【INTERVIEW】廣瀬智紀/映画『探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。』で風変わりで、鞭使いの探偵役に挑戦。個性的なキャラを見事に体現した廣瀬の役への向き合い方。

【INTERVIEW】廣瀬智紀/映画『探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。』で風変わりで、鞭使いの探偵役に挑戦。個性的なキャラを見事に体現した廣瀬の役への向き合い方。


    

舞台『弱虫ペダル』や映画『羊をかぞえる。』『天秤をゆらす。』などに出演している廣瀬智紀が、初春に公開される映画『探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。』で主演を務める。紅伊探偵事務所の2代目所長・紅伊玲二を演じる廣瀬は、「ブルウィップ」と呼ばれる鞭でのアクションや、主題歌も担当するなど、初めてづくしの経験となったようだ。

撮影/浦田大作 文/池上愛

 ――紅伊玲二、とても特徴のある役どころでしたね。

「物凄いキャラの強い主人公でした。格好もそうだし、武器の鞭もそうですし」

――帽子やスーツなど、細かなところにこだわりを感じました。

「そうですね。衣裳を決める段階で色々と試しました。このビジュアルでいこうとなるまでには、結構な行程を経たんじゃないかな」

――レトロな世界観はいかがでしたか?

「玲二の愛車が凄くかわいいかったんです。凄く小さくて、2人乗ったらぎゅうぎゅうなんですけど、その小さい感じもかわいいというか。探偵事務所の中の雰囲気だったりも凄く好きでした」

――玲二の持ち物は、アンティークな小物が多いですよね。公式ツイッターに玲二の持ち物の写真が掲載されているのを拝見しましたが、こだわりのあるアイテムばかりだなと。やはりムチが印象的でしたけれど。

「ははは(笑)。所長の持ち物、文房具の中にムチですからね(笑)」

――ビジュアル以外のキャラクターづくりはどういうところから入っていかれましたか?

「ムチを使っているっていうところもそうでしたけど、やっぱりどこか普通じゃない男なので。そういうクセを出したいなっていうところもありましたし、そのつかみどころのないところ、ミステリアスな部分を出していけたらなと思いました。脚本の中からつかんでもいきましたが、基本的には監督との意見交換が一番大きかったです」

――監督の櫻井信太郎さんは、廣瀬さんとほぼ同年代ですよね。櫻井監督の演出などはいかがでしたか。

「同い年みたいな感覚は全然なく、監督と役者という関係で臨みました。お話する中で、監督は色んな作品を今までに観てきているんだなと思いましたし、このシーンはこれをこう、ここはこう映したいんですよというようなこだわりをたくさん感じました。もちろんこだわりだけじゃなく、作品作りが本当に楽しくて、お芝居が大好きで…そんな気持ちが伝わってきました」

――監督と話しながら決めていった部分はありますか?

「クセの部分でいうと、玲二は角砂糖が好きという設定なんですけど、あれは元から決まってた訳じゃなく、何かクセがあったら面白いよねという話から決まりました」

――そうなんですね。

「ペロペロキャンディーにしようとか、色んな案があったんですけど、最終的には角砂糖に」

――頭がいい人って、何か一癖あるようなイメージがありますね。

「そうそう。なんかそういうフックを視聴者に見せたいなと思って」

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――撮影はどのくらいの時期に?

「6月に4~5日かけて撮影しました。ちょうど梅雨の時期に重なっているので、結構雨が降っているシーンがあって」

――鞭アクションのシーンも雨が降っていましたよね?

「そうです(笑)。あそこも台本では降る設定ではなかったんです」

――演出で降らせているのだと思っていました!

「実は違うんです。でもそこも雰囲気が凄くあるシーンになったので、結果オーライというか、凄くいいシーンになったと思います」

――今回は主題歌も務められましたね。歌は好きなんですか?

「好きです。好きだけど、仕事に繋げられるかというと、それはまた別の話。最初は、これはどうなんだろう、自分に出来るのかな? って正直思いました。そこはプロのアーティストさんにお願いしたほうがいいんじゃないかって。でも僕の性格は、無理だよと思うんじゃなくて、前に進むタイプなので、不安もありましたけど楽しさのほうが勝ちました(笑)。プロデューサーさん曰く、昔の映画スターは主演をやったら主題歌も歌うっていうのが当たり前だったんですって。今回もそういう時代のテイストなので、自分が歌うことが映画のイメージに活きるんだったら、いいチャンスだし頑張ろう! と」

――逆に、この作品じゃないとなかなか主題歌を歌うこともないので、凄い経験ですよね。

「貴重でした。難しかったのは、ミュージックビデオの撮影です。紅井玲二でいつつも、歌うのは廣瀬智紀だったので、そこが結構難しかったです」

――廣瀬智紀が出ちゃうことに対しては、照れとかはありませんでした?

