【INTERVIEW】猪野広樹/ドラマ『スター☆コンチェルト~オレとキミのアイドル道~』 で連続ドラマ初出演にして主演を務める心境を訊いた。

【INTERVIEW】猪野広樹/ドラマ『スター☆コンチェルト~オレとキミのアイドル道~』 で連続ドラマ初出演にして主演を務める心境を訊いた。


8人組男性アイドルグループがデビューを目指して奮闘する青春ドラマ『スター☆コンチェルト~オレとキミのアイドル道~』で初主演を飾る猪野広樹。連続ドラマ出演も初めての経験となり、自らの演技への期待と不安が交錯する本音を打ち明ける。一方、役者としての主戦場である舞台では、2015年から出演を続けているハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」などの新作公演を前に、舞台役者としての矜持を垣間見せてくれた。

撮影/吉田将史 文/中田宗孝

――『スター☆コンチェルト~オレとキミのアイドル道~』で、キャリア初の連続ドラマの出演。そして初主演となります。やはりプレッシャーを感じていますか?

「それは、もう(苦笑)。主演ということもそうですが、僕はこれまで舞台を中心に活動をしてきたので、ドラマの撮影現場は今までとは違う環境。ですので、その部分がもっとも不安に感じることかも知れません」

 ――舞台とドラマの違いは大きいですか?

「まさにドラマの現場に苦戦している最中です。あくまで自分の感覚ですが、舞台は表現の制約がなく、ある意味でどこまでも自由に演じてもいいと考えているんです。一方、ドラマでは、顔がアップでぬかれることもある。それにまだ自分が慣れていません。表情の芝居が舞台で演じるように大きくなってしまうことがあるので、動きや所作の演技にもっと細かく意識を配れるように修正していきたいです。演じやすいと感じる部分もあります。舞台上の小道具を極力少なくする作品もあるので、舞台では役者がそこにモノがあるかのようにイメージしながら演じることがあります。でもドラマは、テーブルもあるし炊飯器もあるし、おにぎりもそこにある(笑)。目の前に実物があるので、その部分に関しては余裕が生まれて演技に集中しやすいです」

 ――舞台で培った演技をドラマ用にチューニングしていく作業なんですね。

「加えて自分自身が元々考えすぎてしまう性格ということもあって、現場入りするまでは、『どうにかしなきゃ』『面白い作品を作らなきゃ』なんて、いつも思いを巡らせています。ただ、いざ現場に入ったら、そのことは一切考えずに楽しんで演技するように心掛けているんです。やはり現場の役者の雰囲気が視聴者にも敏感に伝わると思うので」

 ――物語はコミカルな要素も満載の作品ですもんね。

「はい。それに今作は、男性新人アイドルグループのマネージャー役がいるのですが、彼女のビジュアルは画面にまったく映りません。“乙女ゲーム”のようなドラマなので視聴者がマネージャーになりきって物語に参加できます。そこを楽しみながら見て欲しいですね」

 

――女性視聴者が思わずキュンとなってしまうようなシーンも?

「もちろん(笑)。僕の演じるヒロキは、とにかく人懐っこいキャラクターで、マネージャーとの距離も犬みたいに近い(笑)。他の男性メンバーもツンデレ系やヤンチャ系など個性溢れるキャラばかり。女性視聴者のみなさまのご期待にそえるのではないでしょうか(笑)」

 ――男性アイドルたちが歌やダンスにも挑戦するともうかがっています。

「僕はこれまで歌やダンスを個人的に習った経験がないので内心焦ってます。舞台で学んだ経験を少しでも活かせればいいなと。ただ、歌もダンスもめちゃくちゃ好きなんですよ! だからテンションだけは今、最高潮です(笑)。撮影と並行しながらドラマ用の歌とダンスを練習中なのですが、めっちゃカッコいい曲なんです! そしてダンスはめっちゃハード(苦笑)。みなさんに早くお披露目したい気持ちでいっぱいです」

