なんでもない日のお弁当

なんでもない日のお弁当



おいしいごはんを「おいしい」と思いながら、食べられること。

仕事終わりにくたくたで立ち尽くす夜も、今日という一日に何か意味を持たせたい時も、自分にご褒美をプレゼントしたい日も。当たり前の幸せをかみしめながら、明日をがんばるための「おいしいひとくち」を運びます。
食べることが大好きなほうじ茶さんによる、おいしくて元気が湧いてくる食のエッセイ。


 

シルバーウィークの五連休、なんの予定もなかった。さらに連日雨予報だった。

行きたい場所やしたいこともそれなりにあったけれど、どこに行くのにも何をするのにもお金がかかるし(お給料日前でちょっと厳しい)、家事も溜まっているし、締切が近い原稿もあったので、雨を理由に引きこもることにした。

雨の中、靴や靴下が濡れ、前髪のセットが落ち、傘をさしながらどこかへ出かけるのはあまり好きではないけれど、部屋の中で雨の音を聞きながら引きこもるのはとても好きだ。

アラームをセットせずに起きるまで眠れる贅沢を味わいながら、一日中パジャマで過ごし、YouTubeを観ながらダラダラする。心の底から楽しい。

お腹が減ったのでウーバーイーツを頼もうかとも思ったけれど、口座の残高と相談し断念した。雨の日にウーバーを頼むのは配達員の方に申し訳なく少し気が引けるけれど、「雨の日こそ配達料が高いのでじゃんじゃん頼んでほしい」と働いている友達が言っていたことを思い出した。〈モスバーガーの月見フォカッチャ、食べたかったな……〉と思いながらアプリをそっと閉じた。

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とはいえ、せっかくの連休なので、普段しないようなことを急にしてみたくなった。ウーバーを頼めなかった反動かもしれない……。
この思いつきの衝動みたいなものは定期的に訪れて、実行するまで消えないので、そうなったら徹底的に付き合ってあげることにしている。

今回は好きなものだけを詰めたお弁当を、自分のためだけに作ってみたくなった。

冷蔵庫の中には、会社で仲良しのおばさまからいただいた良い卵、豚肉と玉ねぎとにんじん、ちょっと傷んでいるトマト、冷凍ほうれん草の残り(粉々)、ハムとウィンナーがあった。

本当は赤いウィンナーやミニトマトなんかを彩りとして入れたかったけれど、なんせ雨なのでスーパーまで行くのも諦めた。

得意な卵焼きを最初に作り、自分のモチベを上げた。ウィンナーは焼きながら、一本味見をした。いつもと変わらないおいしさだった。

その後、ほうれん草とハムを炒め、醤油とバターで味をつけてソテーにした。細くスライスしたにんじんには麺つゆとごま油で味つけした。大きいにんじんは得意ではないけれど、細く切ると食べられる。むしろ好きになる。

メインはやっぱり肉にした。薄切りにした玉ねぎを豚バラで包み、片栗粉をまぶして焼き、醤油、みりん、酒、砂糖で甘しょっぱいタレを作って絡めた。

できたおかずたちを、ちょっと前にDAISOで買っておいたカップに詰め、色とりどりのピックを卵焼きに刺した。可愛い。
気持ちばかりにトマトを切って隙間を埋め、30%オフで買えたシャインマスカットも一粒添えた。この30%のおかげで、860円で立派なシャインマスカットを買えた。
DAISO、まいばすけっと、本当にありがとう……!

もう呆れるくらいアホなのだけれど、ごはんを炊くのを忘れていたので、おかずを詰め終わってから早炊きボタンを押した。25分後くらいに炊けた。良い感じのふりかけや梅干しがなかったので、海苔をパラパラとかけた。

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できたお弁当をテーブルに並べてみると〈結構良いじゃん!!〉と思える出来だった。Instagramのストーリーズに載せようか迷ったけれど、〈せっかくなら連載に書こう〜!〉と思った。

自分の好きなものを自分で選べる自由度の高さとか、普段は使わない可愛いピックの特別感とか、隙間なく詰められている満足感とか、容器の蓋を開けた時にごはんの匂いがフワーッとくる感じとか、そういうの全部ひっくるめてお弁当が好きなのだと思う。

Netflixでもう何度観たか分からないアニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』を観ながら、お弁当をもぐもぐと食べた。どれもおいしくできて良かった。

作るのは時間がかかるのに食べるのは一瞬だ。料理って儚い……。

また今度自分にお弁当を作ってあげようと思う!
晴れていたら広めの公園にでも行こうかな……。

*次回の更新は11月20日(金)を予定しています。

ほうじ茶

社会人X年目のOL。広告代理店に勤務する傍ら、XやInstagramで日々の思いを綴り、静かに隣にいてくれるような文章が幅広い層の支持を得る。ただ生きているだけで〈そんなことある?〉〈噓でしょ⁈〉みたいな出来事に遭遇することが多い。繊細だが大ざっぱなところもあり、部屋の片づけは大半の人が苦手なものだと思っている。狭くて汚い自分の家が一番安全で落ち着く。最近引っ越してキッチンのコンロが二口になった。生活を愛せるようになりたい。著書に『どこかでちょっとずつ傷ついてる やさしいみんなへ』(KADOKAWA)、『きっと今はハッピーエンドへの途中、』(すばる舎)、『月曜日が嫌いな私の好きなこと』(世界文化社)がある。

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