【INTERVIEW】ドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』で現実主義の医師を演じる濱正悟。説得力を持たせるため、徹底的な取材で臨む。

【INTERVIEW】ドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』で現実主義の医師を演じる濱正悟。説得力を持たせるため、徹底的な取材で臨む。


現在放送中のドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』に出演中の濱正悟。セレブ向けの病院で秘密裏に立ち上がった母子救命プロジェクトに参加することになった、新生児科医の富永航を演じている。いつか院長になるかもしれない医師として、貧困や望まない妊娠などの問題を抱えた妊婦達をどのように受け入れていくのか、その心情も注目の役どころ。初めて医師を演じるうえで、濱は実験的に現場に向き合っているという。

撮影/浦田大作 スタイリスト/徳永貴士(SOT) ヘアメイク/佐々木麻里子 文/大曲智子

――『ファーストクライ 母子救命救急班』は母子救命をテーマに描くドラマですが、登場人物達がみな魅力的です。濱さんは作品にどんな印象を持ちましたか。

「医療がテーマということで、シリアスでテンポ感が速い作品になるだろうなとは思いました。登場するキャラクター達はそれぞれ信念が違うけれど、最終的には母子を救いたいという思いのもと、集結します。こういった作品づくりも、チームだからこそできることがある。そういったことを実感させてくれる作品だなと思いました」

――ひとりではできないことも、プロフェッショナルが力を合わせるとできることがあるという。

「特にこの作品はそういう内容だと思います。僕達も普段、俳優として作品をつくっていますが、自分だけが芝居をしていればいいわけじゃない、みんなでつくっているんだという思いは年々強くなっています」

――医療ドラマに出演するのは初めてとのことですが、新生児科の医師を演じるにあたってどんな準備をされましたか。

「台本に書かれていることを把握するのはもちろん、撮影現場に医療監修で入られている医師の先生がいらっしゃるので、直接いろんな話を伺っています。あとはネット上ですが、実際に母子救命に携わっている医師の方が動画などのコンテンツをあげて下さっているので、そういったものを見たりします。現場にはローテーションで数人の先生が来て下さるので、こういう時にどういう対応をするのかという技術的な面はもちろん、どういう心情で向き合っているのかもみなさんに伺っています。僕が演じる富永航は新生児科の医師なので、産婦人科の人達が分娩や帝王切開で胎児を取り出したあとに仕事をするんですね。脚本自体、すごく勉強になるところが多いので、それを掘り下げて、『こういう手術の時はどういうリスクがあるんですか?』とか、『こういう時は妊婦さんにどう接するんですか?』といったことを聞いています」

――医師の方達の言葉で印象的だったものはありますか。

「それが結構、人それぞれなんです。技術面も考え方も、先生方それぞれ独自のスタイルがある。そのあたりをどう富永に活かそうかなと考えているところですが、富永が言っているような現実的なことをおっしゃる先生もいるので、脚本の浜田秀哉さんなどスタッフの方々もきっとリサーチしたことを脚本に組み込まれているんだと思います。僕も自分なりに調べていると、“これは富永が言いそうだな”と思うことがあります。役をつくる上で参考になるのは、先生達の人間性といいますか、どんな話し口調なのか、話している時にどういうしぐさをするのかはよく見させてもらっています」

――理想論を排するリアリストの富永ですが、ドラマの中ではどのような立ち位置の人物なのでしょう。

「このドラマの舞台であり富永達が勤務しているのが、富裕層向け病院なのですが、病院の指針とは真逆の方向である“母子救命プロジェクト”を、リスクを負いながらもスタートさせ、そこに巻き込まれていくのが富永です。プロジェクトの発起人であり院長の神谷玲子(真矢ミキ)は、富永の妻の母親でもあるので、富永は周りから次期院長だとささやかれている。そういう関係値もあるため、なかば強引にプロジェクトに入ったような富永ではあるんですが、母子を救いたいという思いは根底にあるので、プロジェクトに入ることは当たり前の選択だったんだと思います。実際、リアルを超越した部分があるプロジェクトですが、富永がいることによって、リアルとの架け橋が生まれているんじゃないかなと思っています。メンバーとしても、比嘉愛未さん演じる産婦人科医の光井明希は患者に優しく寄り添うタイプで、富永は厳しく寄り添うタイプ。第3話まではそれぞれ信念があるがゆえに対立していますが、今後の富永にもぜひ注目してほしいです」

――現場の雰囲気はいかがですか? フリーランスの麻酔科医・藤堂直樹役の岡部たかしさんとは、朝ドラ『ばけばけ』からすぐの再共演です。

「現場は和やかであり、医療作品ということで適度な緊張感もありますが、気づくと岡部さんの隣にいるんですよね、僕。なぜかはわからないんですが、“いつも岡部さんが隣にいるなぁ”と思っています」

――濱さんが無意識に岡部さんの隣に行っているのでは?

