【INTERVIEW】中野裕太/台湾女子×日本男子の国際結婚! 映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』で日本人モギサンを熱演!

【INTERVIEW】中野裕太/台湾女子×日本男子の国際結婚! 映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』で日本人モギサンを熱演!


Facebookで出会った台湾人のリンちゃんと、日本人のモギサンが結ばれるまでを描いたラブストーリー『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』。Facebookで32万以上の「いいね!」を集めたこの実話を、俳優・中野裕太と台湾人女優・ジェン・マンシューが丁寧に紡ぐ。初めての台湾撮影で感じた思いとは? 中野裕太に話を聞いた。

撮影/中根佑子 文/池上愛

 

――映画のお話がある前から、モギサン夫妻のことはご存知でしたか?

「いえ、この話を頂いたあとにフォトブックを見させて頂いて。そしておふたりにあってお話させて頂きました」

――どんなことを話されたんですか?

「どういう風に出会ったの? とか、普段のふたりはどういう感じなの? とか基本的なことです。でも基本は、僕が喋るというよりも監督が質問している様子を横で聞いて、ふたりを観察していた感じです(笑)」

――実際にお会いしてどんな印象を持ちましたか?

「不思議とオーラを感じました。見ているだけで楽しくなってしまうような独特なオーラがあって。決して気取っている訳ではないんですが、ふたりが組み合わさったことで出来たオーラのような……。ふたりの出会いは必然的だなと思いましたし、SNSで支持される理由がわかるなと。初対面でしたがそういう雰囲気が漂っていました」

――ふたりを観察していた時に、モギサンはどういう人だなと感じました?

「モギサン自身はそんなに喋る方ではありませんでした。“こうしてくれ、ああしてくれ”というような意見もありませんでしたね。その点は、奥さんのリンちゃんのほうが“モギサンはこうやってよく髭いじる癖あるから、髭を生やしてくれ”というオーダーがあったり、リンちゃんから意見をもらうことのほうが多かったです。そういうコントラストなふたりの関係性が面白いなと」

――髭を生やす以外に、モギサンに近づけたことは?

「見た目でいうと、5キロぐらい増やして日焼けして健康的にするとか、あと天パにしてくれと言われてパーマをかけました。内面的なことでいうと、日本の男性が台湾の女性と知り合って恋に落ちるという“国際結婚って素敵だな”という部分を出したかった。なので、ふたりのドキュメンタリー性を追求する映画というよりは、ふたりの物語を、ちょっとしたおとぎ話にしたいなという思いがありました。夢があってファンタジックな体験が出来るのが映画のよさだと思うので、映画の中のモギサンは、敢えて奥手な男子を代表するような雰囲気を意識して、台湾の全力な女子を代表するようなリンちゃんをジェン・マンシューさんが演じることで、ふたりのファンタジックな関係性を描きました」

――役作りは意外とイメージしやすかったですか?

「そうですね。監督とも価値観が合っていたんです。細かい心情の動きとか目線だったりちょっとした仕草だったり。あとスタッフさんとかのチームワークがよかったのもあります。演じる上での環境が凄くよかったんです」

――谷内田監督とはじゃあ結構密に話された?

「そうですね。映画の撮影に入る前、台湾のホテルでディスカッションの時間を持ったりもしました。過去の僕の作品を見て意見を共有したのですが、ふたりの価値観を近づけるいい時間になりました。撮影はアドリブも多かったのですが、ここはこういう表情が欲しいとか、こういう心の変遷を表現して欲しいというような細かな指示も頂きました」

――監督は、以前役者をやられていたそうですが、その点で演技の考え方がリンクする部分があったのかもしれませんね。

「ラッキーでした。最初から同じ方向を向いていたということが」

――谷内田監督の演出は、現場でどういう指示がありましたか?

「基本的には自由です。任せて下さいました。ただ、ここぞっていう時の細かさは…本当に細かったです。例えば最後の交差点のシーンや、初めてふたりが出会うシーンは明確なビジョンがありました。“こういうものが欲しいんだ”という指示はありましたね。ただ、全体を通しては自由でした。カット割りで芝居を構成していくというよりは、まず自由に演技をしてみてという。それは気持ちよかったです」

――任せられるのは嬉しいものですか?

「結局動くのは僕らじゃないですか。台本に書いてあることを3次元にしてみせるのが僕らの仕事。そこを1回任せてくれたあとで、ディスカッションして下さるので、一緒にものを作ってる感じになるんです。監督の人柄もあると思うのですが、凄く信頼に置ける人なので、ついていこうと思わせてくれます。きっと、僕以外のみなさんも同じ気持ちなんじゃないかな」

――素晴らしいですね。

「今も定期的にご飯食べに行っていますし(笑)」

――そうなんですか!

「映画見に行ったりお茶したりしてね(笑)」

――ちなみに台湾での撮影は、現地スタッフの方だったのですか?

