日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』に出演中の佐伯大地。肉体改造にも挑み、プロのラグビー選手達と撮影に臨む現場とは?
近年、舞台だけでなく映画、ドラマなどでも活躍が目覚ましい佐伯大地。現在放送中の日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』では、ラグビーの強豪チームのエース・富野賢作役に挑戦中だ。本物のラグビー選手と遜色ない体型、動きを求められる現場で、佐伯はいかに闘っているのか。
撮影/荒木勇人 スタイリスト/徳永貴士 ヘアメイク/仲田須加 文/渡邊美樹
――『ノーサイド・ゲーム』は、本当にプロのラグビー選手と一緒に撮影をされているんですね。
「プロスポーツ選手の役ということで、撮影が始まる3カ月くらい前から、ラグビー練習が始まりました。演出の方から、体を大きくして下さいというオーダーがあって。役作りっていう言葉はあまり使いたくないけど、役に対してそういった身体的変化というか、具体的に大きな要求をされたっていうことは、今まで一番大きい要求でした。最初にオーディションを受ける段階で、大きな体を求められていたので、どうしようかっていう感じで始まって。本格的にトレーニングをしないといけない、間に合うかどうかわからないけど、やれることはやろうということで挑戦しました。もともと、トレーニングをしてましたけど、メニューをまるっきり換えて、食事も体を大きくすることを意識した内容にしました。今回のドラマの見どころのひとつになっているのが、ラグビーシーンです。プロの選手の方々が出演して、役者がラグビーをやるんじゃなくて、選手の方が芝居をするっていうのがひとつの見どころだと思います。本当の日本代表で、ラグビー界で有名な方がアストロズに何人もいたり、全員がラグビー経験者で、その中に交じってラグビーをすることになったので、最初は焦りが大きかったです。やばいなと思いました」
――オーディションの時から、体型を変えてほしいというのを言われていたんですね。
「はい、ラグビー選手役のオーディションに参加したんです。具体的な役は、後で決まりました。オーディションでも、本当のラグビー選手の方も沢山いて、一緒に台本を読んで、そういうことから始まりました。今までに経験のないスタートでしたね。でも、僕は、このドラマに出ることが出来て本当によかったです。それは、演じるということよりも、お仕事に対しての向き合い方を学ぶことが出来たというか。役に対して、こういう風に違うアプローチをしていくということは、次のステップに繋がるんだと実感出来たから。これからの仕事でもそういう準備の仕方が活かせるということに気づかせてもらえたっていうのが一番自分の中で大きな変化になりました」
――全然アプローチが違いますもんね。体力づくりから、共演者の方とか。
「やっぱり、細い人が中に交じっていても絵にならないし、本物のラグビー選手が演じているから、みなさん体が本当に大きいんです。僕は、まだ身長もいかせるのでよかったけど、でもヒョロっとしてたら、エースって言われても説得力が無い。そういう意味で1話を見て、周りの人達と遜色はあまりなかったのかなと思います。今も、練習に交じっていると、みんなにでかくなったねって言われるようになったので、ひとつクリアしたなという感じです」
――ラグビーは、人がぶつかるハードなスポーツだという印象がありますが、実際にやってみて怖さはありますか?
「僕は、高校でアメフトをやっていましたけど、こういうコンタクトをやっているスポーツは、一度、その恐怖を乗り越えないといけないんですよ。ぶつかるっていう接触プレイは、怖いんですよ。車でいうと、例えば10キロの速度ででもぶつかると人はかなり吹っ飛ぶじゃないですか、重いものがぶつかっているから。人間の場合は、もっと速く走っていて、ピンポイントでぶつかるともの凄い衝撃が思った以上にドーンってなるんですよ。本当に人とぶつかったこと無いじゃないですか。街なかで人と人がぶつかっても、“おっ”てなりますよね? そんなに速くなくても、本気で走ってぶつかるとめっちゃ吹っ飛ぶんですよ。だから、怖いんですけど。僕は、アメフト部だったので、そこの恐怖をクリアしているのは大きかったですし、アメフトをやっていてよかったなって思います。それくらい全く違うスポーツですからね」
――役者ではない人達とのコミュニケーションは?
「ラグビー選手の方って本当に、『ノーサイド・ゲーム』というだけあって、その言葉通りの人柄なんですよね。ほかのスポーツにはない感じというか。それはその中に入ってみなければわからなかったです。ラグビーをやっていたらみんな友達みたいな。敵味方がないんですよね。ラグビーやっていたら、どこの大学でやってたの? とか、盛り上がって、すぐ仲良くなる。そういうのって素敵だなって思いました。ラグビーっていうスポーツが、注目されることで、そういうフェアプレー精神のようなものも伝わるといいなと思います」
――大泉洋さん演じる君嶋隼人が、人と人の絆を感じていくのは、ラグビーというスポーツだからこそだなと感じました。ほかのスポーツだったら違っていますよね。
「そうですね。ラグビーチームを変えていくっていうだけのドラマではなく、ラグビーの世界ではノーサイドという精神、敵味方なく、スポーツを楽しんで、でも戦うっていうことをしているけど、会社ではそうはいかない。今たくさんビジネスドラマがある中で、ラグビーが加わることで、一味違うものになっているんじゃないかな? と思います」
――どんな世代の人でも楽しめる、過剰移入しやすい物語になっていますよね。
「僕、準備段階からアストロズのメンバーとずっと練習して来たんです。僕はラグビーを習って、アストロズのメンバーは、お芝居経験のない方が多かったので、みんなで台本を読んだりして、苦楽をともにしてきたんです。アストロズのメンバーとは仲がよくて、僕は、敵のチームの人間なんですけど(笑)。ただ、みんなは最初、僕を味方だと思っていたんですよね(笑)。ある日から、僕は敵役だって言うのが確定してみんなとお別れして…。撮影に入ったら会う機会も減って。でも、久しぶりに会ったら、『おー! 大地!』って仲良くして下さって、みんな温かくて優しいんですよ。僕もオンエアを見て、僕が出ていないアストロズのシーンを見るとやっぱりその温かさを感じます。優しいドラマだなって」
――キャラクターが魅力的で、際立っているから見やすいですよね。これから佐伯さんの出演シーンが増えていくと思うので、楽しみですね。では、『サウナ-マン~汗か涙かわからない~』についてもうかがいます。撮影はもう終えたんでしょうか?
