青魚に目覚める

青魚に目覚める


スーパーの鮮魚コーナーで氷の上に並べられてキラキラ輝いているイワシがあんまり美味しそうなので思わず足を留めた。しかも大きさも十分、ぴちぴちで新鮮なのが一皿4尾で290円の大特買価格。これはもう買うしかない。
ふた皿8尾を三枚下ろしにしてもらってもお代は600円でおつりがくる。三枚下ろしの代金もサービスなんてこちらが申し訳なくなってしまう。

最近は魚をもっと食べてもらいたいと下ごしらえは無料サービスというお店も多い。素人がやわらかな身の青魚を下ろそうとしても四苦八苦しているうちに身がボロボロになって見るも無残な姿になってしまう。魚のプロが出刃包丁を自分の手のように使って、その場でいとも簡単に三枚下ろしにしたり、骨をきれいにはずしたりする作業は見ていてほれぼれする。そうしてきれいに下ごしらえされた魚はすぐに調理できるので本当に助かる。
イカなども皮をむいてもらうと、下足と美味しいわたも別につけてくれるため自家製の塩辛やお酒のアテにぴったりなわた炒めなどもさっと出来てしまうので、最近は対面コーナーに通って下ごしらえをお願いしている。

さて、笹の葉のようにきれいな細長の切り身になったイワシを抱えて足取りも軽く家路についた。これで今晩は何を作ろうか。考えるだけで楽しい。
イワシやサバ、アジなどの青魚は若い頃は苦手だった。それが歳を重ねるうちにいつしか大好物になったのが不思議だ。

そのまま生姜や青葱の薬味とたたきに、香ばしく塩焼きにしてたっぷりの大根おろしを添えて。もちろんフライにしても抜群に美味しい。和風はもちろん、トマトやにんにく、ハーブ類と合わせて洋風に料理するとシンプルでいながら俄然オシャレになる。

山梨から届いた桃を使って冷製パスタを作る予定だったから、それに合わせたアペロとしてイワシのオーブン焼きにすることに決める。にんにくとパセリを刻んで、あれば瓶入りのオレガノとタイムなどをパン粉に混ぜて、オリーブオイルをひとたらしして、ハーブ入りのパン粉を作る。これさえあればオーブン焼きが簡単だ。

買ってきたイワシに軽く塩を振って、しばらく置くと生臭さが消え、旨みがぎゅっと凝縮する。出た水気を拭けばいかようにも料理できる。
今夜はふと思いついて、塩茹でにしたほうれん草を小束にしてイワシの幅に切ったものをくるりと巻き込んでみた。巻き終わりをつまようじで留めて、ハーブパン粉にまぶしてから耐熱皿に並べて、余ったパン粉も振りかけ、ミニトマトをすき間に並べて最後にオリーブオイルを回しかけて200度に予熱したオーブンで20分ほど焼けば完成。

つまようじをつまんで焼きたての熱々を口に放り込んでよく冷えた白ワインを追っかけてごくりと。にんにくとハーブが香ばしく、青魚ならではの爽やかな油分と旨みが口いっぱいに広がる。お値打ち価格なのになんて素晴らしい!

残った半量も軽く塩をして翌日に。今度は小麦粉をはたいてオリーブオイルで香ばしくソテーにしてトマトのサルサをたっぷりと。サルサはトマトをざく切りにして、にんにく、パセリ、紫玉ねぎのみじん切りにレモン汁と塩胡椒、たっぷりのオリーブオイルを合わせたもの。ちょっぴり和風にアレンジするなら、そこに醤油を加えてもいい。和風のサルサをかけたイワシのソテーは白いごはんにもよく合う。

アジやサバは酢と合わせるのが好きだ。
塩でいったん締めたものを酢にくぐらせた〆サバや〆アジはそのままでももちろん、酢飯を合わせて押し寿司風にしてもいいし、〆たものを焼いてもさっぱりと味わい深く病みつきになる美味しさ。これをほぐして、たっぷりの薬味と炊きたてごはんに混ぜ込んだものは食欲のなくなるこれからの季節にもぴったり。

薬味と青魚は切っても切り離せない大切な相棒。青葱、生姜、茗荷、大葉、カイワレを刻んで作る五味薬味とともに夏のあいだ存分に楽しみたい。
なお、たたきや刺身で食べる際にはとにかく冷たくするのを忘れずに。盛り付けるうつわまで冷やしておけば完璧だ。少しでもぬるいと気持ち悪さを感じてしまうのでそれだけは注意したい。

好きな人は偏愛ともよべるほどのマニア、また食わず嫌いのひとも多い青魚。魚屋さんで目が合ったらいいチャンス。そのクセを上手に生かしてもっと気軽に楽しみたいと思う。

 

*次回は8月12日(月)更新予定です。

 

『arikoの食卓』

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『arikoの黒革の便利帖』
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Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は98000人を突破。Instagram@ariko418

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