「そうです。台湾での撮影は、カメラマン、監督以外は基本的には台湾の方でした」

――日本とのギャップはありましたか。

「それがあまりなかったんですよね。プロフェッショナルの集まりということもありますが、台湾の国民性なのか、人と人の距離が近くて壁が薄かった。すぐに人間的で温かいチームワークが生まれるまでにそう時間はかからなかったんです。あと、モギサンと一緒に台湾旅行に出かける友人役の方々も、台湾在住の日本人俳優さんで。台湾の雰囲気のままで撮影出来たというメリットもありました」

――台湾で印象深かった撮影は何が思い浮かびますか?

「海です。物凄く綺麗なところだったのですが、波が高くて結構ビビっていました(笑)。他にも九份という有名な観光名所にも行ったんですけど、台北のそこら辺の街角とか路地裏で撮影してる時が一番しっくりきた感じがします。馴染みやすかったというのもありますし、リアルに土地の雰囲気が感じられたのが楽しかったです」

――台湾は初めてということでしたが、いかがでしたか?

「楽しかったです。本当に。この仕事の醍醐味でもありますしね。知らないところに行って。この間もポルトガルや中国で映画を撮ったりして、最近海外での仕事が続いています。知らないところに行って、言語、国民性、食べ物などに触れるって、やっぱエキサイティングです」

――中野さんは、知りたい欲求が強い方なんですね。

「そんなこともないです。僕自身は、自分が何かを見つけに積極的に行動にすると道に迷うタイプなんですよ(笑)。例えば、サーフボードを渡されて“波に乗ってこい”と言われて、一人で行くと、迷っていつの間にか山の中にいるみたいなタイプ。だから波を投げて欲しいんですよ。海に落とされて “来い、泳げ!”って言われたら全力で泳ぐ。自分で行くタイプではないんですよね」

――それはちょっと意外でした。

「普段は廃人です(笑)」

――オフの時が廃人?

「はい、何もしないで過ごしてます」

――全くそのイメージはありませんでした。

「自ら何かを…っていうのがないんですよね。でも、しいて上げるとすれば、オーケストラには興味があります。指揮者に凄く興味があって。動きとを見るのが楽しい。YouTubeとかで見ているんですけど、上手な指揮者は手の動きとか感情の動きがこう触れるようにわかるんですよね。これは芝居にも勉強になるなと。まぁ結局そっちに気持ちがいってしまうので、趣味とはまたちょっと違うのかもしれませんが」

――リンちゃんを演じたジェン・マンシューさんはどんな方でした?

「とても素直でかわいらしい人。そして自分をしっかり持ってるというか、独特な雰囲気を持ってるなと。仲良くなっていくうちに、少しずつ色んな面を知ることが出来て、飽きないなって思わせてくれる人でした」

――言葉の壁を感じることはあったのでしょうか?

「現地の言葉を喋れるに越したことはないですけれど、ちょっとした表情とかその空気感で気持ちが通じたり、仲良くなったりするものだと思います。人と距離が縮まるということは、日本人同士でも同じこと。海外だからといって、特別に考えることよりも、言葉じゃなくてフィーリングのほうが大事な気がします。ただ、挨拶だけは絶対憶えたほうがいいと思います。やっぱりその土地の言葉で挨拶すると、反応が全然違うんですよ」

――マンシューさんとのお芝居を通じて、ここが凄いなと思ったことはありますか?

「自分にはないものをリンちゃんから吸収して表現しようとしているのが、凄く伝わってきました。役どころ的に、僕はマンシューさんの演技を受けることが多かったので、余計に伝わってきて。そのエネルギーが凄いなと。あと、おならのシーンとかもそうなんですけど、日本語が訛っていてかわいらしいんですよね。かわいらしいやり取りが生まれたのも、マンシューさんの演技があってこそだなと思います」

――モギサンとリンちゃんを見ていると、このカップルはかわいいな、羨ましいなと感じました。

「その感想は嬉しいです。一番感じてほしい部分はそこなので。恋っていいなとか、旅行したいなとか、もしかしたら台湾に行ったらリンちゃんみたいな子に出会えるのかな、とか。そんな感想が何よりも嬉しいです」

――国境を越えた恋愛の楽しさってどこにあると思いますか?

「海外に行って思うのは、文化が違ったとしても相手にするのは人間なんだということ。結局、みんな一緒なんですよね。笑ったり、嫉妬したりすることって。海外の人と日本の人で考え方に多少差異はあるし、食べてるものがちょっと違ったりはするけど、本質的なものは何も変わらない。そう考えると、国際結婚って凄い! というのとも違うというか。こんな恋愛もあるんだよ、ということにすぎないなと。それは映画を観れば伝わると思います」


・プロフィール
なかの・ゆうた

1985年10月9日生まれ。演技を、今井純氏に師事。2013年にGAS LAWを結成。
映画「遠くでずっとそばにいる」などに出演。粗野で繊細。聡明で阿呆。太陽と一緒になった海。蕾。非常に矛盾しているが、それでいて素直な人。


 ・ 作品紹介

映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』
監督/谷内田彰久
原作/モギサン&モギ奥さん
配給/朝日新聞社、アティカス
5月27日新宿シネマカリテ、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場他全国順次公開
http://mama-dame.com/

(C)“Mamadame” production committee