【ペルー日記】南米の明るいお祭り「死者の日」
人生初の中南米一人旅の真っ最中に、新型コロナウイルスが蔓延。
国境は封鎖され、飛行機はキャンセルになり、異国の地でのロックダウン生活。
街中がパニック、一人心細く、早く帰国したいと願う毎日……になるかと思いきや、
彼女は「いっそのこと、ここに住もう!」と決め、ペルーで生活を始めた。
ペルーで暮らして、早4年。
現地からお届けする、予想外で刺激的な日々。
10月下旬。クスコの大通りを散歩していると、民族衣装を纏った集団がバスから降りてきた。「お祭りなの?」と聞いてみると、「来週だから来てね」と言ってパンとチラシと渡された。クスコから21kmのところにあるオロペサという村で、お祭りがあるようだ。
頂いたパンは甘くてパサパサしていて、素朴な味。
10月31日、お祭り当日。町中がハロウィンの装飾で賑わい、仮装した子どもも歩いている。
直通バスで40分、運賃100円でオロペサに到着した。何やらパンが有名な村らしく、人口約2500人のうち、約85%もの人がパン作りをしており、村には約65軒のパン屋があるというのだ。どう考えても多すぎる!
お祭り会場に向かう前に、ある場所に立ち寄った。趣味というには憚られる気もするのだが、私は南米各地の墓地を巡っている。南米の墓地は観光地化されているものも一部あり、有名な墓地だと入場料が必要なこともある。
オロペサの墓地は門構えからして可愛らしく、都会の墓地ほど混んでいない。小さな家のようなお墓も可愛いく、故人がどんな人で、どれだけ愛されていたのかが伝わってくる。誰もが永遠の命ではないのだから、今この時間を大切にしないといけないと、改めて考える時間になる。
オロペサの墓地は手入れが行き届いていて、楽園にいるような気さえしてきた。
パン祭りの会場に移動すると、お昼前だったこともあり人もまばらで、さくっとパンを買って帰る人ばかり。調べてみると、11月2日の死者の日に合わせて特別なパンを販売しているらしい。
WAWA(写真右)というこのパンは、赤ちゃんを毛布で包んだ形をしていて、もともとは亡くなった子どもたちへの供え物だったそうだ。女の子のお墓には赤ちゃんを包んだ形のWAWAが、男の子のお墓には馬の形をしたCABALLOというパン(写真左)が納められたという。
その後は、国道沿いにあるパン屋さんを巡った。レインボーマウンテンやチチカカ湖があるプーノに向かう国道沿いなので、どの店も客足が絶えることはない。
クスコに戻り、11月2日のこと。マチルダと散歩中に近所の墓地の前を通ると、車両が通行止めになっていて、お祭りのように賑わっている。そうか、今日は死者の日だ。
墓地には、愛する人を偲ぶために大勢の人が集まっていた。メキシコの死者の日のようにガイコツの仮装をするのではなく、ペルーではお墓の前で食事するのが伝統的な過ごし方らしい。
犬を連れて墓地には入れないので、周りの露店を見学。ここでは太陽電池で動くロックフラワーが人気のようだ。お祝いごとの時だけ食べるものだと思っていた豚肉のグリルは、死者の日にも振舞われていた。
数日後、ペルーの著名人が眠るという、クスコ中心部にあるアルムデナ墓地に出かけた。以前、コロナ禍のときに一度見学に来たのだが、予約をしていなかったため中に入れず、今回改めてやってきたのだ。
入口にいる人に「ようこそ」と、この墓地とは無関係な私でも歓迎してもらえた。都会の墓地なので配置はギュッとしているけど、文化遺産博物館にもなっているらしく、豪華で独創的なお墓がずらり。バラや色とりどりの生花で溢れかえっており、美しい。
死者の日直後に訪れたこともあり、豚肉のグリルやパンがそのままお供えされていて、腐らないのかと少し心配になる。
墓地には掃除担当の青年もスタンバイしており、お墓が立ち並ぶ場所とは思えないような活気だ。
私が故人になるときは、こういう賑やかなお墓がいいなと羨ましくなるような墓地だった。
今月のスペイン語
*次回は2月7日(金)更新予定です。
イラスト・写真/ミユキ