 ――そして、男たちの熱い青春や成長も描かれていきます。

「ヒロキや他のメンバーのセリフで泣きそうになることが何回もあるんですよ。メンバーそれぞれ過去を持っていて、色々な思いからアイドルになろうと頑張ります。時にぶつかりあいながら、メンバー同士の思いを理解してひとつになっていく……。台本を読んでいると込みあげてくる。単なる、アイドル誕生の物語を越えたモノを見せられると思います」

 ――撮影現場の熱気も伝わってきます。

「現場では、ケンケン(鎌苅健太)さんが率先して盛りあげてくれて、とてもいい雰囲気になっています。僕も可愛がってもらってます」

 ――男ばかりの現場はどうですか?

「いやー、僕は舞台でも男ばかりなので慣れっこというか、男子校出身なので、人生常に男に囲まれてますよ(苦笑)。10代の頃からそんな感じなんで、もしかしたら他の共演者の方よりも現場を楽しんじゃっているかも(笑)」

 

――役づくりに関してはいかがでしょうか。役に染まるタイプ、役と自分の共通点を探して膨らませていくタイプ、役者によって方法は様々だと思います。

「僕は両方のタイプ。作品や役柄にもよりますが、今作では自分との共通点が多い役だと思います。他のメンバーの強い個性を間近で感じながら、ヒロキは『自分の個性ってなんだろう?』と自問自答する。それは役者として僕が普段から思っていることと同じ悩みです。また、第1話では『(アイドルをすることに)最初は不安だった。出来るのかなって』なんてヒロキのセリフもあります。これも僕が役者を始めた頃の気持ちとまったく同じなんです」

 ――猪野さん自身と重なる部分が多かったと。

「はい。物語の中でヒロキはスター・アイドルを目指して頑張っていきますが、僕自身もそんなヒロキを演じることで役者として成長していこうと。ヒロキの成長が僕の成長でもあるんです」

 ――ドラマ制作スタッフからヒロキ役について何かうかがっていますか?

「『ヒロキは“スーパー戦隊シリーズ”のレッドのイメージ』だと伝えられました。確かにヒロキは戦隊のレッドのような芯の強さがあり、自分のことよりも人のことを優先する優しさを持ち合わせています。ただ、『おっしゃ、いくぞ!』みたいに周りを引っ張っていくタイプというよりは、心の中にある熱い気持ちが自然に行動にあらわれてしまうような人物だと感じているんです。物事をロジカルに考える前に、何かを感じて身体が勝手に動いてしまうような。そして彼は、人に影響を与えるようなパワーを持っているのに、自分自身はその可能性に気がついていない、ちょっともどかしさのある役なんです。でも愛らしいですよね? だから僕が演じることで、視聴者のみなさんにヒロキの魅力を伝えられたら、彼を愛らしく思ってもらえたら成功なんじゃないかと思っています」

 
――主演ドラマの撮影をしながら、1月からは舞台『私のホストちゃん REBORN』、3月から始まる、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“勝者と敗者”の出演も控えています。ドラマと舞台の切り替えが大変ではないですか?

「スケジュール的にはハードではありますが、ドラマではアイドル、1月の舞台はホストの話で世界観が全然違うので、自分がパニックになることはないですね。これがドラマと舞台の両方ともアイドルの話だったら混乱するかも知れませんが」

 ――演劇「ハイキュー!!」は原作漫画のファンも多い作品です。演劇の新たな物語に取り組むたびに、観客の期待も高まっていると思います。そのプレッシャーを感じることは?

「この作品は“ハイパープロジェクション演劇”と銘打っていますから、演出家さんも、僕ら役者に毎回半端ない課題を仕掛けてきます。初演から背景にプロジェクションマッピングが映し出され、再演ではレーザーまで放たれるようになって、さらにライブカメラまで導入されて。次はどんな演出になるんだろうなと楽しみ、ワクワクしかないです」

 ――発言から舞台役者としてのいい意味での“ゆとり”を感じさせます。

「ただ、自分の演技の新しい引き出しをどんどん増やしていかなきゃとは思っています。実はちょっと前までは舞台上での自分の演技や見せ方を考え込んでいたんですけど、最近はそこよりも重要視するべきことがあると感じているんです。演技や見せ方については演出家さんが正しい方向に導いてくれると信頼しているので、僕は演じる役の内面をどれだけ本番で表現できるか、どれだけ観客に伝えられるかを大事にする姿勢で臨むようにしています。物語の意外なところにワンポイントを作れたらいいなと」

 ――ワンポイント?