「そこは全然…いや、全然じゃないな。ギリギリです(笑)。でも楽しかったし勉強になりました。この経験も次に活かしたいです」

――主題歌を含め、鞭アクションだったり、個性的なキャラだったり。初めての挑戦が多かったのでは?

「そうですね、初めてです。でも……初めてではあるんですけど、この仕事をしていると、例えば自分が観てきた作品とか、いつのまにか自分の中にある瞬間ってのがあって。初めてなんだけどそうじゃない感覚というか、どっかにあるんです。もちろんこの紅井玲二は初めて演じるんですけど、この雰囲気、前に自分がなんかその中にいたな、みたいな感覚がある。なんていうんですかね、デジャブみたいな感覚というか。うまく言葉に出来ないんですけど」

――どんな役どころでも、廣瀬さんちょっと似ている部分を持ってるみたいな?

「いや、そうではなくて、今まで僕が観てきた作品は、僕ではない違う俳優さんが演じているんだけど、自分もそこにいるというか、自分が演じているかのような感覚になる時があるんです。それは、その役者さんへの尊敬だったり、何かしら印象に残っていたりっていうのもあるのかもしれないんですけど」

――普通に映画やドラマを観ている時も、役者モードになっているのでしょうか。

「そうかもしれません。この仕事をしているからそういう見方とか考え方になってるのかも。でも、だからこそ気をつけなきゃいけないのは…」

――いつのまにか真似ちゃったり、そのお芝居に寄っちゃったりするかもしれない。

「そう。だから自分の色や味を、というのは気をつけています」

――ご自身の色は、どんな部分だと思いますか?

「自分自身のことは本当にわからないですけど、周りの方々からよく言われるのは、演じるキャラクターがより人間味溢れるようになる、部分なのかなと」

――なるほど。この紅井玲二も浮世離れしたキャラだけど、廣瀬さんが演じることでうまくハマっているキャラになっている気がします。

「ありがたいことに、そういう言って下さることが多くて。こんなヤツいないだろ! っていうキャラも、立体化してその人間を演じてみます。そうすると、“こんなヤツいるかと思ってたけど、意外といたね”みたいに監督さんが言って下さったりして。そういう言葉は嬉しいなって思います。自分ではわからないんですけど」

――自分じゃわからないと連呼するところが謙虚ですね(笑)。

「はい(笑)。でもそのような言葉を言ってくれる理由は、自分自身がどこか抜けているからなのかなと思うこともあって」

――というと?

「周りの共演者やスタッフ、マネージャーさんから、“廣瀬は天然”ってよく言われるんですけど(笑)、もしかして僕のぼや~っとしている部分が、人間らしいという部分を生み出しているのかなって。自分では気づかないんだけど、僕の天然というか抜けているというか…(笑)、ふわっとしている感じが、役の感じを自然とつかんでいるのかなって。『天秤をゆらす。』の丸井という役もこんな人いる? という男だったけど、その時に監督がおっしゃって下さったのが、『わざとらしくなってしまう役も、廣瀬君が演じると、なぜかハマるんだよな』って。凄くその言葉が嬉しかったです」

――それは嬉しいですね。

「自分では気づかないけど、自然に出ているものが持ち味になっているのなら、それは願ったり叶ったりだなと思います。ただこの仕事って、何が正解で何が間違ってるのかもわからないですし、自分のお芝居が上手いって思ったことは一度もなくて。だけど、役の世界を生きようということだけは、ちゃんと真剣に向き合ってます。もし自分の持ち味が調整出来ればいいんですけど(笑)。ここでは抑えめにしよう、ここではいっぱい発揮しよう、とか、そんなことが出来ればいいんですけど(笑)」

――でも、意識せず自然に演じているのに、“役がはまってる”と言われるのも、凄いことじゃないですか?

