【フランス生活】語学留学はワーホリビザにしないほうがいいふたつの理由

【フランス生活】語学留学はワーホリビザにしないほうがいいふたつの理由



フランスの地方都市ナントで、フランス人パートナーと2人の子と家族4人で暮らしている大畑典子さん。
一級建築士の資格を持ち日本の建築事務所でバリバリと働いていた彼女が渡仏して約8年。
「シンプルな暮らし」を楽しむフランス生活で得たもの、捨てたものを、日々つれづれに綴っていただきます。


 

大人の夏休みのつもりで大学院へ

私は2016年にフランスへ「留学」という形で渡仏しましたが、本来の目的は「フランスにしばらく住む」ことでした。

もちろん、外国に住むにはビザが必要です。私はまず、どのビザを取るか、というところから検討しました。フランスに長期滞在するためのビザはなんと20種類以上ありますが、当時の私が頭を悩ませたのは、学生ビザにするか就労ビザにするかです。
幸い、建築士としての経験もあり英語でのコミュニケーションも問題なく出来たので、初めはキャリアを優先してフランスにあるインターナショナルな建築設計事務所に片っ端から応募して就労ビザを取得する、ということも考えました。

しかし生活の質を重んじるフランスと言えど、やはり建築士の仕事はハードです。そんな仕事環境の中では、フランスの文化を学んだり、言語を勉強する時間は取れそうにありません。結局、日本での仕事環境と同じように自宅と職場の往復をして、週末は疲れ切ってしまい家に篭り平日の仕事のために身体を整える、という日々がなんとなく想像できました。

せっかくフランスに住んでいるのにフランス語が話せないまま、現地の文化を知らないままでは渡仏した意味が半減してしまいます。
さらに、日本の一級建築士の資格はフランスでは通用しないので、フランスで正式な建築士として働くにはフランスの大学院を卒業する必要がありました。それならばと、これからの2~3年は、大人の夏休みのつもりで仕事から一度離れ、学びの期間に当ててみようと考えたのです。

フランスの大学院に入れば必然的にフランス語も学ばなくてはいけないし、フランス人との繋がりも出来る。人生遠回りになるかもしれないけれど、フランスの大学院での生活は決して楽ではないかもしれないけれど、長い人生を考えるとそれが私の最善の道に思えました。
そして私はナント建築大学大学院へ応募し、無事合格することができたのです。


△大学院修了式の日、大学の前にてワインで乾杯。

 

フランスでのビザ更新はストレスフル

当時、私は29歳でしたので、海外に住みたいという理由ならワーキングホリデービザでの渡仏も年齢的に可能でしたが、選択肢には入れませんでした。

なぜなら、ワーキングホリデービザは滞在が一年に限られ、そして就労も建築設計のような専門的な仕事に就くことは禁止されているからです。
「休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」と外務省のHPにあるように、ワーキングホリデービザはあくまでも若者が見聞を広げるための長期の旅行、休暇のための制度なのです。

一年を旅行としての期間と割り切って住むにはいいかもしれないですが、やはり語学力だったり、現地の文化だったり、何かを得ようと思うと私には一年という期間は短いと感じました。
実際にこの感覚は間違っていなくて、私は渡仏してやっと一年たって、なんとなくスタート地点に立てたような気持ちでした。たまにワーキングホリデーの一番の目的を語学学習と仰る方がいますが、私個人の意見では、一年では中途半端な結果になってしまうことが多いと思います。
ワーキングホリデービザはその名の通り、ホリデー気分で一年過ごすなら、それはそれで有意義な一年になるのではないでしょうか。

ちなみに現在の私は「フランス国籍の子どもを持つ親のためのビザ」でフランスに滞在しています。第一子が生まれた翌年の2020年に学生ビザからこちらのビザに切り替えました。私とパートナーは結婚をまだしていないので、婚姻ビザの申請が出来ません。

しかし、私たちはPACS(パックス)というフランスの制度で夫婦としてきちんと法的に守られており、私はフランス国籍の子どもの母親としてフランスに滞在する権利があるのです。このパックスという日本人には耳慣れない制度についてはいずれまたお話させていただこうと思います。

フランスでは「婚姻ビザ」や「フランス国籍の子どもを持つ親のためのビザ」のような家族ビザを取得してから3年以上が経って初めて、10年の滞在許可証の申請が出来るようになります。私は今まで学生ビザ1年→学生ビザ2年→家族ビサ1年→家族ビザ2年という行程を経て、2023年6月にようやく10年の滞在許可証を取得することが出来ました。
フランスに住む外国人にとって、これは本当に嬉しいことです。とういうのも、フランスでの滞在許可証の更新は本当にストレスフルなのです。このお話も、またいつか。


△念願の10年ビザ。

それではまた次回。アビアント~!

*次回は9月6日(水)更新予定です。


Written by 大畑典子
大畑 典子

フランスでのリアルな生活を、日常ブログや実際に体験したエピソードなどを通してYouTube『Nolie France / のりふら』で紹介している。
フランスの食卓の様子や休日の過ごし方など日常のVLOGをアップし、その豊かでほのぼのとした空気が人気を博し、チャンネル登録者数は13万人を超える。
日本の大学を卒業後、設計建築事務所で経験を積み、27歳で一級建築士の資格を取得。「海外でシンプルな暮らしを体験してみたい」という思いから2016年に渡仏。フランスの建築学科の大学院に留学し、語学を学びながら研鑽を積む。大学院在学中にフランス人のパートナーと出会い、第一子を出産。育児のため途中休学を経て、2020年に卒業。休学期間中に『Nolieフランス三人暮らし』でYouTubeデビュー。2021年に第二子を出産し、現在の形にタイトルを改めた。YouTubeのほか、音声メディアSNS『Voicy』やInstagramでの発信も行っている。
YouTube: Nolie France / のりふら
Voicy:アラフォーフランス生活異文化交流記
Instagram:@nolie_a_nantes

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