【INTERVIEW】映画『一礼してキス』でヒロインの相手役・三神曜太を演じる中尾暢樹にインタビュー!

【INTERVIEW】映画『一礼してキス』でヒロインの相手役・三神曜太を演じる中尾暢樹にインタビュー!


昨年、『動物戦隊ジュウオウジャー』で主演を務め、俳優としての存在感を露わにした中尾暢樹。そんな彼が次に演じる作品は、人気少女マンガ原作の映画『一礼して、キス』。初めての映画出演でヒロインの相手役を演じることになった中尾は、どう作品に臨んだのか?

撮影/中根佑子 文/渡邊美樹


――今作は、少女マンガが原作ですが、原作を読まれた時は、どういう印象でしたか?

「原作を読む前は、三神曜太はキラキラモテモテ王子様みたいな感じかな? と思っていたんですが、読んでみたらそういうのは一切なくて、人間らしいなと思いました。モテてはいるんですけど、そんなキラキラではないし、なんなら人付き合い苦手なんじゃないかっていう役だったので、だから凄く人間味のある役でよかったなって思っていました」

――では、演じるにあたってそんなに抵抗はなかったんですか?

「はい、ありませんでした。結構、突っ切っているところもあったんですけど、偏愛? ちょっと偏っているようなところが。でも、そういう部分も一貫してマンガ読んでみると納得出来ましたし、筋が通ってて、役に入りやすかったですね」

――今回、岸本杏役の池田エライザさんとW主演を務めるに当たって、作品に入られる前に緊張などはありましたか?

「弓道が登場する作品だったので、クランクインする前に3カ月程、役作りで弓道を習いに行ってたんです。その間にエライザちゃんも同じ道場に来て、監督、助監の人とか結構色んな方が来てくれたので、現場が始まる前から色んな方と仲良くなれて、インの日から結構穏やかな雰囲気で始めることが出来ました」

――いきなり初めましてだとドキドキしますよね。弓道は、経験してみていかがでしたか?

「“深いな”と思いました。最初は、弓を引く以前の話で所作からだったんです。弓をどうやって構えるとか、どうやって矢をつがえるかから、どんどん進めていくうちに“この矢当たるな”っていう感覚があるんですね。そういうところが心と体が同期してて、そこが精神的なスポーツって言われる由来なのかなって感じました。精神が統一してないと、矢がぶれるっていうのは、ただの技術じゃないなって思って。呼吸に合わせて全てがぴったりはまると、体と心が合わさって矢が真っ直ぐ飛ぶっていう。深いなって思いました」

――弓道をやるようになってから、変わったことありますか?

「呼吸ですね。一歩歩くごとに吸って吐くようにして呼吸と動作を全部同期させるんですよ。呼吸が合ってないと体も重い通りに動かなくて、なるほどなって。自分のペースにあった動きが出来るので、体が思うように動かせるっていう。凄いなって思いましたね」

――役を演じながら、弓道の所作もやらなくてはいけないと思うんですが、その時のご自身の精神状態はどうなんでしょうか? 両方に意識を置かなくてはいけないのでしょうか?

「本番が始まったら三神なので三神の気持ちでやってます。そこはなんかごちゃごちゃにはならなかったですね。自然体になれました。逆に変なこと考えずに自分のペースで出来たので、よかったです」

――弓道の所作で映像にもでてますが、横顔が凄く綺麗に映ってるなというのが印象的でした。そういう所作、一つひとつ気にされてましたか?

「そうですね。弓道の所作そのものが理にかなってるから綺麗に見えるんだと思います」

――無駄がないですよね、全てに。弓道場の静かな感じとかも独特でした。

「不思議な雰囲気があるんですよね、弓道場には。監督から、弓道場のシーンはキラーショットで! って言ってました(笑)」

――キラーショット(笑)そうですね。見どころでもありますよね。ご自身でご覧になって印象的だったシーンはありますか?

「由木(松尾太陽)とのシーンとか、杏ちゃんと三神の時の温度とか、三神の温度が由木と合うことによってちょっとほぐれたり、そういうところで今までの関係性とかを見せれたらいいなと思っていたんです。映画を観た時に、それが出来てたのでよかったと思いました。あと、結構色んな人から生々しかったねって言われたので(笑)」

――それはね、思いました。なんかドキドキしました。

「凄い等身大で、変に綺麗じゃなくて色っぽいというか」

――躊躇してない感じがありましたね。

「そうです、生々しいっていうのが凄い身近に感じる部分かなって思って」

――演じている時は、どう思いながら演じていたんですか? 