「僕自身はそれがわかっていないので(笑)、そこが調整出来たら最強です」

――はは(笑)。1月からはドラマ『男水』にも出演されますね。廣瀬さんは舞台作品の出演が多いイメージがありますが、最近は映像作品が続いています。

「そうですね。最近は映像の作品が続いていて、これまでに経験してきてないことを学べるいい機会になっています。映像のお芝居って、瞬発力が大事なので、意識しています。あとスタッフさんが、『凄い俳優さんは、ここしかないだろ! という画面の位置に、パーンと入ってくる』と仰っていて。そこも見極めたいなって思いました。自分の作品を振り返って観るのは苦手ではあるんですが、ちゃんと観て、チェックしていかなきゃなと思ってます。もちろん舞台、映像に限らず、その作品に全力投球して代表作にするつもりでいるんですけど、吸収しようっていう気持ちは人一倍あると思うので、映像の現場では特に意識しています」

――吸収するために、意識していることはあるんでしょうか? 以前『スカーレット・ピンパーネル』でご共演された石丸幹二さんに取材した時、“一流と言われるものをひたすら体感する”とおっしゃっていまして。廣瀬さんも、そういう意識していることはあるのかなと。

「一流の石丸さんだからこその考え方ですね。凄いなぁ。僕の場合は、仕事しているという感覚を失わないことかな。どんな現場でも、どんなに楽しい場所でも、仕事ということを意識しています。遊びに来ているわけじゃなく、作品を作りに来ているんだという気持ちは常に持っていたいです。僕は20歳過ぎてから役者になったので、スタートは遅いので、人一倍そういう意識でいなきゃいけないなって思っています」

――役者という仕事をしている限りは。

「そうですね。やっぱり30歳を迎えるということで、ごまかしが効かない年齢になったなとも思うし、まだ若いから、未熟でいいんだから、と言ってもらるような段階ではないです。そこはプロとして……誰がプロと決めるかわからないですけど、自分はプロの役者なんだから、という意識を強く持ってます」

――歳を重ねるに連れ、意識が明確になっていかれましたか?

「うーん、歳というよりかは、出会っていく作品ごとにです。素敵な作品と関わらせて頂くうちに、です。この映画もそうですけど、主演を演じるだけでも凄いのに主題歌まで担当させて頂く訳じゃないですか。僕は歌手ではないけれど、じゃあ歌手じゃなかったら適当でいいのかといったら絶対にそうじゃない。歌う以上、プロの意識を持ってなきゃダメです。石丸さんが仰っていたという、一流に触れる、ということも、それだけのキャリアと実力のある石丸さんですら、一流に触れることで、一流を保っているんだと思うんです。物凄い役者の方々も、成長する努力をされているし、きっとその努力をやめるとすぐに潰れちゃうと思う。そんな人をファンは応援してくれないですよね? だから僕を応援して下さっている人のためにも、プロとしての自覚は忘れないでいたいです」

――30歳の節目を迎えて、30代で新しくトライしたいことはありますか?

「うーん、なんだろう…休みがあると、すぐだらけちゃうんです。休みの日にリフレッシュするのも大事だけど、そこも仕事に繋がるような意識に変えられたらなとは思っています。薄々と」

――薄々と(笑)。

「はい(笑)。結構前から、薄々気づいてたんですけど、未だダラダラしちゃいます。今年はメリハリをつけていけたらいいですね」


 ●プロフィール
廣瀬智紀/ひろせ・ともき
1987年2月14日生まれ、埼玉県出身。舞台『弱虫ペダル』『私のホストちゃん』『ダイヤのA The LIVE』など数多くの人気シリーズ作品に出演。最近では16年10月~『スカーレット・ピンパーネル』で本格ミュージカルに挑戦した。主演映画『天秤をゆらす。』が公開中。1月よりドラマ『男水!』(日本テレビ系)が放送。同名舞台は5月より上演。


 ●作品紹介

『探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。』
監督/櫻井信太郎
主題歌/廣瀬智紀
出演/廣瀬智紀 青木玄徳 岸明日香 小野真弓 竹井亮介 松谷賢示 正木蒼二 中野マサアキ 磯貝虹來 龍坐 碓井将大/田中要次 津田寛治/田島令子
配給/ユナイテッドエンタテインメント

祖父から受け継いだ紅伊探偵事務所の2代目所長を務める紅伊玲二(廣瀬智紀)は、相棒の藍彰二(青木玄徳)ら探偵事務所の仲間とともにペット探しや浮気調査などの探偵業務を日々こなしていた。ある日、事務所に父親を探してほしいという少年がやってきて、調査をスタートする。その過程で少年の父親失踪の背後にヤクザ組織が関与している可能性が浮上し、玲二と彰二は組と関わりがあると噂されるホストクラブへと潜入する。

2017年初春ロードショー

http://tantei.united-ent.com/
(c)2017「探偵」製作委員会