「そういうことなんですよね。僕から行っていたんだなと最近気づきました(笑)。カメラに映らないカットの時は前室で待機していたりするんですけど、気づくといつも岡部さんか医療監修の先生の隣にいます。岡部さんの隣って居心地がいいんだと思います。でも基本的には先生の隣にいるかな。ずっと先生と話しているので、『どうして俳優になろうと思ったんですか?』って逆に質問されたこともありました。そういう会話も役づくりに活かせますし、心を開いて下さっているのかなと思うと嬉しいです」

――いろんな方とお話しているんですね。

「台本はドラマである以上ドラマナイズされている部分もあるので、『ここって本当はどうやるんですか』と聞いておくことで、ドラマの演出の意図もわかるかなと。ドラマが描こうとしている本質的な部分を頭に入れて演じるほうが絶対にいいと思うので。医療関係の友人にもヒアリングしました。そういう要素はシーンによっては入れられるかなと考えています。人間って多面的だから、たまに違う顔が見えることもある。実際に何を選択するかは監督と話し合って決めていますが、リアルとドラマのバランスみたいなことは常に考えています」

――作品を客観視しながら演じられているのでしょうか。

「実際、現場に入ったら主観にしかならないので、今みたいに現場にいないときは客観でいるべきだと思っています。撮影が毎日あれば役にどっぷり入り込むんですけど、少し日にちが開いてしまうとずっと役でいるわけにもいかないですし。ただ、現場の人達の輪は大事です。富永は序盤では光井達と対立していますが、本当に僕が富永でい続けるならひとり端っこでお弁当を食べないといけない(笑)。それはちょっとつらいのでやめておこうかなと。最近は、役のモードを切り替えようと思えばできることに気がついたので、本番で切り替えるようにしています」

――役、ひいては作品をよくするためのやり方を考えていると。

「実験している感じはあります。ずっと役の雰囲気や関係性のままで過ごしてみることもあれば、今回のようにとにかくいろんな人に話しかけて社交して、役は役で本番切り替えてみたり。迷惑がかからない程度に意のままに過ごしてもいいのかなって思ったんです。もちろんそこはバランスを見てですけど、僕は人と社交することもひとりになることもどちらも好きなので」

――映画やドラマ、演劇もですが、作品が終わると現場の方達とは会えなくなる。そしてまた新たな作品に入り、人間関係を構築していく。その繰り返しという印象があります。

「僕はそれが好きでこの仕事をやっているんですよね。同じことの繰り返しよりも代わる代わるいろんなことをしたくてこの仕事を始めたというのもあるので。専門的に何かやりたいことが見つからなかったというのもあるし、この仕事を通して、人生をどう生きるかという答えを探せたらという思いもあったかもしれない。今思えばですけどね。昔はそこまで深くは考えていなかったけれど、でもこうやっていろんな景色を見られるのが好きなんだなって、今聞かれて気づきました」

――別れてもまたすぐ再会する方もいます。

「ありがたいことに今回、岡部さんとまたすぐ共演できました。今回のスタッフさんにも、以前ご一緒したことのある方が何人かいらっしゃって、そういう再会も嬉しい。素敵な方達とまたご一緒できるように頑張るというのは、この仕事のモチベーションのひとつではあります」

――濱さんはとてもクレバーだなと感じるのですが、濱さん自身は自分のことをどんなふうに感じていますか。

「内面はわからないなぁ。外面のことしか思い浮かばないです。嫌だなと思うのは、乾燥肌、癖毛、寝起きが悪いところ」

――逆に、お好きなところは?

「それも癖毛なところ。自分でヘアセットする時、なんとなくぐちゃぐちゃにするだけでセットした感じになるので。作品に入ると髪型とかどうでもよくなりますしね。ぐちゃぐちゃだけどそれも自分のスタイルだと言ってしまえばいいかなって」

――いいところは癖毛、嫌なところも癖毛。濱さんらしい答えだなと思います。

「そうですね。これもスタイルにしていきたいと思います」


プロフィール
はま・しょうご
1994年8月22日生まれ、東京都出身。2015年に俳優デビュー以降、ドラマ『恋せぬふたり』や連続テレビ小説『舞いあがれ!』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などに出演し、注目を集める。近年の出演作に、ドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』シリーズ、連続テレビ小説『ばけばけ』、Huluオリジナル『おとなになっても』、映画『お別れの歌』などがある。現在、大河ドラマ『豊臣兄弟!』に毛利輝元役で出演。今秋公開の映画『マッチング TRUE LOVE』が控えている。


作品データ
ドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』
脚本/浜田秀哉
音楽/菅野祐悟
演出/大谷太郎 上田迅(ザ・ワークス)
出演/比嘉愛未 松島聡 徳永えり 濱正悟 ・ 前田敦子 ・ 山村紅葉 岡部たかし 真矢ミキ 他

都内の一等地にそびえる日本屈指のセレブ病院で、神谷玲子院長(真矢ミキ)の特命により、「母子救命救急班」が秘密裏に結成される。プロジェクトの目的は、行き場を失った訳ありの妊婦達を無償で救うこと。チームの中心人物は、片耳に難聴を抱えながらも、誰よりも赤ちゃんの産声を聞くことに執着する、叩き上げの産婦人科医・光井明希(比嘉愛未)。光井は、産婦人科専攻医の永坂海斗(松島聡)、フリーランスの麻酔科医・藤堂直樹(岡部たかし)、新生児科医の富永航(濱正悟)らを巻き込みながらプロジェクトを進めていく。
毎週水曜夜10時より日テレ系にて放送中。