幸せの黄色いもろこし

幸せの黄色いもろこし


夏真っ盛りのこの時季、食事に行った先のお店のメニューにトウモロコシの文字があると目が釘づけになってしまう。そして注文せずにはいられない。

和食屋さんなら、カリッと揚がったかき揚げにとろーんとした卵とのコントラストが楽しめる茶碗蒸し、焼き鳥屋さんで出てくる香ばしい焼きとうもろこし、土鍋で炊き上げる炊き込みご飯、フレンチやイタリアンならなめらかでのど元からすーっと涼しくなる冷製スープに、チーズやトマトソースでグラタン風に仕上げたオーブン焼き、中華ならスペアリブと一緒に上湯と蒸し上げたスープに、海鮮との炒めものや炒飯も。

そうそう、カリビアンスタイルのカフェの名物はマヨネーズを塗ってから香ばしく焼き上げ、粉チーズとチリパウダーをたっぷりかけたものにライムを絞って食べるグリルドコーンもあった。

どう料理してもそのしゃきしゃきとした歯触りとなんともいえない甘さが無条件の美味しさを連れてくるとうもろこし。なす、きゅうり、トマト、枝豆、かぼちゃにピーマン、色とりどりに店先に並ぶ、百花繚乱の夏野菜のなかでもその名を見ただけで平常心を保てなくなるほど食べたくてしかたがなくなるのはなぜなのか。

品種改良のせいなのか、子どもの頃に食べたものよりも今のとうもろこしは甘いような気がする。シンプルに塩茹でにするだけでもとても甘い。なかでもゴールドラッシュや甘々娘など銘柄とうもろこしは生で食べてもおいしい。買い物に出かけた店先に積んであるのを見ると2本、3本と買い求め、いそいそと帰って来る。
この時季の我が家の食卓も勝手にとうもろこし祭り開催中だ。今夜はどういうふうに料理してやろうかと考えるだけでにんまりしてしまう。

いちばん簡単な塩茹では外側の硬いところだけを数枚むいただけで皮とひげごと茹でる。そうすることでとうもろこしの旨みが外に逃げず、甘く風味よく茹であがる。熱々のままかぶりつくのが最高だが、すぐに食べないなら薄皮を剥いたものをラップにきっちりと包んで冷蔵庫に入れておく。こうしておくとすぐに料理できる。
横半分に切ってから、よく切れる包丁で実の部分を削ぎ落とせばサラダに炒めものにと重宝する。

生のまま削ぎ落としたものを薄力粉と冷水のみで作ったシンプルなてんぷら衣をまとわせて揚げるかき揚げは、和洋中にかかわらずどんなアレンジでも、ビールによく合うおつまみになってくれる。とうもろこし単体でももちろんおいしいが、小海老に空豆、枝豆、さやえんどうなどと一緒に揚げれば黄色に赤やグリーンが色鮮やかに映える夏らしいおつまみに。

削ぎ落としたとうもろこしの実だけでなく、残った芯も一緒に炊き込むとうもろこしごはんも我が家の定番中の定番だ。鍋で炊き上げ、食卓で蓋を開けると現れる鮮やかな黄色に歓声が上がる。芯を一緒に炊き込むことで風味が一層濃くなり美味しくなる。ほんの少しの日本酒と塩を入れて炊き上げたところにバターをひとかけらと挽きたての黒胡椒。炊きたての熱々はとうもろこしの甘さとシャキシャキ感がたまらない美味しさでかっこむ箸が止まらない。バターのほかにパルミジャーノなどの粉チーズを足しても塩気とコクが増してとてもおいしい。

この夏覚えたシンプルでありながら驚くほどの美味しさなのがとうもろこしの素揚げだ。なぜこれまでやらなかったのかが不思議なくらいのシンプルなレシピ。
薄皮をむいてひげも取ったとうもろこしをまず、包丁を入れてぽきんとふたつに折る。それを縦に四つ割りにしてから、ビニールに入れて片栗粉をうすくまぶしたものを160℃程度の中温で揚げるだけ。揚げているうちに先端がくるりと丸まってなんとも愛らしい姿になるのが楽しい。
揚げたてに塩を振っただけで美味しいのだが、ここに伝家の宝刀のバターと醤油をからめたものは病みつきになること間違いなし。手がベタベタになるのも気にせず夢中でかぶりついてしまうはずだ。

この料理を作るときに注意するべきは、よく切れる包丁を使うことと、揚げている際に油はねに気を付けること。油はねガードがあれば安心だが、ない場合は大きめの鍋のふたを盾のごとく使って油はねを防いでほしい。私は全く気にしないのだが、やわ肌を傷つけたくない方は念のために長袖を着用することをおすすめする。

記録的な猛暑、真夏日が何日連続ととろけてしまうような暑さだったこの夏もお盆を過ぎれば、もうなんだかなごりおしくなってきた。暑さとともに見るだけで元気になる鮮やかな黄色のとうもろこしを味わい尽くしたいと思う。

 

*次回は9月9日(月)更新予定です。

 

『arikoの食卓』

 『arikoの食卓 -もっと食べたい-』

『arikoの黒革の便利帖』
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Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は98000人を突破。Instagram@ariko418

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