「物語の前半で、後半の自分のセリフや行動を裏付けるような“伏線”をアドリブで張るんです。伏線をセリフにまぜてしまうと、つまり、言葉で言ってしまうとわざとらしくなってしまう。だからちょっとしたアクションの中にサラッと匂わせる。新しい舞台でもその挑戦は続けていきたいですね」

 ――新しい1年が始まります。昨年のご自身の活動を少し振り返っていただけますか。

「2016年は、演技でアウトプットする時間が多く、インプットする時間がなかったと感じています。ひとつのことで精一杯になってしまうタチでもあるので、仕事に向かっていると、そればかりになってしまって、違うベクトルのところから新しい何かを見つけて吸収できなくなっていたんです。だから今年は、演技にいかせるモノをインプットする時間を自分のために充てられたらなと思います」

 
――猪野さん流のインプットの方法は?

「映画観賞もそうですし、ワークショップにも参加したい。より多くの舞台を観に行って他の方の演技から学びたい。自分が参加する作品でも共演者の方は大勢いますが、気を楽に観劇できる方が自分の中にインプットされていくと思うんです」

 ――インタビューの冒頭では「考えすぎる性格」だと自己分析していました。今年も役者として悩み多き一年になるのではないでしょうか?

「そうですね(苦笑)。年がら年中、演技について悩んでしまうんです。自分の中で演技に対してのブレがあるなと感じる瞬間が多く、自分の演技の取り組み方がこれでいいのかと分からなくなってしまうこともあるんです。先輩の役者さんに相談して解消されることもあるんですけど、解消されたらされたでまた別の演技の悩みが浮かんできてしまう。このクセをどうにかしたいと思っているんですが、今の状況を決して苦だとは思いません。演技の壁をひとつ乗り越えれば、役者としていい方向には向かっているはずですから」


 ●プロフィール
猪野広樹(いのひろき)

1992年9月11日生まれ。神奈川県出身。2009年、ドラマ『猿ロック Episode5-1』でデビュー。以降、舞台を中心に活動し、ミュージカル『薄桜鬼』、舞台『戦国無双~四国遠征の章~』、『ROCK MUSICAL BLEACH~もうひとつの地上~』など2.5次元舞台作品に数多く出演。1月11日からサンシャイン劇場ほかで上演される舞台『私のホストちゃん REBORN』、3月24日からTOKYO DOME CITY HALLほかで上演されるハイパープロジェクション演劇ハイキュー!!“勝者と敗者”の出演を控える。


 ●作品紹介

 スタコン メイン

『スター☆コンチェルト ~オレとキミのアイドル道~』
脚本:坪田文(原案) 広田光毅 佐々木なふみ 有賀ひかる
演出:髙丸雅隆 北坊信一 池辺安智
出演:猪野広樹 鎌苅健太 川隅美慎 永田崇人 鷹松宏一 鈴木祐士郎 古川龍慶 桐矢彰吏/波岡一喜 半海一晃 ほか

新人男性アイドルたちがデビューを目指し共同生活を送る“星輝寮(ほしきらりょう)”。新人マネージャー(=視聴者)は、先輩マネージャーの小須田(波岡一喜)から、スターを目指す明るい青年・瑛倉ヒロキ(猪野広樹)、日々野周(鎌苅健太)、長谷川翔音(川隅美慎)ら6人の担当を命ぜられるが、個性豊かな彼らは性格も意見もバラバラ。自分たちが“アイドルユニット”としてのデビューを目指さなければならないことを知り、大反発を起こしてしまう。しかもマネージャーとも共同生活をすることになり…。

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