが外国人にとって働く環境が一番整っています。実際、私も大学院を卒業したら家族でパリ近郊に引っ越し、インターナショナルな建築設計事務所へ就職する予定を立てていました(コロナによってその計画は却下になりましたが……)。
もちろんナントにも建築設計事務所はありますが、やはりローカルな仕事がほとんどになります。
つまり、クライアントは地元のフランス人で計画地もナント近郊、設計士もフランス人。そこで活躍するには、フランス人のような振る舞いが求められます。つまり、外国人であることの意義が地方ではやはり活きづらいのです。
一方、パリには外国人が多く働くインターナショナルな設計事務所があり、国内外のプロジェクトを扱っているので、フランス人とは違う、外国人としての視点を活かすことができるのです。
大都市は外国人が比較的多く住んでいるので、自分の国のコミュニティーに参加したり、仲間ができやすい、という利点もあります。
やはり外国に住むと孤独で潰れてしまいそうになることもあるので、そんな時に同郷の、気持ちのわかる人が近くにいるとかなり救われます。
これから海外移住を計画されている方は、まずは大都市で生活を始めて、その国に慣れたら住みやすい地方に引っ越し、というプランもおすすめです。
それではまた次回。アビアント~!
*次回は9月20日(水)更新予定です。