【INTERVIEW】映画、舞台、ドラマで活躍中の若手俳優・佐伯大地に、現在出演中のドラマ『愛してたって、秘密はある。』と、公開が控える映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』2作品について訊いた。
現在出演中のドラマ『愛してたって、秘密はある。』では、明るい刑事役を演じ、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』では、主人公の恋のライバル役を演じている佐伯大地。2010年にデビューして以来、活躍の幅を広げている彼に、それぞれの作品の面白さと、役者としての自身について語ってもらった。
撮影/刈谷恵利加 文/編集部
―ドラマ『愛してたって、秘密はある。』は、シリアスなドラマですけど、佐伯さんが演じられている刑事・井上大吾のキャラクターは結構明るい性格ですよね。実際現場ではどんな雰囲気なのでしょうか?
「撮影が始まる前に監督から、シリアスなドラマなので刑事役のふたりのコンビには、コンビとしていわゆる箸休め的なシーンになってもらえたら嬉しいという話をして頂いたんです。なので、ちょっと面白くもあり、ちょっとほっとするシーンになるようにという思いでやっています」
―では、あんまり作品の影響を受けて暗くなるという感じではないんですね。
「そうですね、僕の場合はそんなにほかのシーンの重たさとか、ほかのキャラクター達の葛藤っていうものにあんまり関わらないというか。題名にある、誰にでも秘密があるみたいなことでいうと、僕の演じる井上刑事は唯一、秘密はあんまりないような…」
―現場では、一ノ瀬刑事(矢柴俊博)と一緒のシーンが一番多いのでしょうか?
「そうですね。ほとんど、ノセさん、ノセさんって言いながら一ノ瀬刑事にくっついていますね」
―ドラマこれから事件というか確信に迫っていく感じになっていきますよね。
「そうですね。一ノ瀬刑事はずっと確信をついているんですけど、僕は毎回毎回的外れなことを言って、そこかよ! みたいなことで突っ込んで頂いたりと、常に刑事というものに憧れ、捜査というものに憧れ、頑張るんだけれどもちょっとずれてるねっていう(笑)、かわいらしいキャラクターになれればなっていう感じですね」
―物語の結末はご存知なのでしょうか?
「いや、知らないんです。少しずつ明らかになっているので僕もまだわからないんです」
―演じているみなさんもわからない?
「そうなんです。だからみんなメイクをして頂いている時に、『誰が犯人? あの人?』『お母さんが怪しすぎでしょ?』みたいな話をずっとしてますね。結構みんながみんな捜査してます」
―予想してるんですね(笑)、読めないですね。
「結構深読みしてる方も多いんですよ。最初の方から風見先生(鈴木浩介)が怪しいと思っている人もいたりとか」
―佐伯さん的には誰が一番怪しいんですか?
「どうなんですかね。でも僕も最初はお母さんが何かやっているんじゃないかと怪しんでいる派だったんですけど、でもここまでお母さんが嫌がらせをやったら息子のことを憎んでる感じになるのでお母さんではないんだろうなって思い始めてます。でも、あのメインビジュアルにね、6人。あの中にいる感じはしますよね」
―みんな怪しいですもんね。そこらへんが面白いですね。まだ結末が分からず、疑いながら。
「でもドラマの内容としては福士蒼汰くんがずーっと追い詰められてる役で、ずーっとピンチなんですよね」
―意外と若い共演者の方が多いドラマですよね。お話とかされますか?
「そうですね。特に蒼汰くんとは、蒼汰くんがデビューしたドラマに僕も同じ生徒役で出演していて、その時以来なので、7年ぶりぐらいですね」
―だいぶ久しぶりですね。
「当時からだいぶ経っているので、僕のことは覚えていないだろうなって思って会ったら、ちゃんと覚えていてくれていて。その当時のまんまなんですよ、やっぱり。だから凄いな~と思いました。楽しく当時の話とかしましたね」
―当時の印象はどうだったのでしょう?