「集中していましたね。自然に思った通りやってました。僕が感じたようにやってたので、そう思うと、僕の素というか、本質的なものを覗かれた感じですね(笑)。でも、役者って自分の人生を切り売りする仕事だと思っているので、そこは、まぁ、よしって感じです。僕としては」

――ちゃんと役としてのシーンを演じられたということですね。

「はい。僕は満足ですね」

――監督はこれまでやっぱり恋愛の作品とか多くやられてますけど、なにか演出で言われたことや、印象に残っていることはありますか?

「監督が凄く優しい方で役者側の目線を持っている方なんです。役者に寄り添ってくれる方で、もう今日クラインクインの役者がいますってなるとその子ことを心配するんです。喋りかけたり、そういうところが凄く素敵で。ずっとカメラ横にいて役者をずっと生でみてくれるんですよ。映像越しじゃなくて。だから直接言って下さるし、穏やかなんですよね。それがやっぱり現場の雰囲気を決めてて。監督がエライザちゃんとはもともと知り合いだったみたいで、だから、中尾をどうにかしたいって思って下さったみたいで。『エライザのことは構わなかった、俺は!』みたいな感じの人で(笑)。それはもうエライザちゃんも知ってるからこそで、素敵だなと思いました」

――池田エライザさんと、好きだけど離れるみたいなちょっと複雑な感情を演じられていますけど、一度現場ではどういう感じだったんですか?

「男が多い現場だったので、エライザちゃんの立ち位置が凄い面白くて。結構負けずにぐいぐいと共演者に話しかけてましたね。主演としてみんなをフォローしないとみたいなそういう考えは凄く持っていて。尊敬出来るなぁって思いました」

――接近するシーンとか、逆にちょっと離れなきゃいけないシーンの時、現場の雰囲気は影響されるのかなと思いましたが、基本的には和気あいあいという感じだったのでしょうか?

「いえ、そういう空気を凄く考えてくれる監督なので、『今はそんなにふざけないで撮ろう』って、その都度雰囲気は違いました」

――そうなると役者側的にはどうでした?

「凄くやりやすかったですね。集中してみんな周りも真面目にやってくれるし」

――同世代の男性の共演者も多い作品ですが、仲良くなったりしましたか?

「凄く仲良くなりました! 男が集まったら結局アホみたいなことばっかりして仲良くなるんですけど。いい感じで距離感も保ってるし、仕事に対する姿勢も凄い素敵な人ばっかりだったので。お互いがお互いを尊敬してて、凄いいい距離感で仲良くなってきたなっていう感じですね」

――今回の作品は、三神を中心にして人間関係が描かれていると思います。色んな相手に対する表情みたいなものは、やはりシーンごとに意識的に変化を付けたのでしょうか?

「そうですね。その人に対する雰囲気みたいな、目つきとかって凄い変わってきたので。結構寄りの描写も多いので、顔の表情で作るっていうのが多くて、そこは気をつけました」

――三神の中には暗さを抱えている部分がありますよね。そういう部分は、ご自身でどう解釈してどう演じようとかって思いました?

「根本には闇があるので楽しくてもなにか隠してるところがある、というかちょっと何考えてるんだろうみたいなところがあるんじゃないかなと思いました」

――中尾さんご自身はそういう不思議めいてるとか、人に対して本音を出さないとか隠すみたいな部分とか、共感できるとこありました?

「僕、案外お喋りなんですよ。初対面の人がいても話かけちゃうし、なんならみんなでご飯とか誘うタイプなので、全然違いますね。根本にある嫉妬とかそういうのは凄い共感出来るので、三神は正直者だなって思います。不器用だなって」

――そういうキャラクターに振り回されている彼女の姿みたいなものもひとつ見どころですね。

「そうですね杏ちゃんは普通の女子高生だったんですけど三神に出会うことによって人生が変わるというか、杏の本心が出てくるっていう。杏って結構芯がしっかりしてて、意外と三神に振り回されるんですけど自分を失なわないんですよね」

