台湾の茶菓子は、「モソパサ」が正解! 町のパン屋さんで買える、お安く品のいいお菓子。

台湾の茶菓子は、「モソパサ」が正解! 町のパン屋さんで買える、お安く品のいいお菓子。



優美でおいしい台湾茶。
淹れ方やお作法のハードルが高そうだけど、実は自由に楽しめるもの。好きなところをつまみながら自分の茶道を探す、台湾在住コーディネーター・青木由香さんのお茶ごとエッセイ。


今回は、台湾茶に合うお茶菓子の話。と言うのも台湾茶と茶菓子の関係性が、日本の緑茶のように「コッテリ甘いあんこのお饅頭や羊羹で渋いお茶をすする喜び」とはちょっと違うので、そんな話と私のお気に入りのお菓子のお店をつらつらと。

台湾のお菓子は、なぜにこうも繊細な甘さなんだ。

天然の香りと甘みが口の中に残る台湾茶にガツンとした甘いお菓子を合わせたら、その余韻が吹っ飛んでしまいます。そうなると台湾茶の醍醐味である余韻を楽しむために、優しい味のものを合わせたいと思うのが人情。


△この後に出てくる「一之軒(イーヂーシュェン)」で購入したパイナップルケーキ。3種類もあって、どれもビーガンで1個売りも3個からの箱入りもある。写真の「金鑽土鳳梨酥(ジンヂュアントゥーフォンリースー)」は1個45元(約200円)。

台湾茶と茶菓子は、日本茶のような「渋いお茶と甘いの」のという関係ではない? と思うのです。台湾茶菓子は、多くがモソモソしてたりパサパサしています。大の大人も淑女も貴婦人もボロボロこぼさずには食べられないレベル。口の中の水分を一気に持っていかれる、つまりは「砂漠(菓子)にオアシス(茶)」の原理でお茶を欲するようにしているのです。

日本から「そんなモソモソでパサパサで甘さ控えめって、美味しいの?」と聞こえてきました。そこで紹介したいのが、「一之軒(イーヂーシュェン)」というパン屋さんの「緑豆冰糕(リュドウビンガオ)」という茶菓子。


△蓋を開けると大事に作られたオーラが。そっと持たないとホロッといっちゃうくらい繊細です。

緑豆冰糕とは、緑豆を蒸して作るお菓子で、モソパサと言えどほんの少ししっとり。口に入れるとふわっと溶けてしまいます。

型でキッチリ美しくつけられた模様は、優しくしないと簡単に壊れてしまう。どれだけの神経を使って箱に収められたのか。品があって儚く繊細で絶妙の薄甘で、緑豆の味がしっかり味わえる。食べたら「緑豆って美味しいな」と素材自体への興味をも湧かせる、そんな素晴らしいお菓子です。それなのにお値段たったの40元(約180円)で2つ入り。このお手頃すぎな価格、大丈夫なのか心配です。


△真ん中の緑豆冰糕の両脇を固めるのは、左が抹茶に小豆餡、右が紫芋に芋と白豆の餡と言う第二形態。最近、私はこちらにも浮気気味。

台湾のローカルパン屋は、実はケーキ屋でもあり、中華菓子屋でもあり、洋も中も各種折り詰めのお菓子もある粉物オールマイティ。


△MRT中山駅近くにある、一之軒の南西店。ピンクの看板が目印。

それだけでも驚いちゃうんですが、一之軒は、台北市内と近郊に30店舗も展開する、いわゆる町のパン屋さんでありながら、数年前から動物由来のものを一切使わないビーガンの商品の開発にも熱心。環境と人に優しいものづくりを始めています。

25年にわたりちょいちょい食べていた私も、商品棚にしれっとビーガンが混ざっていることに気づきませんでした。味はなるべく変えずにビーガンの商品を開発しているので、ビーガンのパイナップルケーキも今までのとどこに差があるのか、という世界。


△ビーガン商品が多く並ぶ一之軒のコンセプト店、忠孝敦化(ヂョンシャオドゥンホァ)店の様子。こちらの店舗は、コーヒー販売もありミルクの代わりにオーツミルクを使っている。

一之軒に行ったらパンも買ってほしい。「海鹽羅宋(ハイイェンルォーソン)」は、薄甘モソパサでお茶にも合うパン(75元、約370円)。これは、一般的には「羅宋麵包(ルォーソンメェンバオ)」と言われる台湾人の大好きなパンで、直訳は「ロシアンブレッド」と言います。ロシアに実際あるのか知らんけど、とりあえず日本にはなくて、ほんのり甘い水分の少ない生地の巨大ロールパンを真ん中で切り開いたような形。そんなふうに見えないのに、その開口部にバターをたっぷり染み込ませていてたまらんのです。


△左写真:店頭では使用材料の表記も。右写真:右上から、台湾メロンパン、エッグタルト、ビーガン塩卵の月餅、パナップルケーキとどれもおすすめ。

台湾ど定番のパンだから実はどこでも買えますが、一之軒なら人にも環境にも優しいので、ぜひ狙って行ってください。私は緑豆冰糕と共に一之軒自体が、もっとたくさんの日本人にチヤホヤされてもいい、と思っています。

 

今日の一皿。手工麻糬(ショウゴンマーシュウ)

今回は本編に合わせて、「今日の一杯」ならぬ「今日の一皿」をご紹介。
台湾版大福? 「手工麻糬」は、小さめでいろんな餡があって、もちろん甘さ控えめ。大福は、あまり……と言う人もぜひ。日本よりさっぱりめのあんこは食べやすく、小豆あん以外に、緑豆餡、タロ芋餡なども。


△手工麻糬は1個45元(約200円)。防腐剤不使用なので、賞味期限は2日。日本へ持ち帰るなら帰国日に買うべし。

中でもゴマやピーナッツは、ゴマだれや餡じゃなくジャリジャリのゴマ、ジャリジャリのピーナッツが包まれているので、まさにお茶と合わせて「砂漠にオアシス」の相乗効果が体験できる茶菓子です。

 

「一之軒(イーヂーシュェン)」
台北エリアを中心に展開している、パンのローカルチェーン店。
※住所、営業時間、定休日などは各店舗によって異なります。
公式HP:https://www.ijysheng.com/

\今回ご紹介した店舗/
南西店
住所 台北市大同區南京西路35號(MRT中山駅の近く)
TEL (+886)2-2552-1313
営業時間 平日7:00-21:00、土日祝8:00-21:00

忠孝敦化店
ビーガン商品が多く並ぶコンセプト店。
住所 台北市敦化南路1段197號(MRT忠孝敦化駅8號出口出てすぐ)
TEL (+886)-2-2711-5001
営業時間 平日7:30-21:00、土日祝10:00-21:00

*次回は5月7日(水)に公開予定です。

\青木さんのお店もチェック!/
『你好我好(ニーハオウォーハオ)』
https://www.nihaowohao.net/
日本から購入できるオンラインストアも!
https://nihaowohaostore.com/

\好評発売中!/
暮らしの図鑑 台湾の日々
著:青木由香
発行:翔泳社


Written by aokiyuka
青木 由香

台湾在住20数年。コーディネイト、執筆、Podcastを通して、日本に台湾を紹介している。台北でセレクトショップ「你好我好(ニーハオウォーハオ)」を経営。
Instagram @taiwan_aokiyuka 
ショップ&アートギャラリーSTORE「你好我好」 @nihaowohaostore
お茶ブランド「香香臺灣」  @xiangxiangtaiwan
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