「当時は蒼汰くんは高校生で、僕は大学生でしたね。まだ、お互い事務所に入ったばかりで、右も左もわからないみたいな感じでした。でも、この数年でとても活躍されているから凄いですよね」
―そうですよね。この数年で変わりますからね。ある意味そういう思い出もある再共演ですね。では、結末的にはまだまだわからないっていう状況なので、ご自身の演じるキャラクターとしての今後の見どころを教えてください。
「最終話までにちょっとは成長して、捜査にしっかりと加われたらなというのはちょっと期待してます。なにかひとつくらい一ノ瀬刑事に、僕が言った一言でピンときて、こっちか! みたいな。そんなことがあったらいいなって思ってます。あとは、最後までずっとちゃんと突っ込まれるような存在でいられればと」
―ドラマの隅々まで楽しんでもらいたいですよね。では、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』のお話もお伺いしたいんですが。映画を拝見して思ったのが意外と普通の映画でも作り込みというか、映像として吹き出しが入ったりとか効果音とかがなんか今風というか、新しいことしてるなっていう印象があったんですけど、完成はご覧になりました?
「見せていただきました。僕もああいう仕上がりになってるというのは、全然想像していなかったんです。自分が出ている作品は、完成を見るまではどういう風になっているんだろうと不安な部分もあるので、ホッとした気持ちもありましたし、もの凄くかわいらしく、映像として楽しめるような仕上がりになってたのも嬉しかったですね単純に」
―監督の力で、撮影の時は想像出来なかった仕上がりに作品が出来上がるというのは、うれしいですよね。
「そうですね。完全に僕ら役者っていう素材を、監督がいい感じに料理して下さって、役者一人ひとりが何倍もよくなっている印象を受けました」
―では、最後こうなるんだよ、みたいなことは、監督はあまりおっしゃっていなかったのでしょうか?
「いやなかったですね。どういうテイストなのかっていう話はあんまり聞いていなかったです。でもラブコメディーなんだけどさわやかな感じにはしたいっていうのはおっしゃっていました。あと僕が演じた鈴木仁英とか、エリザベス(瑛茉ジャスミン)の役は、主人公たちに対して鋭く切り込んでかなきゃいけない役柄というか、飛び道具みたいな存在だと思うんですよね。なので、仁英は普通だったらちょっとあり得ないのかもしれないことをちょっと盛り込んでいきたいと、監督はおっしゃっていました」
―確かにキャラ濃かったですよね(笑)。演じてみていかがでしたか?
「壁ドンもやりましたが、意外と恥ずかしくないんだなっていう感じですかね(笑)。もっと恥ずかしいものなのかなって思ってましたけど、意外とカメラがあるとなんかこういう感じになるんだなと」
―ミュージカル『刀剣乱舞』でも共演してる黒羽麻璃央さんが、恋のライバル・菖蒲瞬役を演じていますが、共演してみてどうでしたか?
「アヤメくんが大学生で、仁英が大学院生で、実際の僕らの年齢の差と似てるんですよね。だから、仁英の大人の余裕、アヤメくんの彼氏の意地みたいな表現があったんですけど、それがまさにそうで、たぶん、お互いあんまり意識していないんですよね。アヤメくんはアヤメくんで意識したくないからしていないんだろうし、僕は僕で別に眼中にないみたいなキャラクターだったので、あんまり恋のライバルだとかっていうよりも、“なんだこのガキは”ぐらいに思ってるようにしましたね」
―『愛してたって、秘密はある。』と、この役柄と全く違う役柄だなあっていう印象がありますね。その毎回違う役柄をやりながら、ご自身で演じてみてしっくりくるなあとか考えますか?
「そうですね、これまで演じてきた役は、『愛してたって、~』のような天然というか、憎めないような感じのキャラクターのほうが多いと思います。なので、仁英は久しぶりにそういう要素がなくて、ちゃんとかっこいい役というかクールな役だったので、とても楽しかったですね」
―では、佐伯さんのことを少しさかのぼって聞いていただきたいと思います。デビューのきっかけはオーディションだったそうですね?
「そうですね。大学生の時にミスターコンテストがあり、それに芸能事務所の方が見に来るというのを聞いて、それだったら出ようと思い、出ました。その後、事務所のオーディションを受けたのですが、グランプリとか賞は取れなかったんです。でも、そこで今の事務所の方に一緒にやってみない?と声をかけていただきました」
―元々昔から芸能のお仕事に興味があったんですか?
「はい、大学の学部も映画を撮ったり、演じることを学ぶ学部でした。ずっと僕は映画館が好きで、映画に出たいなっていう想いがあったので、劇団に入って演技を学ぼうかなと思っていた時に、先輩から『お前役者になりたいんだったら事務所入るのが普通じゃない?』って言われ、その矢先にオーディションがあったので、これはもうやるしかないなっていう感じでしたね」
―凄いですね。タイミングがよくいきましたね。
「そうなんですよね。当時はもう何不自由なくスタートしたと思いました。でも、僕自身はコンテストみたいなものが苦手なんです。恥ずかしいですし…」
―あんまり得意ではないんですかね?
「得意ではないですし、僕、目立ちたがり屋にみられるんですけど実は目立ちたくないんですよ、あんまり。だめなんですけどね、この業界にいて目立ちたくないとか言ってたら。でも、コンテストの時は、芸能事務所の方が来ていると聞いて、決意しましたね」
―受ける時、自信はありましたか?
「自信はありましたね。でも、グランプリが取れなかったので、めちゃくちゃ泣きました(笑)。それで、僕がしくしく泣いていたら今の事務所の方に声をかけて頂いて、その悔しがってる顔がよかったみたいなことを言われたんですけど、僕はその時は心が砕けてるから、もうなんにも耳に入ってこなくて(笑)」
―ダメージがすごいですね。
「初めてあんなに泣いたなっていうくらい泣きました。でも今となっては、その経験がなければ今がないので、よかったなと思っています」
―もともとその役者やりたいというところで事務所にも入られて最初に出演した作品の時とかの記憶あります?
「あります、あります。初めてレギュラー出演させていただいた連続ドラマが「美咲ナンバーワン!!」で、それこそ福士蒼汰くんも一緒だった生徒役ですね」
―当時はどんな気持ちでしたか?
「まさに芸能界って感じだなって(笑)。あとは学園ドラマだったの同世代の役者さんも多い現場で、前へ前へとがんばるタイプから控えめなタイプなど色々な役者さんがいる現場でした。でも、僕はその中でもあまり目立ちたくないというか後ろのほうに下がってしまっていましたね(笑)。ただ、別にそんなにガツガツいかなくても目立つ人は目立つから、画面に映ってるかどうかってことを気にするより自分のやるべきことに集中することが大切なんじゃない? って言う先輩もいたりしました。最初に学園ものの現場を経験出来たのはいい勉強になりました。」
―結構そのあともドラマ映画とか舞台もいろいろ出てらっしゃいますけど、特に自分がこの作品で価値観変わったとか、いい経験になったと感じた作品はありますか?
「本当にありがたいことにどの現場も、一つひとつ全部そういう感じなんですよね。例えば『陽はまた昇る』というドラマに出た時も、警察学校のお話でしたが学園ものとはまた違う、上の世代の役者さんとの共演で、ちゃんといいお芝居をしたいという気持ちが強くなったと思います。そして何より、佐藤浩一さんのお話がたくさん聞けたということはもの凄く財産になりました。ドラマの厳しさというか過酷さというものを凄く意識した現場でもありました」
―現場を経験して、学んでいるんですね。
「そうですね、演じるということは、やりようはいくらでもあるはずなんですが難しいですよね。台本の読み方とか、よく言うけれどそれはどれだけ準備をするかってことだと思うんです。一言しかないセリフでも、うしろにいるだけでも、どういう状況でどういう風に思ってるかとか、セリフの前後にはどういうことを言ってるのかとか、そういうことをちゃんと考えられるようになったのは本当に最近なんです。でもそれは舞台の影響が大きいです。舞台も本当にキャパ50人くらいの小劇場とも言えないような小さな舞台から経験し、100人200人と徐々に大きな規模の舞台を経験できたということは本当に大きいですね。『刀剣乱舞』に出させて頂いてからは責任感というかそういうことを学びました」
―そうですね、とても人気の作品ですよね。
「たくさんの方に期待されている作品に出させて頂いて、それまでとはまた違った責任感のようなものが生まれたと思います」
―映像と舞台で得るものって質がちがうというか、感じることが違うんですね。
「そうですね。舞台は1ヶ月くらいしっかり稽古があるっていうのは大きいですね。でも舞台も映像もですが、その作品を良くしようと人生をかけて必死にがんばっている色々な方が携わっていて、その現場で多くの人に出会えるから役者さんってこう魅力的になっていくんだろうなって思いますね」
―本当に舞台もドラマも映画もそれぞれ楽しんで出来ているっていう感じですか?
「はい、悩みつつ(笑)。特にドラマは…」
―やはり何回経験してもそれは悩みは多いですか?
「そうですね。経験値が少ないっていのもあるのかもしれないですけど、やっぱりまだ慣れていないので。慣れてしまったら、楽しめるのかというとそれは違うのかもしれないですが、早く楽しめるようになりたいと思っています。そのほうが絶対いいと思うので」
―今後の目標としてはどんなことを今一番に考えていますか?
「最近思うのは、佐伯大地という役者はこのぐらいやってくれるだろうみたいに、思われたいって思います。今まではやっぱりどのくらい出来るんだろう? と思って呼ばれるスタンスが多かったと思いますし、自分の手札も実力もないっていうのは自覚していました。でも、もうそろそろ自分の持っているものに、ちゃんと自信をもって取り組みたいって思います。27歳になりましたが、この1年はそういうことを育てて、自分に自信を持てるように、こういうことを僕は出来るぞと、胸張って言えるようになりたいと思います」
●プロフィール
佐伯大地/さえき・だいち
1990年7月19日生まれ、東京都出身。2010年から俳優として、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。主な出演作は、ドラマ『美咲ナンバーワン!!』『陽はまた昇る』、映画『少女椿』、舞台「劇団めばち娘旗揚げ公演『ツチノコの嫁入り』」、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、『GOKÛ』『クジラの子らは砂上に歌う』『親愛ならざる人へ』『ALL OUT!! THE STAGE』などがある。また、『街活ABC』(日本テレビ)、インターネット番組『佐伯大地のダイチ呑み』(ニコニコ動画)が放送中。映画『Sea Opening』が2018年公開予定。
●作品紹介
ドラマ『愛してたって、秘密はある』
企画・原案/秋元 康
演出/河合勇人・佐久間紀佳・山田信義
脚本/桑村さや香・松本美弥子
出演/福士蒼汰 川口春奈 鈴木浩介 賀来賢人 白洲迅 柄本時生 吉川愛 矢柴俊博 佐伯大地・山本未來 堀部圭亮・岡江久美子 遠藤憲一 鈴木保奈美
毎週日曜夜10時30分から日テレ系にて放送中
http://www.ntv.co.jp/aishitetatte/
奥森黎(福士蒼汰)は、中学生のころにDVから母(鈴木保奈美)を守るため、暴力を父を殺害した過去があった。その後、父親は失踪扱いとなり母と平穏に暮らしてきたが、黎の結婚が決まった時、その秘密を知る何者かから不気味なメッセージが送られてくるようになる。
映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』
監督/芝﨑弘記
原作/町麻衣
脚本/阿相クミコ
出演/黒羽麻璃央 足立梨花 佐伯大地 瑛茉ジャスミン 尾関陸 永田崇人 唯月ふうか GENKING / 酒井敏也 ・ 鶴見辰吾
配給/ホリプロ、スターキャット
10月7日(土)より、シネリーブル池袋/ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場ほか全国ロードショー
http://www.ayamekun-movie.com/
Ⓒ2017 町麻衣/祥伝社/映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』製作委員会
大学で恐竜・鳥の研究に没頭する椿(足立梨花)の前に、ある日、菖蒲瞬(黒羽麻璃央)が現れる。イギリスからやってきたというひとつ下のアヤメは、椿に一目惚れし彼女に猛アタックする。だが、そこへアヤメに思いを寄せるエリザベス(瑛茉ジャスミン)や、同じ研究室のセンパイである鈴木仁英(佐伯大地)が現れ、波乱の展開に。