「はい、楽しかったです」
――本当のサウナで撮ったんですか?
「セットで撮影しました。本当のサウナで撮ったらきっと熱さで死んじゃうと思う(笑)」
――サウナの中の場面なので、みなさん裸で撮影大変じゃなかったですか?
「あんなに裸でいること無いんじゃない?って、みなさん言っていましたね(笑)。ずーっと朝から晩までタオル1枚(笑)。かなり疲れますね、ずっと裸でいるのって。自宅で裸でいても疲れると思いますよ」
――佐伯さんは、サウナはお好きですか?
「僕、めちゃくちゃ好きなですよ」
――俳優さんでサウナ、温泉好きな方多いですよね。
「多分、短い休みでいける場所が限られるからでしょうね。リラクゼーションが無いから」
――短時間時でギュッと癒やされますよね。
「ちなみに、僕は弟とよく行きます。弟はすぐに付き合ってくれるので。身内だと誘いやすいですよね。弟は、『焼き肉おごってくれるならいいよ』とか、言ってきますけど、かわいい弟なんですよ。一緒に筋トレもして、そのあとサウナにも行ったりするので、とても健康的じゃないですか。お気に入りのところがあって、30人くらい入れるサウナで暗いんです。そして大きいテレビもついていて。時間ごとに水蒸気がでて自動ロウリュウがあるんです。水風呂も大きいし、割と空いているんです」
――それはいいですね。このドラマでは、こだわりのサウナの話が描かれているので、佐伯さんも共感するのかな? と、思ったんですが、どうですか?
「そうですね、基本的なところはわかります。水風呂の温度が高いとテンションが下がるとか。水風呂はやっぱり、夜になってくると人がバンバン入ってくるので温度が上がるんですよ。混んでいる日も水風呂がぬるいんですよね。人が入るから20度くらいになるんです。20度だと、やっぱりぬるいって感じます。“うわー! 冷たい―!”ってならないんです。普通に入れちゃうんです。だから、水風呂は17度以下じゃないとダメって言うのは、本当にそうで、僕近所のサウナによく行くんですけど、オープンの時間に行くと、17度なんですよ」
――一番だからですね。
「本当に“うわー!”ってなるから、凄くいい。だから、サウナに行く人は水風呂の温度の話はわかると思います」
――サウナファンが沢山いるから、ドラマが出来るんですね。
「でも、サウナを知らなくても、このドラマは面白く見れると思いますよ」
――ゆるく、コメディとして見れる題材ですよね。今回の佐伯さんの役柄は、理論的にサウナを語る地掘というキャラクターですが。
「ネチネチと理屈っぽい性格がよく現れている名前ですよね(笑)」
――佐伯さんご自身の性格はどうですか?
「僕も、細かいと思います。意外とディティールにこだわる。何って言ったらいいのか…。店員さんとかの振る舞い方とか、ちょっとした心遣いみたいなことが気になる(笑)」
――でも、大雑把な部分もあったりしますよね?
「大雑把でもありますね。自分の興味の無いところには、大雑把で人から注意されることもあるし…未熟ですね。バランスが悪いんですよね。いいところと悪いところの差があるんですよ」
――凄い、自己分析してますね。
「秀でているところ、ダメなところがそんなに差がなくて平均点が高い人のほうが、器用に生きれているんじゃないかって思うんですよ。僕の場合は、色んな項目の合計を足して割ったら、それなりの平均点になるとは思うんですけど、いいところとダメなところの差が凄いんです。まだまだ本当に未熟なんです」
――でも、今日の撮影でカメラマンの荒木さんもおっしゃっていましたけど、写真集の撮影から1年も経っていない間に、佐伯さんの表情が変わっていて驚きました。確実に成長しているのもまた事実ですよ。
「ありがとうございます。そうですね、ちょっとずつ1から2、3って、成長して苦手な部分をなくしていきたいですね」
衣裳協力:シャツ¥32,000/ISSEY MIYAKE MEN(ISSEY MIYAKE INC. 03-5454-1705)、その他 スタイリスト私物
●プロフィール
佐伯大地/さえき・だいち
1990年7月19日生まれ、東京都出身。2010年から俳優として、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。主な出演作は、ドラマ『愛してたって、秘密はある。』『崖っぷちホテル!』、映画『少女椿』『アヤメくんののんびり肉食日誌』『女の機嫌の直し方』、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズなどがある。現在、日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(TBS)に出演中。ドラマ『サウナーマン ~汗か涙かわからない~』(ABCテレビ)が8/25(日)深夜1時57分~放送。ファースト写真集『ROAR』(小社刊)が発売中。また、9/23にヴィレッジヴァンガードルミネエスト新宿店にて、イベント開催が決定。詳細はヴィレッジヴァンガードHPにて。(https://www.village-v.co.jp/news/event/4807)
佐伯大地写真集
『ROAR』
発売中
撮影/荒木勇人
小社刊