【前編】映画『サブイボマスク』ファンキー加藤&一雫ライオン

【前編】映画『サブイボマスク』ファンキー加藤&一雫ライオン


執筆スランプからの脱出は
ファンキー加藤のライブがきっかけに

加藤の承諾を得て、映画の企画は一気に走りだした。しかし、今度はライオンの脚本執筆のほうに問題が……。なんと、それまでパワフルに執筆を続けてきたライオンが、スランプに陥ってしまったのだ。
「ちょうど父が病気になったタイミングだったし、脚本家に転身して以来、休まず書き続けてきて、初めて疲れが出てしまったんですよね」とライオンは当時を振り返る。

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ライオン「僕、加藤さんの日本武道館のライブを観る機会を頂いて。あれを見ていなかったら『サブイボマスク』はここまでの作品にできていなかったと思ってるんです。ちょうどライブを見たタイミングが、自分でも台本に対して『ん?』と思っていた時期で……。春雄のキャラクターって熱血漢で人のためにガムシャラになって、みんなを笑わせようとする人なんですね。

でも、字面では面白くても、実際にお芝居してもらった時にどこまで生かせるのかな? と悩んじゃって。
そのころはちょうどスランプの時期だったのもあって、毎朝パソコン開いても書けなくて……。
そんな中でライブを見たんですが、加藤さんがステージに出てきた時、右手の拳をしばらくガッと挙げていて。
その時ビジョンに映った加藤さんの表情を見て、僕、泣いちゃったんです。

“この人は自分の勇気とか恥を全部ファンに晒して、『行くぞ!』って戦う人なんだな。だから、これだけのお客さんが熱狂するんだな”と。僕は脚本を始めた時にひとつ決めたことがあります。それは、どんどん恥をかいてやろう。バカか天才かだったら、バカになってやろうってことなんです。その時に、その初心を思い出して……。

ライブを観終わったあとは、普段だったらお酒を飲むところを、監督に『もう大丈夫。今日帰ったら書いちゃう』と言って、家に帰って一気に書きました。もう、迷うことはないなと。ファンキー加藤さんが演じるなら、とことんまで熱いキャラクターにすれば、それを実体化して映画が出来ると思って」

 紆余曲折を経たものの、無事に台本は完成。
それを読んだ加藤は「まず最初に、春雄というキャラクターに惚れ込んだ」と語る。

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加藤「春雄は、僕の理想とする、情熱を持って真っ直ぐ突き進んでいく人です。一見バカなんだけど、みんなから愛されるっていう部分も含めて、理想なんです。ステージに上がってる時のファンキー加藤を1.5倍増しにしたような感じといいますか(笑)。

自分自身がこうありたいなって思う人物像を映画の中とはいえ演じることが出来る、自分自身がその役になりきれるっていうのでワクワクしたのを覚えています。イメージしやすかったんですよ。それはやっぱり、ライオンさんが僕のライブを観て下さって、そこから生まれたキャラクターっていうのもあるからでしょうね」

演技初挑戦の加藤に待ち受けた試練
新人俳優として望んだ演技レッスン

加藤は、初めての映画主演で芝居に挑むにあたって演技レッスンにも通った。

加藤「やりましたよ〜! 20歳くらいの役者を目指す若者たちに混じって36歳のおっさんが(笑)。気恥ずかしかったですね。イマイチ自分の殻を破れずにいたんですけど。まだその時は、ミュージシャンという肩書を捨てきれてなかったんでしょうね。妙なプライドがあったのかもしれないです。

でも、現場に行くにあたって一旦、ミュージシャンという肩書を捨てないと駄目だなと思って。じゃないと甘えちゃうなと。例えば、セリフを覚えられなかったり、間違えたりしても“ミュージシャンだから。本業は音楽だからしょうがないよな”ってなってしまいそうな自分自身が嫌だったんですよ。だから、一新人俳優として学んでいく姿勢でやらせてもらいました。いよいよあとには引けないぞっていう自分自身の覚悟はそこで固まりました」

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ライオン「加藤さんが色んなことを決意する段階としても、そのワークショップは必要だったのかもしれないですね」

加藤「そうですね。それなしで、いきなり現場に行っても、戸惑うことだらけだったかなって。少しずつ未知の世界への助走というか」

理想に近づけたいからこそ慎重になるのだろうか。

加藤「だと思うんですよ。石橋を叩いて渡る人なんですよね。だから、決断するまでに時間がかかるし、さらに覚悟を決めるまでに時間がかかっちゃうのかなと」 

 (撮影/吉田将史 文/本嶋るりこ)

後編は6月8日(水)更新予定です。お楽しみに!

 

■『サブイボマスク』
監督/門馬直人
脚本/一雫ライオン
主演/ファンキー加藤
出演/小池徹平 平愛梨 温水洋一 斉木しげる いとうあさこ 小林龍二(DISH//)武藤敬司(特別出演)大和田伸也/泉谷しげる 
配給/東映

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寂れた地方都市・道半町(みちなかばまち)。地元に活気を取り戻そうと奮起した熱血漢の青年団員・春雄(ファンキー加藤)は、客足が途絶えた商店街で定期的に“1人ライブ”を始めることに。しかし、盛り上がるのは幼なじみで自閉症の権助(小池徹平)だけ。そんな中、春雄は覆面レスラーだった父の形見をかぶって歌うことを思いつき、謎のシンガー“サブイボマスク”として活動を始める。元カノで出戻りのシングルマザー、雪(平愛梨)の協力により、SNSを使った宣伝が功を奏してサブイボマスクの人気は爆発。商店街に人が戻り始めるが、それもつかの間、春雄には身に覚えがない泥棒の疑いがかけられることに。

http://www.sabuibomask.com/

6月11日全国ロードショー

©サブイボマスク製作委員会

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小説版『サブイボマスク』
一雫ライオン/著
出版社:集英社
税込価格:626円 

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プロフィール

ファンキー加藤/ふぁんきーかとう
1978年12月18日生まれ。東京都出身。2004年、地元・八王子でFUNKY MONKEY BABYSを結成。06年にメジャーデビュー後は、『Lovin’ Life』『あとひとつ』などヒット曲を連発したが、2013年に惜しまれながらグループを解散。その後、ファンキー加藤としてソロ活動を宣言し、14年にソロデビューシングル『My VOICE』をリリース。ソロ初のワンマンライブを武道館で開催し、大成功を収め、更に全国ツアーでは約9万人以上を動員するなど、精力的に活動中。本作品で本格的に演技に初挑戦。
http://funkykato.com/

一雫ライオン/ひとしずくらいおん
1973年7月12日生まれ。東京都出身。俳優としての活動を経て、2008年に自身が脚本と演出を手掛ける演劇ユニット『東京深夜舞台』を結成。11年の映画『前橋ヴィジュアル系』で注目を集め、『TAP〜完全なる飼育〜』などの脚本を担当。本作の門馬直人監督とは、SHORT SHORT FILM FESTIVAL & ASIA2013のミュージックSHORT部門でUULAアワードグランプリを受賞した『ハヌル』(13年)、監督の長編デビュー作『ホテルコパン』(16年)で組んだ長年の盟友。『たべるダケ』(13年)『AKBホラーナイト アドレナリンの夜』(15年)などドラマも数多く手掛ける。また、今秋公開の映画『イイネ イイネ イイネ』でも門馬直人監督とタッグを組んでいる。


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