――そうですよね。むしろ明確に意思を強く持っていきますよね。

「そうです。それがなんか合致したのかなって思います」

――そう思うと他の恋愛作品というか少女マンガ原作の作品とはまた毛色がかなり違いますね。

「かなり違いましたね。これは俺が知っている少女マンガ、恋愛映画じゃないっていう(笑)。好きという気持ちも、複雑というか歪んでます。だから、色んな作品がある中で、どうやってこの映画に色をつけようか、って監督と話をしました」

――観終わった後に確かに、ハッピーな気持ちで終わるよりも、やっぱり人間の複雑な部分が印象に残りますね。

「そうですね。こういう恋愛ってあるんだなっていう。彼らのやり取りをのぞき見してる感じなんですよね。だから、恋愛映画苦手って人にも観てほしいですね」

――中尾さんご自身のこれまでのお話も聞いていきたいんですが、映像作品で映画でここまでがっつり出演されるっていうこともこの作品で初めてですよね?

 「そうですね。戦隊(『動物戦隊ジュウオウジャー』)が終わってすぐに映画撮ってたので」

――撮影の期間的には?

「2作品が重なってました。今年の3月ごろですね。なので、なかなか休みがない時期だったので少し大変でした。現場で色んな方々にお会いして、色んなお話を聞くんですけど、誰か言ってたんですけど半年ぐらいで全然人が変わるんですよ」

――それは中尾さんご自身がですか?

「自分がです。僕は気づいてないだけで久しぶりに、前に映画でお世話になったスタッフさんとか、取材に来てくれてた方に『うわぁ、凄く大人になったね』とか言われたりします。自分では成長出来てる実感はあんまりないのですが」

――短期間に色んな刺激を受けてるんでしょうね。―特に、戦隊作品の現場はとても特殊でしょうし。

「特殊ですね。最近気づきました(笑)。ああ、違うなって(笑)。でも、映像の作品の撮影現場の基本的なことを全部知ることが出来たと思います。たまに違うところもあるんですけど。全体的に基礎を叩き込まれたなって感じです」

――今ご自身的にはお芝居をやられていて楽しいとか、どんな気持ちでやられてますか?

「楽しいですね。主演をやらせて頂いたのでこの映画でも、自分の好きなようにも出来たので」

――もともと俳優になりたかったんでしょうか?

「最初は、習い事のような感覚で養成所には入ってたんです。それで先輩方の舞台で初めて生のお芝居を観て、同世代のみなさんのお芝居を観て、なんで俺はやってないんだ? っていう気持ちになったんです。そこでお芝居をやりたいって思いましたね。客席にいる自分が悔しいなって思いました」

――今、20歳越えて、ご自身の今の立ち位置をどう感じますか?

「戦隊ものとかライダー特撮ものはひとつの登竜門なので、時々はっとするんですよね。あっ俺みんなの憧れの位置に行ったんだなって」

――意外とご本人的には実感があまりないんですね。

「最初はあったんですけど、やっていくにつれてそれがやっぱり1年もやってると、感動している場合じゃないというか…。よくよく考えてこうやって取材受けている時に、あぁ俺、凄いなって思いました(笑)」

――今後もどんどん映画やドラマ、舞台などの出演を期待しています。

「是非。これからですね。スタートラインに立ったので」

 


 ●プロフィール
中尾暢樹/なかお・まさき

1996年11月27日生まれ、埼玉県出身。2014年から舞台やCMなどに出演。16年『動物戦隊ジュウオウジャー』のジュウオウイーグル/風切大和役で注目を集める。今年は、ドラマ『あいの結婚相談所』『人は見た目が100パーセント』に出演。


  ●作品紹介

映画『一礼して、キス』
監督/古澤健
原作/加賀やっこ
出演/池田エライザ 中尾暢樹 松尾太陽 鈴木勝大 前山剛久 ほか
配給/    東急レクリエーション 
(C)2017加賀やっこ・小学館/「一礼して、キス」製作委員会

弓道部部長の高校3年の岸本杏(池田エライザ)は、高校最後の大会で思うような結果を出せなかったことを心残りに思っていた。更に、後輩であり次期部長候補の三神曜太(中尾暢樹)が大会で優勝し、杏は複雑な想いを抱える。そんなある日、杏は三神からあるお願いをされる。

11月11日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー